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転生吸血姫と元勇者、人類を蹂躙する  作者: 早海ヒロ
第五章 魔王誕生編
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【episodeZero】成長

 十七歳になった私には、火急の問題があった。


 吸血鬼の里は今日も平和だ。いつも通り、何も刺激的なことが起こらない、退屈極まりない場所だ。

 かつて私は、そんなつまらない里に幾度となく刺激を与えてやったものだ。ついでにその度に私の尻や頭にも物理的な刺激が与えられたが。

 だが、十七にもなれば、流石の私のイタズラ.......もとい、天才的行動もなりを潜める。


 そしてそんなことは問題ではない。

 里に私という刺激が減ってしまっただけのこと。

 そんなことよりも問題は.............



「.............何故、私は育たない!?」



 私の外見だ。


 吸血鬼は長命種であり、千年の時を生きる。伝説に語り継がれる『始祖』や『真祖』などは、万年の時を生きたとすら言われている。

 そして長命種の特徴の一つに、『半不老』というものがある。

 人間や獣人のような短命種は、十代、二十代を全盛期とし、そこから老化して徐々に衰えていく。

 だが、長命種は外見も中身も、ある一定の年齢になった瞬間にそこで固定される。

 固定される年齢は個人差があるが、固定されたら、その後の寿命の殆どをその状態のまま生きる。

 そして、寿命を迎える一年程度前になると、体の中身が急激に衰える。外見は変わらないが。

 見た目は変わらないのに老人同然となるというわけだ。


 さて、ここで問題になるのが『年齢の固定』だ。

 これには個人差・種族差があり、例えば魔人族は十七〜二十五程度、エルフ族は十二〜四十程度。

 そして吸血鬼族は十四〜三十程度だ。

 とはいえ、ここで十四や三十になるのは非常に珍しい。大抵の者は二十歳前後で半不老となる。

 .......なのに。


「どおおおおして、私は育たないんだあぁぁぁぁ!!」


 本日二回目の叫びだ。

 腹の立つことに、私の半不老は十四歳になった瞬間に来てしまったのだ!


 クソっ、何故こうなった。

 予定では、丁度今頃半不老となり.......ナイスバディな金髪お姉さん系吸血鬼になって、今までの私のイタズラ.......じゃねーや、天才的発想に基づく実験を幾度となく邪魔してきたアホ共をメロメロにした後にこっぴどく振るという、最高の嫌がらせを敢行しようと思っていたのに!!


「あ、フィリスちゃーん!」


 憤る私に駆け寄ってきたのは、私の親友であるリンカ。

 リンカが半不老を迎えたのは一年前。身長は私とさほど変わらないが、間違いなく、成長している部分があった。

 そう、即ち.......


「おまたせー!ごめんね、遅くなって.......」


 ブルンブルンッ。


 .............。


 何だこの胸は。止まった瞬間に若干揺れたぞ。

 身長や童顔も相まって、ロリ巨乳と言うのがまさに相応しい外見となったリンカは、今や里中の独身男共が注目している。

 本人曰くHカップらしいその胸は、まさに私が欲していたものだ。

 まさにおっぱいいっぱいゆめいっぱい.......。


「ぬああああああああああ!!!」

「きゃああああ!?ちょっ、フィリスちゃん、何いい!?」



 ※※※



「もお、フィリスちゃんはこれを羨ましがるけど.......これ、いいものじゃないよ?肩は凝るし邪魔だし.......」

「巨乳は皆そう言うんだ。そう言うやつは、貧乳の気持ちを考えたことがないやつだ」


 生きとし生ける全ての巨乳に災あれ。

 女神イスズ様、世界中の巨乳に天罰を。


「あげられるならあげたいくらいだよ.......」

「私だって貰えるなら貰いたい。.......そうだ、名案を思いついたぞ。まず、私がお前の乳をもぎ取る。そして私にくっつける。そこで回復魔法を唱えれば、私に巨乳がくっつくのでは.......」

「無理だと思うし、そこまでして欲しい!?」


 そこまでして欲しい。


「まったくもう、フィリスちゃんは.......お菓子奢るから落ち着いてよー」

「お菓子如きで釣られると思うな。あー、巨乳を見ると怒りが込み上げてくる。巨乳が妬ましい。Gカップが欲しい。何の苦労もせずに巨乳が欲しい。巨乳で男を釣って盛大に振りたい。お前のその巨乳食ったら私も巨乳になるだろうか。全ての巨乳は貧乳の前にひれ伏すべきだ.......」

「七つの大罪コンプリートしちゃった!」


 まあ、奢ってくれると言うなら貰っておこう。

 というわけで私達は、里に唯一あるお菓子屋に来た。


「いらっしゃい!リンカちゃんに.......フィリス」

「おい、なんで言い淀んだ。なんで私にはちゃん付けしない」

「さ、さあ、今日は新作があるよ!見てって見てって!」

「わー、美味しそー!フィリスちゃんどれにする?」

「その前に質問に答えてもらおうか。なんで私を見た瞬間に一瞬、げっ、とでも言いたげな顔をしたんだおい」

「もう、フィリスちゃん!」

「.......むう」


 リンカに怒られるのは私の本意じゃない。大人しくしておこう。そしてこの男には後で報復をせねば。


「.......私はこの、イチゴのマフィンにする」

「分かった!.......んー、私はどうしようかなー」

「そこのミカンのケーキとか良いんじゃないか?」

「あ、美味しそう!.......んー、でも、こっちも捨て難い.......」

「まあゆっくり選べ.......ん?」


 菓子屋の男の様子がおかしいな、何やら顔を赤らめて下品な顔をしている。

 その男の目線の先を追うと、そこには、並んでいるお菓子を俯いて見つめるリンカの.......


「.......おい貴様、天才的観察眼を持つ私の目の前でリンカの胸を観察とは良い度胸だな」

「えっ?」

「んなあっ!?なななななんのことだ!?別に見てねえし!?」

「その取り乱しが何よりの証拠だこのロリコンめ!そして、何より腹が立つのは、私には目もくれないところだ!」

「そこかよ!?」


 そこだ!

 ただでさえ、さっきの巨乳談義で気がたっているというのに、こーんな美少女な私には見向きもしないなど!


「.......ふん、リンカをガン見するのは私の特権だ。だから見るなこの変態。.......その代わり、私ならいつでも見て構わんぞ?どうだ、将来性に期待するという意味でも、私を見る方が有意義だろ?」


 風の噂で、胸は見られると成長する.......なんて話を聞いた事がある。

 じゃあ、視線を集めれば、私は今からでも巨乳になれる!

 どうだこの天才的発想.......


「.......ふっ」


 今、鼻で笑ったかこいつ。


「お前、もう半不老だろ。それ以上成長なんかしねえよ。そもそも、お前に散々迷惑かけられたやつが多いこの里で、お前をそういう目で見るやつなんているわけが.......」

「リンカ、こいつを抑えておけ。今からこの男の恋人の顔に、消えにくい墨で『私の彼氏はリンカちゃんのお胸をガン見しました』と書いてきてやる」

「おいやめろ、俺が悪かったからマジでやめろよ!てか、なんで俺の彼女のこと知ってるんだよ、隠してるのに!.......ああ、本当に待ってくれ、彼女も変な目で見られるし里の皆にも軽蔑されるし、最悪じゃないか、ちょ、やめっ.......やめてくださいフィリスさん!!」



 ※※※



 今言った文面を書かれたくなければお菓子もっと寄越せ.......と脅して、大量のお菓子をタダで巻き上げ、私とリンカはささやかなパーティーを開いていた。


「ふふふ、美味しいねー」

「そうだな。タダで食うケーキは最高だ。他人の不幸は蜜の味とはこのことだな」

「もう.......ところで、さっき少しの間いなくなってたけど、どこに行ってたの?」

「あの菓子屋の男の恋人のところだが。首トンで気絶させて、起きる前に顔にちょちょいと.......」

「書いてきちゃったの!?.......フィリスちゃん、嘘ついたの?フィリスちゃんは昔からイタズラっ娘だけど、嘘だけはつかないって、里では言われてるのに.......」

「何を言うか、私とて今まで嘘をついたことが無いのが自慢だ、嘘など言ってないぞ。さっき私はこう言ったんだ、『今言った文面を書かれたくなければ』と。さっき言った私の文面は、『私の彼氏はリンカちゃんのお胸をガン見しました』だ。だからそれは書かず、『私の恋人はリンカちゃんの巨乳をつぶさに観察したド変態です』と書いてきた。最初に言った文面は書いてないだろ?私は嘘はついてない」


 流石私、流石天才。

 嘘はつかず、回答を微妙にずらして本当のことを言いつつ、お菓子はせしめてリンカを性的な目で見たあの男にも報復出来る。

 しかも私が嘘をつかないのは有名だから、顔に書いてある言葉も真実と分かる。

 完璧だ。


「もー.......そんな屁理屈.......」

「屁理屈ではない、天才的思考に基づく知的な行動と言ってくれ。.......さあ、そんなことはどうで良いから、菓子を食うぞ」

「えー.......大丈夫かな、お菓子屋のお兄さん.......」


 そう言いつつもリンカも菓子に手を伸ばし、私達は日が暮れるまで菓子を堪能した。



 ちなみに菓子屋の男だが、例の文面のせいで彼女にフラれたらしい。そのせいで私は店を出入り禁止になったが、『リンカを性的に見るとフィリスの報復が返ってくる』という話が出回って、リンカを下品な目で見る男はいなくなった。結果オーライ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] > かつて私は、そんなつまらない里に幾度となく刺激を与えてやったものだ。ついでにその度に私の尻や頭にも物理的な刺激が与えられたが。  この表現好きw > 「お菓子如きで釣られると思う…
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