次なるランクアップ達成は手合わせ・1
簡単(のように見えた)に薬草を採取してきたクランの能力に唸り声を上げたミハイル。こんな簡単に出来るようなものじゃないと思うのだが、とは思うものの実際達成しているのだから、文句も何もない。それよりは。
「次のランクアップ達成のための試験って確か手合わせだったね」
クランとニルクを見ながらミハイルはギルドの受付嬢から聞いたランクアップ試験を思い出す。
戦闘メンバーとギルドマスターかサブギルドマスターとの手合わせだとか言っていたっけ。取り敢えず岩の下で待つミッツェルカとラティーナと合流し、採取した薬草を持ってギルドに確認してもらってから話を聞くしかない。
高ランクの冒険者でギルド職員のハントにギルドマスターとサブギルドマスターの強さやどういった戦闘スタイルなのか確認してみよう、と二人と合流してギルドへ戻る道すがら、ミハイルは尋ねた。
「強さ? マスターもサブマスターも最高ランクかその一つ下のランクの冒険者じゃないとなれない」
つまり、そういうことである。尚、サブギルドマスターの方は冒険者を辞めてないが、ギルドマスターは年齢を理由に辞めていると聞いた。
「ということは、勝つことでランクアップ試験合格ということじゃなくて、手合わせをして、どんな戦闘スタイルなのか確認するとか、どれだけ戦闘中に冷静さを失わないかとか、そういうことで判断するわけか」
ミハイルは直ぐにギルドマスターかサブギルドマスターと手合わせする理由を把握し、ハントは心底驚いた。
「ああ、賢いね、君。本当の理由を理解出来る冒険者に初めて会ったよ。大抵、俺も含めてだけど、大抵の冒険者は、自分の実力はギルドマスターやサブギルドマスターよりも上だ、みたいな、今思えば恥ずかしいくらいの自意識過剰というか、自分最強みたいな考えをしているからね。そうじゃなくて、自分の実力を見てもらうことでランクアップが出来るだけの腕があるのか、とか、弱点は何か、とか。そういうことをギルドマスターもサブギルドマスターも把握したいんだ。それを理解出来るなんて、初めてだ」
ハントを含め、みんな謎の自己肯定感マックスでランクアップ試験に挑むことが多いらしい。
貴族の中にも居たなぁ、とクラン以外の四人がしみじみする。特に、謎の自分が一番思考って下位貴族の男に多かった気がするなぁ……と母国での学園生活さえも思い出して、四人は遠い目をしていた。
「そこまで自惚れることが出来るほど、世の中甘くないですからね」
ミハイルは掘り起こしてしまった過去を再び埋めることにして答える。
「うっ……、今になればそれは分かるが、一時期は天狗になるもんなんだぞ」
ハントが冷静にそんなツッコミされると胸が痛い、と胸を抑える素振りを見せながら足掻く。
あー、前世の中学生辺りで時々居た自分万能な人感か。神か何かに愛された人間みたいな。世界が変わろうともそういう可愛げってあるものなんだね。
などとミッツェルカの前世の記憶すら振り返らせる発言をしているハント。
きっと黒歴史を暴露している気持ちなのだろうな、と同情してしまったミッツェルカを含めたメンバーは、それ以上ハントの発言を気にする素振り無しで、受け流すことにした。
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