彼女の胸の中
広げられた両腕。
聖母のようなすべてを優しく包み込む穏やかな笑顔。
そして俺を誘惑する豊満な胸。
男が望むものすべてを詰め込んだような柚希の姿が俺を誘う。
飛び込むかどうか、頭で考えるより先に身体が動いていた。
好きな女の子の胸に抗えない本能で、俺は反射的に動いて柚希の胸に飛び込んだ。
むにゅん
俺の顔面を埋め尽くすのに充分なボリューム感、張りのある柔らかさ、そしてめちゃくちゃいい匂いがする。柔らかい感触もいい匂いも、俺の股間にズキュンと刺さる。
永遠に柚希の胸に甘えていたい……
―――ハッ!
本能と勢いでつい柚希の胸に飛び込んでしまったが、柚希は『おいで』としか言ってない。なのに胸に飛び込むどころか埋め込んで擦りつけてしまった。
いくら優しい柚希でもこれはドン引きされたのでは……これだけ本能と本性を剥き出しにしてしまったら、普通は気持ち悪がられる。
やっちまった。今のなかったことにできないだろうか……
ぎゅっ
「……!」
しかし、こんな気持ち悪い俺でも柚希は優しく包み込むように俺の頭を抱きしめてくれた。
聖母だ……マジで聖母だ……
こんな気持ち悪い俺でも慈しみ、天使のいる楽園に導いてくれる。
気持ちいい……どんな傷でも癒してくれる気持ちよさ、心地よさだ。
今日の俺に起こった出来事、そのすべてを優しく癒すこと、補って余りある。
ナデナデ
「……!!!!!!」
さらに、俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
これにより天使の楽園からさらに天空へと誘われていく。
「よしよし、大変だったね柊斗……私がついてるから大丈夫だからね……」
「ゆ……柚希……!」
俺は泣きそうになったのを堪える。代わりに心の中で大号泣する。
学校イヤだなぁと思っていたけど、今この瞬間不安や悩みみたいなものは欠片も残さず消し飛び、心には雲一つない晴れ晴れとした空が広がった。
俺が単純だというのもあるが、柚希の胸がすごすぎる……
柚希の胸があれば世界が平和になると俺は確信した。
ナデナデ
俺の頭を撫でる柚希の手もしなやかで柔らかくて気持ちいい……
ナデナデ
心を暖めてくれる……
ナデナデ
…………
「……えっと、柚希?」
「なーに?」
「その……ずっと撫でてくれるんだな」
「柊斗がもういいよって言うまで撫でてあげようかなって思って」
「そんなこと言われたらいつまでももういいよって言わないかもしれないぞ?」
「うん、それでもいいよ」
「いいのかよ……」
本当にもういいよって言わないぞ? どれだけ撫でられてももういいなんて微塵も思わないからな。
しかしいつまでも撫でてもらってたらさすがに迷惑だろうと思いそろそろもういいって言おうとした。
「あ、そうだ!」
言おうとした瞬間、柚希は何かを思いついたように両手をパンと叩いた。
「膝枕でよしよししてあげるよ!」
「ッ!?」
柚希はソファに座り、太ももをポンポンと叩いて俺を誘った。
「ホラ、おいで柊斗」
「……!!!!!!」
ミニスカートに、ピチピチの白い太もも。
そこに俺の頭を乗せる許可をしてくれた。
勢いのまま太ももに滑り込みたい衝動を必死に抑えながら、慎重にゆっくりと緊張しまくりながら柚希の太ももに後頭部を乗せた。
「どうかな?」
「すごくいい」
「ふふっ」
草野球の時もしてもらった膝枕。
そういえば今日も軽く頭痛がしていたがスーッと痛みが鎮まってきた。
膝枕されながら、またよしよしと頭を撫でてもらった。なんという贅沢な時間だ。
膝枕とよしよしの合体技がここまで最強だとは……
その合体技に豊満な下乳まで合わさってくるからな。スキがない無敵のチートだ。
今の柚希は露出が少ない服を着ていて胸元が空いているというわけでもないけど、だからこそのエロスが俺の目の前にある。膝枕で眺める着衣巨乳が最高すぎる。
「柊斗、どこ見てるの? エッチ」
「ッ……ごめん」
「別に謝る必要はないけどさ。私はキミの彼女なんだし、私の胸を見るくらい大したことじゃないし」
いや大したことありすぎるんだよそのたわわな双丘は。
豊かな膨らみの間から俺を覗き込み、クスクスと妖艶な笑みを浮かべてくる。オトナのお姉さんの余裕を見せつけられ、俺のすべては悩殺された。
もうすでに悩殺されてるんだが、柚希の誘惑は止まらない。
俺が柚希の胸を気にしているのをわかった上で、両手で下から乳をグイッと持ち上げてきた。妖艶に微笑したままで。
ちょっ、オーバーキルにも程がある。
柚希の両手に乗った乳が俺の股間にブッ刺さりすぎてちょっと内股になってしまった。
「柊斗、照れてるの? 可愛い」
「~~~ッ……!!!!!!」
照れるどころか勃たされたんだけど。
ちょっと悔しい。ちょっとだけ反撃したい。
オトナのお姉さんの余裕を見せつけてきているが、本当はポンコツなの知ってるんだからな。
ジーッ……
俺は柚希の顔をジーッと見つめた。お互いにしばらく見つめ合う。
「……っ……!」
柚希の顔は一気に真っ赤に染まっていき、ボンッと爆発したように照れた。
「柊斗……あんまり見ないでよ……照れるじゃん……」
赤く染まった顔をプイッと逸らす柚希が可愛すぎていつまでも見てても飽きない。
「柊斗、元気になったみたいだね」
「ああ、そりゃまあ……」
そりゃ元気になるわ。別のところも元気になってしまった。
「ふふっ」
わしゃわしゃ
「わっ、柚希……?」
柚希は俺の髪の毛をわしゃわしゃとしてきた。
「どうした柚希……?」
「ふふっ、柊斗が可愛くてつい」
俺が可愛い……? どこが……?
どこからどう見ても可愛いのは柚希なのに、俺が可愛いと言われるのはなんか釈然としない。
釈然としないけど、俺の髪の毛をわしゃわしゃする柚希の手が心地よくて、脳が蕩けそうだった。けっこう強くわしゃわしゃされているのになんでこんなに安らぐんだろうなぁ。
善郎に髪を引っ張られて痛んでいた頭皮も、柚希の手にかかればあっという間に癒されて回復していった。
―――
今日はずっと柚希とイチャイチャした。
いつも柚希とイチャラブしたいが、今日は特にイチャラブしまくりたい気分だったので望みが叶ってよかった。
柚希のおかげだ。柚希のおかげで救われた。柚希がいるから生きていける、頑張れる。
柚希は俺に救われたと言ってたけど、俺だって前世からずっと、いつだってキミに救われているんだ。
「そろそろ寝よっか、柊斗」
「ああ」
「あ、そうだ。その前におやすみのチューしない?」
「え!?!?!?」
「したくないならいいけど」
「いやする!! したい!!!!!!」
超必死な態度になってしまった。本当に余裕ねぇよな俺は。
まあこれは仕方ないだろ。したくないわけがないし、しない理由がなさすぎる。柚希とキスできるチャンス、死んでも逃したくない。
「柊斗……」
「柚希……」
チュッ
ドキドキしながら、熱くなりながら、柚希と唇を重ねた。




