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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第六章『最競クインテットは最果ての街を往く 著・斉藤タミヤ』
46/90

いつもの母屋から、少年達と共に

さて、そろそろ当方もエアコンをつけての営業ですよぅ! 新しいライターさんも多数参加され、ふしぎのくにも新体制で頑張ります。気温が上がったり下がったり、体調管理に皆さん気をつけてくださいねぇ!

 セシャトはコトンとコーヒーカップを置くと、母屋で新調したipadを開きながらWeb小説を読む。

 そして今日はお客さんを待っているのだ。



「おじゃましまーす!」



 セシャトの瞳が大きく見開かれる。待っていたお客さんがやってきたのだ。セシャトは店に出ると小さなリュックを背負った少年を見て頬を赤く染める。



「秋文さん、いらっしゃい!」



 そう、セシャトの上客。倉田秋文少年である。そんな秋文はもう一人、ピンと跳ねた前髪が特徴的な同い年くらいの男の子を連れてきた。



「セシャトさん、こんにちは!」

「おや? そちらの方はお友達ですか?」



 秋文と並ぶ男の子はセシャトに頭を下げて、東京バナナを差し出した。



「うたかねです! よろしくお願いします! 秋文君に聞いてとっても面白いWeb小説を紹介してくれるって聞いたので、ご迷惑でしたか?」



 礼儀正しい男の子にセシャトは微笑む。



「ふふふのふ! 大歓迎ですよぅ! そして、東京ばなな。ありがとうございますねぇ」



 東京ばななを受け取ると、それを横目でみていた秋文は少し困った顔をしてリュックからお菓子を取り出した。



「せ、セシャトさん。僕も、その・・・・・・」



 セシャトは二つ目の東京ばななを受け取り、「あらあら」と微笑んでそれを受け取ると、セシャトは二人を母屋へと案内する。



「さぁ、美味しいケーキを・・・・・・おいしいけー」



 セシャトはケーキをしまっていたハズの戸棚を開けるとセシャトは固まる。ケーキがあったハズの場所に神様の置き手紙。



”セシャト、ケーキは中々美味かったぞっ! かわりに東京ばななを置いておくから食すといい”



「神様のばかぁー!」



 母屋のテーブルに三箱の東京ばなな。なんとも言えない空気の中で、セシャトは二人に本日の本題を話した。



「では、気を取り直して作品を読みましょうか? 今回は、そうですねぇ! 完結作品となるのですが、ファンタジー小説を読もうと思います。ベルセルクという言葉はご存じでしょうか?」



 その言葉を聞いて秋文は分らないと首を振る。そしてうたかねは少し考えてからセシャトに答えた。



「北欧神話における、神の力を持った戦士の事・・・・・・ですよね?」

「よくご存じですね! 異能力者。狂戦者。場合によっては蛮族などの意味もあるでしょうが、それらはとにかく強いという事ですねぇ! さて、レイルさんはそんな狂戦士としての力を持って面白い方に拾われます・・・・・・ではお二人とも本作のさわりで感じる事はなんでしょうか?」



 セシャトは山盛りの東京バナナをお皿に載せると珈琲を二人に淹れる。そして秋文は珈琲でいいのだが、まだ小学生の男の子、うたかね少年は珈琲で大丈夫だっただろうかと反省する。



「うたかねさんは珈琲は大丈夫ですか?」

「はい、西に兄のような二人がいるんですけど、その二人とよく珈琲を飲みましたので、大好きです! あとこの小説ですけど・・・・・・三人称と一人称が・・・・・・なんなら二人称も入り乱れてませんか?」



 ふむと考えながらうたかねが珈琲に口をつける。小学生の男の子とは思えないような大人な佇まい、そしてそんなうたかねを嬉しそうに秋文は見つめる。



「やっぱりうたかね君は、凄いや! 僕はこの物語を読んでレイルのはじめてのクエストに凄くドキドキしてただけなのに」



 そして秋文という素直な読者。そう、レイルはここで主人公としての、作品としての方向性を読者とアルマに教えてくれる。うたかねの気になるポイントとしては人称にばらつきがあり、いくつかの文法に偏った文章で書かれている本作。

 セシャトは二人の男の子のを見て嬉しそうに微笑むと東京ばななをパクりと食べてから語る。



「いいですねぇ! お二人はとっても素敵な読者さんです! まずうたかねさん、そのお年で非常に深い読み込みですねぇ! 本作の人称にばらつきがある点ですが、これはある種、広い視野の表現をする為です。神の視点、レイルさんの視点。アルマさんの視点、そして・・・・・・読者の視点です。おわかりでしょうか? 本作はWeb小説らしい技術が使われています。作者さんの得意とする表現が修飾や体言止めでしょうか? うたかねさん、これはこの作品の強みですよぅ!」



 セシャトはあざとく指を一本立ててウィンクしてみせる。うたかねはそんなセシャトを見て少し顔を赤らめてから「なるほど、そう言われれば確かにいいですね」

 セシャトは「はい!」と微笑むと次は秋文を見つめる。



「そして、秋文さん。この時の作者さんはどんな風に楽しんでほしいか! という点において、秋文さんの読み方は100点の読み方ですよぅ! そうなんです。レイルさんに興味をもったアルマさん、そして読者も期待する中、レイルさんは主人公らしく、現われた魔機をいとも簡単にやっつけてしまいます。当然、あたりまえのシーンですが・・・・・・私達はこういうものを読みたいんです! 続きが気になりますねぇ! 本作はライトファンタジーとハイファンタジーのいいとこ取りです。丁度中間ですので、ミドルファンタジーといったところでしょうか?」



 当然これはセシャトの造語。限りなくハイファンタジーに近い、ライトノベルであり、この作風は90年代などによくあった。



「さてお二人とも、ライトノベルという名称が産まれたのは実はわりと最近なんです。元々はラノベ作家という方はいませんでした。なんなら、ホラー作家、純文学作家、雇われライターなどが出版社に依頼されて書かれた小説がその前身です。そして元々優秀な作家の方々が各種青少年向きに生み出された物がラノベの第一陣と言えます。それから、今のライトノベルの代名詞と呼べる作品群が産まれ、いわゆるなろうベースのライトノベルに移り変わります」



 コホンとセシャトは簡単にラノベの歴史を語る。うたかねは足を組み、興味深そうに珈琲を飲む。そして秋文は目を輝かせる。セシャトは各種世代のライトノベルを用意すると二人に手を取ってもらう。



「当方は古書店ですから、ふふふのふ! こういう物は沢山ありますよ! 少し読んで見てはいかがでしょうか? なんなら私の所有物ですので、お貸しします」



 二人は少しばかりそれら世代別ライトノベルを読んでもらう。そしてうたかねが一言。



「これは・・・・・・凄いというべきか、酷いというべきか」

「おや? 気づかれましたか? 物語としては非常に面白いのですが、そうなんです。実はそれが前身なのです」



 さて、なろう小説やWeb小説がベースの書籍や作品物は文章力が低い、あるいはお粗末であるとよく話に上がるのだが、古書店『ふしぎのくに』ベースでお話させていただくと、そんな事はない!

 名前を挙げれば信じられない大御所の作家陣達が活躍した時代。所謂富士見ファンタジア文庫一強時代の文章は作品によってはお世辞にも褒められた物ではない。


 逆に2000年初等から7年間くらいのラノベの文章力、語彙力の多彩さに今のラノベ作家陣は足下にも及ばない。小説としての完成度が一段も二段も高かった。もちろん、流行の文章や作風という物も考慮して考えられる。

 そう、初代古書店『ふしぎのくに』のサイトが存在していた頃の作品群である。要するに、小説というものは娯楽であり、楽しむ者がいればそれは小説の体をしているのだ。



「これらを読んでお二人なら、もうおわかりでしょう? 各種WEB小説の作品は全て、しっかりと小説と言えるのです! この側面を持って本作を今一度考えてみましょうか?」



 うたかね少年は、肩掛けバックからPC眼鏡を取り出すとそれをかける。かたや秋文少年は東京バナナを一口大に切り分けてそれを食べながら読み進める。

 うたかね少年は今までを、そしてラノベの歴史に触れ、改めて本作という物を再認識し、評価に至った。



「物語としての方向性がしっかりしていますね」

「僕も思いました。心情描写と情景描写で作品を進めてます」



 セシャトは一番読んで欲しいと思うとこに二人が行き着いた事に満足しながら東京バナナをぽいと口に放り込む。



「はっひゃあああ! 東京ばななはいつも変わらぬおいしさですねぇ! お二人は本作が中々にレベルの高い小説であるという事に気づかれましたか? ではご質問です。本作はラノベの歴史で言うとどのあたりの作品でしょうか?」



 セシャトはブラックの珈琲に生クリームを落とすと、香りを楽しみながらそれを啜る。鼻孔から脳に珈琲を楽しませ、そしてティスティング。本来の珈琲の楽しみ方を熟知しているセシャトに、うたかねと秋文、両少年は顔を見合わせて声を合わせた。



「「最初期のラノベ?」」



 本作の書き方として、そう、80年代後半から90年代初頭の雇われライターが書いていた実に小説じみた作風なのである。ラノベの歴史で言えば、二番目に文章表現が巧みだった時代でもある。



「素晴らしいですねぇ! お二人とも、そうです。会話文がやや少なめですが、心情の文がよくえがかれているタミヤさんのお得意とする作風ですね。この作者さんの作品はどれもやや固めに感じそれでいて非常に読みやすい書かれ方をしています。一つ言えば、今のWeb小説の流行から少し外れているところでしょうか?」



 うたかねも秋文も驚く。本作の完成度は中々に高い、されどこれが流行から外れているとセシャトははっきりと言ってのけた。



「Web小説をWeb小説たらしめている理由として、一話完結の体を持つ事です。もちろん本作も外れずに同じ形式を取っていますが、作品のベースからして結びが決まっています。その為、どうしても連作にならざる終えない部分も出てきます。故に私は完結した今、お二人に読んで頂きたいと本作を選びましたよぅ!」



 ニコニコと微笑むセシャト。セシャトのティーカップコレクションの中でもオススメの品で珈琲を飲み、お茶請けでたまに口汚しをしながら、三人は語る。



「ファンタジー小説に大事な物は、キャラクターのパッケージ製です。レイルさんやアルマさんはそれをクリアしたと言えます。ですがクインテット、5人です。これから、このお二人に負けないようなキャラクターを三人本作は動かしています。そこが大いなる読みどころと言えるでしょう!」



 セシャトはこれからまだまだ長い時間、この愛らしい少年二人と作品を読みあい、語り合う至福の時間に微笑んでいると、古書店『ふしぎのくに』に尋ねてくる人物。そう、セシャトと同じく、神様に生み出された存在。



「こんにちはなんな! セシャトさんが食べたいって言ってた一平ちゃんのショートケーキ味を買ってきたんよ!」



 ガチャリ。その声と共に母屋の扉が開かれ、漆黒の衣を身に纏った少女が、セシャトと二人の少年を見て隈の酷い瞳をまん丸にして言う。

「セシャトさん、ショタを二人も連れこんで何してるん? あぁ、『最競クインテットは最果ての街を往く 著・斉藤タミヤ』なんな」


さぁ、はじまりました。6月の紹介作品ですが、『最競クインテットは最果ての街を往く 著・斉藤タミヤ』となります。6月の募集群は非常に面白い作品が集まっていましたので、その第一弾となります。タミヤさんの作品は安定的に読みやすさと、安心感のあるストーリー展開が定評です!

一ヶ月間、一緒に本作を楽しみませんか?

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