幻想越えと男性作家に足りない大きなセンス
現在、11月連合軍が2チームに分かれて新作を二本アップしています。レシェフさんは、酷すぎるエログロ封印。もう別方、名前伏せ。紹介小説になれなかった作品のベースで作品アップになります。レシェフさんは筆が遅いので不定期連載。もう人方は1日おき更新という筆の早さです。結末はどうなるのか、楽しみですねぇ!
「成山ぁ秀貴ぁああ!」
じたばたしながら、ぬいぐるみの大量に囲まれたベットの上で一人の少女は悶々としていた。某メーカーのウサギのリュックを背負う。そのリュックの中には信管、火薬、アルミホイル。石灰。そう、彼女は愛くるしい見た目をした爆破魔。
今まで爆破依頼を受けて失敗した事はなかった。彼女の爆破は芸術だと、ボンバーガールとして爆破魔業界で名声を欲しいままにしていたのだ。
一文字いろは、修復中の熊本城爆破、岡山城爆破、姫路城爆破、大阪城爆破、そして江戸城。現・皇居の爆破を全て散歩中の成山秀貴に阻止される。彼女の爆破魔としての株は大暴落。
成山秀貴がいたと言う古書店に向かってみてももうそこには彼の姿はなく……
「ああん! こういう時は、スターバックスで『ウサギ印の暗殺者 著・三ツ葉きあ』をゆっくりと読むに限るのだわ」
スターバックスは所謂Mac厨と呼ばれる何故か、Mac PC比率が高い。右も左もMac厨、遠くにゴスロリに身を包んだ少女がMacBookproを開きながらキャラメルマキアートに口をつけている。
「ヘカ先生、今日もウサギ印っすか?」
「そうなんな! ノベプラで更新が頻繁なんから追いかけ必死なん! 欄ちゃん、きあたんはモンエナ部なんよ?」
「なんすかそれ?」
「由緒正しい、伝統的な大和撫子しか入れないサークルなん」
「大和撫子っていう時点でヘカ先生入れないっすよ。あと勝手にヘカ先生が言ってるだけっすよね?」
ぴくりと、いろははその話に耳を傾けて、ゆっくりと二人に近づく。そして聞き耳を立てる。
「羊羹を食べた後に饅頭を食べるなんて愚の骨頂なんな。お菓子の食べ方をわかってるん。エンプティーカロリーを取り続けるのはセシャトさんくらいなんな。しかし、惜しいんな。Web小説でも比較的珍しい方言キャラなん」
さて、方言キャラというものがあるが、実際のところ関西弁という物はあまりにも知名度が高すぎて方言キャラの枠ではないかもしれない。これに続いて最近は博多弁女子キャラ等も方言キャラカテゴリーから外れつつある。今回は中国が備前弁、関西は播州弁、四国は讃岐弁等に大きく分けられる西部の上方方言を使うキャラクターが登場する……本作の主人公の一人泰騎、ヘカは惜しいという。
(何が惜しいのよ! 抱かれたいキャラクターナンバー1よ!)
いろは少しずつ近づく。黒髪のゴスロリは眼鏡をかけたマックスマーラーのコートを着たスタイル抜群の女に説教のように語る。
「欄ちゃんは潤と泰騎、どっちが好みなん?」
「まぁ、やっぱり潤さんっすかねぇ……健康診断のくだり、くあしく! とは思ったっすね!」
「ビンゴなん! もう一人の主人公・潤が持ってるんな。腐女子を殺すキャラなん。ニトロプラスのボーイズラブゲームに出てきてもおかしくないん!」
「それを言ったら泰騎さんもじゃねーんすか?」
ヘカはチッチッチと指を振る代わりにスタバの微妙に美味しくないスコーンを振る。
「甘いんな! キャラメルマキアートより甘いん! 泰騎はなんだかんだ言ってお兄ちゃんなん。たまに見せる幼さでころっと行くババァの腐女子はいるかもしれないんけど、断然このキャラクターは男性に人気があるん。しいて言えば飛鳥コミックスキャラなんな!」
(どういう事よ! 何言ってるのよ! このゴスロリ! 頭湧いてるんじゃないの? 潤は抱いてあげたいキャラクターナンバー1でしょ!)
本作は会社という組織の表現が面白い。社歴としての長さと組織としての滞在長さ等が微妙にかぶらないキャラクターがおり、ジャニーズ事務所等でたまに話題になるどっちが先輩問題を少し考えてしまう。
「泰騎と潤の会話って兄弟というより、なんかお爺ちゃんと孫みたいな会話っぽいんすよねぇ。それだけ愛を感じるという事っすかね?」
「これは筆者のきあたんが、自分の作品のキャラクター。所謂うちの子可愛いが籠ったんかもしれないんな? 泰騎から感じる有り余る母性? 父性? 祖父祖性? は作品に対する愛の熱量なんな。これは他の作品でも皆一様に感じる。キャラクターが愛されているなぁと感じるん時。これは作者が、いかに魅力的にしようかと考えた結果、周囲のキャラクターからその心情を読み取れるん」
ヘカは作者としての側面が強い為、ない胸を張ってタバコのようにストローを咥えてキャラメルマキアートを吸う。
「すごいわ! 貴女!」
「なんなん? また女の子が絡んできたん。いや、女の子の見た目をしたイケメン。男の娘かもしれないん!」
ヘカの希望的観測は欄の一言で完全に打ち消される。それはとてもヘカにとっては悲しい事だった。
「あー、その子女の子っすよ。自分と同じで国際指名手配の爆弾魔。一文字いろはさんっすね」
「誰よアンタ!」
叫ぶいろは、それに欄は「さー、誰でもいいじゃねーすか」と流すのでさらに追求しようとしたとき、ヘカが指差す。
「ピスミのリュックなんな」
ヘカの指摘にいろははヘカに負けず劣らずの無い胸を張って自信満々でそれを見せる。
「作ったのよ! 凄いでしょ! 欲しいでしょ? あげないわよ! オートクチュールよ!」
「オートクチュールの意味間違ってますし、それ普通に著作権違反っすからね? 第三者の作品の造形物を勝手に使うのは……まぁ国際指名手配犯にいうのも野暮っすか、でその有名人が何か用っすか? 自分たちこれでも凄い暇なんすよ」
「でしょうね……アンタ達が『ウサギ印の暗殺者 著・三ツ葉きあ』の話をしているのが聞こえたから仕方なく聞いてあげてるのよ。それにそっちのゴスロリ、よく見れば神保町の古書店にいたわね?」
「ヘカなんな。超売れっ子、Web作家なん。ちなみに、『ウサギ印の暗殺者 著・三ツ葉きあ』の作者きあたんとは盟友なん!」
「は? 紹介しなさいよ!」
ヘカはポシェットから緑色のモンスターエナジーを取り出すとそれをグビグビと飲んで一言。
「お断りなんな! それより、いろはたんはこの作品のどういうところが好きなん?」
「男の子が可愛い&かっこいい所よ!」
ヘカはふっとど素人を見る目でいろはを見てから目を瞑る。どんな風にマウントを取りに来るのかと欄は思い。いろはどんな風にマウントをとられるのか、場合によってはこのスタバもろとも爆破してやろうと思っていたが、開眼したヘカは遠い目をして呟くように語る。
「それは真理なんな! いろはたん。正解に近いん。漫画でも小説でも必要な事の大前提に男の子はよりカッコよく。女の子はより可愛いが基本なん。もちろんジャンルにもよるんから、一概には言えないんけど、キャラクターから入る事というのも重要なんな!」
かくいうヘカもキャラクター性の異常な人気でレギュラーをもぎ取った経緯がある。本作は、1話1話のストーリーも面白いのだが、やはりというべきか、キャラクターに嫌味がない。
「あえて、作品を読ませた後のキャラクター紹介がイケてるんな! 挿絵である程度キャラクターの造形は見えてくるんけど、最終的な答え合わせをさせてくれるん」
「アンタ、見かけによらずいい事を言うわね?」
「ヘカでいいん、いろはたん」
「たん? まぁいいわ。ヘカちゃんね。覚えたわ! でも。甘いものをたくさん食べても太らないとか、この手のキャラクター設定は正直私たち女子には少し来るものがあるわよね?」
黙るヘカと欄。それに自分は何かおかしな事を言っただろうかと不安になるところで、欄が話し出した。
「リアルに一人いるんすよね。四六時中スイーツばかり食べている。Web小説以外の事に関しては随分スイーツな女の子が……至って健康体なんすけどね」
「いるんな。人呼んで妖怪甘味狂いなん」
古書店『ふしぎのくに』において「ヘクチ」とくしゃみをセシャトがしていたことは誰も知らない。
「まぁそれはそうと、なんつーかあれっすね。正直、服装の表現がお洒落っすね!」
これは残念な事だが、男性作者のWeb小説作家の作中におけるファッションセンス及びその表現は語彙力以前にその組み合わせ、持っている引き出しが壊滅的である。方や女性作者のこれら表現というか引き出しは、読んでいて、季節に合うなと安心させられる。
そんな中でも、本作は表向きの企業の兼ね合いもあってか実によくできている。
「ヘカ先生はいいっすよね? 毎日ゴスロリっすもん。方や自分は色々お仕事してるので、色々気を使ってるんすよ?」
チェスターコートのみで体のラインを出す事を意識したコーデをしている欄は高めのヒール、中のスーツにインナーもサイズは小さめの物を着用。出るところは出て締まるところは締まる大人の女性の完成である。
男性の視線、そして着衣のない妄想までもさせるところが欄のコーデである。
「欄ちゃんはヘカにしか見せないくせにオシャレがすぎるん! 欄ちゃんみたいな子は芋ジャーでいいんよ!」
「まぁ、確かに自分やヘカ先生は恵未さんみたいな積極性は皆無かも知んねーっすね?」
いろははこの二人のくだらない会話に呆れる訳でもなく、ただ静かに聞き手に回り、そして呟く。
「そうね。この作品って妙にそういう普段なら読み飛ばしそうなポイントが細かいのよね? こういう組織だからこういう人がいる。そしてその人々がどう動いているのかが自然というか? う〜ん。言い方が難しいわね」
「ううん、いろはちゃんの言っていることは伝わってるんよ! 要するに夢が覚めれば小説は作り物なん。それをいかにして夢を見せてもらうかは作者のここなんな!」
ヘカはドレスシャツをまくると腕を見せる。腕の見せ所と言いたいのだろう。が、あまりにも真っ白なそれは病的で、儚くて、もしヘカの目の下に隈がなければ一目惚れする男性もいたかもしれない。
「腕ね……で? 具体的には?」
「キャラクターはどこまで行っても作者が動かすものなんな? 勝手にキャラクターが動くというのは錯覚なん。勝手にはキャラクターは動かないん、だけど、そう見せることは、そう感じることはできるん。最高の舞台を用意してあげる事で自分が思っていた以上の出来になる時、それをキャラクターが一人歩きしたと錯覚するん」
これを古書店『ふしぎのくに』では幻想越えという。ヘカの思いもかけない話にいろは食いついた。
「ねぇ、もう少しお話ししましょ? 何かご馳走するわ!」
『ウサギ印の暗殺者 著・三ツ葉きあ』皆さんはもう読まれたでしょうか? 今回、一文字いろはさん、棚田クリスさんの会社のザ・ビーストという方が登場しましたが、この方、実は当初は白鷺城いろはという名前で、現在ヘカさんがいるところに本来居座るレギュラーだったのですがお蔵入りになられた方です。白鷺城いろはさんが大変、ウサギ印とその短編が好きで、毎回候補に挙げられていたのを思い出します。現在はいろはさんの思いはヘカさんに受け継がれておりますねぇ!




