表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/117

閑話・ライネルヴァ王国の天手古舞〜クラン視点・3〜

随分長くクラン視点が続いていてすみません。

「アンジュリーだっけ、あの伯爵令嬢」


お嬢様がポツリと言う。そうそう。そんな名前だった。


「そんな名前だったと思うが、どうした? ミッツェ」


「いや。危機察知能力に長けていた。ってクランは言ったけど。あのスカスカの脳みそにそんな能力が備わっていたのかなぁって思って」


お嬢様、スカスカの脳みそってグッジョブでは! なんて上手い喩え!


「あー、確かに。あの伯爵令嬢、あちこちの男に声を掛けてたからな。それも将来性のあるヤツばっか。俺にも声を掛けて来たけど。無視してたら諦めたみたいだけどなぁ」


お嬢様の兄にも声を掛けてたって、とんだご令嬢だな。


「まぁニルク殿下くらいでしたわね、あのご令嬢に引っかかっていたのは」


「あー、バカ王子ねぇ。うん、まぁ引っかかったというのは、ちょっと違うけどね」


おや、お嬢様。随分奥歯に物が挟まった言い方されますね?


「違う? どこが? 私から見て完全に引っかかっていたわよ?」


「うん。ラティにはそう見えただろうね。まぁバカだから仕方ないよ。それより、クラン。他の情報は?」


お嬢様はあからさまに話題を修正した。


「公爵様は、かなり激怒されたようで、王家の謝罪と共に婚約破棄ではなく、白紙撤回として、更に慰謝料を分捕ったとか」


「お父様……。私、思っていた以上に愛されていましたのね」


しみじみとされているけど、それだけじゃないよ?


「で。公爵様は、国内に直ぐに影を放って隈無く探し、見つからないので国外へ目を向けていますね。ここに追っ手が来るのも時間の問題かな、と」


「具体的に猶予は?」


お嬢様の兄とラティ公爵令嬢は、顔を青ざめさせているのに、お嬢様は動揺も無い。さすがだ。


「3日は大丈夫だと思いますが」


お嬢様の質問に答えれば、お嬢様が「まぁそうだよね」と頷く。きっとお嬢様の想定内なのだろう。


「で?」


「伯爵家では、お嬢様の事は全力で無視ですが。お嬢様の兄君は大切なのか、随分必死になって探してますね」


「まぁお兄ちゃんは、優秀だし、跡取りだし、そりゃあ必死でしょうよ」


お嬢様は冷静に言葉にする。だが、お嬢様の兄は心底嫌そうな表情で断言した。


「俺は帰らない。ミッツェとラティと共に居る」


甘いなぁ。貴族の坊っちゃんなんかに、平民生活なんて出来るとは思えない。大人しく帰った方が苦労もしなくていいだろうに。


そんな事を考えていた俺は、お嬢様の兄の素晴らしく優秀な姿を直ぐに見せつけられる事になる。寧ろ、凄い重宝だった! と認識を改めるのも直ぐだった。

さて、お嬢様が知りたい、と思っている事はコレくらいだろう、とそれ以上は口にしなかったし、お嬢様も俺に何も言わなかった。

おまけ。


「クラン。手に入れた情報を全部寄越しなさい」


お嬢様は夜中、2人が寝静まった頃に俺を呼び出していた。さすがお嬢様である。


「伯爵は後妻の子を跡取りに指名しました。同時にお嬢様と兄君の病死を発表。後は無言を貫いてます」


「そうでしょうね。あの自尊心の塊が、息子に出し抜かれたなんて、認めたくないでしょうからね」


お嬢様は淡々と告げてから、さぁ最後まで吐き出せ、と目で訴えて来た。


「アンジュリー伯爵令嬢は国外追放処分だと決まり?」


本当にお嬢様は聡明だ。俺は頷くだけ。逃げたとしても、相手は王家だ。直ぐに見つかって国外へ放り出されるだろう。


「で、バカ王子は?」


「城から放り出された直後から命を狙われているようですね」


「……成る程。第二王子派の仕業ね。護衛が付くわけないし。助けに行くようかな」


「何故? お嬢様の従姉妹を婚約破棄にしたヤツでしょう?」


「あー。クランは知らないからね。ラティも気付いてないけど。バカ王子は昔からラティ大好きなんだよ。アピールの仕方がズレているけど。頑張る方向性も違うけどね」


「……好きなのに婚約破棄?」


俺は理解出来ない思考だ。バカなのか? あ、いや、バカだからお嬢様にバカ王子って言われてんのか。


「まぁ大方、ラティに焼きもちを焼いてもらうつもりで伯爵令嬢を巻き込んだんだろう。婚約破棄は咄嗟のことでしょうね。結果的にラティが焼きもちどころか、婚約破棄を受け入れちゃったんだけどね」


……成る程。ちょっと不憫に思えてきた。


「まぁ少しだけ不憫だから、バカ王子を助けに行くくらい、良いかなって思ったんだ」


お嬢様が苦笑して。その苦笑に俺も苦笑して、仕方ない。俺が王子を助けてくるかな。というわけで、現在、バカ王子を助けに俺はライネルヴァ王国を訪れている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ