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公爵家の親子・1

 ギルドマスター・マンザスから連絡をもらい、十日後に再びギルドを訪れたミハイルたちは、マンザスと共にハントとオーリーと、そして。


「ラティーナ!」


 ……ライネルヴァ王国の公爵。つまりラティーナの父で依頼人が共にいた。


「なんだ知り合いか?」


 ラティーナを見て号泣している公爵と、その父親を見てドン引きのラティーナ。それと微妙な顔のミッツェルカと天を仰ぐミハイルに、ラティーナの表情を見逃さない、と食い入るように見つめるニルクと、無表情のクランを順番に見て、この状況に頭を掻くマンザス。好奇心旺盛なハントと冷静なオーリー。カオスである。


「あーあ、まさか伯父上本人がこの場に来るなんて思わなかったなぁ。伯父上久しぶり」


 もう、これはどうしようもない、とミッツェルカは開き直って号泣しているラティーナの父親にヒラヒラと片手を振る。途端に嫌そうに顔を顰めて泣くのを止めた公爵は、ミッツェルカを睨め付けた。


「なんでお前たちまで一緒なんだ、ミハイルにミッツェルカ。それとニルク殿下まで」


「伯父上、先ずはニルクはもうライネルヴァの王太子じゃないよ。知っているでしょ。ラティに婚約破棄突き付けてラティを自由にしたのと同時に、自分まで王太子の位を剥奪されて追放されて自由になったんだから」


 ミッツェルカの端的な説明に、公爵は溜め息をついた。


「つまり、お前の悪知恵か、ミッツェルカ。ニルク殿下を唆してラティーナを王太子妃の座につけることを阻止。ラティーナを自由にして冒険者に誘った。それにミハイルを巻き込んだな? 弟がミハイルのことを探していたぞ。父親に心配をかけるなんてお前は親不孝者だな、ミッツェルカ。我が娘のラティーナだけでなく、王太子殿下と己の兄であるミハイルまで巻き込みよって。そんなだから弟がお前のことを疎むんだ」


 公爵は、決して弟である伯爵……ミハイルとミッツェルカの父親である伯爵の絶対的味方では無いが、弟から聞くミッツェルカの素行は好ましくなかったために、ミッツェルカがミハイルとラティーナとニルクを唆して冒険者にしてしまったことを腹立たしく思っている。

 ちなみに、弟である伯爵から聞くミッツェルカの素行というのは、身体が弱いのに我儘で勉強嫌いでマナーも学ばず、外に出ることも拒否をして家族を蔑ろにする、子息として最低なものであった。


「別にニルクもお兄ちゃんもラティも巻き込んだのは確かだし、それを責められるのも否定しないし、謝れっていうなら謝るけどさ。あのクズを父親だと思ったことなんて思ってないから、別にあんなのが私を疎んでもどうでもいいとしか思ってないんだよね」


 ミッツェルカのあっけらかんとした物言いに、公爵は青筋を額に浮ばせ怒鳴ろうとする。それを手で押さえたのはミハイル。


「あの伯父上。抑々ですね。父である伯爵の話を一方的に聞いただけで色々判断して、ミッツェルカのことを知っている気になっていますが、大前提から間違っていることを理解してもらえると助かります」


「大前提とはなんだ」


「その説明の前に。ねぇ、ギルドマスター。それとオーリーさんとハントさん。今さらですけど、俺たちの問題に首を突っ込んで後悔しませんか? これ以上聞くのは、危険かもしれませんよ」


「危険が怖くて冒険者など出来るものか」


 ミハイルの確認にマンザスがあっさりとそんなことを言い、ワクワクした顔のハントと静かだが引く意思を見せないオーリーが肯定するように頷いた。


 そうですか。


 ミハイルは、溜め息一つついて、改めて伯父の公爵に向き合った。

お読みいただきまして、ありがとうございました。

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