最終回 ふしぎのくに会議・例
トリックオアトリート! 皆さん、ハロウィーンですねぇ! 毎年古書店『ふしぎのくに』ではささやかなハロウィンパーティーをするのですが、それも中止になってしまったので、かわりにお菓子のギフトを頂きました。我慢ですね! 新チームによる驚きの物語を読ませて頂きましたが、実に面白いです! 是非、皆さんにも読んで頂きたいですね!
気が付けば最終回。これを納品したのが10月のごにょごにょ。
11月作品のミーティング、なんなら来年作品のミーティングまで行われている横で、僕は師匠ちゃんさんとシアさんに滅茶苦茶煽られながら、これを書いています。
隣の芝生は青く見えると言いますが、きゃっきゃうふふと話されている物を聞きながら煽られるのはなかなか精神的にこたえるものがあります。
必殺、コンビニに行ってくりゅ作戦というものが僕の中であるのですが……困った時、トイレだと数分しか時間を稼げないけれど、コンビニなら実質青天井。
「あのコンビニに食料と飲み物を……」
「何かデリバリー奢ってやるからそこで書け! 息をする時間も無駄にするな。書け」
「名無しちゃん、頑張りや!」
シアさん、一部にカルト的な人気があるロリババア……飴と鞭に聞こえるかもしれないけれど、実質鞭と鞭。カロリーゼロ!
耳を澄ませて別のミーティングを聞くと
セシャトさんが「わぁ! このミカンあまーい」とかヘカさんが「最近買ったコートなんな! 可愛いん!」とか天国みたいなお話をしているのに……イラつきはじめた師匠ちゃんさんは、無言で焼酎を飲みだす。そしてシア姉さんはベラベラと阪神タイガースのお話をしてくるのだけれど、僕は残念ながら野球に1ミリも興味がありません。
でもこの二人の良いところとして、褒めるところはしっかり褒めてくれるところだろうか?
「地の文章しっかりしてきたね」
「ほんまやなぁ、シナリオライターとかマジで使えへんと思ってたけどやるやん名無しちゃん」
はい、会話文のみで展開するような文章業を行ってきたのでいまいち、描写表現とか、その小文で全てを表現するという事になれていないのです。12月から公開となっていた作品も前倒しで11月公開となり、11月紹介チームがそのまま新作メンバーになります。なんとそのどちらにも僕も混ぜて頂ける事になり、できれば1話くらいは、紹介小説が書けたらなと思っています。
「本来の大友と、『詩がふた』の大友とは実際別人やのに、ややノーマル大友もビッチ化が凄いで? これ狙ってやってるんじゃなくて流されてない? そもそも『詩がふた』の大友は本来読者にやや嫌悪感を持たれるような作りになってんねん。自意識過剰で、性に対してオープンすぎる。お子様のWeb小説読者が嫌う主人公の姿がルートAの大友で、嫌われるヒロインがルートBのペルちゃんやねんで」
初耳でした。
そんな事、今はじめて聞いたとか言うとどちゃくそ怒られそうなので、言わないけどこれを公開する事ですげぇ怒られるんだろうな。
「そ、そうなんですね」
時間は深夜2時。ミーティングのお開きがだいたい1時なので、翌日仕事があろうと学校があろうと締め切り前の僕には関係がありません。モンスターエナジーを飲んで、画面とにらめっこです。一人、また一人と大人組もログアウトしていくのに、師匠ちゃんさんとシアさんは僕が完成させるまでずっとついてくれているので、すごい安心。
「あの、改稿お願いして……」
時間は深夜3時前、シアさんの静かな寝息が聞こえてくるので、そっとビデオ通話を切ると、師匠ちゃんさんと、個人間でのやりとりを進める。
「なんか飲む? 宅配頼むけど?」
突然優しくなる師匠ちゃんさん、しかし深夜でも明け方でも関係なくデリバリーを使うところがなんというかドエスの片鱗を見せるこの男。
「いえ、もうちょっと頑張りますので、ちなみに冷蔵庫にサタさんに頂いたコロナエキストラがありますから、終わったら飲みます」
僕がそんな調子に乗った事を言ったんだけれど、師匠ちゃんさんが、頭沸いてるのか……突然、一句読みだして僕は多いに吹いた。
「夜もすがらもの思ふ頃は明けやらで ねやのひまさへつれなかりけり」
要するに、今は苦しい作業だけど、いつかは終わるよというそんな一句、こんな事をリアルに言い出すやつがいるなんて僕は開いた口がふさがらなかった。きっとこんなの公開したら処刑は免れないだろうけど、僕は所詮、名無しの黒子だ。パタリロで言うところのタマネギだ(まぁ、みんな知らないだろうけどね)。
そう、要するにいくらでも使い捨てできる量産機であるからこそ、このパンチの効いた一撃を! 来年にはもしかしたらいなくなっているかもしれない僕の名残をここに残しておきたいとそう切に願う。
風に向かい、光に向かい、声たからかに煽る時! そんな妄想夢想をしている僕だったけれど、気が付けばこの追い込まれた時の古書店『ふしぎのくに』ライターの末路を皆さんにお届けする事が出来たのではないかとそう思います。
これをお届けするのはたぶん、ギリギリのハロウィーン。トリックオアトリート。今回は自粛中の渋谷の街で僕は誰と会うわけでもなく、一つの仕事を一か月間やり終えた事を誇りに思うよ! 正直ね。皆さんのWeb小説を紹介する作品を書くという事はそれだけうれしい事で、栄誉ある事なんです。だから、胸を張ってください。
古書店『ふしぎのくに』に紹介された作品というブランドはそこそこ大きいです。
息はまだ白くならないけれど、街並みはジャックオーランタンに飾られる。師走へと駆け上がる準備をする世間とは裏腹に2020年を代表するコロナウィルスの収束は今だ見えず、それでも活気を取り戻してきた東京で、大友はロングマフラーを巻きながらいつもの時計台の場所へと向かう。
「魔本少女ではここでフィギュアのノエルと俺が待ち合わせをしていたんだよな」
大友が、Web小説作品のキャラクターにされるのは『詩がふた』がはじめてではない。少しばかり悲しい、ノエルの事を記憶から消してしまうというそんな感じで友情出演した事がある。
「友情出演というか、完全に俺の承諾を得ていないんだけどな」
本日大友はノエルとデートなのだ。新大久保に新しいスイーツを食べに行き、原宿でウィンドウショッピング。女子にしか見えないコート&ハーフパンツの大友はノエルが来るまで何度か声をかけられては笑顔でそれらを断り続ける。あの作品内の自分もそういえばそうだったなと大友は少し複雑な気持ちになる。
あの作品の自分は似て非ざる者だが、母親がいないのは実は同じ。いつか、あの作品を書いた作者と腹を割って話しをしてみたいと大友は思っていた。
「俺は妹を殺したりはしないからな……回答次第で一発ぶんなぐってやる」
大友の独り言に後ろから「おおともぉ」と声をかけられる。いつ聞いてもかわいい声、いつ見てもかわいい女の子。木崎ノエルの姿がそこにはあった。大友の野心、自分がデザインした服をこの木崎ノエルに着せてファッションショーをいつかしたいとそんな事をかんがえている。
「何見てるんのよ!」
「いや、いつ見ても可愛いなってな」
「あんたに言われると嫌味に聞こえる。そうそう、大友さ。聞きたかったんだけど、昔長い黒髪だったでしょ?」
「うん」
「どうして今は短くしてデジパ当ててるの? むしろ最近かかれているアンタが主人公のどエロイWeb小説【詩がふた】に寄せるわけ?」
どうだろうなと大友は考える。確かにそうかもしれない自分もいる。ただし、一つだけ違う。黒くて長い髪の自分を見ていたら母親を思い出すから……
「これ以上、俺が可愛すぎると世の中の女の子がかわいそうだから」
「その髪型も完全に狙ってるから! まぁいいや、行こっか?」
「あぁ、とりあえずコーヒープリンス行く?」
「う~ん、今日はいいや」
大友はなんだかうれしそうに自分の少し前を歩くノエルを見て、いつかこのノエルも誰かと付き合い、そして結婚。子供を連れてこの街を歩くのかなとそう思う。いつか、今が思い出になって、大友もノエルの事を、ノエルも大友の事を忘れていくのかもしれない。
新大久保で超有名なパン屋さんのパンを二つ買うと、それを食べ歩き観光の為だけにつくられたような若者の街をデートする。
今日のノエルは何か様子が変だった。そわそわと、大友的には何か隠し事でもあるのだろうかと、それか嘘をつけないノエルの何かサプライズでも待っているのか……
「『詩がふた』でノエルをもし殺したら、俺は作者をぶっ飛ばすではすまないな」
何気なくつぶやいた言葉、それをノエルはしっかりと聞いた。そしてノエルは少し機嫌が悪そうに聞く。
「大友はさ、『詩がふた』のキャラクターだと、ペル、トゥルーデ、クロ。誰が一番好き?」
難しい質問だった。あれはよくいるヒロイン像を強く色濃くだしてある造形で、実のところ大友は皆結構好きなのだ。そんな中でも特筆するとすれば……
「なんだかんだ言ってペルが妹みたいで可愛いかな」
むぅとさらに機嫌が悪くなるノエル。そしてそれは誰と答えても同じ反応が返ってくる事を大友は知らなかった。
「いきなりどうしたの? あれか? 女の子の日か? 知らんけど」
ゴッ! ノエルの鉄拳が大友の腹部に突き刺さる。冷ややかな表情をする大友だが心底痛い。やせ我慢をしているのだ。痛がる顔なんて可愛くない自分を見せるわけにはいかない。その恐るべきプライドにノエルもクスクスと笑う。
「ほんとバカ。焼いてんのよ」
焼いているという。何を? 大友はこの程度のかけあいでバカと言われる筋合いはないが、まさかと思って聞いてみた。
「もしかして、餅?」
真っ赤に染まるノエル。そして本当にこの一瞬の切なそうな顔に大友は抱きしめたくなった。それほどにかわいい。
「そうよ! やきもち焼いてんの!」
焼き餅を焼かれてしまった。大友は頭の中で整理するように、大根おろしをすってそれに御餅をつけて食べる自分を想像する。
そして冷静になると頷いた。
「あのさノエル」
「うん……」
「高校卒業してさ、大学行くじゃん。多分」
「うん」
大友は頭をかく、大友はまさかこんな事になるとはなと思って言った。
「大友ノエルになる?」
それは結婚しようというプロポーズ。それを聞いたノエルは、驚く、口を押える女の子のあざといポーズナンバー5には入るそれ、そして返事。
「は? なんで?」
「えっ? 俺が他の女の子を……」
「女友達取られたみたいで、焼き餅やいてたの! それがどうしてアンタと結婚する事になってるのよ! 私はあーいう渋い系の人が好みなの!」
ノエルが指さす方向、。緑の着物を着た金髪の青年、いや年齢不詳の男性が、神保町はどちらかと尋ねている姿。
大友は深呼吸してからこう言うしかなかった。
「あ、そう」
えー、名無しです。今回を持ってこれが! ブラックな古書店『ふしぎのくに』だ! は完結となります。まぁ、あれです。古書店『ふしぎのくに』ライターはやべぇ! それを身を持って知る事ができました。読みにくい駄文だったかもしれませんが、一ヶ月間お付き合い頂ありがとうございました。今後もセシャトのWeb小説文庫をよろしくお願いします!




