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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第五章『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』
40/90

Easier said than done~今宵はお酒を掲げながら~

皆さん、ようやくコロナの緊急事態宣言が解除されはじめましたね! ですが、気を抜かずに注意していきたいですねぇ! ふしぎのくにもかなり少数精鋭で現在動いています。みんなでまたワイワイ作品の考察や感想を話し合う日がくることが待ち遠しいですよぅ!

 坊や、何処にいるの? 坊や・・・・・・私は坊やを手放した。坊やは・・・・・・あの子の代わりではない・・・・・・あの子は女の子だった。

 産まれて抱きしめて、産まれてきてくれた事を感謝して、一緒に幸せになろうとして、私はあの娘を門の外に放り出すという絶望を与えてしまった。


 あの子は今、生きているのか・・・・・・それとも、死んでいるのか・・・・・・

 分らない。

 そんな答えが出ない日々を忘れさせてくれたのは坊やだった。


 でも・・・・・・私はその坊やをも失った。ようやくそこでは分ったのだ。

 私は幸せになってはいけない。そもそも、私は誰かを不幸にする存在なのだ。だからこそ、夜の女王に見初められたのか・・・・・・内蔵が、四肢が、精神が腐っていく自分は何者にもなれず、何もなすこともなく、産廃品として朽ちていくさだめにあったのだと思っていた。


 そんな私の元に・・・・・・坊やは戻ってきた。希望に満ちあふれ、見る者全てに勇気をくれた坊やの瞳の輝きは失われ、空虚であり虚構の中にどす黒い感情を隠した瞳。


 笑うと、誰をも幸せにしてくれたあの元気で可愛い笑顔の代わりに、どんな異性でも射止めれるだろう呪いにも似た関心のないほほえみ。


 坊やは私と離ればなれになっていた間に何があったの?


  私に教えて欲しかった。されど、坊やが私に望んだ事は私のこの不幸を坊やの望むべき相手に与える事。

 そうなのだ・・・・・・忘れてはならない。私は人を不幸にし、幸せになってはならない存在だ。


・・・・・・だけれど、物語を楽しむ神の使徒達と物語を語る事が楽しい。楽しくて時間を忘れてしまった。

 この時間はきっと、私にとって最期にして最高の時間なのだろう。


                   ★



「バレッタさん? バレッタさーん?」

「この魔女、目を開けたまま寝てるぞ。それも夢をみている。のんきなものだ」



 トトとレシェフの顔が飛び込んで来た事で、バレッタは二人を抱きしめた。それにトトは驚きながらも身を任せ・・・・・・レシェフは・・・・・・



「や、やめろぉ! なんだなんだ?」



 そんなレシェフの頭をバレッタは撫でる。



「ふふ、いいこだ。坊やを私が預かっていた時、私は一頭の牛を飼っていてね。毎朝顔を洗う代わりにねぼすけな坊やの顔を舐めさせたものだった」



 トトとレシェフはバレッタに抱きしめられながら話を聞き、レシェフは尋ねる。



「馬はリンゴなんて食べるのか?」

「ん? 食べるよ。人参やリンゴは甘いから、野生のシカなんかもよく摘まみ食いしにやってきていたよ。まぁ、それをさらに食べるのは私達、最高消費者なんだけどね。それにしても入村審査官なる役職ができたわね」



 作風がやや変わる。少し最初の投稿から時間が経ち間も開いている。そして逆に作品の世界設定感も固まってきていると見れる。



「恋人しか入れない村か、悪くないね。そういえばトト君とレシェフちゃんは恋人かい?」

「えぇ」



さらっとトトが嘘をつくので、レシェフは慌てて叫ぶ。



「おい! 何ナチュラルに嘘をついているんだ君は! ボクと君達がそんな関係になるわけないだろう!」

「世の中の全ての女性は僕の恋人ですよ!」



 真面目な顔でそういうトト。セシャトとうり二つの顔からは想像できないくらいの女性好き。そんなトトは語る。



「性行為が少ない村。カップルでなければ入村できない・・・・・・実に恐ろしい村だとは思いませんか?」



 トトはフルーツを薄く切りながら、二人に話す。そんな中、バレッタは語る。



「おしべとおしべ、めしべとめしべでも不思議な事に人間は絡み合うものさ、でもそれが少ない・・・・・・植物みたいね。でも、この街は、一つの幸せをシープちゃんとウルフ君は見つけたんじゃないかしら?」



 ちくたく、ちくたく、ちくたく、ちくたく、ちくたく。時計? メトロノーム? 音が響く。それはわざとらしく、トトとレシェフを現実に戻す音。



「時計の音、人間の音。朝起きて、会社や学校に行く時の音。そしてそれが終わりを告げる音。時間なんて概念は存在しえないのに、人間はそれを世界として捉える。自分が他の人と同じ世界にいれると認識できる音。例えばトト君の懐中時計、今何時?」



 トトの懐中時計は動かない。神様からのお下がりで、お守りみたいな物。だが、自分達はもうかれこれ十時間は『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』の話をしていた。



「バレッタさん、今何時ですか?」



 トトの質問にバレッタはニヤりと笑って答えない。レシェフはそんなバレッタを見つめると目を瞑った。

 すーすーと寝息を立てるのだ。そんなレシェフにバレッタは毛布をかけると、大きな船の絵が描かれた酒瓶を持ってきた。



「カティーサーク、トト君も飲む? それともキャプテンモルガンの方がいいかしら?」



 トトは未成年。片眼鏡のズレを直してから首を横に振る。トトはバレッタが持ってきた物を指さして所望。



「僕は法律上お酒を飲めないので、そちらのジンジャートニックをいただけますか?」



 ノンアルコールでジンジャートニックを所望するトトにバレッタはすり下ろしたショウガに砂糖、それをトニックウォーターに落としながら最後にジュニパーベリーのオイルを垂らしたものをトトに渡した。



「ありがとうございます。くだらない戦争。空っぽの戦争。敵のない戦争。愚かな戦争。無駄死にする兵士・・・・・・バレッタさんはどう思いますか?」



 それにバレッタはカティーサークストームの封を開けると、それでケイブル・グラムを作った。そのグラスをトトに向けるのでトトはコツンとグラスを合わせる。その儀式にも近い行為の後にバレッタは答える。



「それはシープちゃんの疑問に答えるようなものね。戦争っていうものはビジネスであり、政治の道具なの、終わらない戦争と落としどころのない泥沼が生み出すものは、荒廃と腐敗と、そして、惨敗よ。アンナが成長するまで終わらなかったのであれば、腐るどころか枯れ果てていたかもしれないわね。一見、群像劇のように語られているけれど、一本道でしかないわ、そしてはっきりとは分らないけれど、閑話としては少しいきすぎたかもしれないわね」



 よく喋る事だ。トトはそう思いながら、殆どジュースと言っていい。ノンアルコールカクテルに口をつける。

 そしてバレッタは一杯目のケイブル・グラムを飲み干すと二杯目を作る。ミキシンググラスに入れたそれらをバースプーンでかき混ぜながらバレッタは呟くように言った。



「村々や町々を渡り歩く、シープちゃんとウルフ君。二人はとてもドライで、作中ではこれと言った目的を感じる事もなく、進んではいるけれど、ある種のダークコメディにぞくするのかしら?」



 トトは氷がパキンと割れる音を聞きながら。バレッタの話を聞き手に回る。本来、本作はその側面が強い。政治的意見というよりは、風刺のような・・・・・・



「為になるかは別として何らかの教訓のようなものは感じますね」

「おや? トト君は、意外とシビアな意見を言うのだね? そう、グースバンブスもマザーグースもなんならグリム童話や、日本古来のおとぎ話だってその側面があるものよ。本作にはいないのかしら? 熱狂的なファン」



 そうもっていくか・・・・・・トトは缶詰のサクランボであろうそれをパクりと食べるとバレッタの話にのる。



「えぇ、宗教的な珍しいWeb小説作品である事は確かですね。本作は伝えたい事が実のところ分りやすい。テラーであるシープちゃんとウルク君が徹底的に中立を保っているからこそ、見えてくる側面は違うでしょう。人間の美しさ、汚さ、強さ、弱さ。そしてウルフ君の言うとおり、面白さ。二人はそんな事を感じ、何故? どうして? という局面が大きう描かれます。そして当然、読者は二人に同化する。変な連中だ。おかしな風習だ! 狂っていると・・・・・・ですが、実際は人間の行っている事なんです」



 ここからはトトの見解でしかないが、怪物少年と化物少女が人間という異端なる者達がいる村々や町々で見る理解しがたい文化や風習、ルールの数々。それはある種のとんちのようなものなのだ。

 柿の木の柿。バレッタは、度数の高いウルフヴーンの封を開けると、まあるい氷の上からそれをかけて答えた。



「君はこう言いたいんだね? 怪物や、化物から見た人間の行動は理解しがたいという事。うん! 確かにそれは実にとんちがきいてるよ。そう言われてから読むとかみしめた味が変わってくるよ。確かに異常すぎはしない人間の数々・・・・・・現実は小説より奇なり」



 バレッタとトトの考察は盛り上がる。シープとウルフはとても愛らしい、そんな二人が実のところ人間という者に対して警戒している物語であると二人は語る。



「人は自分と違う者を叩く傾向にある。怪物や化物というものは畏怖の対象だよね? 人間は畏怖の対象に対してどうするか知ってるかい?」



 残念ながら人間、動物。あらゆる生き物は自分と違う者に対して恐れ、迫害する。バレッタは狂気的な笑みとともにオンザロックのウィスキーをくいっと飲み干す。

 さぁ、次はトト君の番だよと言うように、そんなトトが口を開こうとした時、目を覚ましたレシェフはぼーっとした顔でこう呟く。



「・・・・・・でも、人間は相手を分ろうとします。例えばこの作品の本質を見抜こうと、最初は恐れるかもしれませんが、考えて近づこうとします。一緒になろうとします・・・・・・そして分ろうとするんじゃないですか? シープちゃんやウルフ君はその村や町の事を、理解しようとするじゃないですか・・・・・・・私達人間が心の奥に怪物や化物を飼っているように、シープちゃんとウルフ君も人間を育てているんですよ」



 へぇとバレッタはレシェフに話しかけようとレシェフに触れて青い顔をしてからトトにこう言った。



「トト君、寝てる。壮大な寝言だよ! びっくりだよ!」



 トトはまだ物語を語る事ができる程度の元気はある。しかし、少し眠気があるかと言われれば確かに眠い。



「バレッタさんは、優しい人なのでしょうね? それ故に分ります。貴女はよくない者だ。人間の身でありながら僕やレシェフさんを捕らえる事ができるこの摩訶不思議な空間、僕はいいとして何故レシェフさんまで?」



 とくとくとくとウィスキーをグラスに注ぎながらバレッタは独り言でも語るようにこう言った。



「愛知は名古屋の古書店・店主レシェフちゃん・・・・・・どうもこの物語とシナジーがあるようで仕方が無いんだよね」



 バレッタの言わんとしている事がトトには分った。もしかすると、それが分る者もいるのかもしれない。



「本当に、貴女は何者ですか?」

「産廃品だよ。トト君」



 トトは彼女のみせた寂しそうなその表情を生涯忘れる事がなかった。されど、今はそんな事知るよしもなかったのだ。

『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』今回は、人間という存在の不可思議なところにトトさんとバレッタさんが語っていますねぇ! そうなんです! シープさんとウルフさんは少しおかしな人々や街や村の風習やルールに少し引いていますが、実際人間の行動は信じられない事の連続です・・・・・・さぁ、シープさんとウルフさんは次はどんな不思議な場所に行くんでしょうね? そしてそれをバレッタさん達はどう読まれるのでしょうか?

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