表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第五章『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』
41/90

Like a magic ~それを人々は根拠ある権威と言う~

この前ですが、オンライン食事会をしました。最近、一番忙しいダンタリアンさんですが、みんなでよーいドンで同じお店の宅配ピザを頼んで一番最初に届く人が優勝の宅配ピザレースをしましたよぅ! お部屋にいながらカラオケ大会をしたり、とても楽しかったです! 私が何を歌ったかですか? それは・・・・・・ふふふのふ^^

 夜は来る。誰が為に?

 明けぬ夜はないと言う。何故に? それはも燃ゆり落ちる星々の輝きの様に、時が明日を永遠に追いかける様に・・・・・・自明の理である。


 神に愛されたか? あるいは見放されたのか? 不死の羊は、人喰い狼と地平線をゆく。

 彼らは知るのだろうか? 嗚呼、幸せには様々な形があるのだと・・・・・・それとも彼らは求めるのだろうか? 私達、俺たちをその幸せに入れてくださいと・・・・・・それとも気づくのだろうか? 果て無き旅路の末・・・・・・



「なんなん? このじゃり達は? ヘカは忙しいんよ? というか、今はヘカは休みなんな」

「そこをなんとかお願いするでありんすよ。どうもセシャトさんが留守にしてるみたいかや、ヘカちゃんしか連絡の取れる相手がいなかったでありんす。今度、イケメンばかりの朗読会に招待するでありんすよ! だから二人の神保町案内を頼むでありんす」



 ヘカはイケメンというパワーフレーズを聞き、二人の少年少女を見て、心底面倒くさそうな顔をする。二人を見てから目を瞑るとヘカは呟く。



「少なくとも、この”ある古書のまち”偏は二人にとって幸せな物語なんな。くるん! 特別に神保町を案内してやるんな」



 ヘカにそう言われて少女は汐緒にお辞儀をする。



「汐緒さん、ありがとうございました。お茶、美味しかったのです」

「あちきも、二人とお話できて楽しかったでありんすよ。今度は、開店している時に遊びにくるでありんす」

「汐緒、ありがとう」



 少年の方もそう言うので汐緒は手を振る。千年以上生きた自分だからこそ分る。この少年少女はただの子供達ではないだろう。されど、この神保町には人外が多すぎる。さして気にする事でもなかった。



「それにしても愛しのトトさんは今は何処を旅してるでありんすか?」



                     ★



 眠るレシェフの頭を撫でながら、バレッタは棚より新しい酒瓶を取り出す。次はトマトジュースをベースに、ウォッカ。



「ブラッディー・シーザーですか・・・・・・」

「うん、トト君はよく知ってるね」

「いずれ僕もお店でお酒を出す事になるでしょうからね。さて、今回ようやく人食のお話となりますが・・・・・・死体の肉を食べるという事に関してバレッタさんはどうお考えでしょうか? 倫理であるとかそういうお話は抜きにしたとしてですね」



 赤いカクテルを流し込むように飲みながら、バレッタは残った生身の身体をどうにか酒に酔わそうと試みる。



「ウルフ君は、腐敗した人肉を食べると酔うらしいわね。実に面白いじゃない? うん、まず私が思った事は、倫理的というより衛生的にどうなんだろうとは思ったかしら? 死因によってはその人の肉は様々な病原菌に侵されているでしょうし、事実私が・・・・・・ううん、まぁこれはいいか、腎炎とかの危険性を考えるわけね。私なら与える前に、少し下処理をしてから食べてもらうかしら?」



 事実、ウルフは腐敗の進んだ人の肉を食べると酒に酔ったようになるらしい。何らかの身体の影響。もとい、アレルギー反応に近い症状が出ている。



「日本の熊のように病原菌に対する耐性があるんでしょうね・・・・・・そもそも人の肉しかまともに食べられないのでプリオン病なんかになったら大変ですから、野生動物も腐肉を食べて飢えをしのぎます。が、ここはあまり気にする部分ではないでしょう」



 そう、ここは長らく当方、古書店『ふしぎのくに』で説明している。気にせずともよい事。突っ込まずともよい事である。恐らく、今度ウルフの人食性については何らかの解は知る事ができるかもしれないが、人食の際のあれこれは恐らく語られない。



「・・・・・・設定という事ね」

「そうです。設定です。東京喰種でも語られませんでしたしね」

「何それ?」

「まぁ・・・・・・それは別の機会に僕のお店に全巻ありますので」

「そうね。ウルフ君はようやくここで美味しい食事に久々にありつけたわけだけど、私は少々二人の食生活に関して心配をしてしまうわね。食育は大切よ? ところで、お腹がすかないかしら? ブリトーか何かがあったハズなんだけれど食べる?」



 トトは窓の外を見ながら「えぇ、頂きます」と返事を返す。窓の外には月と、さらに同じ大きさの星が並んで淡い輝きを見せる。となるとあれは果たして月なんだろうか?

 ここは何処なんだろうかトトは思う。外はどうなっているのか? そこでトトは軽い脳震盪のような痛みを感じる。

 あたりが燃え、瓦礫が落ちる街の中で、うり二つの少女が少年を手引き走って逃げている。もう一度目を凝らすとそんな二人はおらず、それはトトの白昼夢。



「さて、思い出したくもないものを思い出すここは、そういうところなんでしょうか?」



 コトン・・・・・・とトトの目の前に置かれた一皿。小さめのブリトーにクコの実とクルミ等のナッツ類。



「出来合いだけど、味は保証するわよ」

「いただきます」



 はむっとトトはかぶりつくと、ジャンキーでヘカが好きそうな味が口の中に広がる。普段トトはこういった物は好んで口にはしないが・・・・・・やはり、こうしたチープなファストフードは・・・・・・



「実に美味しいですね」



 脳に直接語りかけてくる程に美味い。煎ったカボチャの種をボリボリとトトは食べながら話を続ける。



「この比較的、普通と言えるのでしょうか? ある獣の村に一つの自然災害が起きます」

「ロードムービー物では時折入る自然災害ネタよね。火山噴火だったり、津波だったり、隕石落下だったり、今回は地震ね。それも直下型」

「えぇ、建物がぺしゃんこに潰れる地震。下から突き上げて落ちる地震です。現在の最高建築で作られた建造物でも確実にダメージを受けるものですね」

「でも、地震が起きる時間が良かったわね。火をつかう時間じゃないから、苦しい死に方はしなかったでしょう」

「動物達が地震を検知するという事ですが、よく人々は鳥を見なかったとか、飼っていたペットが怯えていたとかよく言いますが、あれはなんなんでしょうね?」



 バレッタはブリトーをナイフで細かく切ってそれを口に運ぶ。恐らく好きなんだろう。幼い子供みたいに美味しそうに目を瞑り、そしてバレッタは語る。



「そうね。大抵そういうのは人間の勘違い。偶然、鳥を見なかったと思っているだけ、ペットの具合が悪かったのが、偶然かぶっただけ。だって、普通に考えて人間と動物にそこまでの危機察知に違いなんてないでしょう? むしろ、知識を持っている分、人間の方が危機察知は非常に高いハズよ」



 夢のない事を言うバレッタ。

 事実動物にそんな特殊能力は今現在知られてはいない・・・・・・が、バレッタは一つの答えをトトに教えてくれる。



「犬や猫は、もしかすると人間には聞こえない地鳴りを聞いたのかもしれないわね。直下型の地震は凄い地鳴りがするのよ。知ってるかしら? 終焉の笛って言葉」



 当然、物語を読むトトが知らないわけがない。古来より、ユダヤ系の物語で創作された天使が世界に終焉をもたらす時にならす笛。



「アポカリプティックサウンドでしょうか?」

「そう、それ! 昔話や宗教のネタって元々何らかの元ネタがあるハズなのよ。直下型地震の際に人の耳に聞こえる程の地鳴り。聞こえれば最後。数秒後にドカン! 何が起きたのか分らない当時の知識のない人間は思った事でしょうね。これは神の怒りなのだと、それ故あのゴゴゴゴゴという音は、天使が浅ましい人間に終焉を与える為にならした死のサウンドってとこかしら?」



 バレッタにより、終焉の笛の一つの解答がなされる。そしてそれを動物が検知したという事にここでつなげてきた。



「実はこの村では震度0の地震が頻繁していた可能性はあるわね。それは人間や動物にも聞こえない地鳴り。犬の聴覚は人間の2倍からよくて3倍。でも猫はその犬の2倍から凄いと4倍。これは群れか単独かで進化の発展が違った由縁でしょうね。テインと共にいる猫の部類がそれらの予兆を聞き取ったの、そして家畜化されている猫はそれなりに群れ意識を持っているわ。当然、犬等にそれを共有。ここはまさに動物の特殊能力ね。人間とは違い、鳴き声や行動でそれを知らせる。私達には分らない反応。じゃあ、それを見据えてこのシーンを見て見ましょうか・・・・・・3、2、1。はい、落ちる!」



 パンとバレッタは手を叩く。

 トトは万華鏡のように目の前が歪む。そして耐えられない眠気がトトを襲い、そして沈む。水ではない、かといって砂でもないような不思議な感覚の中に落ちていく。

 そこでトトは目を開く。

 それは動物に囲まれた自分。猫が身震いし、毛を立て威嚇するように鳴く。続いて犬々が雷が来たように怯えた声を上げ、自分の服の裾を引っ張る。

 嗚呼、これはテインの目なのだろう。動物たちに導かれるがままに自分はそこから離れる。そして・・・・・・


(来る!)



 浮かび上がるという感覚より、足下が無くなったかのような落下感。ウルフは、直感的にこれを感じ取ったのだろう。



「3・2・1。はい、起きる!」



 パンと手を叩くとトトの服の中はぐっしょりと汗で濡れ、バレッタの小屋の中。



「さぁ、これを飲んで」

「すみません。頂きます」



 人肌に温められた水をゆっくりと飲み呼吸を整える。催眠術なのか・・・・・・その類いの物にトトは驚きと・・・・・・感動する。



「凄い! バレッタさん、凄いです。Web小説のワンシーンを、僕等のような力を使わずに・・・・・・」

「うん、でもそれを見れたという事は、それはトト君の想像力のなせる技よ。私は、そこのお手伝いを出来るだけ」

「も、もう一度。シープさんを連れて逃げるウルフさんのシーンを見せてくれませんか?」

「ふふん、トト君。確かにあのシーンのウルフ君は中々にイケメンね。でもどさくさにまぎれてシープちゃんに触れようだなんて少し、思春期をこじらせすぎじゃないかしら?」

「ち、違いますよ! まぁ、シープさんが非常に愛らしい女性である事は認めますが・・・・・・」



 このシーンのウルフはとても勇ましい。現在公開されている全シーンの中でも一つの神回と言えるかもしれない。何気ない所作のそれら、シーンの一つ一つが眼前に広がり、段々と落ち着きを与えてくれる。

 作品に魅入る同化の中で当方、ふしぎのくにで”DC”と訳される現象シーンして本作は何度かミーティングで上がった。



「感動が飛躍的にあがり、それがゆっくりと落ち着くDCと僕等が呼んでいるシーンを体感したかったんですが・・・・・・」

「私のあれは、連続してはダメなのよ。脳に負担をかけるから、また・・・・・・今度ね」



 むぅとトトは年相応に、少しばかり不満げな顔をして見せる。普段女性客達の前で大人ぶっているトトが何故か無邪気に子供っぽくバレッタの前は振る舞ってしまう。そんな魔力のような魅力をバレッタは持っていた。

 トトには知らないお母さんという彼女の特性に・・・・・・



                   ★                    



「では、ヘカさんは作家先生なのですか?」

「ヘカ見た目によらず凄い人なんだね?」



 少女と少年にそう言われてヘカはない胸を張りながら、自慢げに頷くのだ。またヘカが適当な事を二人の少年少女に語る。自分はWeb小説界では殿堂入りを遂げた天才美少女作家なのだと・・・・・・



「ここなんここなん! ”さぼうる”のいちごジュースは脳がぶっ飛ぶんな! これなら、そっちのあと数年たったらヘカ好みのイケメンも口に合うん」



 神保町でも人気の喫茶店へとヘカは二人を連れ入店。近隣住民にも観光客にも愛されるそのジュースを三人分頼むとヘカは一つの物語を語った。その話を聞いて少女は怪訝な顔をする。そしてヘカに言った。



「その魔女と呼ばれた女性は、どうしてそんなに優しい人なのに、そんなにも不幸で、そして非道なのでしょうか?」



 ヘカはいちごじゅーすをきゅっと飲み干すと目を瞑った。

「あの娘は、優しすぎるから残酷なんな? 幸せを求めすぎるから不幸なんな? 要するに生きるという事に素直すぎて不器用なんよ」

『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』

オンライン食事会でも本作の話題が続きました。ヘカさんが非常に好きな作品でして、あれこれと蘊蓄を語って頂きました。その中で本作で起きた地震は直下型の地震である事と、マグニチュードと震度も語るマニアックさで、少し私は引きましたよぅ! 皆さんも作品が読み取れる情報で勉強してみてはいかがでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ