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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第七章『隠者ハーミットと図書室塔の少女 著・祥之瑠于』
54/90

読書感想文は悪か正義か?

さて、皆さん! 古書店は自粛対象の為7月の間、当方も自粛していましたが、8月です! 本来であれば夏休みシーズンです。さぁさ! はじまりますよぅ! 再開版、セシャトのWeb小説文庫。今回は学童文庫、朝活読書!そんな作品からと思いますが、あらあら? 誰かが追われていますねぇ! 二つの物語が交錯するとき、夏休みがはじまります!

 だめだ! あれが追ってくる。何が悪かった? なぜ私は追われている? 嫌だ。あの顎は私を狙い、あの異様すぎる脚力、しつこすぎる獲物への執着。手の中にある日本の紙幣で許しを乞うべきか?


 いや、私のプライドが許さない。これは今日を生きる糧であり、あのような輩にくれてやるものではない。それにこれを手放したとして私の身の安全が保障されるということもなし。

 逃げるしかないのだ。生か、死かそれのみがアンサーとして私の脳裏を支配する。誰が望んだこの光景、追跡者は吠え、綱からも解き放たれ、道理も法も通じぬ追跡者よりも早く、私はあのパン屋の先、小さな商店街の中にある古書店の扉を開ければいい……それまで私の心臓よ持ってくれよ……


 ”追われる者は久しからず……ただ夏祭りの屋台行列のごとし”



                    ★


「せーしゃとさん! あーそーぼ!」



 しばらく自宅待機をしていた学生達がようやく学校に行き始めたこの頃、本屋とは違い。古書店は自粛要請を受けてしばらく閉店していた。そんな古書店『ふしぎのくに』に入り浸るポニーテールの少年。



「あら、(ちぃ)さん。今日も来られたんですか? 学校は行かなくてもよろしいんでしょうか?」



 店主であり看板娘でもある。甘いお菓子に書物が大好きな女の子セシャト。彼女は近所のパン屋さんで焼きたてのパンを買って店に戻ると背中まで伸ばした髪を括った中学生くらいの少年が手を振って遊びに来る。



「学校・・・・・・学校ね。まぁ、さぼたーじゅ?」



 彼の母親が一度だけ古書店『ふしぎのくに』にやってきた事があった。赤の家は華僑の家で文化の違いからか、あまりなじめないでいた。そんなおり、偶然この店に入ってきた赤をいつもの具合でもてなしてくれたセシャトに懐いた赤が入り浸っている構図ができあがる。

 赤の母親はセシャトに赤を学校に行くように説得して欲しいと言われているが、それはあまりにも無茶なお願い。

 なんせ、セシャトは学校という組織に所属した事がないのである。そんなセシャトなりの更正方法はこれである。



「ふふふのふ! では、赤さん。母屋でパンでも食べながら感想文でも書きませんか?」



 感想文。

 ここ最近、学校の教師が感想文はいらないという事で賛否両論あったかもしれない。古書店『ふしぎのくに』のアンサーを言えば、どちらとも言えないである。

 学校の課題としての側面としては行うべき事であると思われるし、好き好んで感想文を書く連中は『ふしぎのくに』に属するライター達のような変人以外にはありえない。

「セシャトさん、ちぃ。感想文は嫌い・・・・・・思った事書いても違うって言われるし、あんなの感想じゃないよ」



 そう、感想文の問題点を一つあげるとすれば、あれはテンプレートが存在する事。小学生から高校生まで、表彰されたり、賞を取る感想文は何処か聞いた事がある食品サンプルのようなできばえ・・・・・・あれは評価のされ方があり、実は素晴らしい感想群は蹴落とされる。

 そして読書嫌いが増える。



「いいえ! 私と赤さんで一作読みながら感想を言い合い読み会いましょう! 非常に、この夏休みシーズンに適した児童図書のような作品がございます!」



 セシャトは第二ボタンを外す、水色の下着が覗き、赤は赤面する。首にかけている金色の鍵をセシャトは取り出すとソレを持って唱える。



「хуxотоxунихуxакутоxуноберу(Web小説物質化)」



 セシャトの瞳は何処か遠くを見て、魂はそこにないように見える。そして彼女の手の中には一冊の本。それを赤に渡す。赤は一枚目をめくり感想を述べる。



「へぇ、冒頭から気になる書き方のファンタジーだね・・・・・・この」



隠者ハーミットと図書室塔の少女 著・祥之瑠于』


 セシャトの瞳に命が灯る。そしていつもの笑顔。



「そうです! 本作ですが、はっきり言いましょう。Web小説らしからぬ完成度を持った作品です・・・・・・赤さんには『コルシカの修復家 著・さかな』とどちらをオススメするか迷いましたが、こちらをチョイスさせて頂きました」



 子供に読ませたい作品群というシリーズが古書店『ふしぎのくに』には存在する。その中でも『コルシカの修復家 著・さかな』と本作『隠者ハーミットと図書室塔の少女 著・祥之瑠于』はトップクラスの読了感と感想文を書きたくなる創作意欲をかき立てる・・・・・・ヘカ、アヌ談。



「うん、シリーズ物にありそうな緩やかな時間の流れを感じる作風だよね。うん、サリエルが神様。うん、いやどうなんだろ」

「サリエリ、サリエルは熾天使や大天使として海外では名前によく使われますね? 天使と神の境目は何でしょう? 実はありません。特に私たち八百万の国の人たちからすれば良い物も悪い物も人ですら神様です。よって天使が神様という認識は、間違ってないと思いますよ」



 本作は、要するに保健室登校の図書室版の少女と、そんな彼女を見守るサリエルなる異端のヘビ、そしてもう一人から始まる作品である。そのもう一人は男性なのだが、おそらくモデルは女性なのではないか……と書者は考える。



「子供から騎士の学校があるんだ。セーラはいいね。こうやって好意を持った友達が尋ねてきてくれるんさ」



 登校拒否児童に片足突っ込んでいる赤はくふふと笑う。セーラは心許した相手であれば普通に対応し振る舞える。

 案外、学校という組織に合わない子供に対してそれ相応のしかるべき教育を用意する事が大人や国の役目なのかもしれない。

 我慢するのは大人になってからでいいのだ。



「ふむ、赤さんは学校がお嫌いですか? その言いにくいのですが、何か嫌な事があるとか?」

「そうでもないよ。勉強も嫌いじゃないし、嫌事もされない……だけど、喋れなくなるし、出歩けなくなるし、笑われるし、苦手。マァマも、みんなが合っててちぃがおかしいっていうし、保健室登校もしてみたけど不真面目な人ばかりで合わない。だから、あらゆる場所で学びが出来るツァドキール学院、羨ましいな」



 恐らくは海外のカリキュラムをモチーフに考えられている本作の学園設定。悲しいかな。日本の国民性には合わず今のところ、不認可の場所を除いてこのような制度の学校はない。海外には存在するので、赤はある種不幸なのかもしれない。



「ふふふのふ! 物語の学園生活や学園というものは憧れそのものなんですよ! 私は学校という組織に属した事はないので、全て皆さん学生の方に聞きかじったお話ですが、アニメや漫画、小説、当然Web小説もです。そんなキラキラと輝いた世界を先に持って臨んだ学園生活が思った物とは程遠かったと皆さん笑いながら仰られます」



 そう、あらゆるメディア、何ならドラマなどの学園生活もそうだが、一言で言うならこうだろう。


 ねーよ!


 と言う具合には、憧れ、そんな学園生活を送りたいと思える描写や作り込みがなされている。逆に言えば、そのねーよ! と言う感覚を持てると言う事は作り手側の大勝利である。



「あぁ、そっか! いいなってちぃが思うって事は、この作品が面白いからなんだ!」



 パチンとセシャトは目を細めて指を鳴らす。



「わかってきましたねぇ! 赤さん。そうです! 読書感想文とはそんな気持ちを書き起こしていくんですよぅ!」



 母屋で椅子に座りながら、赤はくるくると回していたHBの鉛筆を持ってノートに何かメモをとる。



「セーラ、可愛い子だね。そしてそんなセーラを守ろうとしている小さな騎士もさ、ちぃは兄弟姉妹はいないから、こういうのも憧れるんさ」



 エアコンの風に揺れる赤のポニーテール。セシャトはふふふのふと笑うと赤の後ろから肩に触れてこう言った。



「では、何かお菓子を用意しましょうか! お兄ちゃん!」



 セシャトは妹キャラを作ってみた。と言うか作ってみたつもりだった。それに赤は固まり、セシャトを見る。セシャトははてな? と言うあざとい表情で赤を見つめる。そして赤の大爆笑。



「ふにゃははははははははは! セシャトさん、無理があるんさ! セシャトさん、お姉さんじゃん!」



 セシャトは今年で二歳になったが、確かに年齢不詳の十代の少女に見える。中高生からすればお姉さんのそれだった。



「むぅ、何だか心外ですねぇ……ここから盛り上がるところですよぅ! 隠者がついに登場されます」



 そう、本作のもう一人の主人公隠者。ハーミットの登場である。30分アニメなら彼の登場で次回へ続くとなるようやく序章部が終わったところでもあるのかもしれない。



「ハーミットといえば、何を思い浮かべますか?」



 言葉通り隠者。タロットの二十二からなる大アルカナの一枚である。それを赤は知っていた。



「フェアリーカード?」

「そうですね! タロットの一枚で魔術師などと並び、人狼ゲームの形成にも一躍買ったカードですよね! 私はハーミットと言えばこれを思い出しますよぅ!」



 バニラ香る、ナッツやチョコ、ドライフルーツに蜂蜜も入ったクッキー。以前暇を持て余したセシャトが自作カロリーメイトを作っていたが、それにドライフルーツやナッツが入った物だと思ってもらえればいい。

 要するにセシャトが大好きな甘くて美味しいお菓子である。



「フランはちぃと同じ考え方だね。多分、友達になれそう。ちぃもいたいところにいたい……例えば、古書店『ふしぎのくに』とか……」



 そんな赤をセシャトは笑顔でもてなし、少し苦めのブラジルコーヒー、セーラを煎れる。甘すぎるハーミットに、苦すぎるセーラ。



「どうでしょう? 実は作品に合わせて用意してみましたよぅ!」

「セーラが苦いってどう言う事? ハーミットがなんか甘いってのは薄々わかるんだけど、可愛いし、小さいしか弱いし、セーラがこのコーヒーみたいな感じとは違うくない?」

「それは読み進めてのお楽しみですヨゥ! そして今回はこのあたりで一度感想文を書きましょうか?」

「えぇ! もっと読みたいんさ!」

「そうです! それこそが、至高の感想文の書き方ですよぅ! 全部読んでから感想を書くんじゃないんです! 次はどんだろう! どんな事が起こるんだろう? そう思いながら読書を楽しみながら書く事でより作品を愛し、より読書を楽しみ、感想が進みます! 私たち古書店『ふしぎのくに』の考え方ですけどねぇ!」



 鼻に手を当てて、ウィンクをしてからセシャトはハーミットを一枚パクリと食べて、セーラを一口含む。そして吠えた。



「はっひゃあああああ! 美味しいですねぇ」



 赤は思う。この人、神様だ……

隠者ハーミットと図書室塔の少女 著・祥之瑠于』文章表現、造形表現、中高生に読んで頂き作品として今月は一ヶ月間本作をご紹介させて頂きます! 単純に面白い作品を読んでみませんか? 万人に受ける作品というものは難しいかもしれませんが、より小説として完成度が高い作品はその頂に近づけるのかもしれません! 一緒に、のぞき見してみましょう!

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― 新着の感想 ―
[一言] ひとまずご紹介ありがとうございます!嬉しい言葉がたくさんで頬が緩みます。 赤くんはぜひセーラやフランとお友達になってほしいですね。わたしもフランと赤くんは気が合うとおもいます! それではこれ…
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