最終話 シリーズ物の強さと緊急ニュース速報
さて、気がつけばもう今年も来月で今年が終わりますねぇ。今年は室内にいることが多かった私ですが、皆さんは豊富など、いかがでしたでしょうか? 私は色々と勉強をしたりお菓子を食べたり。むむっ! よく考えたらあんまり前年と変わらないかもしれませんねぇ!
「はい、ここでニュースのお時間です! キャスターは、みんなの、あなたの、そしてアタシのダンタリアンと、師匠ちゃんと、サタさんで送りまーぁーす! サンハイ! だーんたーりあーん!」
そこは狭間の世界。物凄く嫌そうな顔をして、タコライスを食べるダウナーな青年。サタ。そして、出前のラーメンを食べながらだーんたーりあーんポーズを一緒にする師匠ちゃん。
「ウサギ印の暗殺者って、師匠ちゃんが好きな作品だよね?」
「うん、好きよ。どちらかと言うと自分は昔の少年ジャンプの時代を思い出すというか? 名作が生まれては打ち切りされるというあの魔の時代にこういう作品があったんだよね。だから、泰騎がかっこいいなって思うのは、自分の触れてきた作品の時代的なものもあるのかな?」
「うわーい! 師匠ちゃんの年齢を感じさせる一言だね! アタシやサタさん引いちゃう!」
「僕は、人を平気で貶すダンカス、お前にドン引きだよ。そんなダンカスは本作に感じるところってなんなの?」
「えー、そうねぇ……アタシってどちらかというと、流れのある作品って好きなのね? オペラやミュージカルも何度も同じ演目を見に行くでしょ?」
そう、ダンタリアン氏は演劇、お芝居が凄く好きなのである。内容を知っていても楽しめるもの、それは……
「要するに表現性やメッセージ性があるものがお前は好きなんだろ?」
「うんそうね。そういう意味ではこの作品には流れという物はないのね? 外伝的な作品だからかもしれないけど、でも表現性はあると思うのよ。例えば、同じ蛇でダウナーでもサタさんと違ってスポットライトが当たっている潤は、どんな人間で、何が好きで何が嫌いか、何度も反復するように書かれてるでしょ? だから、流れはあまり感じないけど、何をしたいのか、という事は伝わってくるのね? これって小説としてはとても大事な事だと思うの」
元・古書店『ふしぎのくに』店主のダンタリアンは楽しそうに語る。そして、瓶のハイネケンを持ってきた。
「はーい! ニュースをお伝えしました! スタジオの……クリス坊や一味に返しまーす! バイバーイ! また見てねぇ!」
ザザ……ザザっ……
古書店『ふしぎのくに』では、豚汁にミートボールスパゲッティが母屋のテーブルに並ぶ。さらに電気炊飯器からセシャトは三人分ご飯をよそう。ふしぎのくには神様とヘカがご飯派なので必然的に主食は米なのである。
「ご飯と豚汁だけで良くないかしら? パスタとご飯って……」
案外、ふしぎのくにでは良くある組み合わせだったりする。ありかなしかと聞かれると実はありだったりする。食の好みは千差万別。
「ねぇ、日高大地って唐揚げ好きじゃない? セシャトさんやレシェフちゃんは何をかけて唐揚げって食べます? ちなみにいろははレモンよ」
唐揚げ、何かける論争。正直、何をかけても美味しい。唐揚げは無敵の食べ物である。
「私は……七味だがや……です」
「そうですねぇ、大地さんのようにマヨネーズをかける事もありますが、私は、カルディさんのいぶりがっこタルタル派ですねぇ」
セシャトさんがお勧めするいぶりがっこタルタルであるが、これは実に珍味である。タルタルソースのピクルスの代わりにいぶりがっこが使われている。
「……そう。マニアックなのが出てきたわね。ところで……ウサギ印シリーズで私『獅子座の野良少女』かなり好きなのよね?」
ちょっと上目遣いに見てみるとセシャトとレシェフは驚きの表情をしてみせる。趣味が違ったかなと思ったいろはだったが、
「あれは少し、路線が違って、とてもいいお話ですね! 本編の一つであっても嬉しいですよぅ!」
「わかるー! 普段よりも悲壮感漂ってて、たまらないですよね!」
そう、当方。古書店『ふしぎのくに』が恵未を推している理由の一つが本作にもある。ちなみに、当方にクロというキャラクターが存在するが、もしかすると彼女が潤達に会う事もなく、人の道を外れた場合のイフの姿なのかもしれない。
「私の中にいるもう一人のレシェフにこの作品を書かせたら、きっと誰も幸せになれない展開だったでしょうね」
そう。紹介小説の叩き台で、事もあろうにレシェフさんはこのオマージュを書いて皆を引かせ、かつなろうに載せたら多分バンされるであろうお話である。
少し触れると、戸籍を持たない家出少女が、優しい青年に拾われる。そして『獅子座の野良少女』のお話をされて、君にも幸せになる権利があると言われるのだ。綺麗な服を買ってもらい、美味しい食べ物を食べさせてもらい。
恵未のように自分も生きていこう。幸せの絶頂。という仮想現実の夢を見せられ、実際は食用として狂った富豪の元に出荷される。誰も幸せになれない壊れた作品であった。
「……レシェフさんは過激ですからねぇ」
「あと、筆遅いよね」
「きあ先生はイラストも描かれるのに筆早いわよね?」
スパゲッティを上品に食べるいろは、レシェフさんの筆の遅さはふしぎ一なので比較にはならないが、Web小説作家は皆執筆が早い傾向にある。やはりというべきか、モンエナ部の人達は作品を上げ出してからのペースは早い。そして早いだけでなく、クオリティがしっかりついてきているのが驚きである。
「恵未は、ゴミを漁って生きていたって……今の日本のアンチテーゼよね」
「……そうなんでしょうか?」
「いろはちゃん、どういうこと?」
いろははどこまで行っても犯罪者である。それ故、一般人の知らない各国の状況を知っている。日本の識字率は何%がご存知だろうか? そう、昭和中期ではほぼ10割と言われていた識字率がこの令和の時代において8割切ろうとしているのである。
化学水準だけでいえば、第二位のアメリカすら数年後ろにいる世界最高の先進国である我が国が、である。いろはは自国の崩れゆく音を、一般人よりも早く聞いている。そしてこれもまたアンチテーゼなのだが、犯罪者は世界共通で仕事場を選ばない。なくなりつつある仕事がある等と言われる昨今で、犯罪が全く減らない理由。そういう事なのだ。
「子供は国の宝ですからねぇ!」
ピシッ! といろは指の指紋をセシャトに見せる。
「そう! そうなのよセシャトさん。これは全ての国に言えることよ! 子供を大事にしない国は滅ぶわ」
繰り返すが、犯罪者のセリフである。それも世界共通認識で国際指名手配、ビーストナンバーを冠する重犯罪者。
「……なるほど、本来であれば恵未さんは悪堕ちしてもおかしくなかったと?」
生きていく術を極限まで考えていくと、窃盗、殺人、強盗、強奪になるのだ。性犯罪ですら、本能のがそう突き進める生きていく麻薬である。
「いろはさんは、子供をその……手にかけたことは?」
「あるわよ。私は子供が絡む爆破はしない事にしてるの、でも。何が起こるかわからないでしょ? 当然巻き込まれる子もいるわね」
セシャトは言ってみた。
「いろはさん、もうそのお仕事やめましょう。お給金は少ないですが、ここで私と古書店のお仕事をしませんか?」
いろはの心は揺らぐ、決して豊かには思えないこの場所の生活。されど、美味しいご飯に美味しいおやつ。さらには好きなWeb小説の話ができる。最高の職場である。そして何より、もう爆破をしなくていい。
「そうね……」
セシャトは微笑む。
「では!」
「……そうなったらいいわね。でも、私は恵未にはなれないの。だってもう、手は汚れているから。恵未は幸せになれたわよね? 彼女の思い描いた未来じゃなかったとしても」
これはどういう意味の質問なのか、レシェフには答えに詰まってしまったが……セシャトはいつも通り微笑む。
「はいそうですねぇ! 恵未さんは幸せいっぱいだと思いますよぅ!」
「ごちそうさま。本当に楽しかったわ! 『ウサギ印の暗殺者 著・三ツ葉きあ』次があれば、続きや他のシリーズを」
セシャトは是非と、レシェフは自分の古書店にもきてくださいと外まで見送る。楽しかった。それが一文字いろはの本当の気持ち。
「古書店『ふしぎのくに』楽しかったですか?」
外で待っていたのは少し影のある少女。
「佐倉ヨミ。アンタの言っていた人の心を知らない女。セシャトさん、はいなかったわね。アンタ、夢でもみてたんじゃないの? それよりもいろはのオリジナルボディ、返してくれるんでしょうね? 古書店『ふしぎのくに』に爆弾を仕掛けてきたんだから」
「さぁ、それはクリス先輩次第ですよ。ほら、感動のご対面です」
佐倉ヨミがそう言って体を少し斜めに向けると、幼いパンクなファッションをした少女と手を繋いで、端正な顔をした青年がやってくる。いろは殺意と恐怖で表情がにやける。
「やぁ、ザ・ビースト。ビーストを連れてきたよ。心は君が本物で、体はビーストが本物。とてもユニークな運命だよね? そうそう! 僕たちも『ウサギ印の暗殺者 著・三ツ葉きあ』みんなで楽しんでいたんだよ! こういう、スッキリするアクション。いいよね!」
わざとらしくシャドーボクシングのジェスチャーなどをして見せる棚田クリス。重工棚田の総帥。狂気的な幼さを持ち、何を考えているのか全くわからない。
「僕はね! こういう、仕事人って必要だと思うんだよ。僕たちのようなか弱い、刃を持たない人間の為に、彼らがいてくれれば僕は支援を惜しまないよ! なんなら全財産渡したっていいさ」
本当に渡しそう出し、やはり何を考えているのか分からない。彼の言葉には真実も嘘もないのである。
「いろは姉様。初めまして、白鷺城いろは。本物のビーストよ。総帥がいるから選ばせてあげる。フェイクである貴女にクリスマスパーティーに参加をするか、それともここでいろはに終わらせてもらうか」
いろはは、目の前にいる幼い自分。本当の自分の身体を制する程度ならなんとかなるが、目の前には得体の知れない男。そして、二つ前に見えるビルから、クリスの自動人形メジェドがスコープ越しに狙っており、さらに遠く、おそらくは一キロライフルを構えた沢城女史がいる事。
「いろはを殺すのに、そんなに準備が必要?」
「君は君が思っているよりも、期待されている証拠さ! なんなら、バレッタに会わせてあげてもいい。どうかな? 僕に手を貸してくれないかい?」
「お母さん……何をしたらいいの?」
そして、棚田クリスが長い時間をかけて準備していた。クリスマスパーティーが開始されようとしていた。
ザザ……ザザザ......
「ここで、緊急ニュースのお時間です。キャスターは飲んで酔い潰れたダンカスに代わり、僕。サタが送ります。重工棚田、日本全国の古書店『ふしぎのくに』系列店への武力介入を開始、あっ。僕の作ったこの強固なシステムまで侵入する気みたいだね。続いての緊急ニュースですが、秀貴先生。モスバーガー、持ち帰る。何を買ったんだろうね? 29日ならレアバーガーかな?」
真横でポテトチップスをパーティー開けしている師匠ちゃん、彼は助六の海苔巻きといなり寿司が好物でこれも例に漏れず置いてある。サタさんは宅配ピザを一枚取りながら、今入ってきたニュースに目を通していく。
「最後のニュースです。なんと、今月紹介させてもらった『ウサギ印の暗殺者 著・三ツ葉きあ』ですが、12月で一旦の完結予定とのことみたいだね。でも人気コンテンツだから、派生や。新章に期待してしまうのは多分僕だけじゃないと思うよね。 この場を借りて、11月の月間紹介をさせていただいて、古書店『ふしぎのくに』一同、心から感謝します。ありがとうございました! では明日の天気ですが、狭間の空間は天気という概念がないので、晴れです。あとダンカスは死ね」
本日をもちまして、『ウサギ印の暗殺者 著・三ツ葉きあ』のご紹介は本日で一旦終了となりますよぅ! 私も一ヶ月間、きあさんの作品と本紹介を同時に楽しませてもらいました。最終話でも少し触れましたが、本作はシリーズがとても多いので、是非、各シリーズもお楽しみいただければより深く作品を楽しめるようになっていますので、おススメですよぅ!




