表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第七章『隠者ハーミットと図書室塔の少女 著・祥之瑠于』
60/90

人の成長はどう感じるかである

巡り巡って、紹介させていただいた作品を読んだ読者さんの作品をご紹介し、それがどんどん続いていけば嬉しいですね^^

打ち水は止まっても、その流れは川になり、海になり語られる事がなくなったとしても海があればその海に潜る人がでてくれる事を祈ります!

 どんどんとノック、そしてその後に大きな声が聞こえる。



「セーシャとさーん! あーそーぼ!」



 赤は古書店『ふしぎのくに』にやってきた。ガラガラと扉をあけたが、そこにセシャトの姿はない。代わりに、やや気品? あるいはある種の傲慢さを感じる黒髪の少女がエナジードリンクを飲みながら店番をしていた。



「なんなん? セシャトさんは今日は留守なん。わかったら帰るんな!」



 とまぁ、接客を絶対にさせてはいけない反応を示す黒に身を包んだ少女。それに赤はわなわなと震える。知らない人。周囲を見渡すとここが古書店『ふしぎのくに』である事は間違いない。なのに、知らない人。



「ヘカ先生、お客さんビビってるじゃねーすか! ダメっすよ!」



 母屋からひょこっと顔を出したのは人当たりの良さそうな女性。黒髪の少女をヘカ先生と呼ぶ。



「欄ちゃん、ヘカは暇じゃないん! こんな客の来ない古書店の店番なんてしているより、読者の待つ大作を書かないといけないんな?」

「それ読んでるのセシャトさんと自分だけっすよ。ほらほら接客接客。いらっしゃいませっす! ですが、生憎セシャトさんはここには今日はいないっすよ」



 赤は俯いて、冷や汗を流す。ポタポタと、言葉が出ない。両手に持っている『隠者ハーミットと図書室塔の少女 著・ 祥之瑠于』を見て、欄は指差す。



「あっ、この作品。こないだFPSしてた時にヘカ先生が言ってた作品じゃねーすか?」

「なん? あぁ、るうたんのなんな! ヘカの盟友の作品なん」

「また勝手にそんな事言って……お客様、お名前は?」

「ち、ちぃ……」

「ちぃさんっすね! 自分は欄っす」

「あ、あなた。嘘ついてる……」



 赤は欄にそう言った。それに欄は一瞬鋭い表情をするが、ヘカのいつも通りの虚な瞳を見て、笑顔に戻す。



「あぁ、自分国際指名手配犯なんで、偽名なんすよ! だから、欄でオネシャス! そんな事より、その作品。自分も読んだ事有りますし、ヘカ先生の愛読作でもあるんで、よければお話しねーすか?」

「うぅ……うう……セシャトさん」



 赤はグルグルと頭がまわり、ここにはいないセシャトに助けを求めようとする。その様子にヘカは虚な瞳の奥底の深淵を輝かせて言った。



「お腹減ってるんな! 欄ちゃん、ウーバイーツなん」

「絶対違いますって!」

「いいからウーバイーツなん! この顔はピザを食べたがってるん」

「それヘカ先生が食べたいんでしょ?」



 ヘカは言葉が出なくなっている赤にやや高圧的に聞いた。



「どこまで読んだん? それとも何周目なん?」

「……今から5章なんさ」

「サリエルが異様に男前な話なんな」



 ヘカはくぴっとエナジードリンクを飲むと、エコバックから一本レッドブルを取り出して赤に渡す。



「赤たんもまぁ、いっぱいやるんな!」

「あぅ……あぁ……りがと」

「エナジードリンクをヘカと飲む者に悪い奴はいないんな!」



 コツンと乾杯するヘカと赤。それに欄はどうだろうなと思う。国際指名手配犯の自分、大泥棒の石川、殺し屋の木人。ヘカとエナジードリンクを飲み交わす連中にまともな奴はいない。



「この作品には一つ問題があるんな!」



 ヘカは二本目のエナジードリンク。彼女の象徴たるモンエナ(アメリカ版)のプルトップを開ける。



「問題ってなんなんさ?」



 今まで赤は本作の欠点らしい欠点は見えてこない。異世界ファンタジーであるが、本筋の物語と、それに関わる主人公達を取り巻くクエストや人間ドラマを垣間見て温かい気持ちになってきた。このヘカという少女のいう事によっては戦争すらじさない覚悟の赤。



「イケメン成分がハーミットしかいないんな! フランはガキなん。ネイサンに対するおじ萌はヘカはないん!」

「おじさんいいじゃねーすか! 年上の余裕っすよ!」


 欄が突っ込むが、それにヘカは叱咤する。



「蘭ちゃんは黙ってるん!」



 赤は驚いた。ヘカの読書は幼稚すぎる。幼稚すぎる読み方だった。だが、一つ一つを作品全体を、そんな風に楽しんでいるヘカ、斬新で有り、驚愕でもあった。そしてヘカは幼稚なだけじゃない。



「ネイサンとヘカはそっくりなんな!」



 小説語りが、セシャトとは違うベクトルで飽きさせない。突飛をしない事を言ってのけるのだ。ヘカは目の隈を差し置いても可憐な少女だろう。それと優しいが歳の離れたネイサンとそっくりとは是いかに? どうせしょうもない事なんだろうと思いながらも気になる赤。



「ヘカは人望があるんな! 友達だらけなん! 特に、欄ちゃんはマブダチなんな!」

「まぁ、ヘカ先生は命の恩人っすからねぇ……まぁヘカ先生とネイサンさんが似ているかは別として、この大人の掛け合いってWeb小説だと珍しいっすよね? それも結構しっかりしていて、これWeb小説読者層的には苦手かも知れねーっすね」

「……今は、なんな」



 ヘカのその言葉に欄と赤は気づいた。まだWeb小説の読者層の時代が追いついていないとそう言っている。ヘカは提言している。今後、Web小説のレベルは極めて高くなると……



「まぁあれなんな! ヘカや赤たんはセーラの場面の方が楽しめるんな! 業の深い欄ちゃんはハーミットとネイサンの場面を楽しむん。少しだけ、本作は文章が硬いんな。でもサリエルたん達への愛を感じるんよ。それにしても蛇に顎ってあるん?」



 ヘカは蛇を引っ張るようなジェスチャーを取るので、赤は気がつくとあははと笑っていた。各々が自由に発言し、お互いの意見を肯定も否定もしない。だから赤は参加してみた。



「精霊と妖精ってどう違うんさ? 精霊は種族みたいなものがない、ゴーストみたいな感じで、妖精は種族があって、そこに存在するもの? みたいなイメージで赤は考えているさ!」



 否定されるかも知れないと思いながらドキドキしていると、欄とヘカはうなづく。



「そういう考えもあるんな!」

「そういう風に伝わっている事もあるっすね!」



 肯定も否定もしない。が、なんだかしっかりと考えてくれる二人。そこでヘカと欄の妖精や精霊論議が始まる。それらは本作とは全く関係のない物から、本作の世界設定まで考慮して……



「本作では妖精と精霊は似て非ざる者なんな? 人間が一般的に行使できる力とは別の固有スキルを持ってるん。とりあえず本作を読む上でこの設定を念頭に置いて考えていくといいんな! たまに知識は邪魔になるん! でも知識がないと作品を広くは楽しめないんな!」



 欄は知識の怪物である。この領域になると、新しい情報はそれとして受け入れる事ができるが、一部ファンタジー知識に特化していると自分の得意分野に関してそれが全く違うものとして語られると大いに否定する輩がいる。



「まぁ、一度だけ冷静になるといいんすよ! 世の中の神話や伝承、妖怪、神々、妖精、塵芥は全て作り話なんすから、それを勝手に変えてしまっても別に問題ないし、解釈は人それぞれなんすよね! まぁ、だから宗教戦争とか起きるんすけど、ファンタジスタはテロリストにもなるって事っす。セーラさんとサリエルさんの関係性をみても、人それぞれ思うところはあるハズっすよ! では赤さんからどうぞ! 3・2・1」



 欄の突然の無茶振り、常にセーラの事を考えてくれるセーラ、セーラもサリエルの事が大好きで、赤は羨ましいと思っている。



「ちぃは、こんな相棒が欲しいんさ! サリエルみたいに助けてくれたり、セーラみたいに、頑張れる子がいたらちぃも頑張れるんさ」



 赤のパターン、それに成る程とヘカと欄は頷く。赤はこれがなんだかとても嬉しかった。二人は初めて何かを教わるように赤の話を聞くのだ。続いて欄。



「自分はあれっすね! セーラさん。最初の頃より明らかに成長してるんすよ! これやばくねーすか?」  



 ラノベやWeb小説のファンタジーの一つの命題としてキャラクターの成長譚がある。単純に魔王を倒すまで勇者が力と心を育て、旅路の末に……という感じに、欄はセーラが、一人でここまで頑張れるようになった事に感動を覚えていた。

 そして自身も小説を書くヘカは違った。



「ヘカが書いている小説に、『最果ての洋館』って話があるんな? そこで霊能力の高い男の子に力を貸してくれるブラウニーって妖怪がいるん。それは、ブラウニーは男の子の霊能力を独り占めしたいから力を貸してくれるんな? ヘカは、最高の精霊であるサリエルがなんでセーラにここまでご執心なのかが気になるんよ! ネイサンのお願いだったとしてもあまりにも猫可愛がりすぎなんな? まぁ、セーラがここにきたらヘカ達も多分、スペシャル甘やかすんけど」



 3人はしばらく、もしセーラがここに遊びにきたらと考えると、各々に妄想を膨らませる。欄はお金にものを言わして古今東西の甘いお菓子を用意するだろう。ヘカはきっと抱きついて頬擦りし、嫌がられるのだろう。そして赤は絵本を一緒に読みたいなとかそんな事を考えていた。



「サリエル、すごい魔法を使ったんさ!」

「赤さん、魔法ってそもそも奇跡のことっすからね。昔は空から降る雨や雪、それは神々の魔法と思われていました。いまだかつて天候を人間は操る事はできねーすから、本来魔法というものはここでサリエルさんが使ったような物の事をいうのかもしれねーっすね?」



 うんうんと赤と意気投合しているとヘカは少し思い出したかのように呟く。かつて、自分は魔女と一緒のいた記憶。魔女は魔法を使った。それはサリエルの奇跡のようなものでも、ハーミット達が使う一般的に魔法と呼ばれるようなものでもない。薬草を調合し薬を作る。それが魔法。



「まぁ……そんな事もあったかもしれないんな。妖精と人間が関わらない方が良かったのか、それとも関わるべきだったのか、実に気になるんな! ようやく物語の伏線が回収され始めたん。さぁ、ハーミットがぶち切れたんな? ようやく面白くなって」



 ヘカが語ろうとしていると、お店のドアがノックされる。



「ハオユー」



 ウーバーイーツが来たのである。ドアを開けた先には、ヘカのよく知るバイト戦士。



「木人ちゃん、ここでもバイトなん?」

「あぁ、己の趣味だからな……にしても欄姐々がいるな……殺します」

「木人ちゃん、帰るん! 今日はお客さんがいるんな!」



 そう言って指差す方を木人はみる。赤はビビリながら頭を下げた。そして「そうか」と言って帰る木人。一同は胸を撫で下ろすとピザと五目炒飯を受け取った。古書店『ふしぎのくに』からでる際木人は呟く。



「ヘカと欄姉々しかいなかったが、何かの新しい遊びか? 馬鹿がうつるからつっこまなんだが……ん? は?」



 木人は水筒の水を飲もうとして、水筒を握り潰した。神様が……茜ヶ崎理穂子と手をつないで歩いているのである。

隠者ハーミットと図書室塔の少女 著・ 祥之瑠于』今回はヘカさんが友情出演ですねぇ^^

そういえばヘカさんのチームに勝手にるうさんをいれていたような気がします。

私と交代してヘカさんにツイッターと広報活動を任せていた時期に、仲良くして頂いたみたいです^^

ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ヘカさん!会いたかったですよう!盟友ですって!嬉しくって、この気持ちだけで生きていけます! 魔法の話、とても勉強になりました。 自作で魔法とかだすたびにどこか恥ずかしくって。あんまり深く言及…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ