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お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話  作者: 湯島二雨
第14章…初体験までが長い

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ラブコメ世界では偶然ではなく必然




―――




 海でのアルバイト、2日目。

初日から柚希のポロリを二度も目撃してしまい、エロの海底に沈没してしまった俺であるが、何があろうとちゃんとバイトはしなければならない。


俺、このバイトが終わったら柚希とエッチするんだ……


なんか死亡フラグみたいになっちまったが、とにかく柚希とエッチできることになってやる気もモチベもMAXになっている。


とにかくこの1週間、超頑張る。たとえ手足がちぎれても頑張る。手足がなくても柚希を愛せる自信あるからな。


おっと、すぐにバカなことを考えてしまうな。集中しろ集中。



 午前9時、柚希が更衣室で水着に着替えているのを待つ。昨日と全く同じ。


「お待たせ~!」


「!」



柚希は今日もビキニを着てくれた。

昨日とは色が違う。今日は黒ビキニだ。黒も似合っててエロくて可愛い。


今日も海の監視員のバイトを行う。昨日と同じように黒ビキニの柚希も一緒にいてくれる。



 午前11時頃、3人の男が女の子をナンパしている現場を目撃した。


「お嬢ちゃん、ちょっと俺たちと遊ぼうよ」


「はわわ、すいません、今連れを待っているので……」


「別にいいじゃんちょっとだけだからさ」


「やめてください……」


女の子が断っているのにしつこくナンパしてやがる。あれはダメだな、迷惑行為だから注意しないと。ああいうのを注意するのも監視員の仕事なんだ。



「すいません、ナンパする行為はご遠慮ください」


「あぁ!? なんだてめぇは!?」


俺が注意したらすごい形相で睨まれた。まあナンパやめなさいって言われてはいごめんなさいって素直に引き下がるなんてことにはならないよな。


ナンパ男たちは俺を見る時は般若みたいな顔をしていたが、隣にいる柚希を見て目の色をガラッと変えた。



「おおっ、そっちのお嬢ちゃんもめっちゃ可愛い! 俺たちと一緒に遊ぼうぜ!」


「えっ? いや、その……」


俺がいるにも関わらず男たちは俺を無視して柚希をナンパする。柚希は困惑する。


ターゲットを柚希に変更しやがったのか? 柚希に色目使ってんじゃねぇよぶっ殺すぞ。……いや落ち着け、できる限り平和に解決したいぞ。周りに人もいっぱいいるしあまり騒ぎになるようなことはしたくない。



グイッ


「あの、この子は俺のなんで」


俺は柚希の肩を抱いて引き寄せて、男たちに睨みを利かせてそう言った。

男なら一度は言ってみたいセリフだ。昨日はこうしてれば男はほとんど寄ってこなかったが、今回はどうか。



「なんなんだてめぇ、うぜぇな殺すぞ?」


男たちは強い殺意を俺にぶつけてきた。前世の俺だったらビビって漏らしてただろうが、今回の俺は一味違うぞ。



バシャバシャバシャ!


「うわっ! 何しやがるてめぇ!」



男たちは怯んだ。俺は海水を男たちにぶっかけまくった。

栗田柊斗がもともと持っている身体能力と、山で修業して鍛えた能力で凄まじい速度で男たちに海水をぶっかけ続けた。他の人にかからないように気をつけながら、ナンパ男たちの顔に的確にかかるように腕を振りまくった。



「さっさと失せろ。失せないなら半永久的に海水をかけ続けてやる」


バシャバシャバシャバシャ


「わっぷ、なんだよこいつ……チッ、もう行こうぜ」


ナンパ男たちは去っていった。やった、追い払えたぞ。

腕を全身全霊でぶん回したから疲労もすごいけど、柚希を助けられたからそれですべてよかった。



「ありがとう、柊斗」


柚希がいつも必ずありがとうって言ってくれるから俺はいつだって全力で頑張れる。

あ、そうだ、元はと言えばナンパされてた女の子を助けたんだった。



「あの……助けてくれてありがとうございます、()()()()


「いえ、監視員の仕事なんで礼には及びません……

…………って、えぇ!? 木虎さん!?」



ナンパされてた女の子は桃香だった。ずっと柚希を意識してたもんで、今になってようやく気づいた。そういえば『はわわ』とか言ってたな……あまり派手ではない水着を着た桃香の姿がそこにあった。



「木虎さん、どうしてここに……?」


「友達に誘われて、今日から2泊3日で旅行に来ました」


「旅行って、もしかしてそこのホテルに泊まるの?」


「はい、そうです」



マジか。俺がバイトする場所と同じところに旅行に来て、ホテルまで一緒なのか。

まあ、海に来てたまたまヒロインと会った……みたいなのはラブコメじゃわりとよくある展開か。



「こんにちは木虎さん」


「はい、こんにちは武岡先輩」


「ここで会えるなんて奇遇だね!」


「はい、そうですね……」



柚希と桃香が偶然会えたみたいな会話をしてるけど、桃香と会ったのは偶然じゃなく必然だな。

ラブコメ世界の神がそうさせた。この世界に働く謎の力で、主人公がどこに行って何をしててもヒロインと巡り会えるようになってるんだ。


昨日も梨乃に会ったし、今日桃香に会う展開が来るのもラブコメ世界ならおかしくないというわけだ。


今回桃香と会うイベントが来たのはちょうどいいかもしれない。

俺と柚希が付き合ってから桃香にはまだ会ってなかった。苺や梨乃とはちゃんと決着をつけた。あとは桃香だけなんだ。苺や梨乃に伝えたこと、桃香にもちゃんと伝えなくてはならない。



……しかし、柚希と話している時の桃香、穏やかに微笑んではいるが、目が笑ってないんだよな。そういえばヤンデレ化したんだった、超怖ぇ。


いや、怖がってる場合じゃねぇんだ。桃香がヒロインの1人である以上、放置せずにできるだけ早くハッキリと伝えないといけない。このイベントは避けられない。



「あの……木虎さん」


「はい?」


「俺、柚希と付き合ってるんだ」


「…………」



桃香の顔から笑顔が消え、沈黙が走った。一番怖いパターンのヤツだ。俺は冷や汗が出てくる。



「……はい、この前図書館で会って話した時から、お二人は付き合うんじゃないかなってなんとなく思ってました。

それからほどなくして、栗田先輩が小雀先輩と別れたって学校中でウワサになってて……それで栗田先輩は小雀先輩ではなく武岡先輩を選んだんだなって、理解しました」


「……その通りだ。俺は柚希がとても大切で、結婚を前提にお付き合いさせていただいている。だから……ごめん」



俺は桃香に頭を深く下げた。ごめん、って言うのはなんか違う気もするけど、桃香は内気で自分から告白することはないだろうから苺の時と同じように無理やり強引にフるしかなかった。


言うべきことは言った。あまり長い時間桃香と一緒にいるのも申し訳ないのでさっさと柚希と一緒に離れることにした。



「……はい、栗田先輩がそう決めたのなら、私はそれを尊重します」



立ち去る瞬間、桃香は俯いたまま、小さい声でそう言った。


「ありがとう」


俺はそれだけ言ってまた頭を下げ、柚希と一緒に立ち去った。




「柊斗……」


むにゅっ


「っ……!」



桃香と別れた後、いつも甘々な柚希だが今は特に激甘モードで甘えてきてくれていた。

周りに人がいっぱいいるのもお構いなしで腕を絡めて抱きついて、豊満な胸もいっぱい押し当ててくれている。当然俺の内部は欲情しまくっていた。



「さっきナンパしてた男の人たちにも木虎さんにも、私が柊斗の彼女だってことをちゃんと言ってくれたのがすごく嬉しくて、私幸せ……」


「そうか、柚希が幸せなのが俺も幸せだよ」



桃香は尊重すると言ってくれた。これでちゃんとヒロインレース決着……だよな?

これで他のヒロイン3人とも、無事にケリをつけられたってことでいいんだよな?

でも桃香がヤンデレ化したのが気がかりなんだよな……ヤンデレの片鱗を見せていたのにこれだけであっさり終わるとは考えづらい……


まあ、そんなこと考えてても仕方ないか。俺がやるべきことはもうやった。

俺にできること、あとは柚希を愛することだけだ。


今までいっぱいいっぱい愛してきたが、まだまだだ。これからもっともっと愛するんだ。


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