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3戦目 引き抜き

 あれから1週間が経った。アネリーは武器以外も戦闘で使用する様になってから戦いの幅が広がりつつある。


「それ!」

「砂が!?一体いつ!?」


「訓練する前からだよ!懐獲った!」

「甘い!」


 コーネリアの鋭い蹴りが入ったかに見えたが間一髪でアネリーは後ろに飛んで躱していた。


「姑息な手を……」

「戦場で卑怯とかそんなのないって指揮官が言ってましたよ!」


 コーネリアが私の方を睨んでくる。仕方あるまい。でも良い感じに頭も使い出した。これなら戦場にいつ出てもすぐに死ぬ事はないでしょう。


執務室にて……


「アネリーは帰りましたか?」

「ええ、寝てしまったので馬車で帰しました。」


 今は私とコーネリアだけです。まだお仕事が残ってますから。


「アネリーの成長はやはり早いわね。」

「ええ、私の妹ですが……怖いですね。私のナイフ捌きすらもう応用し始めてます。」


「そのくらいでないと困ります。さて、問題です。私たち3人ではまだ任務は出来ません。総指揮官様は自分達で人材は集めろとの事ですから。」


「何名かは他の師団から頂けるという話でしたが……騎士団長が噛んでるですかね?」


「それはないでしょう。あの方は騎士団を纏める力はありますがそれは実力と人柄ですから多方面にかつ器用には使えません。特に上層部の方には……」


 騎士団の中でも第1騎士団は選りすぐりの面々た、その中の団長は騎士団長と言われている。全ての団長は独立してるとはいえ、作戦や行動、人事異動などを行う時には一度ここを通さなければならないのです。



「だとしたらどうしますか?」

「実は1人リストアップしています。そして異動の申請書類と異動願いも作成しております。なので明日は第6師団にいきますよ。」

「あの……アポは?」


「とってるわ。2日前にね。」

「安心しました。私には何も連絡なかったので……」


「もう総指揮官ではありませんからね。少し時間にもゆとりが出来ましたしコーネリアの負担も減らさなければと思いまして。」


 これまで私は雑務やアポイント取りなどは全てコーネリアに任せていた。でも、それじゃいけない、今後は出来る限り私もやっていかなければならない。


 翌日、3人で第6師団にやってきました。


「3人でくるとは思わなかった。」


 第6師団の指揮官の部屋の前には1人の男性兵がおり私たちの事を見て眉間に皺が寄った。


「すいません。まだ出来たばかりの新部署でして新人を1人置いてくるのも問題でしたから。」


「まぁいい入れ指揮官は中でお待ちだ。」

「ありがとう。2人は待ってて下さい。」

「よろしいのですか?」


 私は頷いて部屋に入る。入ると1人は立って、もう1人はソファーに座っていた。立っているのが指揮官、座ってるのが副官でしょう。


「これはこれは総指揮官……いえ、元でしたね。」

「ええ、元です。今は第21師団の指揮官です。ハリー・アイセン第6師団指揮官殿。


 副官の方は確か……セラン・ヘイトだったはず。2人とも弓の名手です。前回の戦闘でも弓での牽制に助けられたました


「まぁそれはいいでしょう。おかけ下さい。」


 私はソファーに腰掛けた。そして会談が始まる。


「まぁ言いたい事は分かっている。人員が欲しいのだろう?」

「ええ、1人で良いんです。第6師団からこれを作れる人が欲しいのです。」


 私がテーブルに置いたのは第6師団で使われてる弓だった。それを見た2人は一瞬固まった後、大笑いした。


「ははは!これって弓か!」

「?そんなに大笑いする事ですか?」

「いやいや、弓なら国お抱えの武器屋に作らせてるんだぞ!」


「そうなんですね……では、言い方を変えましょう。これの手入れをされてる方を欲しいんです。」

「手入れは個人個人で行っている。自分の武器を他人に任せる奴は私の隊にはいないぞ!」


 ハリー指揮官が言う言葉は疑いの余地がないだろう。目を見れば分かる。真っ直ぐな視線が真実だと言っている。


「素晴らしいです!では、1人引き抜いても問題ないでしょうか?」

「それは人財によります。隊の中にも役割がありますから。」


「では、マーヤ・サムスさんが欲しいのですが……よろしいですか?」

「……誰だそいつは?」

「知らないのですか?」


 そこで口を開いたのは副官のセランでした。


「はぁ……知らないはずです。彼女はもともと猟師で害獣相手でしか使ってません。今も隊にはいますが戦績はなくそろそろ退団してもらうつもりでした。」

「なんだ。そんな使えない者がいたのか……」


 散々の言われようだが、私には逸材だ。


「あの、話を戻しても?」

「あ、あぁすまない。それで良いのか?そのマーヤとか言う奴で?」

「構いません!今日から編入という事でよろしいですか?」

「あぁ、構わんよ。連れて行くといい。」

「ありがとうございます。大切に使わせて頂きます。こちらはお礼です。」


 私は人財獲得の代わりに金貨の入った袋を2つ机に置いた。生憎と人財交換は今の私たちには出来ない事からの精一杯の御礼でした。そして話し合いは終わった。私は見事人財を獲得出来ました。扉を開けると2人が待っていたので声をかけて部屋を後にしマーヤさんのいる作業場に迎えに行きました。


 いると言われてた部屋をノックしたところすぐに返事がありました。出てきた女性はなかなかの美人さんで本当に狩猟をしてたとは思えませんでした。ですが指の傷を見るとやはりわかります。腕は確かだと。


「どちら様ですか?」

「初めまして、第21師団指揮官メアリー・バーンです。マーヤ・サムスさんですよね?」

「は、はぁ……」


 私に代わりコーネリアが話を引き継いだ。


「貴女は第21師団への編入が決まりました。私たちと来てもらえますか?」

「わ、分かりました。ですが……」

「何かありますか?」


「いえ、今日の業務がまだ……それとここにある私の私物も……」


「そういう事なら任せなさい!」

「そうね……ここには体力お化けがいますから……私物を分けて貰えますか?私とコーネリアで荷造りします。それをアネリーに持って行って貰いますから。」

「そんな!上官にそんな事させるわけには……」


「いいですよ。気にしないで下さい。それに……貴女は私の大切な人財です。明日から働いてもらう為にも急いで貰いますよ。」

「……評価して貰えるのは有り難いのですが……私はその人に撃てないんです。あはは……軍人失格ですよね……」


 自傷っぽく笑ってはいるけれど相当悩み苦しんできたんだろうことは容易に想像できてしまう。


「ええ、知ってますよ。それで相当苦しんでいる事も……陰で悪口を言われてる事も……」

「そんな私をどうしてですか?温情ですか?」


 真剣な表情のマーヤに今度は私が笑って返します。そしてはっきりと否定します。


「いいえ、温情とかではありません。マーヤさんは戦争において最も必要な物はなんでしょうか?」

「?……武器ですよね?」

「もちろんです。ですがもっと大事な物があります。なんでしょう?お2人も考えてみて下さい。」


 この問いに対してコーネリアもアネリーも首を傾げます。


「分かった!人だ!」

「確かに人がいなければ戦争できませんね。でも、それは逆に人がいなければ戦争も起こらないから不正解です。」


 アネリーの回答は的を射ている様で外れていました。


「コーネリアはもうわかりましたね?」

「食料ですね。」

「正解です。人は食べなければ生きていけません。兵站を軽視すればたちまち戦は負けます。狩猟の経験があり、弓矢に精通してる貴女は適任なんです。だからどうか私に力を貸してくれませんか?」


 人が撃たなくても動物は狩れる、ならば兵站が尽きる消耗戦でもある程度狩で補える。そこから知識を増やせば野草やきのこなど食べられるか食べられないかまで分かればもう立派な戦力となります。


「そんな事言ってくれたのは貴女が初めてです……分かりました。貴女の下で精一杯働かせて頂きます。」


 そこからはバタバタだった。思いのほかマーヤの私物は少なかった為2往復くらいで済んだ。どちらかというと残りの業務が大変だった。しかしなんとか手分けして片付けて夕暮れ前には終わる事が出来ました。


「それでは明日からお願いします。」

「はい……こちらこそよろしくお願いします。そしてありがとうございます。」


「?なぜ御礼を言うのですか?」

「いえ、いつもは月が登ってしまうまで……悪い時は日が昇る頃まで終わらない事もありましたから……」


 それを聞いた私はマーヤに大切な事を尋ねることにしました。


「マーヤさん休みは取れてますか?」

「休みとは?入隊してから休みの日などありませんよ?常に体力トレーニングと筋力トレーニング、体幹トレーニング。戦術の勉強に弓矢の訓練。毎日の積み重ねが大事だとハリー指揮官が仰っていましたから第6師団は休みの日も訓練に当てる為実質休みはありません。」


 私は流石に驚きました。幾ら騎士団だからとはいえ休みがないなどあり得ないのです。


「流石に問題ですね。」

「自主的にやってるなら問いただせない……しかし全師団に一度監査は入れるべきでしたね。私のミスです。」


 私はマーヤに向き直り謝罪しました。


「マーヤさん申し訳ありません。私の不得でお辛い思いをさせてしまいました。」


「なっ!頭を上げて下さい!皆好きでしているのです。私も日課でやっていましたし。気にしないで下さい。」


「いいえ、休養も大切な業務です。マーヤさんは明日から1週間はお休みを取って下さい。初出勤は7日後です。良いですね。」


「な、7日間も!よろしいのですか!?」

「もちろんです。それでも少ないくらいですから!」

「あ、ありがとうございます!」


 マーヤの出勤はまた別日となりましたがまぁこれは大切な事です。体調管理は自己責任と言いますが壊れる環境を作っては元も子もありません。ゆっくり休ませる時は休ませないといけません。

 ここまで読んで頂きありがとうございました。

次回更新もお楽しみに!


 面白い、続きが気になるという方はブックマークまたは下の星マークをタップしてお待ち頂けると幸いです。

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