勇気ある一口が人生のスパイスである
夏といえばカレーですよね! 私は甘い物が好きだと一般的に思われがちですが、フルーツサンドやカレーライスをよく喫茶店で頂きます。実は、カレーライスは家で食べるものじゃないと、ずーっと思っていました。それがかなりカルチャーショックでしたねぇ^^ 逆に私はパンをあまり買いません。甘い総菜パンは買いますよ! 食パンに相当する主食のパンは作るものだとずーっと思ってました。これはあれですね。驚きでした!
小麦色に焼けた肌、袖なしのシャツにショートパンツの出立でやってきた赤はセシャトにお土産。
「ばあちゃんが、送ってくれた月餅なんさぁ! くるみいっぱいで栄養たっぷり!」
「おや! それは実に興味深いですねぇ」
「セシャトさん、それより! 本! セーラはどうなったんさ!」
セシャトが金の鍵を使い取り出した本をゆっくりと読み進め、赤は頬を染める。
「フランがセーラを想ってるのもいいんだけど、ハーミットがフラン達の事を大事に想ってるの……なんかいいね」
同気相求。そしてハーミットは彼らに恐らくは冒頭のそれを重ねる。この項でおすすめなのはこの世界の優しさと……フランの愛され方だろうか?
そして赤の手が止まる。
「セーラのマァマ、病気治らないの? そんなヤダ」
セシャトは赤が今後、この古書店「ふしぎのくに」にたどり着けなくなるかもしれないなと薄々感じていた。赤は大人になろうとしている。それに寂しさを感じつつセシャトは赤が持ってきた月餅を皿に乗せて赤の前におく。
「さぁ、勇気を出して読み進めてみましょうか!」
きっとこの森のクエストをこなせば綺麗さっぱり良くなると思っていた赤はショックだった。ゲームの薬草は使えば体力が回復する。死に至らない。昔、学校の先生はよくこういう事を言った。
命は一つしかありません。
ゲームのようにリセットを押しても戻りませんよと、これはゲームという物を悪とする意味も少なからずあったのだが、命を大事にしなさいという事をわかりやすく伝えようとした。
されど、子供は賢しいのでセーブがあるだの、今時リセットで元に戻らない等いうのだが、まさにこのハーミットのクエストが、大事には至らない。されど失ったものを取り戻すのは容易ではないと。今や赤はフランに同化している。
「と、とんでもない危ない蝶なんさ!」
鱗粉を吸うと全身が痺れて動けなくなると……それに赤は少しだけ驚きつつも笑う。
「これは物語だね。こんな危ない蝶はいないよ」
「あらあら、そうでもありませんよ! あえて名前は伏せさせていただきますが(悪用禁止の為)、日本でも公害にまではなりませんでしたが、とある蛾による集団的に具合が悪くなったり、幻覚症状がでた事件がありました。それに毒虫の解毒はかなり難しいんです。ですから、こんな蝶がいてもおかしくはないですよぅ。こんなところにフランさんを連れてきてしまったからこそ、ハーミットさんは細心の注意を払っていますねぇ」
「これはちぃでもヤバいと思うんさ! カマキリなんね」
昆虫の中でも、進化が完了しているカマキリ。あれは好戦的でまれに捕食動物すら殺害する事がある。男の子で虫を好む子は指を切られた事が記憶の片隅にあるかもしれない。一つ、ここで赤はセシャトに尋ねる。
「セシャトさん、虫に痛みはあると思う?」
巨大なカマキリが痛がったシーンに関して、無脊椎動物には痛覚がないと現状言われている。セシャトはこれに関してどう答えようかと思ったが、赤は語る。
「虫は、多分痛みがあると思うんよ。ちぃ、山の中で遊んでいた時、闘虫のコオロギが攻撃されて、逃げようとしたのを見たんさ、ちぃ達みたいな痛いじゃないかもしれないけど、痛いはあると思うの」
虫の痛覚論議に関して、現状は実は分からないというあたりで止まっている。神経的な痛みは存在しないのだろうが、別の感受帯により痛みを感じている可能性がある。
「この場合は魔物のような存在でしょうが? 当然的に生を命を持つ方ですから、痛いと思うんでしょうね。赤さん、その調子ですよ! 作品の感想という物はご自身の中にあります」
フランの勇気とハーミットの起点で、難を逃れる。最初こそ、ハーミットを警戒していたフランももう年の離れた兄弟のように息が合っている。そしてそんな二人を楽しそうに読みながら赤は面白い事をいう。
「魔法使いってさ、何で身体鍛えないんだろうね? 物理も得意なら向かうところ敵なしなんさ!」
それをいうと、ロールプレイングゲームがびっくりする程面白くなくなる。所謂。勇者というポジション。
セシャトは、これに関してとても古い小説から一つの答えを持っていた。
「赤さん、例えば剣士の道と魔法使いの道の二つがあったとします。それをこう考えてみてもらえますか? 赤さんが、今後文系の学問を目指す事。そして理系の学問を目指す事。もちろん、どちらも同時進行は可能です。ですが、それは習うまでです。習字という習い事があります。これは字を習う習いごとですね? ですが書道はどうでしょう? 書の道を歩む物です。こちらになると、終わりがありません。他の事に現を抜かしていられないんです。魔法にも終わりがありません。剣にも終わりがありません。ハーミットさんは身体を鍛えるよりも一つでも多くの魔術書を読む事を選ぶのでしょう」
まさか、セシャトも本作から人生について語るとは思いもしなかった。そして森の生物がおかしくなる理由は人間に問題があった。
これは……
「冒頭や、セーラが読んでいた伝承なんさね……物語の道が見えた気がするんさ」
「はい、本作の見せ方のうまいところは、ブレが少ない事ですね。作品作りの基礎は出来上がっています。広げようともせず、着地するところの予想と、風呂敷の広げ方がとても上手です。これを一般的に小説の体をなしていると言います」
う~ん、う~んとうめく赤にセシャトは何だろうと見ていると、赤は思い出した。
「ネイサンは、夏目漱石みたいなんさ! 兄弟が逆なんだけど」
夏目漱石は長男が大好きだった。どのくらい好きかといえば、坊ちゃんで、本来の兄とは違い性格の悪い兄を登場させるくらいには溺愛している。兄は家督を継ぎ、漱石の好きなように生きさせてくれた。兄が病死した後、こんな家は大嫌いだと漱石は家督を継がなかった。そんな夏目漱石とネイサンを赤は重ねて見る。
「実際、長男が継ぐものなんでしょうが、できた弟さんなんでしょうね。そしてハーミットさんの身分についても当然。ご存知、この世界がどうなっているかは全く語られていませんが……もしハーミットさんに何かあれば、大変なんでしょうね」
赤は時代劇が大好きだった。大概、若や姫君が危険な目に遭ったらその藩は……
「お取り潰し! お家断絶なんさ!」
「あらあら、古風なお言葉をご存知ですねぇ! そうですねぇ! 大変です。ジェイデンさんはお兄様の肩を持ってあげたい反面、もちろん家を守らないといけません! これに関しては、ネイサンさんも協力せざる負えません」
二人して、どんな事になってしまうんだろうと考えて目があったので笑い合う。そして赤のお婆ちゃんが作った月餅を食べる。
「はっひゃああ! これは美味ですねぇ」
同じく両手に月餅を持って赤はパクパクと食べる。そして何かヤバい薬でもやっているかのようにぼーっとする。
「ばあちゃんの月餅。ウマー……にしても、この表現好きなんさ! 二人の髪が名残惜しそうに最後の風に揺れた後……情景が浮かぶんさ」
赤のポニーテールがふにふにと動き、それを目で追うセシャトは赤の髪ゴムを解いた。
「何するんさ?」
セシャトは櫛を持つと赤の髪を解いて、髪型を変える。単純な後ろ括りではなく、編み込みを入れ、セシャトは中々の出来にうなづく。
「ふふふのふ、よくお似合いですよぅ!」
「ちぃは女じゃないんさ……それにしても魔術と神術って何なんだろう?」
「これは本作の特殊な設定と考えていいでしょうね。魔術は、覚えれば人がわりと汎用的に使える物で神術はそうではないんでしょう。魔法という概念の種類のようなものでしょうか?」
名前をあげる事はできないが、ふしぎのくに関係者が関わる某ゲームに関して魔法と魔術は違う物として表現しているが、実際同じ物である。もし、魔術は人間が使えて、魔法は神々の云々と語る連中がいれば、超昔の大作家が書いた小説の毒されている。同じ理由で魔剣と聖剣も同じ物だったりする。これは豆知識として語っておこう。
「私は目玉を宝石と語る本作の作者さんの、粋な表現が好きですねぇ! 生きている瞳は輝いています。そして、死者の瞳は光を失っています。そう、瞳は一つしか存在しない、いつか朽ちる宝石と言えるでしょうね」
「確かに、いい表現なんさ」
二人してほのぼのとしているとふと赤は少し辛そうな悲しそうな顔をする。それにセシャトは何事かと思うと彼はポツポツと語った。
「フランはちぃより小さいのにしっかりしてるんさ……ちぃはワガママで学校行っていないんさ」
これに関して、肯定すべきか、否定すべきかセシャトには知る由もない。なんせ、学校に行ったことがないのだ。
「赤さん、私は学校という場所がどれだけ楽しくて、どれだけ辛い場所なのかわかりません。小説や物語での学校の楽しさ、そして辛さという物は知っていますが、それが全てではないんでしょう。恐らくですが、これからの世界は学校を出る事はさして重要ではなくなるかもしれません」
学歴という物にこだわるのは日本と日本に影響を受けた国々、そして詐欺師程度なのだ。どの学校に行くかより、何の学問を学ぶか、そして何を学んだかより、何をしたいのか、そこで自ずと自分の人生設計はできてくる。
だからこそセシャトは赤に伝える。
「勉強をしに行く、学校へ行く……ではなく、先生でもクラスの人でも、学校のスタッフの方でもいいです。お友達を作りに行くと考えてみてはいかがですか? 私と、赤さんのように」
セシャトはあえて、自分に指を刺してから、赤に指を刺した。私とあなた……この関係は一人ではなし得ない。赤は幼年発達障害を持っている。そしてセシャトの知り合いにサタという大人の発達障害を持っている人物がいるが、普通にコミュニケーションを取れ、一般サラリーマンの数倍は稼いでいる。
学校やあらゆる場所で、最も重要な事は、大事な友達を得れるかどうかなのではないかとセシャトは考えていた。
ぼっちは一般的にいうリア充を恐る。だが、リア充もボッチは何者なのか知らず恐れているのだ。
そう……
「その一歩、踏み出してみてダメならこのお店にまたくればいいですよぅ!」
赤は口の中いっぱいに入れた月餅をアイスティーで飲み干すと、うなづいた。
「うん! ちょっと明日行ってみりゅ!」
『隠者と図書室塔の少女 著・祥之瑠于』願いは届くのか、それとも物語はトゥルーエンドというものはないのか?? さぁ、勇気を出してページを開きましょう。そしてオヤツに美味しい紅茶を用意して、エアコンの温度は適切ですか? それでは読書開始です!
・・・・・・実はこの前メイド喫茶でメイドさんになってみました。大変恥ずかしかったですねぇ^^ ヘカさんやダンタリアンさんのような方の特権階級ですね!




