表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
最終章 セシャトのWeb小説文庫2020
87/90

第七話 『モノクロームアトラクト~白黒世界で彼らは踊る〜 箸・円月おみ』

さぁ、いよいよ私の始動が始まったのですね! 人類は震え、そして私の名前を聞いた時、歓喜し、心踊り、ゆっくりとその興奮はデクレッシェンドしていくのです! まだ私が誰かは言えませんが、人類よ! ルプス叔母様と共に愛を謳え!

 重工棚田。本社地下。そこで棚田クリスの行方を探っている人ならざる人型。ノベラロイドアリス型一号機・メジェド。


「アリアお嬢様。総帥は金の鍵とイシュタルの門の作用により存在の確認ができなくなりました。いかがなさいますか?」


 爪を噛みながら総帥。棚田クリスの妹であるアリアは考えを整理していた。突然日本全国で古書店『ふしぎのくに』系列の店舗が襲撃された事。

 こんなハズでは無かった。

 金色の鍵を手に入れそして、とある作品世界へ入り、そのメッセージを受け取り、理解し、解析する事が目的だったハズ。


「メジェド、お兄様は最初から、私たちを利用してこんな邪悪な事をしようとしていたのかしら?」

「アリアお嬢様、それは否定します。総帥は元々メジェド達を道具として使用されていました。今回の事は結果でしかありません。総帥にとって、セシャト様達は排除すべき障害であり、自ら介入できなかった事でこの度の襲撃に繋がったと思われます」


 そうなのだ。元々、アリアの兄はどこか、独りよがりなところがあった。その独りよがりはいつも革新的で世界をリードしてきた。そんな独りよがりが一度こんな事に行使された時の被害はめもくれない。


「『モノクロームアトラクト~白黒世界で彼らは踊る〜 箸・汐 穹臣』メジェド。貴女は読んだ事がある?」


 メジェドは目をぱちぱちとさせて作品の検索を開始。そして該当の作品を確認するとアリアを見た。


「近未来と模した。現代ファンタジー相当のSF・サイバーパンク・和風ジャンルのホラーアクション2000年代初頭に多く見られた作品と思われます。現在。作者名は円月おみとして活動」


 本作の作者の作品の傾向としては作品に使われる題材やパーツが異様にマニアックな知識を要する事が多い。それ故、説得力に欠ける事なく、また言葉やギミックを理解した際の発見は中々の物である。

 そして……何度も反芻している事ではあるが……


「この円月みお先生。セシャトさん達と一緒にいる。あの素敵な女性。ヘカさんの生みの親なのよ」

「????? 理解不能。ヘカ氏の父親? 母親相当という事でしょうか?」


 さて、ヘカさんが素敵な女性かどうかは人によるところが多い。アリア嬢からすると素敵な女性に見えるのだろう。元々、ヘカさんはとあるイベントでのみ登場したその時限りの登場人物であったのだが、円月みお氏がヘカさんに姿をくれた。いつの間にかヘカさんは古書店『ふしぎのくに』レギュラーにまで上り詰めた下剋上をやってのけたのである。その為、円月みお氏をリスペクトした結果、ヘカさんには魔女という付加価値がついた事をここで語っておこう。彼女だけが古書店『ふしぎのくに』メンバーの中でスキンカラーやヘアカラーが違うのもそういう理由がある。

 そしてそれを聞いたメジェドは思考のループにハマりかけていた。


「ヘカ氏は現存する人間に近い存在。そのヘカ氏に姿を与えた……重大なエラーを確認しています」

「そう、私もいまだに信じられない事が多いわ。だからメジェド。最後にこの作品を読まないかしら?」


 最後に……それを聞いてメジェドはこの地下から浮上する方法がない事、総帥クリスはこの施設ごと、妹であるアリアも古書店『ふしぎのくに』との濃厚積極をした自分をも世界から隠蔽隔離した。誰も助けに来ないし、アリアの言葉通りいずれは……


「アリアお嬢様。この作品においてアリア様が率直に感じる感想とはなんでしょうか?」


 本作は読みどころは多くあり楽しみ方も多くあるのだが、読んでいて感じる大きな点として……


「作者がこの作品のキャラクターに対しての並々ならない愛を感じるわね」


 強弱はあれど、自作品に関して作者は自分のキャラクターが好きでなければ作品創作はできないのだが、本作に関してはそれが色濃い。


「キャラクターを魅力的に書くという事が小説作品としては重要なファクターであります。それを感じさせるという事は……」

「好きこそものの上手なれね! 作者が本当にキャラクターを愛しているのね。と思えるという事はそれだけ魅力的だって事よ」

「主人公相当のあとり様に関してはどうでしょう?」


 アリアはメジェドが淹れてくれたレモンティーを楽しみながら、静かにこのあとりというキャラクターについて語った。


「あとり。可愛いし、素敵よね? でも、このキャラクターは単純に言えば一般的には作られやすいキャラクターと言えるわ」


 アリアが、やや否定的な事を言った。基本的に好きな作品に関してアリアはあまりマイナス面を語らない。そんなアリアが語る下の句に関してメジェドは静かに待った。


「本作の作者は作品を作るのは上手よ。それを差し引いてもどうしてもあとりというキャラクターに関してはなんらかの他作品にも似てしまう。これって、魅力的なキャラクターの類似性なのよね? 人に愛着を持たれやすいキャラクターを考えるととどのつまり。何パターンかになってしまうの。だから、あとりの付加価値は、周囲の人々との交流ね! 作者からも愛され、読者も魅力的だと思う。彼女を……作中のキャラクターたちも同様に可愛がっているのよ。これって、読者が望むことなのね?」


 アリアの読み込みが、創作過程の心理状態解明に近い話をし出した。それはいかに本作の作り込みが数学的であるかというアリアの証明。


「そして、このどことない芸術性を感じさせるイラストもまた想像を掻き立てるのね? 生や性を感じさせるというのかしら? 本作とのいい意味でのズレとそこから読者思考の修正、そして快楽につなげているの」


 メジェドは機械の瞳とパチパチとさせながら、本作を読み返し、そしてイラストを見る。


「……エウレカ効果でしょうか?」

「まぁそんなところね」


 アリアはシワ一つないドレスをの端を摘んで、そしてパチンと作品を眺める。最期に楽しむ作品にしては本作は実に贅沢だなと思いながら、第三章の途中でここを全て読了できない事が少しばかり残念だなと思う。


「この世界観って結局のところなんなのかしらね? 怪異が現れ、それを討伐する力を持った者たち、この力を神通力のような特異の異能として書かれているのだけれど……お兄様のような電子の怪物なのかしらと少し思うのよ」


 天城という場所の不透明性。そしてそれらを理解しようとするとどうしても科学の言葉がチラつく。


「天城……花言葉、純潔・可憐・可愛い・高尚など、あとり様に通じるところがありますね? その申し子という意味であれば実にシャレが効いていると思うのです」


 そしてこのメジェドである。人間ではないのだが、古書店『ふしぎのくに』によく関わったことで彼女の思考パターンは元々クリスがプログラムしたものから経験、成長し、セシャト達に近い反応を示している。


「それ、いいわね。本当に無垢で可愛いわ。天城の小鳥。天鳥」


 作中のキャラクターは鳥の名前が付いている。あとりはおそらく、スズメの花鶏からとっているのかと思われるが……ここは自由に作品を読み込むアリアならではの読み方だった。


「どちらかといえば、天鳥と書かれる方は男性名が多いかと?」

「神の器、と考えればどう? メジェドさん。あとりは、巫女なのよ! 天鳥。神の方舟となる器。おちる者は女性の神とは限らないでしょ?」


 あとりは自身のもつ刀を使う時、尋常ならざる力と、人が変わったようになる。それをアリアは神託と読んだ。そう、これらの考え方は読者であるアリアの勝手な想像である。日本神話と絡んでいればこの考えは遠からずかもしれないが、的外れだろうとメジェドは考えていた。どうしても異常なまでに深読みしてしまう傾向にある。


「ですが、それも読者の読み方の自由ですね。一度、メジェドは記録にも映像にも残っていないのですが、真っ白い少女と出会った事があります」

「まさか、あとり?」

「いえ、あとり様よりももっと幼く、もっと自由奔放で、手のつけようのない方でした」

「それ物凄く迷惑な子ね……ここの酸素量も持ってあと数時間ね。メジェド。貴女は機能を停止して省エネモードで待機してなさい」

「今、ここにその方が来てくれないかとそう考えてしまうのです」


 メジェドはアリアの命令を保留してそう言った。その白い少女。一体何者なのか? 今までメジェドがそんな人物について報告した事はなかった。


「貴女がお兄様以外にそんなふうに言うなんて興味深いわね。どんな子なの? もしかしてセシャトさん達の関係者?」

「あれは……大悪魔ダンタリアンだと私は認識し、彼女に名前を尋ねました。すると、彼女はこう名乗ったのです!」


 最期に聞く話が中々に面白いとアリアは思った時、重工棚田本社地下52階。イシュタルの門設置研究棟。分厚いコンクリートが何層も重なっているそこ、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレートの大地震が起きても数値上は維持できるはずのそこが……

 軽々と破壊され、上空に外が見える大穴が空いた。アリアは何が起きたのか、メジェドは機械の瞳を大きく開き。そしてなんとも嬉しそうな表情をして落ちてきた黒髪、肌が異様に白い少女を呼んだ。


「ルプス様……」

「からくりの君、王子の頼みにより連れ出しに来た! 行こう! ルプスと行こう! そっちの作られた人間の娘も来い! これは……」


 両手を腕を上にあげてルプスとメジェドが呼んだ少女は叫んだ。


「愛だ!」「アイだ!」


 メジェドもルプスに倣って同じように呟く。メジェド、アリアを掴むとルプスはピョーンと飛び立つ。


「な、なんなのこの子?」

「ルプス様です!」

「そう、愛だ! そして愛を受けたもの達だ!」


 重工棚田のロイヤルガードシステムが粉々にされて転がっている。それをこのルプスがやってのけたのだろう。どこへ行くのか?


「ルプスさん、どこへ行くの?」

「愛だ! 愛が集まる場所! 古書店『ふしぎのくに』」

『モノクロームアトラクト~白黒世界で彼らは踊る〜 箸・汐 穹臣』紹介時、作者名は汐さんだったそうです。私は円月おみさんの時代からの参入になるので、こちらの方がしっくり来ますが、本作はあれですね。外さない現ファンでしょう。普通に、面白い。なんというか、雑誌とかに必ず載っている一作です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ