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お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話  作者: 湯島二雨
第12章…俺は海で働く

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海の監視員の仕事②




―――




 俺と柚希は海の堤防を歩き、そこそこ深い場所まで来ていた。

海の監視員として人命救助をしなければならない可能性もあるので、少し泳ぐ練習をしようと思っている。

栗田柊斗は泳げると思うが、俺自身は前世で超カナヅチだったので試しに泳いでみないと不安なのだ。



「柚希、俺はちょっとこの辺泳いでみるから」


「うんわかった。私は全然泳げないからここで待ってるね」


柚希も泳げないのか。気持ちはよくわかるぞ。なんかこう、水が怖いんだよな。

柚希は堤防に座って見守ってくれている。ここはかっこいいところを見せたいな。

よし、覚悟を決めて着水!



―――深い!

足がつかない。これは泳げないと溺れる。

前世で泳げなくてバカにされた記憶が蘇る。トラウマで足が凍りそうになる。



「柊斗、大丈夫?」


「っ、大丈夫だ!」



柚希に心配かけて情けないぞ。俺は監視員だ、困ってる人がいて泳げませんでしたじゃ済まされねぇんだぞ。ここは泳がなくてはならんのだ。


よし、落ち着いて泳ぐぞ。とりあえずクロールを……



―――バシャ、バシャ


バシャバシャ、バシャバシャ!



―――よし、ちゃんと泳げているな。

俺、生まれて初めて()()というものを経験した。


サッカーや野球の時と同じように、俺が思っている以上にうまくできてて、できすぎてて頭がなかなか追いつかない。修業したとはいえやっぱり頭が少し痛んだ。

おそらくこの頭痛、軽減することはできてもなくすことはできない。自分の細胞がそう言ってる気がする。



「わーっ! 柊斗すごーい! かっこいいー!!」


柚希に褒められて元気が出た俺はさらに泳ぐスピードを上げた。

クロールだけじゃなく、いろんな泳ぎ方をやってみよう。



次はカエルのように平泳ぎする。


「柊斗かっこいいー!!」


次は背泳ぎをする。


「柊斗かっこいいー!!」


どんな泳ぎ方をしても柚希は褒めてくれた。

照れた俺はつい調子に乗って速く泳ぎすぎてしばらく続くような頭痛を引き起こしてしまった。

まあいい、柚希に褒めてもらえるなら多少の頭痛など何てことない。




 ―――よし、しばらく泳いで柊斗の水泳能力に俺の頭が慣れてきた。

これでいつでも人命救助ができる。どんなトラブルが起きても慌てないように準備はできた。


じゃあ、そろそろ海から上がろうかな、と思った時だった。



「……!?」


俺のすぐそば、海中に白い影が見える。

ゆらゆらと儚く揺れている。なんだこれは。俺は少し近づいてよく見た。


これは、クラゲだ!

1匹や2匹じゃない。周りをよく見るとけっこういる。いつの間にか俺の周辺はクラゲフィーバーが起きてやがる。慌てないように準備をしたと言ったそばから俺はビビりまくってしまった。


海の流れに乗って、海水浴場に侵入している。あまり詳しくはないが毒を持ってるクラゲもいるだろう。これはまずい。このままじゃどんどん侵入してきてお客さんが大ピンチになる。監視員の俺がなんとかしなければ。



「柚希! 絶対に海に入るなよ! 危険だ!」


「え? 私泳げないから別に入るつもりはないけど……どうかしたの?」


「クラゲだ! クラゲがいっぱいいる!」


「クラゲ!? 柊斗も上がりなよ! 危ないよ」


「俺は監視員だから逃げるわけにはいかない。増援を呼ぶにも時間がかかるし、俺にできることはやる」


「柊斗……!」


「大丈夫! 無理はしないから心配するな」



柚希は心配そうに堤防から俺を見守る。

柚希を危険な目に遭わせないというのは当たり前だが、俺自身もちゃんと守らないとな。柚希を悲しませたくない、すぐに安心させたい。


幸いまだ深いところにしかいない。お客さんがいっぱいいる浅瀬にはまだ入ってきてない。俺がここでクラゲ軍団を沖に追い返してやる。



俺は海面から顔を出し、足を必死にバタバタと動かして立ち泳ぎをする。

クラゲが出た時どうすればいいのかなんて全くわからない俺は、クラゲに触れないように気をつけながらクラゲと対峙する。


俺は、動物に嫌われている。俺が近づくと避けられる。それは時と場合によってはかなり役に立つスキルになるかもしれない。ライオンを檻に誘導したように、今回もクラゲを沖の方に誘導できるかもしれない。


さあクラゲ、俺を見ろ! 俺が気持ち悪くてイヤだろう! さあ、俺から離れろ。俺を避けて海の向こうへ帰るんだ!



…………


……


俺が立ちはだかっても、必死に向こうに行けと祈っても、クラゲはゆっくりゆっくりと近づいてくる。残念ながらクラゲが引き返すことはない。


バカな……俺のスキルが無効だと……全生物に有効なのではなく、虫には効果ないのはわかっていたが、クラゲもダメなんか……なんでこういう時に限って役に立たないんだ、俺のスキル無能すぎる!


いや……そうか、クラゲは自分の意志で泳いで来てるわけじゃない、水流に身を任せて漂っているんだ。帰れって言われても帰るわけない。仮に俺を嫌がって帰りたがっていたとしてもそう簡単には帰れない。



海の流れが海水浴場に向かっている……だからクラゲはこっちに来ている。

ならば海の流れを逆にすれば沖に流されていくんじゃないか!? アホみてぇな脳筋戦法だが、俺にできることはそれくらいしかない。栗田柊斗の身体能力でなんとかなるかもしれない。



「はああああああ!!!!!!」


俺は相撲の突き押しのように手のひらで海中を突きまくる。突っ張りまくって突っ張りまくる。衝撃波を撃つ感じでひたすら撃ち続ける。


クラゲが若干揺れて、流れが少しだけ反対に向かうようになる。

よし、いける。もっともっと根性で頑張ればクラゲを追い返せる。体力消耗がすごく激しくてかなりしんどいけど海の圧力に負けない。



「ああああああ!!!!!!」


グググ……


「ああああああ!!!!!!」


ググググググ……



本当に少しずつだが、海流が反対になっていく。クラゲたちは沖の方向へ流れていく。


なんとかクラゲを追い返すことができた。海水浴場でクラゲ発生パニックみたいなアクシデントを事前に防ぐことができた。



「はぁ、はぁ、はぁ……っ! ぜぇ、ぜぇ……」


俺はなんとか堤防に上がったが、体力が限界だった。足で泳ぎまくり、腕で衝撃波を撃ちまくったからプルプルと筋肉が痙攣している。



「柊斗っ、大丈夫!?」


倒れかけた俺の身体を、柚希は胸で受け止めてくれた。


「柊斗、すごいね……! なんかよくわかんなかったけどクラゲを追い返しちゃうなんて……お疲れ様、しばらくこうしてていいよ」


ぎゅっ


柚希は俺の頭を優しく抱きしめてくれた。


「……っ……あ、ありが、とう……」


柚希の柔らかい乳房に顔を埋めて、すごくいい匂いで、すごく癒されて、俺の体力はすごい勢いで回復していった。


……というか……柚希は今ビキニだから、俺の顔と柚希の乳が直接密着してるんだよな、これ……

透き通るように白くて、ピチピチで、張りがあって、谷間のラインも美しい曲線で、俺の顔がふにって沈むくらい柔らかくてでかくて……


俺ついさっきまで瀕死だったはずなのにもうすでに元気いっぱいに……細胞の動き、血液の流れが超活性化しているのを感じる。当然のように男の部分も血の巡りが大変よろしくなって充血しまくってしまった。


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