Finalize the legacy~子は国の宝~
さて、ようやく古書店『ふしぎのくに』のメンバー全員にipadが行き渡りました。これで皆さん同じ環境でお仕事ができますねぇ! それにしてもダンタリアンさんの全員同じ道具を持つという事を1年で成功させてしまう手腕には驚きます。今回、『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』から皆さんで読み合いをしてみましたが、実にいいですねぇ!
昔々あるところに魔女が住んでいました。魔女は沢山の本に囲まれた大きな家に住んでいました。そこは世界全ての知識が詰まっていると言われる程の本です。
魔女はそこにある本を全部、何度も何度も読み返し、それでもままならない事があると知り、何も考えず、ただ時間が過ぎ去っていくのを待っていました。
そんなある日、魔女にはどれだけ長い時間見つめていたか分らない扉がギィと鳴り開かれました。キラキラと輝いた男の子がやってきたのです。
「うわぁ・・・・・・なんだここ! お姉さん、ここは何処? この本は何?」
「・・・・・・魔術書」
男の子は咽せながら、ほこりっぽい本を叩いて開く。
「なんだ。ただの医学書じゃん」
★
「さて、物語において子供だけの国というお話はよくあります。これは、ある種子供の願望、う~ん。そうですね。秘密基地のようなものでしょうか? 実際、子供だけの国、聞こえはいいですが、随分ハードルの高い環境でしょうね。そして、冒頭を読んだだけでも感じる狂気感。これは楽しみでしかたがなくありませんか?」
レシェフがシチューをスプーンですくうとそれをゆっくりと食べ、人参を横によける。鶏肉を食べながら頷くレシェフ。
「実際に子供だけの国は存在するからね。ストリートチルドレンなんてまさに子供国じゃないか・・・・・・あれは中々に酷い環境だよ? 水を飲んだだけで数日後に死んでしまう。そういえば、
子供を扱った物は多いよね・・・・・・偶然だけど、ひつじ育てるやつあったよね? 毎日大量の生肉を食べるひつじのお話」
子供を扱った某短編小説。うるさい子供の声帯を切って大人しい子供として育てる話、何故かある一定の年齢まで育つと子供に戻り、成長と若返りが逆のもう一人の人物とで交互にお互いの教育をする話、そして羊という名のよく分らない化物を育てる子供のお話。
子供を題材にすると不思議な事に、不気味な物語が多い。その同意を求めようとしたトトとレシェフだったが・・・・・・
バレッタはうっとりとした顔でこの”ある子供の村I”読んでいた。そんなバレッタを若干引きながら見つめるトトとレシェフにバレッタは子供みたいな笑顔で言う。
「子供のむら、いいわね」
バレッタを見てトトは聞こうか聞くまいか、気になっていたが、女性に男の子であるトトが聞くのはやや忍びない。
「バレッタ。君は子供はいるのかい? いや、いたのかい?」
核心をつくようなレシェフの質問。それにバレッタは実に嬉しそうな顔をする。これは大人が子供を愛してくれる時の笑顔なんだろうとトトは思った。遺伝子の組み込まれたお母さんと呼べる人の表情。きっとこうだったんだろう。
「うん、いたよ。とっても可愛かった。そう、とってもね。この村に私がいけば、私はきっとピーターパンに粛正されるかしら?」
ピーターパンは子供の国の守護者であり、大人の処刑者である。そしてこの子供達の食事シーンや給食当番、ピーターパンの一節にあるようなシーン。想像力でごちそうがでてきて、想像力のない大人には何もない皿にしか見えない。
「いや、大丈夫じゃないか? バレッタ。君はとっても想像力豊かな人じゃないか! 見せておくれよ! ボクと、神の使徒にさ君の力を・・・・・・ね?」
バレッタは微笑むと二人を見つめる。空虚な瞳で、レシェフもトトも抵抗せずにそのバレッタの催眠術のようなそれに身を任せる。
パン!
そこはグミの実がなる木の下。そこにいる子供達に気を遣いながら自分が食べる分だけ、グミの実を取るとレシェフはそれをぽいぽいと口の中に放り込む。
「帽子いっぱいのサクランボを思い出すね。バレッタ、君も食べるかい?」
バレッタは首を横に振る。子供達に見つからないように、ある子供の村を楽しむ。レシェフは好物なのか、グミをもぐもぐと食べ続ける。
「知ってるかいトト、グミは和製語なんだよ」
トトはそう言われると「グミ」という言葉を反芻してからそれを口の中にぽいと入れてゆっくり租借。
「赤ちゃんを美味しそうと思ってしまうウルフさん、これはどう思いますか?」
「トト君、赤ん坊はわりと色んな物から狙われるのよ。ミルクの匂いがするから、ネズミに囓られる事もあるし、虫に囓られる事もあるし、それで命を落とす事もあるのよ。だから、ウルフ君が赤ちゃんを食べたいと思ってしまう事も少し正しいのかもしれないわね」
命その物である。そして子は国の宝という。実在した魔女、西太后はその究極の料理に胎児を使ったと言う。
今は倫理の問題からアイルランドで封印された風習。食用人間と・・・・・・子供を食べる事でその命を永遠に紡ごうとした愚かであり、狂気的な行いが古来からあった。それを行うか、行わないか・・・・・・それこそが人間か、そうでないかの境界線かもしれない。
「成る程、バレッタさん的にはやはりウルフ君にはしっかりと人間の心が宿っているという事ですね・・・・・・そして例に漏れず、このある子供の村。そこはかとない狂気が見え隠れし始めましたね。子供というものから連想される物一巡してみますか? では僕から、無邪気」
無邪気とは・・・・・・
「邪気がない。それ故に救いようがない。去年だか、あったよね? 水死した子供の事件。あれは一緒にいた子供達が明らかに事件に関わっているけど、毎回証言が変わって、結局うやむやになったよね。じゃあ次はボクかい? 子供といえば、生きる世界が違う」
レシェフのバトンに対してバレッタは微笑んだ。
「そうね。シープちゃんやウルフ君、そしてピータ君が見ている世界と年少組が見ている世界は違うわね。だから、年長組は後悔のようなものを感じ、年少組は希望を見るの・・・・・・そう子供の村といいつつ心は大人になりつつある子もいるという事よね・・・・・・私は、子供といえば・・・・・・夢かしら」
きっとこの夢という事はトトにもレシェフにも分らない意味あいがあった。一度でも親になった事がある者は、子は世界なのだ。そして、希望であり自分の夢そのものとなる。
産まれてきた子供を見て、どの親や家族が必ず思う事がある。
ある種、異母兄弟のように同じ時に産まれた新生児達。それらが並ぶ様を見て・・・・・・
”自分の、自分達の赤ちゃんが一番可愛い”
恋は盲目というように、命のバトンに成功した親は、それが母親だろうと父親だろうとそう思うのだ。
人生において・・・・・・ある種、一つのゴールを終えた瞬間なのだ。
夢を見て、夢を叶え・・・・・・そしてその夢の結晶の成長を楽しむ夢。
まだお腹を痛めた事のないレシェフだったが、この空間内お互いの気持ちがなんとなく分る。なので、レシェフはこう言った。
「なんか、バレッタ。君が言うと深いな」
「いつか、レシェフちゃんもトト君の子供を身篭った時に分るわ。自分よりも大事な生き物がこの世に存在するって事をね」
おやおやとトトは困ったように笑い。レシェフは鼻で笑う。
「面白い冗談だね。さて、運動神経のいいシープとウルフの空中ブランコ、花形が二つだ・・・・・・ふふふ」
レシェフの言いたい事がトトはいまいち分らない。そんな中でバレッタは二人に質問をした。
「二人はサーカスを観に行った事はあるかしら? キラキラとしたそれでいて夢みたいな世界よ! オートバイに乗った小熊、みんなを幸せにしてくれるクラウン」
そんなバレッタの話に対してトトは目を瞑る。
「僕の遠い記憶です。姉のような銀色の髪をした少女と、高台から見た。演劇、今尚思い出せますね」
「ボクはそうだな。猛獣と健闘士が殺し合うデュエルだな」
二人のサーカスが、今のサーカスの源流であるという事をバレッタはすぐに気がついた。二人が何年、何百年、いや、何千年前の話をしているのかはあえて聞かない事にして、レシェフの話にシフトする事にした。
「二人とも、素敵なサーカスの思い出ね! レシェフちゃんが話していたサーカスの花形、それは空中ブランコに、ビースト&ティマーよ。そしてウルフ君とシープちゃんはそれを二人でどっちもカバーしてしまうのね。さぁ、不思議な村。自分にそっくりな子供が捨てられると村を出て行きたくなる。それはどういう事なのかしら?」
バレッタのまわりに集まる子供達にバレッタは花冠なんかを作ってあげる。楽しそうに、嬉しそうに、そして悲しそうに・・・・・・
さすがのトトもレシェフもバレッタには子供に対して異常なまでの執着を持っている事を薄々感じていた。ここにる子供達、そしてトトやバレッタを通して、誰かを見ている。
「バレッタさん、シープさんとウルフさんはどんな旅も新鮮に感じ、そして楽しみ、お互いを信じ、あるいは愛なのかもしれません。そんな物を感じながらいつ果てる事もない旅を続けます。バレッタさんの旅路のたけなわは何処にあるんでしょうか?」
ここで永遠に『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』の物語を語り合うのも悪くはなかった。トトもレシェフもバレッタから顔も知らない母というものを感じしていた。
もし母親という存在がいれば、二人に絵本を開き、ベットで語ってくれるのかもしれない。だが、こんな甘い夢はいつしか醒めるものなのだ。
そしてそれは、少し切なく、悲しい終わりと共に・・・・・・それが世の理であり、相場なのだとトトには分かっていた。だからこそ、あえて言う。
「バレッタさんは、未来と過去を担保に、僕等をこの不思議な小屋という子宮で守ってくださいっています。ですが、これはいずれ終わりを感じます」
★
「ねぇ、バレッタ。ここにある医学書読み飽きちゃったよ。でもここにある本のおかげでもボクは人体について沢山知る事ができたよ」
白い歯を見せて笑う坊や。私には理解できないような文字列を沢山並べ、そしてそれが星の数程集めると人体を作れるという事を私は知りました。
この子は天才なんだ。それに驚きと喜び、この子を育てるという事が出来る嬉しさに胸が一杯になりました。
古今東西の魔道、修道、勉学の全てをこの坊やに、坊やは私の夢、世界。もしかすると坊やならあの子の蘇生という奇跡すらおこしてくれるんじゃないかと私はそう思って釜で作ったパンケーキを坊やに持っていきます。
「坊や、根詰めるのもよくないわ! ダッチベイビーパンケーキよ」
私の坊やが年相応の笑顔で私の元にやってきました。こんな日々がずっと続くとそう思っていたのです。
『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』皆さんは何処まで読まれましたか? 早く更新を待っている方もいるでしょうか? 読み進めて先を楽しんでいる方もいるでしょうか? あらあら? まだ読んでいない方もいますか? それでは一緒に最初から楽しみましょう! 可愛くて、そしてちょっぴりオセンチな人の物語を!




