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お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話  作者: 湯島二雨
第7章…俺は少し勉強ができる

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2人きりで勉強②

 苺が帰った後、俺と柚希は勉強を再開しようとする。

柚希は少し戸惑った表情で俺を見ていた。


「柊斗くん……いいの?」


「何がですか?」


「小雀さんと……仲良いんじゃないの……? 断ってよかったの?」


「……苺とは仲悪くはないし、いい人ではありますが、俺は柚希さんと2人っきりがいいんです」


「……柊斗くん……」


柚希のほっぺたが瞬時に真っ赤に染まってて、俺はその瞬間を目に焼きつけた。

いや、今は柚希に見惚れてポーッとしている場合ではない。柚希のテストが直前だから大真面目にやらなければならん。

柚希の前だと常にデレデレしちまうけどそれはよくないな。好きな女の子の前だからこそビシッとシャキッとしろ。ラブコメ主人公はそれができてるんだよ。



「……さ、さあ、とにかく勉強しましょう!」


「うん。でも、その前に……」



むぎゅっ



「わっ!?」


柚希は俺に抱きついてきた。



「ゆ……柚希さん!?」


「ごめん、なんとなく抱きついちゃった。気にしないで」



いや……メチャクチャいい匂いするし、柔らかい胸の感触がハッキリ伝わってくるし、気にしないなんて不可能なんだけど……ビシッとシャキッとするなんて無理すぎるんだけど。俺の全細胞が歓喜に震えてるんだけど。



「……私も……小雀さんには悪いけど、柊斗くんと2人っきりがいいって思ってた。柊斗くんも2人きりがいいって言ってくれて嬉しい……」


「柚希さん……」


何よりも美しい潤んだ瞳に吸い込まれそうだ。

ダメだ、勉強どころじゃない。そのまま見つめ合って、変な気分になってくる。



ジーッ……


ハッ!!



周りの人たちから注目を浴びてしまってることに気づいて俺たちは照れながら慌てて離れる。

そういえばここ図書館だった。いいかげん勉強モードに切り替えろ、集中しろ。




 勉強を始めてから1時間くらい経っただろうか。


「ど、どうですか柚希さん。俺の教え方で大丈夫ですか?」


「うん、すごくわかりやすいよ。ありがとう柊斗くん」


超可愛い天使の笑顔で応えてくれた。柚希の笑顔を見た俺はいつだって、ドキッと心臓が強く高鳴る。


「柊斗くんのおかげで単位なんとかなりそうだよ~。柊斗くんには感謝してもしきれない」


「……俺の方こそ、柚希さんには頭が上がらないくらい感謝の気持ちでいっぱいです」


「え? なんで柊斗くんが感謝するの? 私は柊斗くんにたくさん迷惑かけてるのに……」


「迷惑なんかじゃないです。俺が好きでやってるって言ったはずですよ」



柚希はいつだって俺の不安を吹っ飛ばし、俺が求めているものをくれる。柚希がそばにいるだけで救われる。

前世でこんなにも充実した時間はなかった。今、楽しくて楽しくて仕方ない。遊んでるわけじゃないのに、勉強してるのに、こんなにも楽しいなんて不思議な感じだ。



「も~っ、柊斗くんマジで好き。これ以上好きにさせないで」


「~~~ッ!!!!!!」



真っ赤に染まった顔で上目遣いでそう言われて俺は無事に死亡した。心臓がグシャッと握り潰された。

可愛すぎて悶絶してしばらく話すこともできない。



「しゅ、柊斗くん大丈夫……!?」


「……だ……いじょぶ、です……」


限界オタクも大概にしろ、俺。今は尊死してる場合じゃないって。



「っ……感謝するのはまだ早いですよ柚希さん……感謝の言葉は単位を取ってからにしてください」


「うん、そうだね! 頑張る!!」


ラストスパートなんで瞬時に気を引き締めて勉強を再開した。



「柊斗くん、ここがわかんないんだけど……教えてくれますか?」


「えーっと、この問題は……うっ……」



ヤバイ、俺もわからない。どうしよう。

素直に『すいませんわかりません』って言うか? 優しい柚希なら『そっか、ごめんね』って言ってくれると思うが……

だが俺はどうしても柚希の期待に応えたいんだ! ここで役に立てなきゃ俺に価値などないのだ。なんとかして思い出せ……!!



「ああ、この問題はこうですよ」


「あ、ありがとう……―――って、木虎さん!?!?!?」



いつの間にか桃香がいて、俺はまたひっくり返りそうになった。

苺の次は桃香かよ。なんでこんなにヒロインに遭遇するんだ。



「木虎さん、なんでここに……?」


「なんでって……私は休みの日いつもこの図書館に通ってますよ。ちょっと家から遠いですけど、本がたくさんあるのでここ気に入ってるんです」



そうか……読書好きな桃香なら図書館にいてもおかしくない。ここは桃香の家の近所ではないけど本が大量にあるでかい図書館なら多少時間をかけてでも通っててもおかしくない。


桃香、今日はメガネかけてるな。原作じゃメガネ桃香を拝めるシーンはめったにないが、学校の時はコンタクトで休日はメガネにしているらしい。

才女キャラなだけあってメガネは定番……休日に私服でメガネの美少女、好きな読者は少なくないはずだ。



「それで……栗田先輩は今日どうしたのですか?」


「柚希さんのテスト近いから勉強協力してる」


「はわわ……勉強教えてるのですか……」



「こんにちは、木虎さん」


「は、はい、こんにちは武岡先輩……!」


柚希が頭を下げて丁寧に挨拶し、桃香も同じように挨拶を返した。

柚希と桃香は原作で絡みは少ないけどそんなに仲悪い感じではないと思う。苺と梨乃は恋のライバルに対しバチバチと敵意を示すことが多いが、桃香はおとなしくて引っ込み思案だからそういうことはない。

ヒロイン同士の絡みは胃痛が起こりやすいけど今回は平和に終わるだろう。フラグじゃないよたぶん。



「木虎さん確かすごく頭良いんだよね」


「はわわ、そ、そんなことないです……」


そんなことあるだろ。まあ桃香は自分の成績を自慢とかはしないか。


「木虎さんは学年3位だったんですよ」


代わりに俺が教えた。


「ええーっ! 学年って確か300人くらいはいるよね? それで3位ってすごいね!!」


「そんなことないですぅ……」


桃香すげぇ謙遜するな。3位ですごくないわけないのに。


俺が柚希の勉強をすべて教えたかったが桃香に助けられてしまった。すごくありがたいけどこれ以上桃香の手を借りるわけにはいかないな。

3位の桃香に教えてもらったらすごく勉強捗るだろうしそれが一番柚希のためになるんだろうけど、苺を追い払ってしまった以上桃香に教えてもらうなんてできない。


俺と柚希は2人っきりがいいってお互いに望んだんだから。

苺と違って桃香は混ざろうとはしてこないと思うけど……



「あの……栗田先輩」


「ん?」


「私……いつもこの図書館で小説書いてるんです。それで新しい小説がついさっき完成したんですけど……」


「ああ、ごめん。今はちょっと……また今度読ませてもらうよ」


「そ、そうですよね……すいません」



「え、小説……?」


小説という言葉に柚希がピクッと反応した。


「木虎さんって小説書いてるの!?」


「は、はい……」


「へぇ~、すごーい……私小説とか全然読んだことないけど、ちょっと興味あるかも……」


柚希は興味を示す。桃香はかなり恥ずかしそうにしている。桃香が小説を書いていることは柊斗(おれ)しか知らないし読んだことあるのも俺しかいない。だから他の人に知られるのは少し慣れてないのかもしれない。



「ねぇ、私も木虎さんの小説読ませてもらってもいいかな?」


「は、はい……!」


「よし、決まり! じゃあさっそくちょっとだけ読ませてもらうね」



今はテスト勉強中なんだが、新作の小説が気になるなら仕方ないな。漫画でもラノベでも気になったらすぐに読まないと気が済まないよな、よくわかるよ。


というわけで柚希が桃香の小説を読むことになった。そういうことなら俺も今ここで一緒に読ませてもらおう。

俺だけが読むより柚希にも読んでもらった方が桃香のためにもなるだろう。


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