Lügen haben kurze Beine~芥川より太宰~
4月に一月間お休みを頂いていた私ですが、長いお休みを頂いていた間。少し作品を読み込む事にポリシーのようなものが生まれてきたんですよね。ふしぎのくにの容赦ない評価シートを使わないでこっそり読むのが私の楽しみです。今回の5月作品も、ほんとに皆さん、隅々まで読まれていて何度読んでも考察とディベートが楽しいですよぅ!
「では、裏レシェフさんがヘソを曲げてしまったので、ここは僕がお二人にこの可愛らしくも、意味深な章・平和な村を語りましょうか」
「いいねいいね。やっちゃトト君」
バレッタはパチパチパチと拍手をするので、トトはそれにのって帽アンドスクレイプ。トトの話は二人を引き込む。
「トトさん、トトさん。守衛無能すぎやしないかい?」
林檎袋に銃を入れて密輸が簡単に成功してしまうその村の警戒心のなさにバレッタが質問をするので、トトは笑う。
「検査態勢が、ザルなんです。田舎の村ではよくある事ですよ。ルールがあってないようなものです」
「あぁ、柿の木の柿だね」
レシェフとトトはそれに反応する。ウルフとシープが初めて入村したその村を、一言でバレッタは語る。
「そうですねぇ、いいところつかれます。幸せを探す旅、可愛いお二人はまず自由という幸せを手に入れています。そして優しくしてくれる村民。ふと読者は思うんでしょう。ここで、二人は幸せを得れるのかもしれない」
うんとトトさんのペースになるハズだった。されど、小説の作風についてバレッタは語る。
「これは太宰のヴィヨンの妻みたいな書き方をされているんだね。全部丁寧語だ」
実は珍しい。絵本などで使われる技法で物語りは進む。キャラクターはライトノベルのそれである事によるギャップ。
それに、名古屋の某所で古書店を営んでいるレシェフは手をポンと叩く。
「どちらかというと児童文学にちょこっと近いかもしれませんね。長崎源之助さんとかがにちょーね・・・・・・じゃなくて似てますね」
あぁ、確かにとトトが共感を見せようとした時、バレッタはトトの作ったスコーンにジャムをつけながら微笑む。
「平等と平和ってさ、勝手と自由みたいな違いがあるよね。でも、これはソフィアさんのお父様に問題があるよね。村のルールはある種国の法律のようなものだもの、だけど解せないね。幸せになる為の手段か、それは幸せか隷従か、まぁでも若人達よ。たまには道を違えるのも悪くないね。いい! 実に尊い、シープちゃんとウルフ君。是非、私の工房に招いてお茶でもしながら、一緒に語り合いたいなぁ~、迫害された仲間としてね。さて、じゃあ次よも! 次! それにしても、シープちゃんにとってウルフ君は弱点になりえちゃうな、うん。でもそれ故に幸せは近くにあるのかな? 死合わせと共にね」
コトンとティーカップを置いてから上目遣いにトトとレシェフを見つめるバレッタ。そんなバレッタをよそにレシェフは語る。
「携帯食料。所謂レーションを食べるけど、シープちゃんの口に合わないレーション。どんな味なんだぎゃ?」
それにトトは少し考え、トトに合わせてバレッタが答えた。
「「MRE?」」
「なんだぎゃ? そりゃ」
もう方言を隠すことなく聞くレシェフにトトは小さな鞄が小さな小包のような物を取り出した。
「キノの旅でキノさんが粘土のような携帯食料を食べるというシーンがありますよね。想像的にはカロリーメイトです。ですが、カロリーメイトは大塚製薬の企業努力で結構おいしいです。ですので、この米軍のレーションに近い物がこれらの作品で言うところの携帯食料と思われます。ちなみに、ヘカさん経由で欄さんから頂きました。食べてみましょう。世界一まずい携帯食料」
三人は無言で租借し、食べれない程まずくなく、食べたいと思える程おいしくないそれにやや笑いながら水で流し込む。不思議な調律が出来たところで、トトは語る。
「Web小説として、本作『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』の褒めるべきところは、同人誌としての正攻法を行くところでしょう。そもそも太宰も芥川の同人誌でした。セシャトさんと私がよく使う言葉なのですが、好きこそ物の上手なれ、いい作品、作風は真似て学べます。本作の作者は、キノの旅というロードムービーを自分のキャラクターで展開するという手法をとっています。私達の友人のヘカさんは、キノの旅より、本作の方が好きであるとはっきり言っていますしね」
手をポンと叩くバレッタ。
「芥川より、太宰って当時も言われたわ!」
貴女いくつですかと聞かないのは、ここには人外しかいないから・・・・・・そう、太宰はかなり早くから評価されていた。
「そうです。本作の作者さんはある種、太宰さんに似ていますね・・・・・・彼女のメンツの為に言っておきますが、サイコパスという部分じゃないですよ? 作品に対する冷静さです。他作家に比べて全面的には評価を気にされていません。完全同人誌寄りの作り方と、創作家としての達観さが、作品を読んでいて感じられる点は実に安心できますよね」
それを感じられるワンシーンを一つ抜粋しよう。ある嘘の村Ⅱの会話文に関して、非常に読みやすい。
「うん。なんなら、読み魅ってしまうね。一般的に会話文だけで物語りを展開するのはそれ相応の技術が必要だと言われているよね」
バレッタはトトの淹れる紅茶を何度も所望しながらレシェフとトトと意見交換を楽しむ。レシェフは目を瞑り語る。
「嘘というものは、難しいですよね。いい嘘と悪い嘘があります。そして、エミーナさんへの嘘はどちらとも取れますし」
「レシェフちゃん、いい嘘なんてないと思うよ。エミーナの嘘もまたそうだね。だってさ、嘘ってのはいずれバレるようにできてるじゃないか」
「ウルフ君とシープちゃんに、ですか?」
「うん、二人を介して読者にオチを持っていく。そして読者はどう考えるんだろう? とここまでが流れなのかな? ウルフ君は嘘つきだとは言ったけれど、それが悪いとは言っていないからね」
バレッタはこう言いたいのだろう。あとは読者の考えにお任せしますと・・・・・・本作はこうしたディベートにはもってこいの作品である。
舞台があり、テーマと設定があり、それをウルフとシープというテラーが読者の代わりにそのテーマを体感し、読者はそれに対して考える。
バレッタは紅茶のカップを置くと、微笑んだ。
「じゃあさ、本作の楽しみ方として、一つのお話でディベートしてみましょう? そうね。この閑話なんていいんじゃない?」
そう言ってバレッタはカードをトトとレシェフに配った。それは何をする為なのかトトとレシェフは分らない。
「意見が肯定ならカードを伏せて、否定なら表にして出して、意見を言うの。私達三人の作品認識がどのくらい違いがあるか探っちゃおぅ!」
トトとレシェフは顔を見合わせて困る。この閑話部分は、次回への繋ぎであると共に、ウルフやシープの自然な表情、そして、彼らの事が少しばかり見えてくる。
簡単に説明すれば、本編よりも物語の調子はまっすぐなのだ。それであればカードは伏せておくしかない。
「沸かした水を飲む。生水はお腹壊しちゃうものね。でも私は沸かした水って嫌いだなぁ~薬缶だと金属の味がしちゃうし、子供なのにシープちゃんはしっかりしているよね? 沢山サーカスで勉強をしたからなんだってさ、偉い子だね。ウルフ君もしっかりシープちゃんの事を聞いて可愛いよ。文章で彼らが目に浮かぶようだね」
そう言ってバレッタはさらさらと絵を描く。簡単な絵だ。それはシープのようだった。女の子女の子した少女。バレッタの絵は目が大きく黒く塗りつぶされてはいるが、愛嬌のある絵だった。
「シープちゃんはそうねぇ・・・・・・ゆるふわ系で、実は赤縁の眼鏡なんかが似合いそうだねぇ! うんうん」
トトとレシェフは顔を見合わせる。
カードを表に向けようかどうか迷う。そのくらいにギリギリのラインを攻めてきているのだ。それっぽいけど微妙に違うシープを画用紙に描いては粘土消しゴムで修正する。レシェフの方はカードをひっくり返すかどうか迷う中で、バレッタの描いたシープは完成した。
(び、びみょうだぎゃ・・・・・・シープちゃんと言えばシープちゃんだし、トトさんは・・・・・・)
トトは目を瞑り、自分を落ち着かせる為に紅茶を飲む。ここで終わればそれまでだったのだが・・・・・・
「じゃあ次はウルフ君描いてみるね!」
女子中学生が描きそうな絵を描くバレッタ。そしてギリギリシープはシープとして認識できるそこで、バレッタが描いたウルフは・・・・・・
「ウルフ君は、少し無口で、ちょっとワイルドさを感じるから、ちょっと髪を立たせてみよう!」
「「!!!!」」
レシェフは頬を膨らませて我慢する。バレッタが描いたウルフは何故か、パイロットのゴーグルなんかをつけた少しやんちゃそうな男の子。可愛い絵面ではあったが・・・・・・トトとレシェフは我慢できなかった。
パラり。
二人はカードを表に向けて否定を現わす。
「おや、二人のイメージと私のウルフ君のイメージは違ったかな?」
「バレッタさん、違うも何もなんですが・・・・・・こちらをご覧いただけますか?」
トトがバレッタに見せる。
「おや? メルヘンでガーリーなイラストだね。まさか・・・・・・これが公式かい?」
無言でトトとレシェフは頷く。それにバレッタはクスクスと笑った。
「文章だけで読むと自分の想像でキャラクターを想像してしまうよね! これはたまげたなぁ、物語としての完成度も高いのに、絵も凄いじゃないか、とてもいい! この二人は幸せを捜しているのかもしれないけれど、私はこの二人を見て確実に幸せになれたよっ!」
バレッタは可愛く笑う。本作の作者である北澤ゆうり氏、人を虜にするようなイラストというべきか、もう作品と表現した方が失礼がないかもしれない。
小説もイラストも非の打ち所がない完成度を誇る。是非、本作に興味を持たれた作者さんのツイッターアカウントにお邪魔する事をオススメする。
「少しだけ、私は思うのだよ。この二人は愛されすぎているね。うん、悪い事じゃないよ。心が温かくなる。何百年ぶりだろうかと私も思ったよ。いや、十九年ぶりくらいかな? 子供を愛おしいと思ったのはさ」
そう言ってタブレットに映る公式のうるしぷを見てバレッタはニコニコと微笑む。
「かーいいねぇ、スモックなのかな? 二人は結婚するんだろうか? シープちゃんの尻に敷かれるのかな? でも小さな白い家で二人は幸せになれそうだ」
誰しもがそうなって欲しいと思うような事をバレッタは言って、そして涙を流した。
「いいなぁ。じゃあ二人とも、夜はまだ長いよ! 次行こうか?」
『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』本作のオススメポイントとして会話文のやりとりがあげられます。本編でも語られていますが、会話文だけ物語を展開するのは実は難しいです。ゆうりさんの本作では、心情描写がそのまま場面を現わしてくれます・・・・・・とヘカさんの受け売りですが、皆さんはどの章が好きでしょうか? 一緒の本作を読んで語り合いませんか?




