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お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話  作者: 湯島二雨
第7章…俺は少し勉強ができる

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28/79

2人で小説を読んだら桃香がヤンデレ化した

 桃香が書いた小説を、俺と柚希の2人で読む。

この前読んだのと同じ、推理小説だ。だがこの前読んだ小説とはだいぶ雰囲気が変わっている。



「ん~……」


「大丈夫ですか柚希さん」


「だ、大丈夫……」


桃香の書く文章は高校生とは思えないくらい難しいからな。小説初心者の柚希が読むだけでも苦戦するのも無理はない。勉強より苦戦してるんじゃないか。スラスラ読めるようになれたら頭良くなれるかも……この小説は国語の勉強に役立つかもしれない。


苦戦はしているが楽しそうにワクワクしながら読んでいる。無邪気に夢中になってる感じで可愛い。



で、今回の小説の雰囲気の違いは……なんというか、恋愛要素があって人間関係がドロドロしている。

1人の男を複数の女が取り合っている。まるでこの漫画のようだ。激しいヒロインレースが勃発している。

1人の男もヒロインを選べなくて女タラシ糞野郎状態になっている。

ラブコメなら最終的に1人の女が選ばれたりハーレムになったりしてめでたしめでたし……となるところなんだがこれは推理サスペンスである。


痴情のもつれで殺人事件が起きてしまう。ヒロインたちに取り合われていた1人の男が包丁で刺されて殺害された。

犯人はヒロインたちのうちの誰かだ。犯人は誰だ!?


まさか桃香がヒロインレース殺人を書くとはな……桃香自身もこの漫画の世界でヒロインレースに参戦しているのだが、内気でなかなか行動できない。

でも小説の中でなら、桃香はここまですごい物語を表現している。心の中を、小説で出している。

この小説を読めば桃香の気持ちが見えてくるかもしれない。



容疑者のヒロインは4人。


1人目、ヒロインAはツンデレ系。

2人目、ヒロインBはクール系。

3人目、ヒロインCは内気系。

4人目、ヒロインDはセクシー系。



…………

やっぱりこの漫画、ヒロイン構成が『ツンデレお嬢様と幸せになる話』と同じじゃねぇか。

ヒロインAが苺、ヒロインBが梨乃、ヒロインCが桃香、ヒロインDが柚希をモデルにしてるだろこれ。確証はないけど読んでみるとヒロインの性格めっちゃ被ってるんだよ。


じゃあ、殺された男は柊斗か。

…………


えっ、俺殺されるのか!? まさかこれ……ヒロインの誰かに刺されて死ぬ未来を暗示しているのか!?

さすがに考えすぎか……? だがこの漫画の世界は改変が多くて原作ガチ勢の俺でも予測不能な展開が起こるからありえないとは言い切れない。なんか怖くなってきた。


ちくしょう、俺は柚希に一途なのに。二股も三股もかけてないのに、刺される筋合いなんかねぇぞ。

俺は絶対死なねぇぞ。柚希と幸せに生きるんだ。


こんな小説を書いている桃香がヤンデレに見えてきた。原作でも《《この世界でも》》負けヒロインになる運命が決まっている桃香は本人でも気づかないうちに病んでいるのかもしれない。



「うおお……! 犯人は一体誰なんだ……! 盛り上がってきたね!」


柚希は純粋に小説を楽しんでいる。可愛い。

ヒロインDのモデルが自分かもしれないなんて全く気づいてないっぽい。俺も柚希を見習って、あまり深読みせずに素直に作品を楽しむべきだな。



「それで……犯人は誰だと思いますか……?」


「はい!」


桃香の呼びかけに、すぐに柚希が手を上げた。

柚希、もう犯人がわかったのか……!? 考えてる時間ほとんどなかったと思うんだが。



「犯人はヒロインAだと思う!」


「なぜそう思いましたか?」


「なんかこの子、気が強くて怖いから犯人なんじゃないかなと思いました!」



柚希の犯人予想はヒロインA。

俺の仮説によるとおそらく苺をモデルにしたのではないかと思うヒロインだ。

苺と似たヒロインを犯人予想するとは、やっぱり柚希は苺を一番敵視しているのではないか……いや、柚希は別にそんなつもりは全くないだろう。


犯人と予想した理由が何の捻りもなくて可愛い。そういうシンプルな考え方も時には大事だと思うな俺は。



「……残念、ハズレです武岡先輩」


「わーっ、悔しい~!」


柚希はすごく悔しがる。悔しがる柚希もすげぇ可愛い。



「栗田先輩は誰が犯人だと思いますか?」


「そうだな、俺は……」


ヒロイン4人の中から選ぶ、ということだよな。

ぶっちゃけ全員怪しい。推理全然できないから全くわからん。

となると俺が選ぶのは……



「……ヒロインDかな……」


柚希に似たヒロインDを選んだ。

もう全然わかんないから一番好みの女の子を選んだだけである。好みの女の子が犯人であってほしくはないんだが、選ぶならこの子しかいない。


それに、柚希になら殺されてもいい。どうせ死ぬなら柚希の手で死にたい。

という究極のドM思考がヒロインDを犯人予想させた。



「残念、栗田先輩もハズレです」


俺も外した。柚希っぽい子が犯人じゃなくてよかったという気持ちもある。

2人とも推理を外したので桃香は嬉しそうだ。


じゃあヒロインBかヒロインCのどっちかが犯人か。梨乃っぽい子か、桃香っぽい子か、どっちが犯人なんだ。


少し緊張しながら小説を読み進める。

読んだ結果、犯人は……



ヒロインCだった。



桃香に似たヒロインが犯人だった。

桃香はわかってて自分と似たヒロインを犯人にしたのだろうか。それとも似てるのはたまたまなんだろうか。



「実はこの小説の犯人、私自身をモデルにしました」


あ、教えてくれるんだ。どう見てもモデルじゃないかとは思ってたけどやっぱり自分を犯人にしたのか。


「へぇ、そうなんだ。どうして自分を犯人にしたの?」


柚希が直球で聞いた。俺も気になるところではある。



「私も犯人に……共感できると思ったからです。

好きな人を一人占めしたい。自分だけを見てほしい。なのにそれは叶わない……だから彼女は彼を殺してしまいました。

私も……好きな人が自分を選んでくれないのなら、死んでほしい。それくらいの気持ちを持ってこの小説を書きました」



…………

怖ぇよ。病んでるんじゃねぇかとは思ってたけどガチじゃねぇかよこれ。


なんだよこれ……俺が知ってる桃香と違う。


原作では特にヤンデレっぽい描写はなかったはずなんだが……なんでこんなにヤンデレ属性モリモリになったんだ。ヒロイン4人の中で最も原作との違いが大きくて俺は驚きを隠せない。原作の桃香とは完全に別人と考えた方がいいのだろうか。


内気で、柊斗に想いを伝えることができない桃香。秘めた気持ちを外に出せないから中に溜め込んでしまい、それが彼女の心に深い闇をもたらしてしまったのか。


聞き間違いじゃない、選んでくれないなら死んでほしいって言ったぞ。原作の桃香なら絶対そんなこと言わないのに。

俺は、桃香を選ばないと死ぬのか? 悪いけどたとえ死ぬことになっても俺は柚希が好きなんだよ。


何を犠牲にしてでも柚希を選ぶ。その覚悟はできてるが今目の前にいる桃香がマジで怖い。怖いものは怖い。俺は内心恐怖しまくっていた。


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