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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
最終章 セシャトのWeb小説文庫2020
84/90

閑話・探索

きっと今はまだ分からない事ばかりなんだと思う。

人員強化をしている理由。


そしてふしぎのヤング達がクリスマスプレゼントを欲して一人に対して一人がさんたさんになるこの組織。


お年玉も貰えるらしい。


なのに、新人で貰えない師匠ちゃんは一人黄昏れる。

 倉田秋文は気がつくと神保町に足を運んでいた。この街になんの用があってきたのか、覚えがない。だけど、ここに来なければならない理由があった気がした。

 今となってはその理由すら分からない。



「僕は、何してたんだろ?」



 神保町なんて、全く興味もないし、来た事もない。なのに、桜門商店街が懐かしく思える秋文。なんで懐かしいのかも分からない。

 砂時計の砂のように、溢れていく。


 溢れていく。


 何かとても大事な気持ちをもっていたハズだったのだが、秋文はとうとうそれら全てをこぼしてしまった。



「帰ろう。読みたいWeb小説も更新されてるし」


 

 秋文は神保町から去ろうとしていた。彼が去る事で一つの歴史がまた終わろうとする。何か腑に落ちない事を胸に秘めていた秋文は少し遠まりをして帰る。そんな秋文はライオンの噴水が妙に主張する神保町の公園をふと覗いた。



「そーりーん! 余のオニギリには何も入っていないではないか! なんでじゃ!」



 幼女、頭に角の生えた幼女がひっくり返って駄々をこねている。どうやらお弁当を持ってこの妙に薄暗い公園に遠足にでもきているのだろうか……遠くから秋文が覗いているのを見ると他二人が秋文と目があった。



「おーい! よかったら弁当一緒に食わへんかぁ! 不可視境界線探してんねんけどー」



 え? 今、なんて言った? 秋文は変なことをしている高校生の制服を来た男子と、これまた秋葉のコスプレをしていると思わしき綺麗な少女。ポカーンと秋文がしているとその高校生の少年が近寄ってくる。



「なんやなんや? 鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔して」

「お兄さんたちは何してるんです?」

「異世界に行く方法探しとんねん。あとお兄さんはなんか背中かゆなるから、俺のことは成宮宗麟。成宮でも宗麟でもどっちでもええで、まぁおにぎり食いや!」



 ぽんと渡されたおにぎり。それを恐る恐るパクりと食べる秋文。それを見て宗麟は話す。



「少年は何してんや? あ、名前は?」

「倉田秋文です」

「秋文少年。君みたいな可愛い少年が一人でウロウロしてると変な奴に連れてかれるでぇ」



 秋文は初めて会ったにも関わらずなんだか宗麟は懐かしく話しやすい。自分は何故ここに来たのかが分からないと宗麟に語った。変なやつだと思われるかと思ったが、宗麟は考え込むと……



「虚偽記憶とはちゃうな……デジャヴでもあらへん……秋文少年は何かをしに来た。これは習慣や。秋文少年の趣味はなんや?」



 気がつけばお弁当を食べている美幼女と美少女。秋文は宗麟に言ってみた。



「僕はWeb小説を読むことが好きなんです」

「なんやそれ? あー、ど素人の書いたネット小説か……どこにもあらへん作品群やからたまに自分に合うのんが見つかるいう感じやな?」

「……はい」



 しばし、宗麟が秋文がおすすめした作品を読んでいると、お弁当を食べ終えた大食らい二人が近寄ってくる。



「何してるんですか宗麟? そっちの子は?」

「小僧! 貴様の子供か?」

「魔王サマに精霊王サマ、この子は秋文くんや。Web小説っちゅー物語を教えてくれたから読んどんねん」

「物語か! 話せ小僧!」



 それはラブコメであったり、ライトな異世界ファンタジーであったり、重厚なハイファンタジーであったり、ほろりと泣けてくる青春活劇であったり……



「噺家にプロもクソも昔はなかったやろうからな……よくよく考えれば人間の文化とは創作物とともに歩んできたくらいはあるよな」



 宗麟は語る。世の中の歴史を、そして伝説として語り継がれてきた事を……



「宗教の経典や聖書だって完全翻訳すれば物語やからな、これはしていい事、悪い事を物語調に綴ったものや……で、伝説や神話やな? これは人ずてに伝わった口伝、それがどんどん脚色されてえげつない物語に変わった……アマゾネスなんかがいい例やな」



 神話時代の神として扱われた存在が実在した事。日本で言えば、出雲大社の大柱が見つかった事だろうか? 神話の時代に伝わったサイズで確かに出土された。



「人間は言葉という、最強の武器を持って、自らの心を描いた。これが文章作品やな? そもそも敷居の高かったそれをインターネットの普及が爆発させたんやろな? 今や何作品存在するのかわからへん……で? 秋文くんとそれにはなんか関係があるんか? 秋文少年もWeb小説かくんか?」



 宗麟の話を聞いて、秋文はなぜか……とても懐かしい気がした。本当に、なんだか懐かしいのだ。かつて、自分は……遺伝子のどこかで刻まれたように誰かとこうしてWeb小説について話し合った事がある。



「成宮さん」

「なんや秋文少年……おおぉ! どないした? 泣いとるやんけ!」



 目の前の美少年。小学生の秋文は目に涙を浮かべている。それをみたコスプレ美女は……



「なーかした、なーかした」



 と、童歌のような韻を踏む。



「こーぞぉが、なーかした」



 とツノの生えた幼女まで歌い出す。それは完全に濡れ衣である。宗麟はただ自分の考えを述べただけ……それがダメだったのかと宗麟はポップキャンディを取り出す。



「秋文少年、泣き止んでーな。俺が悪かったわ」



 宗麟がそう言うのを秋文は首を振って否定した。一体なんなのか……



「成宮さん、違うんです……僕は、昔、どこかで、こうやってWeb小説の話を誰かとしたんです……その人の事を思い出すと……涙が止まりません……異世界に行く方法を試してるんですよね?」



 わんわんと泣く秋文を宗麟が精霊王と呼ぶ女性が抱きしめてなだめる。宗麟は静かに、ゆっくりと考えをまとめる。



「その誰か……もしほんまにおったとしたら……これはリセットや。最近オカルトではあまり使われなくなった話やねんけどな……世界の時間は変わってないのに、ある一部の理や事象、存在が元々なかった事として進行する現象の事や、書き換えともいうな? 精霊王サマ、魔王サマ。お前らを元の世界に戻すのは後になりそうやけど構わんか?」



 精霊王ツィタニア、魔王アズリタン。お互い自分の世界でその存在消滅をかけて最後の戦いに挑んだ間柄……見つめあってから同時にうなずいた。



「困っている人を助けるのは精霊の特権ですからね!」

「余は、小僧がしたい事をさせてやる。家来を持つものの懐の広さよ!」

「よっしゃお前ら協力や!」



 四人はパーティーを組んで何故、秋文が神保町までやってきたのか、探ることにした。気がつけば桜門商店街の前にいた秋文。



「ここにくるまでは目的があったのではないか?」



 そう言う魔王アズリタン。



「でかした魔王サマ!」



 そう言ってポップキャンディーを貰い目を輝かせる。それを見て精霊王ツィタニアも言った。



「なら、秋文さんが記憶を消され、あるいは改竄された時に何かがあったんじゃないですか?」

「冴えとるやんけ! 精霊王サマ」



 そう言ってポップキャンディーを受け取る。二人は宗麟のオカルト研究部に長い事いたので、思考パターンがオカルト寄りになっているのだ。



「秋文少年は何故に記憶改竄されたのか……いや、それを考えても無駄やな。色々商店街の中を探索してみよか?」



 古書店や古物商。そしてよくわからない店が並ぶ短い商店街。そこで、秋文は立ち止まった。何かがデジャブするその場所。



「古物店やな? ここか? お邪魔シーます!」



 中に入ると小太りの店主が気だるそうにこちらを見ている。そして宗麟が聞いた事。



「おっさん! いつからこの見せ開いとるんや?」

「もうかれこれ十年だよ」



 そうか、悪かったなと宗麟は秋文たちを連れて出てくる。三人を連れて、少し離れたところにあるカレーショップへと宗麟は誘った。



「神保町言うたらカレーやろ……あと助っ人を用意しよか?」



 スマホで宗麟は誰かに電話をかける。そして繋がったらしい。



「おー、三人ともちょー来いや! カレー奢ったるから」



 電話を切ると宗麟はほな行こかとボンディと書かれたカレーショップに四人ではいる。秋文はこのカレーショップを知っていた。



「なるほどな、やっぱりか」

「何がです? 宗麟」

「書に関わるやつは大抵神保町でカレー食うねん。ここかスマトラか迷ったけどな」



 カレーを注文すると、何故かふかし芋が運ばれてくる謎のカレー屋。そこでカレーに舌鼓を打ちながら待っていると、別々の学校の制服をきた女子高生が二人やってきた。



「おい、宗麟! 待たせたな!」

「一応来ましたけど、宗麟」



 銀髪の女子高生と前髪ぱっつんの女子高生。



「おぉきたか我が部員。グレイにこくり、あとブースカは?」

「ブースカって言わないで!」



 三人目の女子高生。ワンピースタイプの制服に身を包んだ眠そうな少女。一体何者なのか、秋文に宗麟は信じられない紹介をした。



「えー、右から宇宙人のグレイ、次が妖怪のこくり、そして最後がクゥトルフのブースカ」

「ブースカって言わないで! タルブーシュカ!」



 今更何がでてきても驚くまいと思っていた秋文だったが、カレーをガツガツと食べる彼女らを横目に今から何が行われるのだろうかと思っていると、支払いを終えた宗麟が言った。



「もっかい、あの古物店行くで!」



 そう、宗麟はこの三人を連れて再び十年前から商いをしているという古物店に入る。



「いらっしゃ……またお前か」

「おい、おっさん! ほんまにこの店十年前からやっとんか?」



 商売をしていると言う前に、こくりと呼ばれた少女が言った。



「宗麟、この人。嘘ついてますよ! ほら十円玉が」



 う、そと移動していた。続いて銀髪の少女が壁を見て壁紙をベリべりと破いた。



「あんた何してんだ!」

「この血痕、まだ新しくね? ここで何があったんだよ? なぁ?」



 店主の男はイレギュラーの際に知らせるためのボタンを押そうとした。そしてそれを押して安堵する。助けがくると……



「あーあ、ボクの力が再現しちゃった……ブレーカー落としたの。安堵したところで……絶望に引き摺り込むそんな恐怖」



 局所的プチ呪いを頻発されて男は折れた。元古書店を改装して、古物商のふりをしていればお金をもらえたと……

 そこは、元々古書店だった。破れた古本が奥に沢山会った。それを見て、秋文は思い出す。



「銀髪の店主のお姉さんがいたんだ……」

紹介と閑話を繰り返す今回のアプローチ。

時間軸や世界観が同一だと思ってはならない。


この物語には大きな嘘がある。

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