イケメンに限るか限らないか問題。美食家は安いワインを好む
さて、皆さんは『魔女と忍の石山合戦』、『ハイファミリア・シェアリング』お読みになられましたでしょうか? 『魔女と忍の石山合戦』はちょっと有名な方が監修しています。ずっと私も作中に出てくる小狐さんという方が主人公だと思っていたのですが、実は違うという事実を先日知りました。(私たちも楽しめるように、チーム内でしか原稿が回っていないタイプですね)。そして『ハイファミリア・シェアリング』。レシェフさんに制約をかけて書いてもらっている作品になります。レシェフさん、本作を書く為に某公園で某行為をされている方々に一人で取材に行き、相場などを聞いてきたそうです。本当のサイコパスだなと私は思いました。
ジュージューと油が焼け、火が上がる。そしてタンパク質が焦げていくその匂いに白米が進んでいく。
「肉、ワンバウンドご飯。悪魔的なんな!」
ヘカは一人前四桁のお高い牛肉をご飯の上に乗せてかっこむ。口の端にご飯粒をつけるヘカの頬からご飯粒を摘むとそれを欄はパクりと食べる。
「ヘカ先生、肉はにげねーっすよ! ゆっくり食べてください」
いろははヘカと欄を焼肉に連れてきた。ゆっくりと語り合うにはオーダー制の焼肉はもってこいだ。紙エプロンをつけた三人。ご飯で焼肉を食べるヘカ、ビールを楽しみにながら焼肉を突く欄。そして目の色を変えて二人となんとか話をしようとグレープフルーツジュースを飲むいろは。
「恵未の食事は凄い組み合わせなのね、驚きなのだわ」
お茶漬けに味噌汁にモンブラン。確かにやや偏ったそれだが……ヘカと欄の食事の偏り方も中々えげつない。
「お茶漬けと味噌汁は汁物と汁物が被る様で案外合うんな。まぁヘカは松茸のお吸い物派なんな! デザートにモンブランは、セシャトさんが食べてそうなん」
そう言ってゆずシャーベットをペコペコと食べるヘカ。欄はトングで肉を網に乗せていく。
「潤さん、動物に好かれやすいって何か面白いっすね! どちらかといえば泰騎さんの方がその雰囲気ありそうなんすけど……」
「人間と動物の畏れに対する違いでしょ?」
いろはは何言ってるのよと言った風に焼肉といえば最初に食べる塩タンを一枚レモン汁に浸して食べる。
「んまぁ!」
表情全体から幸せを表現するいろはにヘカは満足した様に店員にウーロン茶と白米の特盛りを追加注文。
人間と動物の畏れに対する違い。基本的に気性が激しい猛獣ですら動物というものは基本臆病なのだ。人間以上に危機感知能力が長けているのは要するにビビりだからなのだ。そんな動物が人に懐くのは、世話をしてくれる人。昔日本でも猛獣が飼えた時代。ライオンを首輪だけつけて放し飼いにしていた人が普通にいたが、誰一人ライオンには噛まれなかった。
そしてもう一つ、何かしらのフェロモンが出ている人。
「潤たんは騰蛇を移植されてるん。それが人ならざるフェロモンを発しているのかもしれないし、単純に動物達が全く敵意を感じなかったのが潤たんなんな? 大型犬を飼いたがる女の人は大きな車に乗りたがる傾向があるんな」
ヘカの話を聞いて恵未はまさに欄の考えるパターンにはハマっていた。当然、大型犬が好きだから、大きな車が好きだからという理由もあろうと思うが、大きく頼れるものを本能が求めているから、要するに恋大きい生き物の傾向があるのだ。
いろははヘカと欄の話を聞きながら、二人が自分と同じような考えかどうかを尋ねて見た。
「潤が雑種が好きだって言っているの、とてもいいと思わない? 自由に生きている気がするってのよ」
雑草、雑種。それらは最も自然界において最強の生命力を持つ。それが自然界的にいいかどうかは別として、より完成形に近い生命。人間もたくさんの血を有する物の方があらゆる環境下に対応しうる。ちなみに、今回のコロナウィルスに関しても日本人が異様に病気に強いのもそういう遺伝子に組み込まれた血族の多さが物語っている。
「生命力の強いものは美しく、魅力的に見えるものっすよ! それを潤さんの言葉を借りれば、自由に感じる。まぁ、この場合は潤さんは人工種ではないという皮肉も混じっているんでしょうけどね」
いろはうれしくなる。国際的犯罪者欄と、この異様に態度の大きなゴスロリの少女ヘカ。彼女らは自分と同じ感性で話ができる。
嬉しい。だからこそ、いろはは続けてみた。
「貴女達はどんないぬが好きなの? 私はポインターよ」
「そうっすねぇ、別にこれと言って好きな犬種はねーっすけど、甲斐犬は綺麗っすよね」
「ヘカは北海道犬なんな」
綺麗に割れた。ヘカ達がドーベルマンと言わなかったのは、西にそういう犬種の雰囲気を漂わせるいい加減そうに見えて、真面目な男。その犬種が好きだといえば、その人物に好意を寄せているようで言い出しにくい。そしてそれなりに犬が好きないろはからすると少し苛立つことをいう倖魅。
「家畜は確かに、家畜よ。人間が勝手に愛玩して増やして、捨てて処分される。でも人間は法律というルールの下に物を言わない動物へのルールもしっかりと作っているわ。だから、正しい事を正しいといえない人間は私は嫌いよ。よく正義という物をその人間の物差しだというけれど、偽善という言葉もまたその人間の物差しという事を分かっていないのよ」
実にいろは良い事を言った。それは中々に尊い、小学校で全校生徒に聞かせてやりたいくらいには尊い内容かもしれない。
但し……それが世界的に指名手配を受けている爆弾魔の言葉でなければヘカも欄もそれなりには感動したかもしれない。
そう、お前が言うな! と言う気持ちが色濃く出てしまうのだ。とてもそれは残念。作中でもやや凶暴な倖魅の考えは諭されている。
泰騎、辛いなら殺してしまえとホトトギス。
「海外の考え方っすよね。了承があれば安楽を許されるんすけど、日本ではうまれてきてしまったら生をまとっとうしないといけないんすよ。さしづめ自分の場合は辛いなら、逃げてしまおうホトトギっかね」
ヘカは何か上手い事を言ってやろうと考える。ヘカは無い胸をトンと張る。そして虚ろな瞳で一句読んだ。
「辛いなら、楽しませてやるん! ホトトギス! はい、いろはたん!」
当然自分にも回ってくるかといろはは続ける。
「辛いなら、爆殺しようか、ホトトギス」
女子三人集まれば、こんなくだらないことでケラケラと笑ってしまう。シャトーブリアンが運ばれてきたので、欄は笑顔を絶やさないが、ヘカといろは感じとる。
「欄ちゃん、飲みたければ飲んで良いんよ! ヘカはコカ・コーラをそろそろ入れるつもりなん。ペプシ・コーラじゃないんよ! コカ・コーラなん!」
「えぇ、遠慮はいらないわ」
焼肉といえばビール! いやいや、日本酒、焼酎だと言う人も多いかもしれない。が、欄は中東と西ヨーロッパに長くいた。最上部位の肉料理といえば彼女からすれば常温の赤ワインが定番なのだ。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて、フランス以外の赤、チリかアメリカか、イタリアのをお願いしたいっす」
店員は少し困った顔をして欄に提案をする。
「島根ワイナリーのものはいかがですか?」
欄が欲しているワインは海外の大衆ワイン、ガブガブ飲む為の安価で甘い物。それなりに良いお店に入ったので、欄が好むようなワインはなかった。代わりに近い口当たりの国産ワイン。それをボトルで持ってきてもらうと、グラスを回して空気を当てる。デキャンタがない事にやや閉口する欄だったが、十分に空気を当ててから空気を吸うようにワインを飲み込む。
「自分もわかるっすよ。お酒のボトルを集めるの、気がつくとかさばるんすよね。陶器のボトルとか綺麗だなとか思っていると、地震で全部割れちゃって……だから最近はもっぱらお酒はコンビニっすね」
欄はヘカの押し掛け女房。と言うか紐見たいな存在である。生活費のほぼ全てを欄がお金を出しているのだ。
「まぁでも、この作品もそうっすけど、お金を持っている人ってのは何か黒い事をしているのが世の常っすね。いろはさんもその若さで潤沢にお金を使ってますし、自分もそうっす。お金は悪い事をしている人たちに集まるんすね」
ちょっとした皮肉だった。どこまで行っても、殺人は悪である。爆破は悪である。詐欺にスパイに窃盗は悪である。ヘカはコカ・コーラをグビグビ飲みながら虚な瞳でシャトーブリアンを食べる。高い部位なのに、ヘカは大口を開けてもぐもぐと噛むとコーラで流しこむ。
実にもったいない食べ方。
「欄ちゃん、普段はザルみたいにお酒を飲むのに、今日は回るのが早いんな? 具合でも悪いん?」
欄は小さく切り分けた肉を口に上品に運ぶと、ヘカににへらと微笑む。ヘカはそんな欄を見ても変わらず。
「いやぁ、あれっすね。自分やいろはさんって覚悟をしてこう言う仕事をしてるんすよ。いつか、必ず潤さん達見たいな人々に命を奪われるんすよ。これは多分間違いないっす。それが明日か、お婆ちゃんになった時かはわからねーっけどね。いろはさんも多分、この気持ちになるから、この作品が楽しいんじゃないすか?」
欄はグラスに半分程ワインを注ぐとゆっくり口につける。残念ながら無添加ではない。されど悪くない口当たり。欄の言っている事をいろは肯定する。同じ気持ちになったのは確かだった。
「羨ましいって思ったわね。私もよ。こんな組織があれば、きっと私は殺されてあげるし、あるいはここにいられたかもしれない。お互い辛いわね? 世界の敵は」
犯罪者とは突き詰めていくと一芸を極めたものになる。いつしか、匠の領域に到達し、芸術的に犯行を繰り返すが、達人と呼ばれるようにはならない。
そんな連中は大抵こう呼ばれるのだ。サイコパスと……
サイコパスというのは実のところ犯罪者を意味する言葉ではない。特殊な独特なセンスを持つ者の事を言う。が、そういう人々は何処かに心の不調を持っており、犯罪に身を委ねやすい。
「ふふっ、いろはさん。それ良いっすね! 潤さんや泰騎さんになら自分、殺されてやっても良いっすよ。ヘカ先生の言葉を借りれば、イケメンに限るってやつっすね」
ヘカは虚な目で二人を見つめる。二人してわかったような気になり、ダウナーになる。そんな二人にヘカは口を開いた。
「イケメンばっかり出てくる作品で何鬱拗らしてんな? 馬鹿なん? イケメンには囲まれて奉仕をされるん! ヘカはイケメンでも殺されるのはごめんなんな。それにまだデザートを食べてないんよ!」
杏仁豆腐にシャーベット。ヘカは遠慮せずに頼みまくる。何なら焼肉を食べながら何度かデザートを食べていたにもかかわらずである。
「食後のエスプレッソなん!」
『ウサギ印の暗殺屋~13日の金曜日~ 著・三ツ葉 きあ』さて、今回は久しぶりに凄い沢山のメッセージを頂いております。当方としてもこの三年目までにご紹介をと思っていましたので、人気の凄さを感じますねぇ! 今回、レシェフさんが大人しいんですが、少しアウトなお話がありまして、それを後悔すべきかどうかを未だ迷っていますねぇ! 紹介はしっかりしてるんですが、紹介小説側がアレすぎてバンされそうなんですよね。これはお蔵入りでしょうか!




