ビキニ姿の柚希は俺を悩殺する
―――
―――ザザーン……
ザザーン……
夏休みだ。快晴だ。海だ。俺は海に来ている。
店長さんの紹介で、俺は海水浴場でバイトをすることになった。
海でバイトといえば、漫画やアニメでありがちな海の家だけど、俺はこの海で監視員のバイトを1週間くらい住み込みでやることになっている。
店長さんの友人がすぐそこのホテルを経営していて、そこに泊まることができる。
監視員か、確かに身体能力や体力がかなり重要になってくる仕事だ。
不安要素がある。俺は前世じゃ全く泳げなかった。栗田柊斗はたぶん泳げると思うが、大丈夫かな。
まだ午前9時だが、もうすでに客は多く来ていて、かなり暑い。さすが夏。
柚希も客として一緒に来てくれた。今、柚希は更衣室で水着に着替えている途中で、今から心臓のドキドキが尋常じゃなくなっている。
前世の分も合わせて人生で最も時の流れが遅く感じる瞬間であった。とにかく柚希の水着姿が見たくて仕方なくて、柚希早く来てくれと心から願う。
女の子は準備に時間がかかるから急かすのはよくないがそれでも俺はそわそわを止められない。
「柊斗~っ、お待たせ~!」
!!!!!!
き、来た……!!
背後から聞こえてきた柚希の可愛い声。声を聞くだけでわかる、すごく楽しそうな柚希の声。
心臓が口から出そうなほどバクバクさせながら、俺はゆっくりと振り向いた。
「……!!!!!!」
そこには間違いなくビキニを着た柚希の姿があった。手を振りながら笑顔でこっちに走ってくる。
ビキニだ……しかも紐ビキニだ。純白の白ビキニ。何のひねりもない、超シンプルでド直球で王道の白ビキニだ。
走ってるから揺れている。たわわな乳房がたゆん、たゆんと暴力的に揺れている。
眩しい生足、くびれのあるウエスト、そしてでかい胸……
ビキニから横乳が少しだけはみ出しているのが、俺の股間に刺さりすぎる。俺を絶対にぶっ殺す兵器としてあまりにもスキがなさすぎる。
ビキニ姿の柚希を見て、俺は心停止した。心臓というか指先まで全細胞が停止した。
彼女が魅力的過ぎて俺のすべては一瞬動けない。
俺の心臓にはすでに何本も柚希の矢が刺さってるはずなんだが、今回の矢はとにかく太くて長くて、矢というより巨大な丸太となって俺の心臓を粉々に打ち砕いた。打ち砕かれた心臓はボッと燃やされて、溶かされる。
心停止したのは嵐の前の静けさで、次の瞬間にはかつてない強さと激しさの脈動が心臓を酷使した。
「ど、どうかな……? 似合う?」
俺の目の前に立ち、髪を耳にかけて、頬を赤らめながら上目遣いで俺を見つめてくる。仕草もパーフェクトに可愛い。お色気要員だった柚希は何をやっても色っぽいし艶かしい。
「あ、あっ、えっ、あ……あっ……」
俺は限界オタク丸出しでまともなことは言えずあわわわわわな反応しかできなくて超見苦しい。俺気持ち悪すぎて悲しい。
唇、谷間、おへそ、太ももがこんなに俺の近くに……視線を上げても下げても、どこを見ても素晴らしくて悩ましくて狂わされる。ずっと童貞だった俺には刺激が強すぎて耐えられるわけがない。
―――スッ
まともに話せない雑魚の俺は柚希に跪いて両手も砂浜についた。砂浜熱いけどしっかりと手をつく。
「? どうしたの柊斗?」
「いや、その……あれだ。水着姿の柚希が可愛すぎて俺の頭が高すぎると思って。もう、跪くしかないなと思って」
「何それ? もう、大げさだよ柊斗」
「大げさじゃない。すごく似合ってる。綺麗だよ柚希」
「っ……あ、ありがと……」
柚希は俯いてすごく照れる。だから可愛すぎるって。そんなに大胆な水着を着てそんなに恥ずかしそうにしてるの無敵の女の子すぎる。
「……その、柊斗。褒めてくれるのはすごく嬉しいけど、跪かなくていいんだよ? これじゃなんか私がキミを謝らせてるみたいじゃん。ね、立って」
柚希は俺にスッと手を差しのべてくれる。なんともったいなきお言葉。
俺は柚希のしなやかな手を握る。しかし、立てない。
「? 柊斗?」
「……ごめん、今はちょっと立てない」
「どうして? どっか痛いの?」
「違うそうじゃない。元気すぎるくらい健康体なんだけど……その……元気すぎて立てないというか……」
俺が跪いたのは水着の柚希を崇めたいってのもあるんだけどもう一つ理由があるんだよ。
「? どういうこと?」
きょとんとした表情の柚希がさらにズイッと距離を詰めてくる。膝に手をついて前かがみ体勢で上目遣いで覗き込んでくる。
わーっ! 近い近い!!
豊満な双丘と谷間が俺の目に近すぎる!! 前かがみで谷間がより強調されている!!
ヤバイ、これは男としての問題でガチでヤバイ。海パンだからもっこりしてるとバレやすくてかなりピンチな状態だ。
「ねぇ、立たないの?」
「ッ……!!!!!!」
いやその……立てないけど勃ってるんだよ。必死に我慢してるけど一部が破裂寸前なんだよ。
『立たないの?』っていう言葉がもうそっちの意味にしか聞こえなくて、『勃ってるに決まってるだろ!! 勃たないわけねぇだろ!!』って声にできない叫びが心の中に空しく響いた。
まあ仕方ないよこれは! 好きな女の子の水着姿で勃起するのは普通だし健全だよ! 不可抗力だよ! 恥ずかしくないよ! って必死に言い聞かせるけど、純真無垢な瞳で見つめられて余計恥ずかしくなる。
これ柚希に気づかれてねぇのかな……俺の動きがあからさまに不自然でバレバレな気もするが柚希はピュアだしこういう下ネタに疎いところあるからな。お色気キャラだけど本当に純粋なんだ! これだけえちえちボディしてるのに内面はあどけないんだ! そういうところも好きなんだ! そのままの純粋な柚希でいてほしいものだ。
柚希は不自然な俺を見ても怪訝に思うような素振りも見せず、クスッと穏やかに笑った。
「そっか、よくわかんないけどそれなら私も跪こうかな」
「は!?」
柚希は俺の隣に跪き、俺と同じようなポーズをする。
「あはは、柊斗のマネ」
「ッ……」
俺のマネして満面の笑顔を見せる柚希が愛しすぎる。夏ということを考慮しても俺の顔面は異次元に熱くなっている。
跪くポーズのビキニの柚希もすごく刺激的で魅惑的で、両手を砂浜についた時のむぎゅっと寄せられた悩ましい谷間が……もう……張り裂けそうにたまらなくて……
ああ、ダメだ。好きすぎて溶けてなくなりそうだ。
「わっ、砂が熱いね」
「大丈夫か!? 火傷してないか!?」
「大丈夫大丈夫! ほら」
ピトッ
!!!!!!
柚希の手のひらが俺の上腕部に触れる。さりげないボディタッチに俺の心臓がまた握り潰された。
水着の彼女……何度俺を悩殺すれば気が済むのだろうか。俺はあと何回死んだらいいんだ。
「ねっ、火傷するほどじゃないでしょ?」
にひひとからかうような表情の柚希。俺はキミのすべてに火傷しているよ。




