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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第七章『隠者ハーミットと図書室塔の少女 著・祥之瑠于』
56/90

結婚したい男と教育現場の闇

皆さん、甘口カレーは好きでしょうか? 最近、フルーツの入ったカレーを頂いたのですが、実においしかったです。辛口のカレーは私は苦手なんですが、中辛のカレーはその後のフルーツを楽しみにできます。この夏バテ対策にはカレーを食べてみてはいかがでしょうか?

 諦めたくはない・・・・・・でも選ばなければならない。人生とはその連続なのだ。食事をして、湯の行水をして、暖かいベットで丸くなる。

 そんな事が突然、明日・・・・・・いや、今できなくなるだなんて事が起きたらどう考えるだろうか? 衣食住を奪われた人間はもはや人の間を歩む者ではない。

 

 ちはやふる 神代も聞かず 桜門から汗だくに走り回るとは



                      ★



「たこ焼きミックス、四袋買うてきたけど、これでええん?」

「はい! これだけあれば神様もご満足されるでしょうね!」



 セシャトの古書店『ふしぎのくに』に青い髪に葵の着物、それを襷掛けにした少女がキャベツをトントントンとみじん切りにしながら人懐っこくセシャトに話しかける。その瞳は猛禽類のそれ・・・・・・西の古書店『おべりすく』の店主・シア。神様とたこパをする為に店に来たが、神様が来ない。



「ところで神様は? お酒も色々持ってきたんよ?」

「そうですねぇ、今日は老人会もないはずですし・・・・・・お散歩でしょうか?」

「グラス、借りてえぇ?」

「はいただいま!」



 セシャトはシアのカラーに合わせた葵の色をしたグラスを持って渡すと、それになみなみと注いだ日本酒をかかげてクイっと飲み干す。



「なんかセシャトさん、Web小説読まへん? 神様待ちながら、酒の肴になんか面白いWeb小説をさ」



 そう言ってお手玉を見せるシアにセシャトは鼻に手を当てて、スマホの画面を見せる。スマホを通り越してセシャトを視線で殺すくらい見つめてから小悪魔的に微笑む。



「へぇ、ええの選ぶやん」

「今、中学生の男の子と読み合い、感想文を書いてもらってます。是非、シアさんのお話もお聞きしたく、二章なんていかがです?」

「ホンマ、セシャトさんショタ好きやなぁ・・・・・・まぁええよ。読もか?」



 シアはたこ焼きの生地を冷蔵庫に入れるとチェアに座り、縦割れした獣の瞳を閉じる。



「セーラは環境の変化に対して、何かあったんやろな? ある種、この環境は甘やかされてるんかもしれへん・・・・・・せやけど、これはあれやな? 偏食、これも心の病気の一つやねんけど、この治療って少しずつ環境を変える為に味を変えたり料理を変えたり、少しずつ変化を与えていくんや・・・・・・せやけど、変化がどうも大きすぎるんやね」



 そう・・・・・・もはやそれは変化などという言葉では片付けられない。ここは極めて面白いというより上手い。セーラは基本的には、特別擁護されている。学びの為に、一部セーラが安心できる対象とのみ面接していたわけだが、火急の事態、それも学園長は留守ときた。ならどうするべきか? 当然のごとくセーラが在籍している教室の担任あるいは学年主任がその任を全うしなければならない。そこには学園長がどうだとか、サリエルがどうだとかではない。



「おや……シアさんはこのシーンを評価されますか? セーラさんの先生が強行的にいらしてフランさんは慌て、サリエルさんはお怒りになり、ハーミットさんがセーラさんの保護者代理になるシーンですが……」

「そこやん! ウチは作品のモブの背景を読み、作品の構成を見るのも好きなんや! 知ってるかセシャトさん? 面倒ごとを好んでやる奴なんておらへん、そういう意味ではこの先生は、この世界の社会で自分の任を全うしとんねん。どう考えるかは別やん。学園長の許しがなくて接近する事、知らんわけないやん……せやから、大人はハーミット、そして人外であるサリエルは少し子供っぽい、これは神やそれに相当する者特有やからかもしれへんな?」

「どういう事です?」

「まぁ、色々あるやん、宗教でも同人神学のクトゥルフでも神の行動理念は自動化されとんねん。ルールに則って動くとでも言えばいいか? 子供の側面があるんやな。まぁ、話は逸れたけど、メインキャラクター以外の世界観、生活、空気、息遣い。これを感じる事ができてより作品は鮮明にその姿を出すんちゃう?」



 シアは片目を開く、縦割れした綺麗な瞳がセシャトを映す。シアはどちらかと言えば厳しい読み方をする読者でありテラー。そしてセシャトの何倍も知識を持っている。神様を前にすると発情する事以外は完璧なお姉さん。

 二人でこうして時間を潰す事は珍しく、語り合いには熱が入る。



「セーラさんのご両親は共働きでお母さん、ご病気になられました。お父さんは行商人、ここでハーミットさんは外に連れ出そうとされますが、これに関しては?」



 セーラは学園生活内で一部の心許した相手としか関われない。そんなセーラをハーミットは連れて行くという……



「ちゃうねんなぁセシャトさん、セーラがうまくできなくなるのは、この学園という空間、そのテリトリー内での発症が大きいと思うねん。強迫神経症は不思議な事に家に帰ったり、その場から離れるとだいぶ楽になる……まぁあれやサザエさん症候群や」



 シアが冗談を言ったつもりだったが、セシャトははてな? という顔をする。そして首をあざとく傾げて聞き返す。



「なんですそれ? サザエさんってあのサザエさんですよね?」

「昔は視聴率が異常に高くてな? サザエさん見終わって夜寝たら翌日学校、行かなあかん。仕事行かなあかんで鬱拗らす症状や。まぁ、サラリーマンが休みの日より、休みの日の前の日の仕事が終わった時の開放感みたいなもんや。実はウチもセシャトさんもセーラみたいな感覚は備わっとる。その感受性が強いんがセーラみたいな子供なんやろな? はっきり言ってセーラだけは異常なくらいクリアにキャラクターが見えてくる……それにしても神様遅いなぁ~、せっかくエステも行って新しい反物下ろしたのに……なんかセシャトさんお菓子でも作ったろか?」

「え!」



 いつはセシャトがお菓子を作る番なのだが、シアはとことん甘やかしてくれる。それはセシャトやトトが神様の子供のような者だからなのかもしれない。



「ふふふのふ、シアさんはお母さんですねぇ!」

「セシャトさん、アホいいなや? 褒めてもなーんもでーへんで、あの頭のイカれた女にはこんな事せーへんねんから」



 恐らくはセシャト達の長女に位置付けされるヘカの事だろう。そのヘカは本作『隠者と図書館の少女』のファンである。



「ヘカさん、本作を大変愛でていますよぅ」

「作品の趣味だけはええな。陶器の小さな入れもんある? パイ皿でもええで」

「あら、まさかスフレパンケーキを?」



 星乃珈琲店が作り出し、まさかのレシピ公開をしている最上位パンケーキ、それをこの母屋で再現しようというのだ。



「知ってるかセシャトさん、セシャトさんが大好きな珈琲、その本場は関西や、バストのアホがやたら豆送ってくれるやろ? 上島も丸福も星乃も高級チェーンは大抵神戸の珈琲屋な。ウチは三番館とかが好きやけどな。石臼珈琲今度飲みにきぃ、関西古書店ツアー一名様、ウチのガイド付きや!」



 セシャトは目を輝かせる。このシアと一緒に甘味処や古書店、古本屋を回っていけるなんてそれはテーマパークに行くような物。パンケーキ生地を作るしあの周りには浮いているお手玉にスマホ。それを見ながら作品も読んでいる。なんて便利なんだろうとセシャトは眺めているとシアは語る。



「目の病気、この場合は呪いみたいなもんなんかもしれへんな……セーラの母の病を治すためのクエストが始まるんやけど、ハーミットみたいな男セシャトさんはどうや?」



 さて、どうだろうか? どう思うだろうか?



「えっと、とても頼りになり、フランさんやセーラさん、お子様相手でも対等の存在として扱っていただけますし、とてもできた素敵な男性じゃないでしょうか?」



 はっきり言おう。結婚したい。ハーミットと結婚したい! そんな男性であるが、シアは違った。



「分かってないなー、セシャトさん。こういう男は完璧すぎて絶対結婚できひん! 男はなんもできへん、全部ウチが尽くしてあげれるようなそんなんがええんやんか!」

「シアさん、神様は男性じゃないですよ。神様ですから」

「分かってるて! ウチは男の子の方も女の子の方も神様の事、愛してるんやから! あっ、言ってもーた! これ神様に話しといてな! じゃなくて、ハーミットは手際が良すぎる……まぁ、大体何者か想像はつくやろうけど、こういう伏線が性格や態度が出るのは気持ちええな! って話や」



 そう、シアは誰もハーミットと結婚したいという話をしていたわけじゃない。が、彼女はダメ男に尽くすタイプの身を滅ぼす性癖をしている事を暴露するハメになり、セシャトはできる限り真顔で聞き流すことに徹した。



「そ、そうですね。ここでセーラさん達の現状の真実が見えてきました。フランさん、外に飛び出してしまう……これは反抗期なんでしょうか?」

「注意欠乏というよりは多動性障害の一つやな。学園長も言ってるやろ? フランとはちゃうけど、セーラの症状も修道院におった頃はなかった。日本やと幼稚園や保育所やな? ここで集団ルールっちゅーもんはある程度教わるんやけど、甘々やからな。そこでいきなり前に倣えの小学校。心を作ってる最中の子供はここでフランみたいに多動性障害を発症する子や、セーラみたいな強迫性神経症を起こす子が出てくる。まぁ、日本のある種闇やな」



 フライパンに蓋をして蒸し焼きにスフレパンケーキを作るとアルコールを飛ばしたラム酒シロップにカスタードクリームを添え、ミントの葉を一枚載せてセシャトの前に出した。



「はい、お待ちどーさん」

「はっひゃああああ! 美味しそうですねぇ」

「美味いんや。ヒステリックな女教師か、まぁこれはどうなんやろな? わりとデリケートな問題や」



 メインではなく、周囲の背景から作品を読むシアはこれまたセシャトがどういう事だろうという話をする。



「まぁ、学校の先生も人間やねん。あと、社会にまともに出てへんから案外子供やねん。先生は建前上、尊い職業や。せやけど、同い年の同僚や歳の離れた多くの上司に揉まれる事を知らん。そんな中で、集団の子供の教育者をせなあかん。三十人も四十人も同時にやはっきり言って死の職場やな。できる限り、統率をとり、多くを満足させる方法を考えなあかん。だから思い通りにいかないとヒステリックにもなる」



 必ずいる学校の先生でヒステリックな方は、実は精神病を発症している。生徒が病んでいるように教師も実は病んでいるのだ。これもまた日本の闇。



「どうしたらいいんでしょうか?」

「せやな。教員資格をとるのに、関係ない会社組織に五年から十年働いた人間とかを当てた方がええかもな。教師も周りが子供ばかりで、反抗できない相手を前にすると、自分が偉くなったような気になる。支配者思想や。ある種、教師に向いとるのは他人に興味がない人間なんかもな。フランもセーラも、ハーミットも気にしすぎる人間は馬鹿をみる。なんで自分は他とちゃうんやろーなってな」



 以下、教員免許を持ち、認証心理士の資格、カウンセラー資格などを持つシアの見解。彼女曰く、日本の学校教育の問題は何かと聞くと、日教組の一言で終わってしまうので、今回は人間の行動をメインに語ってもらった。



「セシャトさん、ウチな。この“初めてのお使い“好きやねん」



 言わずもがな、セーラが母親を連れて学校に行くシーン。出来るという事をセーラが自覚するシーン。ここはあと一歩、学校に敵になんていない。君は必要とされていると読みながら独り言を言ってしまうライターがいる程度には短文ながら読ませてくれる。描写に付き添いの医師。ここもまたリアルであり、成る程なと思うのではないだろうか?



「シアさんが仰るとおり本作はメインではない方々の優しさと言いますか? 世界の本懐について優しく書かれているところに脱帽しますね」



 フランが一生懸命にユーファの花を採取しに行った際、本来であればさとして返すところ、警備のおじさんはお花を見つけて持ってきてくれた。不思議な事にこう言った無償の愛を施すおじさんやおばさんはどこにでもいる。



「せやろ? この世界、セピア色にすぐ色彩が入る。リアルワールドにより近い本質設定はいかに作品に重要かが見えてくるね。例えばこれが編集とかが読むと製本する際にここはいらへんからとか言って削ぐんやろーけど、背景が多ないとウチ等みたいな理解が肥えた読者は満足できひん。ただし、ちょっとハーミットは色男にしすぎやな」



 ここで関西人なりのシアの冗談。ハーミットは本当にできた男である。結婚したい。こんなキャラクター嫌いになる奴なんていないだろうというくらいには優しくしっかりとしている。シアの言葉を借りると色彩が入る。



「砂漠の行軍をここで入れてくるんやな……」

「なんですそれ?」

「砂漠の狐。天才ロンメル。賛否両輪あるけど、悪のドイツ人と言えばヒトラーやな? 実際はヒトラーはユダヤ人やねんけどな。で英雄のドイツ人と言えばロンメル。効率を取るためには遠回りや。戦地に行く事が目的やあらへん勝利する事が目的なんや。夜の山で遭難したら、安全な処に適当に草ひいて横になって朝まで待つのがえぇそれと一緒やな。ハーミットは学校では教えてくれへん、大事な事をフランに教えてくれる。自分がいないとやらなければアカン事が終わらへん、そして一人で無理なら、適材適所や」



 ハーミットは案外先生向きかもしれない。シアの言葉を借りると、全く向いていない人材なのだが、人間に興味がない人間が教室に向いている。その真逆で人間の本質をよく理解できる者も教育者向きなのかもしれない。



「シアさん、実に有意義です! トトさんや神様、ヘカさん達とお話をする時とはまた違った本質を追求する読書、勉強になります」

「そーでもないで、どちらかと言えば人に嫌われる読書方法や、ウチは、なんで? どうして? 過程を楽しみ、結果と結びつける事を読書の楽しみにしてるんや。だから、サリエルの言う。繋いでやれる手がない。このセリフこの話で一番伝えたい殺し文句なんかなとか、考えてまう」 



 それは大聖霊の葛藤にも感じられる。どこまで行っても自分は学園長、フラン、ハーミットにはなれない。彼の魔法の破格さから考えても一番の障害時間なのかもしれない。恐らくはセーラ達とは時間の流れが違う。彼は今までも仲の良かった人間がいたのかもしれないなとそんな事を想い読み進めるのも悪くない。



「正直、ここまで読んでてこのWeb小説。小説としての完成度が高い。読み疲れへんのは作り手の優しさやろな。だから、ウチのなんで? がぎょうさんでるで。医者をサリエルが特別に通すところもやけど、医者やから、サリエルの凄さを理解しているというところ、ここがセーラとオカンだけやと、表現に限界があるし、いくらサリエルが大聖霊でも、医者という専門の人材をつっぱねるのもまた変やからな。よう纏っとるわ。むしろ、怖いわ」



 パンケーキを食べながら次のお話をと思った時、シアのスマホが鳴る。それはどうやら自分の古書店の従業員からの連絡。



「は? 新品の『冒険者手帳 二十世紀ブックス・出版』が見つかった? 三万以内で競り落とし、ちょっと待ち、復刻版じゃないUTOPIA(小学館)? ウチも今からいく。時間潰しとき」



 シアは急用ができたので大阪に戻るという。たこ焼きは神様に作ってあげるように指示され風のように去って行った。その後に、古書店に来店する少年。ポニーテールが風に揺れきっと万人が可愛いなと思う赤縁のメガネをしてやってきた赤。



「セーシャトさーん! あーそーぼ」

隠者(ハーミット)と図書室塔の少女 著・祥之瑠于』皆さんどう読まれていますでしょうか? 今回はシアさん達、リアルワールドを読まれる方々の意見のお話になります。ファンタジーとしても現実に考えさせられる社会問題に関しても色々と勉強になる本作です。図書館にこもりお盆休みは感想文を書いてみませんか?

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[一言] 恐れ多いお言葉、たくさんありがとうございます! ヘカさん、本当にいつもありがとうございます!ヘカさんとお話したこと、今もときどき思い出します!星星とか。思えばあのとき、娘が転校して再スタート…
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