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第13話 パリィVS巨大戦艦

 軍艦の真正面まで小舟を進めると、エリーヌはオールから手を離した。

 ルシードを伴い、海棲竜(シー・ドラゴン)の背に移動する。


「では、手筈通りに頼む」


 俺の言葉に、4人の少女は緊迫した表情を見せつつ、頷く。


 彼女らは洋上を左右にわかれて、離れていった。

 あとには、俺だけが残される。


 敵船はもう十数メートルというところまで迫っていた。

 

 間近で見る軍艦は、まさに迫りくる壁だ。

 まるで世界の果てが、こちらに近付いてくるようである。


 ――この船には窓がない


 俺は初めてこの船を見た時から、それがずっと気になっていた。


 鋼鉄が一枚岩のごとく甲板から船の喫水線まで覆っているのだが、これでは海上で戦闘になった時、甲板から矢を射かけるぐらいしか攻撃手段がないのではないか。

 ちょうど自分たちがやられたように。


 だが、軍艦である以上、他の船と会敵し、それを沈める手段が必ず存在するはずである。


 とすると、考えられるのは一つ。

 体当たりだ。

 

 この圧倒的な質量の塊は、存在それ自体が武器であり兵器となりうる。


 そう。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 であるならば――


 俺はちらりと左手に目を飛ばす。


 少し離れたところにいるエリーヌが、こくりと俺に頷いた。


 次の瞬間、幼なじみは竜の背の上で、勢いよくジャンプした。

 

「ウインドストーム!」


 カザリンが叫ぶ。


 宙に躍り出たエリーヌの真下で空気が激しい乱気流を作り、彼女の体をさらに押し上げた。


 中位スキル持ちの全力の風魔法は、ちょっとした竜巻を形成し、エリーヌを空高く持ち上げてゆく。


 俺は正面に向き直る。


 もう戦艦までの彼我の距離は、5メートルもない。

 失敗すれば、数瞬後には、俺は波間を漂う海の藻屑と化すだろう。


 腹のくくりどころだ。


 あと2メートル。


 俺は船首に立ち、鍋蓋を構えた。


 あと1メートル。


 木の蓋をタイミングを合わせて、右から左へと勢いよく振りぬく。



 ――――――ドン



 例の音が水平線の果てまで届くのではないかというほどの大音量で響き渡る。


 そして、鋼鉄でできている巨大戦艦が、神の見えざる手で引っ張られたように、左方向にぐるりと大きく弧を描いた。


 

*****



「ぐわぁっ!?」


 戦艦のブリッジ上で、敵将軍が叫び声を上げた。

 

 立派な鎧に包まれた体躯が壁に叩きつけられる。


 ぐぅ………と呻き、膝をつくが、なにが起こったのか全くわからない。

 わかるのは、彼以外の艦橋員たちも、彼同様、右側の壁面や床に叩きつけられ、転がっていることだけだ。


 この船に乗って以来、どんな大時化の時でもティーカップに入った紅茶の表面に波が立つことさえなかったし、氷山に激突した時でも卓上のペン立てが倒れもしなかった。


 ――まさかその船が木の蓋に弾かれて、半回転したなどと彼に想像できるはずもない


 将軍は足をフラフラさせながら半ば無意識に、甲板にまろび出た。


 ぼんやりする意識をはっきりさせるべく天上を振り仰ぐと、ちょうど空からなにかが落ちてくるのが見えた。


 人だ。

 少女がこちらに向かって落ちてくる。


 彼女は燃え立つような赤毛をなびかせ、身体をさかさまにして、両手に持った剣を突き出していた。

 そのまま甲板に剣を突き立てる。

 瞬間――


 

 バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!

 

 

 足元の甲板が消失した。

 将軍は真っ逆さまに40メートル下の海面へと落ちてゆく。


 最後までなにが起こったのか、知ることはなかった。


 

*****



「うまくいったか……」


 俺は呟いた。


 眼前には地獄のような光景が広がっている。

 

 エリーヌの一撃を受け、巨大戦艦は木っ端みじんになった。

 俺のパリィは、今回は()()()()()戦艦のみをスキル『武器破壊』の対象としていた。

 そのため、船内の敵兵たちはほぼノーダメージだったはずだ。


 だが、足場である船が消失したのである。

 当然、彼らはそのまま海面に投げ出されることとなった。

 

 鎧兜をつけ、完全武装したまま。


 助けてくれ、と声を上げられる者はまだいい方で、大半は重装備に泳ぐこともできず、海の底へと沈んでいった。


「悪く思うなよ……」


 俺は洋上に向かって呟く。


 5万の兵士たちの望まざる身投げ。

 だが、もしこの船が俺の住む町に到達したら、町民が皆殺しの憂き目にあったかもしれない。

 

 ならば鬼になるしかないのだ。

 これは戦いなのだから。


 宙をくるくるくると回転しつつエリーヌが落下してくる。

 カザリンの風魔法が彼女を抱きとめ、ふわりと海棲竜の背に降ろした。


「怪我はないか?」

「平気」


 俺の確認に短くこたえる幼なじみ。


 再度海上に目を向けると、もはや水面に浮かんでいる者の姿はごくわずかだった。



 

 こうして、海戦は幕を閉じた。

 俺たちは波間に漂う生存者たち――ほぼ軽装の奴隷のみだった――をできる限り救助し、町への帰途に着いたのだった。


 最後までお読みくださり、ありがとうございます!


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