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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第九章 『ウサギ印の暗殺屋~13日の金曜日~ 著・三ッ葉きあ』
71/90

はじまりはいつもそう、来訪者が来て

皆さん、突然寒くなりましたねぇ! 11月、今年もあと2ヶ月ですがやり残した事はありませんか?

まだ時間はありますよ! 私はそうですねぇ……あと2ホール程ケーキを頂きにですねぇ……あとコート出さないとですね!

 それはこの神保町の超有名人。

 神様を名乗るちんちくりんの子供が唸ったことから始まった。



「何だとぉ! キッチンジローがよもやよもや! 店舗縮小だと言っておるぞ! これはまずい、セシャトよ! 今日から朝昼晩。ジローで飯にしようぞ?」

「あらあら、そんなお金当方にはありませんよぅ! ですが、神保町と他1店舗を残して全店閉店というのは中々辛いですねぇ。今日のお昼はヘカさんも呼んでジローにしましょうか?」



 神様は「おぉ!」と歓喜する。が、神様の表情。その瞳が何かを見据えた。それは本気でセシャトやヘカが神様に怒られる時の神様の表情。



「何じゃ? 手がビリビリしよる……また面倒臭い奴が神保町に入ってきたようだの」



 この神保町には何か理由があって吸い寄せられる者が度々現れる。そしてヘカの声が古書店『ふしぎのくに』の入り口から聞こえてくる。それもワントーン声が高い。



「そうなんな! ここはヘカの家でもあるん! お茶でもコーヒーでも飲んでいくといいん!」



 あの歩く百合ホイホイのヘカが、あんなにも嬉しそうに語りやってくるということは……



「セシャト、多分イケメンがおるの」

「はい、イケメンがいると思いますよぅ!」



 ガチャリと開かれる扉。

 セシャトは胸に手をそして軽く会釈。



「いらっしゃいませ古書店『ふしぎのくに』へようこそ」



 そこには神様と同じ金色の御髪をした青年が、質良い着物をきて小気味の良い上質な下駄の音を響かせ……



「おぉ、秀貴ではないか、ややこし奴が来よったと思ったが貴様か」

「……確かこの子供は、神様か……自称」

「貴様も分からん奴だのぉ! 私は神様だと言うておろう!」



 神様がそう駄々を捏ねる。セシャトはこの秀貴と呼ばれた年齢不詳の青年とどこかで会ったことがあるような気がしたが、それを話しかけるより前に鼻息の荒いヘカが秀貴に話しかける。



「この神様は頭がおかしいん! そんな事より、何しに来たん? 本を探しに来たん?」



 秀貴と呼ばれた男性はそのヘカの質問に対して、人種不明の三人の子供達を前に懐に手を入れて考える。散歩をしていた。特にこの古書店にやってくるつもりも目的もなかった。少々不可思議な場所に思えるここだが、パンと手を叩く少女。店主のセシャト。



「では、とりあえずお茶にしましょうか? お客様……秀貴さんでしたね? よければ母屋へどうぞ!」



 古書店なのにお茶をしようと言う。何度か町内会の催しでやってきた神様を名乗る大喰らいの子供は秀貴の着物の袖を引っ張る。



「まぁ、茶ぐらい飲んで行けい」

「茶が出るのか?」

「そうだの、どうせ貴様も私に負けず劣らずの暇人であろ? 何かあやつらにWeb小説の話でもしてもらうといい」



 ややこしい店にやってきてしまったなと秀貴は思う。が、セシャトとヘカが小さなキッチンでお菓子を前に微笑んでいるのを見て和む。



「秀貴さんは、コーヒーと紅茶どちらがお好きですか?」

「あぁ、どっちでもいいぞ」

「セシャトさん、あのイケメン超渋いんからバーボンとかが絶対好きなんよ!」

「えぇ、ヘカさん、いくら渋くても流石のお茶の時間にお酒を飲まれる方は落伍者ですよぅ………」



 まさかの組み合わせだった。

 ホットコーヒー、香りだけでそれがキリマンジャロであると秀貴は気づく。そして中々にいい豆を選んでいる。

 そのお茶うけ……



「豆かんか、珍しいな。浅草で昔食べたな、あとゆべしか」



 何故、コーヒーに和菓子を合わせてきたんだろうこの娘はとか思いながら、平然と神様が大きく口を開けて豆かんをパクリ、そしてコーヒーを一飲み。



「ぬぉおおお! 美味いのぉ」

「そんなにか? ……むっ、美味いな」



 秀貴が豆かんを味わっていると、セシャトは微笑む。美味しそうに甘いスイーツを食べる相手に悪い人はいない。

 それがセシャトの考え……



「セシャトさん、このイケメン見てたら思い出す作品があるんな!」

「えぇ、私も何ですよぅヘカさん」



 そう、神様だけがある事に気づいていた。そのあることにセシャトとヘカが気づいたのかと、神様はそれはまずいと止めようとした時……



「あれなんな! きあたんの、『ウサギ印の暗殺屋 著・三ツ葉きあ』なん!」

「……右に同じです」

「惜しい!」



 神様は一人で叫ぶが誰もその意味をわからないので、神様はこほんと咳払いをしてゆべしをパクリと食べる。そして小さい声で呟く。



「違うであろ! あの秀貴がおるんだぞっ……」



 コーヒーにミルクだけ入れるとそれを一口飲んで、セシャトとヘカの話に耳を傾ける。



「どんな話なんだ?」



 それは父親が、まだ親離れできていない子供の話を聞くように何とも朗らかな態度だった。ヘカはゴクリと唾を飲み、セシャトはあらあらと微笑んで語り出した。



「本作は、私が連載当初から楽しませていただいている作品になります。何とメインの舞台は岡山県になります」

「あぁ、だからゆべしか」

「おや、秀貴さんはご存知ですか?」

「昔は職業柄いろんなところに行ったからな。四国の一六タルトがお勧めだ」

「……むむっ! 分かってますねぇ! さて話は少し逸れましたが、本作はいろんなジャンルがありますが、まず一重にキャラクター物です。実に生き生きとしたキャラクター造形、そして狙ったかのような歯の浮く展開、実に女の子の気持ちを鷲掴みますよぅ! イロハがしっかりしてるんですよねぇ! 本作はヘカさんの大好きなイメメンが多数ご登場されます」



 ヘカは少し黙って満足したように「ほふぅなんな」と深いため息をつく。そして語る。



「正統派イケメン、潤なんな! どっかの男女は自分が可愛いとか勘違いしてメイド服を好んで着たりするん。そんなのは男の娘ジャンルであって、違うんな! 女顔でも女扱いされるのを嫌がるのが萌えるん!」



 ヘカのやや暴走しかけている語りを聞きながら、ゆべしを楊枝で切って口に運ぶ秀貴、そして誰かを思い出したかのように「あぁ、潤な」と一言。秀貴は自ら何かを尋ねたり発言したりはしない。セシャトやヘカの話をただ静かに聞いて時折相槌を打ってくれる。



「この作品の素敵な所として、お兄ちゃん。泰騎さんです。性癖もさることながら、方言男子なんです! 大きな萌えポイントを稼いでいるハズなんですが、実は男性読者に絶大な人気があります」



 これは古書店『ふしぎのくに』調べになるのだが、圧倒的に男性陣に泰騎は人気がある。安心するというか、安定した主人公だからではないかと推測される。



「暗殺業、これに関しては賛否両論ありそうな題材となりますよね。当方でもアヌさんが人殺しのお話を書いて賞を取っていましたが、当然。そう言う物を全面的に受け付けない読者の方もいます」



 超有名な人気漫画家が、読者から人殺しが正当化されるのはおかしいと意見され十四年の歳月もその作品の筆を置き、つい最近完結した作品がある。

 作者としても中々に冒険せねばならないテーマだったりする。



「まぁ、これに関しはあれだの。グラスホッパー程生々しくない。うまくキャラクター物として昇華させておるんじゃないか? あれだのセシャトやヘカは知らんだろうが、ヴァイスみたいな物かの、あれはお花屋さんだったな」



 神様しか分からない古いネタにヘカは口を尖らせる。そんな三人の話を聞きながら秀貴はコーヒーのおかわりを所望。



「色んな地域のお土産物が出てくるんだな」



 ふっふっふとセシャトはコーヒーのおかわりを淹れた後に秀貴に色々と持ってくる。



「本作と私のシナジーは強いですよぅ! 紅芋タルトもういろうも、うなぎパイ。おしるこサンドまでご希望の物がございましたらお出ししますよ!」



 古書店『ふしぎのくに』にお土産物が異常に多い理由として、トトが通年旅行をしているから、都度都度送られてくるのだ。甘いお菓子をどんどん持ってくるセシャトに見ているだけで秀貴は胸がどっきりとしてきた。

 それを神様とヘカはもしゃもしゃと食べる。



「しかし、あれなんな! P×Pは憂慮企業なん! 福利厚生がしっかりしてるん! それに対して……神様のここは、超ブラックなんな」



 セシャトはその言葉に笑顔を崩さない。が、瞬きをせずに神様をじっと見つめていた。神様は出目金の形をした大きながま口を取り出すとそれを見せて言う。



「少しこれで美味い物でも買うといい」



 それは百円玉が二枚。セシャトとヘカで百円ずつと言う意味なんだろう。毎日千円のお小遣いをセシャトにもらっている神様……それはこの古書店『ふしぎのくに』の売り上げからなのだが、このお店がそんなに儲かっていることもない。神様とヘカが喚き、そしてそれをセシャトがふふふのふと笑う。それを見ながら中々いい味のコーヒーを一口飲んだ。秀貴、彼だけは別の風景を見ていた。かつて、自分の子が小さく、そして奥方がいた時の事。

 それは白昼夢のようで、そこに今ある手に触れる事ができる幻想。



「ふっ」



 秀貴は笑った。恐らくは人外の類が集まるそこで、狐が人を化かすと言うが、これらは人を化かすところがもてなしにきた。幼少の頃に聞いた昔話のキャラクターのように、なんの利害関係もなく……少し散歩をしていただけでふしぎな場所にやってきた。もう少し長居してもいいかと思ったが、この後用事がある事を思い出し、重い腰を秀貴はあげる。



「そろそろ、おいとましようか」

「もう帰るん? 秀貴たん! なんなら今日はヘカのマンションに泊まっていけばいいん!」



 まさかの申し出だが、秀貴はヘカの頭をポンと撫でると「ご馳走になった」と一言。ヘカはその背中をポーッと見つめているので神様はヘカに言う。



「あやつ、あー見えて四十を超えておるぞ」

「なん!」



 セシャトとしてはもはや驚く事もなかった。この店にやってくる人はそう言う人々なのだ。いい意味で普通じゃない人が迷い込む。そんな店。

 秀貴の為に語ろうとしていた作品だったが、消化不良な状況で……扉が開かれる。



「成山ぁ! 秀貴ぁ! この、ビースト事、一文字いろはがお命貰い受けにきたぁ!」



 ビシッ! と人差し指を向けて、そう言って入ってきた少女。ヘカは死んだような目で、神様は「まーた馬鹿が増えよった」と悪態をつくのでセシャトは胸に手を当てて、お出迎え。



「いらっしゃいませ! 古書店『ふしぎのくに』へようこそ」

さぁ、お待たせしましたよぅ! 紹介小説が読みたいと何度もご連絡を皆さんより頂いておりました。『ウサギ印の暗殺屋~13日の金曜日~ 著・三ッ葉きあ』本当は1年目で紹介する作品でしたが、当時は描写などが危険かもしれないという理由でお蔵入りになった本作。当方のレシェフさん等の作品も受け入れられる時代になった事で、2年の歳月をもってようやく! ご紹介ですよぅ!

 私の大好きな秀貴さんは別作品ですが友情出演頂きました^^ これはライターさんへの私のお願いでした!

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― 新着の感想 ―
[一言]  『ふしぎのくに』の皆さま、この度は貴重な紹介小説に選んでいただき、有り難うございます。  一年目に作品名を挙げていただいていたという事実だけでも胸がいっぱいのところ、こうして紹介していた…
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