キアラをイジメたパフェラデルの末路
「え、明日騎士団長結婚するの。僕も出席していいよね?」
「さも当然とばかりに聞いてくるな。まぁ来たければ来い」
ラシードの結婚は国にとっても盛大な行事の一つだ。国内外から大勢の招待客が押し寄せる。エルフの存在はヴァルヴェギアの国力を見せ付ける一つになってくれるだろう。政治的判断で来賓席の先頭にセオドリクの席が用意された。
「キアラも連れてくるから頼むねー」
陽気に去って行ったセオドリク。話を聞いた王太子妃アデリナが、結婚式に相応しい装いをセオドリクとキアラのために(ゆくゆくは国のために)急遽準備した。
そうして盛大に執り行われた騎士団長ラシード=ヴァルヴェギアと、テヘラゲート公爵令嬢パフェラデルの結婚式が幕を開け、美しく着飾った可憐なパフェラデルが父公爵と共にバージンロードを歩いてくる。
大切に育てられた美しい深層のご令嬢が身につけるのは、幾多もの金剛石を散りばめ、光を受けて輝く純白の花嫁衣装(製作期間四年)。
花嫁本人も陽に焼けていない真っ白で艷やかな肌に、薔薇色の頬と赤く濡れた唇。金髪碧眼と美の代名詞を兼ね備えている。
とうに二十歳を過ぎているのにあどけなさが抜けないものの、時に妖艶さを垣間見せ、王侯貴族、庶民に至るまでが憧れる存在。
今日のパフェラデルは何十人ものプロの手によって常の何倍も何十倍も美しく作り上げられていた。
まさに人生最大の晴れ舞台。
参列者の視線を一人占め!
……かと思いきや。
宝石をつけてもいないのにキラキラキラキラ。
明かりを灯してもいないのに、何故か光り輝く人物が来賓席の先頭に。
まっすぐに伸びた銀色の髪からは尖った耳が覗いており、白く光り輝く肌には針の先ほどのシミも、毛穴すらない。瑠璃色の瞳は神秘的で、華美な装飾が皆無であるのに、まるで国宝秘宝が山積みにされたかの存在感。
参列者全員の視線を釘付けにするのは、奇跡の存在エルフのセオドリクだ。
彼の美貌は言葉で表すことなどできない。あまりの神々しさと美と光にやられた参列者の中には失神する者まで現れる始末。
屈辱に爪を掌に食い込ませたパフェラデルであったが……
「おめでとう。どうぞお幸せに!」
エルフの祝福(満面の笑み)に瞬殺され失神し、目覚めた後はすっかり自信をなくして陰湿な虐待はすっかり鳴りを潜めたそうな。




