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お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話  作者: 湯島二雨
第8章…推しとデート

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柚希とデート⑤

 柚希と動物園デートをしていた俺だったが、まさかのライオンとエンカウント。

間違っても戦って倒そうなんて思うなよ。そういうのは勇気とは言わない、無謀である。


安全第一、逃げた方がいい。背中を見せずにゆっくりと後ずさりすればいいんだっけ? いやそれはクマに襲われた時の対処法だったっけ……!?



「ガウッ!!」


「きゃっ!?」



うわっ、襲いかかってきた。しかも柚希を狙ってきやがった。

俺はとっさに柚希をお姫様抱っこして回避する。



「大丈夫ですか柚希さん!?」


「う、うん。ありがとう柊斗くん……!」



好きな女の子を助けてお姫様抱っこ。男なら誰もが一度は憧れるシチュだが今はそんなこと考えてる場合ではない。

一瞬たりとも気を抜くなよ。絶対に柚希を守り抜くんだ。前世の俺じゃ無理だったろうが、今は栗田柊斗の肉体がある。大丈夫。



「柚希さん、俺の後ろにいてください」


「うん……!」



柚希だけは絶対に守れるように庇いながらライオンと対峙する。

さあ来るなら来い。絶対に食われてやらねぇからな。



「…………」


「……?」



あれ、襲ってこねぇな。

柚希を襲いたいならまずは俺を殺してからでないと襲えない、そういう体勢にしたらライオンは動かないまま襲ってこなくなった。


俺はちょっと威嚇してみた。ライオンは少し後ずさる。


そうか、俺は動物に嫌われている。ライオンとて例外ではない。

俺が近づこうとすると、避けてくる。


よし、それならば……

勇気を出してさらに近づいていく。ライオンは俺と距離を置こうとする。


俺は襲われない……それなら……俺ならライオンを檻に誘導できるのではないか。

俺ならできるかもしれない……いや俺にしかできない。やろう。


細心の注意を払って、極度の緊張感でゆっくり、ゆっくりと近づく。

俺が一歩近づけば、ライオンが一歩後ずさる。よし、いける。油断するな、慎重に……


幸い檻からそんなに離れていない。ああ怖い。早く檻に戻ってくれと願いながらライオンを誘導する。



「ガルルル……」


ライオンはおとなしく檻に戻ってくれた。飼育員さんがすぐに檻の鍵をしっかり閉めてくれた。


ああ怖かった。漏らすかと思った。柚希がいるのに漏らしてたまるかと必死だった。



ワアアアアアア……!!


パチパチパチ……



!?

なんか歓声と拍手が沸き起こった。

いつの間にかお客さんがたくさん集まっててビビった。



「ありがとうございますお客様! あなたのおかげでライオンの被害が最小限に抑えられました!」


飼育員のお兄さんに握手された。周りの人たちからこんなに称賛されたの初めてで困惑しまくる。



「柊斗くんっ!!」


むぎゅっ


「わっ!?」



柚希に抱きつかれた。すごい勢いで抱きつかれてでかい胸が押しつけられる。

多くの人の注目を浴びてる前で発情しそうになってしまった。



「すごいね柊斗くん! ライオンさんを檻に戻しちゃうなんて!

まるでアニマルトレーナーみたいだったよ!」


「そ……そうですか……?」


「そうだよ! すっごくかっこよかったよ!!」


「~~~っ……」


柚希はいつだって太陽のような笑顔で陰がないよな……

それでこんな直球で褒められて俺は照れまくって何も言えなくなる。


周りのみんなは俺がライオンをビビらせて言うこと聞かせたみたいに思ってるのかもしれないが、実際はそうではないんだよな。

直接ライオンと対面した俺にはわかる。『きっしょ! 寄るな!』みたいな感じの目で見られた。ライオンは俺を恐れたのではなく引いてたんだ。ちょっと近づいただけであんなに嫌悪感示されるとはな……だいぶ心にダメージ来た。


まあライオンの反応がどうであれライオンを檻に戻せたのは事実だし結果オーライってことで無事解決できて本当によかった。




―――




 あっという間に時間が過ぎていき、閉園時間まであと10分くらいだ。

最後に見る動物はシマウマに決めた。


なぜシマウマかというと、この場所は夕日がとてもキレイだからだ。

美しい夕日を見ながらシマウマを見て今日の動物園デートを締めくくる。



「柊斗くん……すごく夕日キレイだね」


「そうですね……でも、柚希さんの方がキレイですよ」


言えた……めっちゃ緊張したが言えたぞ。


「もう、柊斗くんったら」


柚希は夕日に負けないくらい赤く染まってて、夕日に照らされて美しく輝いた。

可愛すぎる。ムードも最高だ。



「と……ところでシマウマはどこにいるのかな……!?」


柚希は照れてるのをごまかすようにシマウマを探し始めた。

俺も一緒になってシマウマを探す。


どこにいるんだ……シマウマすごく目立つはずなのに。どこかに隠れてるんだろうか……



「あ、いました」


「ホントだ」


思ったより近くにいた。シマウマを見て俺たちは一瞬停止した。



シマウマは交尾していた。



なんて間の悪い……いいムードができてたのに台無しだ。

いや、今日ずっと下品なことばかり考えてた俺に文句を言う資格はない。俺にはお似合いの光景だろう。


うわぁ、すげぇ激しい……

シマウマは人間に見られるのを慣れてるんだろうか、俺たちが見ていても全く意に介さず交尾に励んでいた。


なんか羨ましいななんて思ってしまった。

俺も柚希とああいうことヤりたい……なんて考えて、結局俺の頭は最後の最後まで下ネタだった。


うわっ!? シマウマのゾウさん長ぇっ!!

初めて見た。超驚いた……思わず叫びそうになってしまったほどご立派なモノを装備していたシマウマ。俺はちょっと敗北感を感じた。



チラッと柚希を見てみる。

柚希は微動だにしないままちょっと頬を赤らめていた。


はい可愛い。お色気お姉さんキャラなのにウブなところがある柚希もたまらなく好きで愛おしい。



「……す、すごいね柊斗くん……あんなにエッチなことしてる動物、初めて見たよ……」


柚希の話し方がさっきまでより色っぽくなってドキッと心臓が高鳴る。


「俺も初めて見ました……」


「私……ちょっとだけ対抗心燃やしちゃうかも」


「えっ!?」



対抗心!? 交尾に対抗するって、それってどういう―――



むぎゅっ


「ッ~~~!!!!!!」



柚希は俺の腕に腕を絡めて、しっかりと俺の腕を抱きしめてきた。

心臓の鼓動が爆速になる。



「これで密着度ならシマウマさんにも負けないよね?」


「っ……! そう、です、ね……」



確かに柔らかい胸の感触がすごい……これ以上ないくらい密着感を表現している。

ていうか感触がするどころか、柚希の谷間に、俺の腕が挟まれている……!!!!!!

俺の腕でパイスラッシュしている!!!!!!


そして俺の腕に、ぷにぷにのほっぺたをスリスリと擦りつけて甘えてきてくれた。


今の俺の心の中、ああああああああああああああああああ!!!!!! って感じだ。俺の心の中にいる俺はみんなお祭り騒ぎで狂喜乱舞している。ちょっとでも気を抜いたら内に秘めた俺がだだ漏れになってしまいそうで堪えるのが大変だ。

俺の下半身も今ヤバすぎる。男としてどうしようもないのでどうかそっとしといてください。


シマウマ……いやシマウマ様、マジでありがとうございます。俺、今この瞬間からシマウマ大好きになった。

シマウマ様のおかげでめっちゃカップルっぽいことができた。周りから見ればカップルに見えるよな俺たち……


今日のデートいろいろあったけど最後すごく良い感じで終えられそうだ。この動物園に何もかもありがとうって言いたい。



『まもなく閉園の時間となりました。本日もご来場いただき、誠にありがとうございます』


閉園を知らせるアナウンスが流れてきた。こちらこそありがとうございましたって拡声器で言いたい気持ちだった。


ああもう終わりか……柚希と一緒にいるとあまりにも楽しすぎて時の流れが早すぎる。死ぬほど名残惜しい。



「……ごめん、柊斗くん……もう閉園の時間だけど、あともうちょっとだけこのままでいいかな……? ねっ、お願い。ちょっとだけ……」


「ッ……! も、もちろんいいですよ!!」



夕日に照らされた美しい柚希に上目遣いでお願いなんてされたら断れるわけがないし断る気なんて微塵もない。

たとえ世界が終わっても柚希とずっとこうしていたいって心から願った。


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