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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第六章 転生勇者編
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転生勇者と決着

「あぐっ………!」

「………………しぶといなあ」


 謎の声が聞こえた直後、なぜか俺から湧き上がる力が爆発的に上昇した。

 勇者の力が強まり、俺自身が速いせいか、世界が止まって見えた。


 だが、それでも………そこまでの力をもってしても、ヨミには手も足も出なかった。


「く、そお………!」

「いきなり力が上がったからちょっと焦ったけど。所詮この程度か。でも、自動回復能力があるのは厄介だね。それに、たまにボクの剣を避けたり、反撃に転じようとしてるし。まあ一太刀も当たってないけど」


 おそらく、俺に起きた現象の正体は『覚醒』だ。

 勇者としての到達点。その数々の恩恵は、覚醒と同時に頭の中に流れ込んできている。


「反撃とか回避ができてるのは………反射神経が異常値まで上がってるのかな?自動回復には魔剣ディアスの回復阻害は効果を成さない、と………うん、だんだんわかってきた。次か、次の次で殺せる。いくら自動回復と言っても不死身じゃないよね。なら再生できないくらいにコマ切れにすればいい」

「………………っ」


 おかしい。なぜだ。

 ヨミが強いのは分かる。それはもう疑いようがない。けど一つだけ、腑に落ちない。

 勇者として覚醒したことによる恩恵の一つに、『善属性・悪属性に関わらない魔族に対する絶対優位性』というものがあった。

 これはつまり、魔族の攻撃がすべて俺に通用しないことを意味する。

 なのに、どうして。俺はこうやって傷を受けている?

 神器の効果か?いや、対覚醒勇者用の神器なんて作られているわけがない。


「………………一つ、いいか」

「なに?」

「………お前は、何なんだ」

「その質問はさっきも答えたよ?人間のことはゴミくらいにしか思ってない、魔王軍の戦闘員だってば」

「そうじゃない」


 ヨミは、わけがわからないという顔をする。


「………覚醒した俺は、魔族である限り誰にも傷つけられないはずなんだ。なのにお前は、俺に何度も攻撃を与えてきている。………どんなからくりなんだ」


 そう言うと、ヨミは「ああなるほど」とでも言いたげな顔をして、



「それはそうだよ。ボクは人間だからね」



 そんなことを、さらりと言った。



 ※※※



 ………………は?

 今………………なんて、言った?


「人、間?」

「そうだよ。自分でも極力思い出さないようにしてるし、自分でそうだって思うだけで吐き気はするけど。ボクは生物学上は人間だ。魔族じゃないんだから、君に攻撃を与えられないわけないだろ?」


 魔王軍最強、魔王の右腕が………人間。

 その瞬間、俺は四年前のある言葉を思い出した。

 元聖十二使徒で今はもういない、ミィアさんにつかまった魔王軍の兵士が、今際の際に笑いながら話したという、『戦神将』ヨミに関する数少ない情報の一つ。


『俺が教えなくとも、お前達は近いうちに、あの御方の姿を目にすることになる。ヨミ様は、()()()()()()()()()()()()だ。お前達人間がやり方を間違えなければ、あの御方が魔王軍に加入することは無かった。精々、自分達のしたことを後悔しながら死ぬんだな』



「俺たち人間が生み出した、厄災………」

「ボクの情報をどこまでつかんでるかは知らないけど、その表現は正しいね。人間がやり方さえ間違えなければ、ボクは君たち人間の切り札となっていたかもしれないんだから」

「あれ?ヨミ、話しちゃったの?」


 第三者の声にそちらを振り向くと、そこにはリーンがいた。

 そうだ、ヨミが人間なら、なんで彼女は………!


「うん。こうやってボクが表に出てきた以上、隠す必要もないしね」

「まあそれもそうだね。でも、冥途の土産にしては豪華すぎる話じゃない?………ねえ勇者」

「リーン………君は、人間が嫌いなんじゃなかったのか………!?」

「そうだって言ったじゃん。………ああ、ヨミは例外よ?ヨミは一応人間だけど、私と同じくらい人間嫌いだし、私以上に人間によって人生狂わされた被害者。あんたの言う通り、『人類の過ちによって生み出された厄災』だからね」

「人間によって、人生を………?」

「地獄行ったら、ハサドとかデューゲンとか、イーディス辺りに聞いてみなよ。『昔、五歳の女の子を虐待しませんでしたか』って」


 虐待?聖十二使徒が?

 いったい、どういう………


「話はこれくらいにしようか。………そろそろ斬る。リーン、下がってて」

「りょーかい。攻撃通じないんじゃ、私は足手まといだしねー」


 ヨミは、再び剣を引き抜いた。

 このままだと、間違いなく俺は死ぬ。

 どうすれば………!



 ―——————パアアアン!!



 俺の思考は、突如響いたこの音で遮られた。

 聞き覚えるのある音だった。ガラスが割れる音と銃声を混ぜたようなこの音。

 そう、結界が消えるときの音だ。


「転移阻害結界が………!?」

「ちょっ、まさか………!」


 リーンとヨミは慌てたように後ろを向き、俺もそれにつられてそっちを見る。


 そこには、既に満身創痍のヘレナさんと、『武神将』グレイ。

 それに、地に臥せって動かない、ゲイルさんと………『賢神将』サクラがいた。


「サクラ君!?」

「相打ち………!?まだ息はあるよね!?ちょっと、君はマジで生き残らないとだめだから!!」


 動かないサクラに、リーンが慌てて駆け寄る。


「はあ………はあ………先に、こっちにとどめを………!」

「《転移(テレポーテーション)》!危なっ………!生きてるよねサクラ君!」

「!?リーン・ブラッドロード………!」


 ヘレナさんがサクラにとどめを刺そうとしたところに、リーンが止めに入った。


「グレイさん、『こいつは俺の獲物だ』とかは言わずに聞いてください!ヘレナは私が引き受けます、グレイさんはゲイルにとどめを!あっちですぐにヨミが勇者を仕留めますから!」

「………やむを………えない………!」


 互いに一人脱落。でも向こうには、多少の手傷は追っているもののまだまだ動けるリーンと、無傷のヨミがいる。

 対してこっちは、もうヘレナさんはまともに動けないし、俺も追い詰められている。

 戦況は圧倒的不利。だが。


「勇者様………撤退、です………!」


 ヘレナさんのその一言で、俺は胸に仕込んであった転移のマジックアイテムを起動させた。

 転移先は、メルクリウス聖神国の神都の転移陣。ヘレナさんも、自分のものとゲイルさんのものを遠隔で起動させている。


 このままじゃ、俺はヨミには勝てない。どんなにあがいても、この厄災には絶対に。

 だから、ここは逃げる。まずは、生き残ることを考えるんだ。


「!?行かせるか………!」


 一瞬、向こうに気を取られていたヨミは、俺の転移に気づくのが遅れた。

 それでも、神速と形容するにふさわしい速度で、俺の首を落とした………が、俺には自動回復がある。絶命する前に、首はつながった。


「待てっ………!」


 再びヨミは剣を返し、斬撃を放ってきた………が、それが俺を切り刻むより一瞬早く、俺の視点は変わった。

 転移が成功した。ここはもう、あの地獄じゃない。世界一安全な、メルクリウス聖神国神都だ。


「勇者様、それにゲイル様にヘレナ様っ………!?どうなさったので!?」

「デューゲン様やハサド様は………」

「ここにいる三人以外、全滅よ………早く、回復魔法の使い手を、ありったけ呼んできなさい………!特に、ゲイルは今にも死にそうなの………!」

「か、かしこまりました!!」


 どうやら俺は………生き延びたらしい。

 仲間を犠牲にして、覚醒までして、それでもヨミには及ばなかった。

 もう安全だとわかると、その現実が、俺の頭を蝕んだ。


「勇者様………?勇者様っ!」


 そして俺は、安心と後悔、敗北感と屈辱の中で、意識を手放した。

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、流石に初回遭遇で3度も勇者を仕留めるのは都合が良過ぎますよね 勇者の命はイスズ様の見立てどおりなら半年··· でもまた何かしらインチキな事をしてきそうだ
[一言] ゼノくんほんと早くおっちんでくれんかな
[良い点] 流石に今回の戦闘では死なないと思ってたけどやっぱり生き残ったか(チッ! まぁいずれ来るその日まで楽しみに待ってます(ニッコリ [一言] これからも頑張ってください
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