デットストック・ウェイター
皆さん、十二月です。ついに今月最後ですね。ということで
セシャトのWeb小説文庫2020完結まであと一ヶ月ですね。そんな中でこの前のミーティングで一年を語り、そこで出た小ネタを挟んだ間話となりますよぅ! ちなみに、ネタにさせていただいた三ツ葉きあさん、いといろさん、気にしないでくださいね! むしろ、このとても素敵なネタをありがとうございます!
その日は、とてもゆったりとした一日だった。そこで少しばかり不機嫌な表情をするのは二人。
「むすぅ……」
「ぷんぷんでありんすな」
ブックカフェ『ふしぎのくに』そこで珍しく帰ってきたトトはカウンターで二人にドリンクなどを作る。
「そろそろ機嫌を直してくれませんか? 大友さん、汐緒さん」
トトが淹れたスペシャルフルーツティーにトトがお土産で持って帰ってきたシュトレーンを前にしてもその機嫌は直らない。
「全く、二人とも気持ちはわかりますが、そんな事でヘソを曲げるなんてらしくないですよ?」
そんな事……トトは地雷を踏んだ事を言ってすぐに気づく。当人達からすればそんな事ではないのだ。
「ちょっとトトさん! これ俺がいないぢゃんかよぉ! それをそんな事呼ばわりなんて! ……酷い。俺の事遊びだったんだな?」
上目遣いにそう言う大友にトトは苦笑しながら……
「大友さん、僕は男の子には全く、一ミリも興味ありませんので、遊びかと言われた? 遊び以前の問題でしょうか?」
トトは男性相手には兎にも角にも厳しい。自分で淹れたアールグレイを飲んで目を細めるくらいには軽くあしらう。
「オーナー、あちきと熱い夜を過ごしたことはどうでありんすか?」
「汐緒さん、あれは貴方の屋敷に迷い込んだだけで別に過ごしたくて過ごしたわけではなかったですし、熱いというより逆に少し寒かったですよ?」
アメリカで買ったカロリーの高そうなシュトレーンを小さく切って口に運ぶトト。これを作ってお店にくる女性陣に出せばさぞかし喜ばれるだろうと思う。
「確かに、きあお姉様の素晴らしいイラストに参加できなかった事は胸中お察ししますが、そもそも紹介内にお二人出てきてないじゃないですか、クリスさん達だっていらっしゃらないんだから我慢してください」
そう、先月。三ツ葉きあ氏の看板タイトルを紹介させていただいたのだが、とても感謝しかしようがない事に、全員参加の凄いイラストを頂戴した。
そして本作はミーティングで話題になった。そういえば大友と汐緒何してたんだろうというイラストを頂いた後にミーティングで語った内容である。
「大友くんはいいでありんすよ! あの、エロい事ばっかりする方で沢山描いてもらってるかや!」
「いや、あれ俺じゃないから……俺を模したなんか股の軽い男だから……やめて……結構気にしてんだよ」
そんな二人にトトは尋ねる。
「ところで僕がアメリカにいた間、二人は何してたんですか?」
それを二人に聞くのかと……大友は死んだ魚見たいな目でトトを見つめ、汐緒は捨てられた子犬見たいな目でトトを見つめる。
「ここで、働いてたんだよ……トトさんが洋ロリとキャっはうふふしてた時にな?」
「そうでありんすよ! オーナー、流石にアンダー12はダメでありんす」
トトに遠回しにロリコンと言う大友と汐緒に対して、トトは片眼鏡をなおす、そしてふむとため息。
「……お二人とも……僕の事。馬鹿にしてるんですか?」
開眼したトト。ちょっと怖い。
大友と汐緒が固まる。
「僕は、女性であれば、下は〇歳から、上はいくらでもOKです! それ故僕にロリコンという概念は存在しません。女性はどんな年齢でも、女の子です」
腐女子を殺すウィンクをするが、ここには大友と汐緒しかいない。
効くはずは……
「素敵でありんす……」
人外の雄には効いた。
トトは綺麗なベビーフェイス、幼さの残る美少年だが、スーパーヘビー女好き。大友はぶくぶくとフルーツティーをストローで拭きながらその様子を死んだ目で見つめる。
「トトさんもセシャトさんもさ……最初は凄いまともな人かと思ってたけどさ……すげぇやばい人だよな?」
そう、トトさんもこの狂ったくらいの女好き、そしてセシャトさんは狂ったくらいの甘味好き。古書店『ふしぎのくに』は狂った連中が多い。なんらかの依存者が多いのである。
「ヘカちゃんはエナジードリンクジャンキーだし、あの娘、しっかり寝て食生活変えれば絶対モテるのにな」
実は、美形揃いの古書店『ふしぎのくに』において、一番の美人は長女であるヘカである。美人の条件と言われた黒髪。きめ細かい肌、人種は分からないがイギリスと中東のクオーターらしいその目鼻立ち。原宿でサバトをしている姿を見たことがいる人もいたかもしれない。
「二人とも、そろそろ機嫌を直して少し男同士で話しませんか? まずは今年最初の作品」
シュトレーンを食べ終えた二人にブッシュドノエルを切り分けて出す。そして汐緒は話し出した。
「祈りの門でありんすな? あちき達妖怪の中では冥界の門という生と死の入り口という物は有名でありんす、だけど祈りの門は業の話かや、輪廻は苦しみ、無間の償いの時間」
大友はまた汐緒が自分の事を蜘蛛の大妖だという戯言を言っているなとか思ったけど、話に乗った。
「獅黒ってかっこいいよな。あのバランスの悪い角が逆に洒落てるしな。自称妖怪の汐緒たん的にはどうなの?」
まだ信じてくれていない事にはもうなれた汐緒は作品を考える。あれは自分達妖怪とはまた違う矛先の存在である事。
「そうでありんすな。あちき達妖怪は天然自然の畏怖でありんすよ。躾や、世の中の常識を学ぶ事に一躍買うんでありんすよ。かたや獅黒達は人間のもつ性質に対する禁忌や警鐘でありんすな? 古来ヨーロッパではその分からない物をドラクルやデモン。悪魔とよんでいたかや」
トトはあえて何も言わない。同化し、祈りの門の前に足を踏み入れようとしている自分を夢想する。
「あの社長さんは至ったそうですけどね。では第二作目といえば……リフレインの凄い作品でしたよね?」
トトは自分のグラスにドリンクを継ぎ足す。三人は少しの余韻と共に、父が言った。
「あとりさん、とっても可愛いですよね? ヘカさんじゃないですけど、僕が保護したらなんでも買ってあげてしまいそうです」
モノクロームアトラクト、作者の濃く、そしてマニアックな知識から書かれる作品に関してはそれなりに理解力が必要であるが、人によっては実に性癖に痺れる作品。オカルトとサイエンスフィクションが入り乱れ、深読みに深読みが重なる。特に大友のような男の子には心にくる。
「いや、マジでいいよな? バトルもいいんだけど、かっこいい奴らっていうさ、みんな鳥なんだよな。名前の付け方がにくいっつーかさ。あぁ、だからヘカちゃんか」
烏であるヘカはモノクロームアトラクトの世界に少し触れた。
「ノって来たでありんすな? あちきは、次の怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語も好きでありんすよ? やりたい事が分かった時や、理解した時にくる若干の後悔。紀行物は時代を選ばないでありんすよ。シープちゃんとウルフ君、そういえばここに来たでありんすよ! あのお二人に作品を読んだかや
!」
と、汐緒は語るが、誰がそれを信じるだろうか? 死なない少女と、人を食べなければ生きていけない少年が様々な国を行き学び知る。ボーイミーツガール。
「シープちゃん、可愛いですよねぇ!」
トトが遠い目で話すので、話が長くなりそうだと大友は次の作品に移行する。
「最競クインテットは最果ての街を往くはどう? あの作者さん。この歯が浮くようなかっこいい物書かせると上手いだろ?」
そう、ラノベよりのハイファンタジー。終わりをあらかじめ考えていたのであろうことが最後まで読むと読み取れる作り、成長と友情の物語。最強ではなく最競の四人たちがある者を討ち取るまでの物語。
「英雄回帰という言葉をこの物語を読むと思わせますね。そう、こうなんですよ。物語という物は、少なからず終わりに向かう物なんです。Web小説としては随分歌舞いてましたけどね」
皆にシュークリームを配るトト。そしてドリンクをオレンジジュースに変えた。
「隠者ハーミットと図書室塔の少女、いかがでしょうか? セーラちゃんとお母さんが可愛いですね!」
トトの一発目の発言はジョークだとしてもトトは二人に聞かせる。
「出来ない事、弱い事、違う事は大した事じゃないという事を思わせてくれるこの作品。諦めない事、信じる事。勇気が湧く作品ですね。魔法という物は万能かもしれないけれど、全能ではありません。僕の大切な神様みたいですね」
本人が聞いたら地団駄を踏みそうなジョーク。
「今年の最後の作品といえば……あれだよなぁ……また俺の同人誌に……」
「泰騎とキスしてたでありんすな?」
「だーかーら、俺じゃねーから」
そう、ウサギ印の暗殺屋~13日の金曜日~、古書店『ふしぎのくに』においてTPOを気にして一年目に紹介ができなかったという曰があった。
それをあえて払拭するのに、そう、大友君の作品をなろう内でバンさせるという力技を持ってして紹介に至った。
「本作はアクションも動きもあって少しグロいんですが、なろうさんで許されるレベルでしたからね。やや同性愛を感じさせる作品ではありますが、全年齢、特に男性の方が楽しめるかもしれませんね。ダークヒーローなんですよね。全般的にみなさん」
「秀貴さんがやたら友情出演するでありんすな……大友くんの尊敬する先生かや」
「あぁ、うん。カッコいいよな先生。また遊びに着てくんねーかな? ここ来てくれたらお客さん喜ぶんじゃねーの?」
トトはそれを聞いて、「なるほど。それはいいですね。ちなみに、参加できなかったのはお二人だけではありませんでしたからね?」
トトは再び冷たい目をする。何事かと思った大友と汐緒、そして思い出される。何故かダンタリアンはいてトトだけがいないイラストを頂いたのである。
そう……
「僕たち、ブックカフェの三人は影が薄いんですよ。はい、このお話終わり」
だなんて語る。もう一周。今年の作品について語ろうかと思った。
が、閉店中のこの店のシャッターをノックする音。
「誰かきたでありんすな? ちょっと見てくるかや」
その日は何でもない日だった。本当に何でもない日、件の状況で人々は外出を控え、いつもより神保町に人は少なかったかもしれない。
誰が来たか分からず。汐緒がシャッターを開けた時。
……文字に書き起こすことも出来ない程の大きな音と共に、ブックカフェ『ふしぎのくに』は跡形もなく消し飛んだ。
さぁ、皆さん。次回よりセシャトのWeb小説文庫2020となります。今年も沢山の素敵な物語をご紹介させていただきました! あなたの好きな作品はどれでしたか? 再度、もう一度読み直してみませんか?
私から、あなたに、これらの作品を届けたい!




