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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第五章『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』
37/90

Lass mich in Ruhe~森の魔女~

さて、皆さんお久しぶりです。

4月の記憶があまりない私ですが、アマゾンや通販のお取り寄せの金額が6桁を越えていて少々、お小遣いを使いすぎた事に今更ながら後悔していたります。ですが、甘い物の日々で満ち足りていた事は確実ですねぇ! えっ? 体重ですか? それは・・・・・・おや、誰か来たようです。

 機械音だけが響く病室。

 私に出来る事は目を動かす程度、身体は動かなくなってどれだけ経ったのか・・・・・・いや、こんな事を考えるのは無駄な事なんだろう。

 こんな私の元に客人(まらうどと)は、酔狂な・・・・・・酔狂な・・・・・・



「随分探したよ。もう一度、力を貸してくれないか? お母さん、消して欲しい連中がいるんだ。人の姿をして、物語を読む人ならざる者達」



 何があったのか、私にそう語る者は疲れた顔で、私を懐かしそうに見つめる。だが、私はこの通り貴方に力を貸すなんて事はできやしない。



「タダで力を貸してくれとは言わないよ。お母さん、約束を守ってくれた暁には、貴女に永遠の眠りを与えてあげよう」



 私はこのまま永遠を彷徨うのも悪くないと思っていた。でもこんな貴方を見てしまったなら、私は老体にむち打ち目覚めなければならない。

 貴方を私は見捨てたのだから、どんな事があっても貴方を私の手元に置いておくべきだった。


 さすれば、今頃貴方は教師にでもなって、子供達に沢山の物語を伝え、貧しくとも充実した生活を送っていたかもしれない。

 私は貴方の為に夜天に住まう住人に戻ろう。

 貴方の為に、貴方の望む未来を再構築しよう。

 それが、誰かを不幸にする事だとしても・・・・・・

 私は頷く代わりに、瞬きを何度もしてみせた。それは肯定の合図。すぐに私は全身麻酔をかけられ意識を失う。

 次に目を覚ました時・・・・・・



「なんだ。腕がある。足も、動く。言葉もこんなに簡単に、機械の身体なのか? そうか、君はここまで壊れてしまったのか、可愛い私の坊や、貴方の為にもう一度ウイッチマスターとして、地を這う事にしよう」



 坊や、きっと貴方は私を、お母さんを安らかにしてくれるんだろうね? だったら、お母さん、少しだけ頑張るからね?

 文字を読むなんて、一体何年ぶりだろう?

 嗚呼、私は今文化に触れている。

 文化とは人間と動物を隔てるムーブメントの一つであり、万物の霊長である事をむげむげと教えてくれる。



「工房にいこう。嵐がくる」



                    ★



「トトさん、トトさん! こんな事してお金になるんですか?」

「なりませんよ。今回、レシェフさんが僕の出張ブックカフェについてきたのは、古書店経営の勉強の為ですよね? ですから、僕も幼稚園や公民館でWeb小説の紹介をしているわけです。沢山の読者の方へ興味を持ってもらう方法を沢山学んでくださいね。それにしても本日、宿泊するコテージはこのあたりのハズなんですけど・・・・・・」



 トトは紅茶が沢山入った大きな旅行バッグを持って、レシェフはキャリーバックを引いて、青森のとある森の中を進む。



「ううむ、これは嫌な予感しかしませんねぇ」

「怖い事言わないでくださいよ! なんか霧も深くなってきたし、なんか楽しい話しましょうーよ!」



 ブルブルと震えるレシェフにトトは少し考えてから話し出した。



「『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』なんてどうでしょう?」

「あぁ、何度かふしぎのトレンドに上がってきた作品だぎゃ・・・・・・積み作品が多くて、実はまだしっかりとは読んでないんです」



 簡単にあらすじを語るトトの話を聞いて、レシェフは少し考える。不死身の少女・シープ。そして人喰いの少年・ウルフ。



「あれですね。人間が怖いという風刺ですか?」

「半分正解でしょうか? 本作の作者さんは有名な社会風刺ファンタジーを好まれています。ですからその側面もお持ちでしょう。作品の読み方としては、シープさんとウルフ君の旅路、彼らはテラーなんですね。実際の作品の主役となるのは舞台となる場所であったり、それらの環境設定である事が多いです」



 なるほど、魅力的な主人公であるウルフとシープをあえてトトは主人公と例えずにテラーとした。二人を中心に物語りは進んでいく。

 もちろん、彼らは主役である事は揺るがない。



「パッケージって事ですか?」

「えぇ、例えばシープさん一人だけでも情報量は殆どありません。経緯は別として、彼女を構成する物が多く知り得たとすれば、現在の作品の色彩が失われるかもしれません。今後、物語が終幕に向かうにつれ、彼女の事やウルフ君の事も段々と分ってくるかもしれません。今は不要な事なんですよ」



 何を? と言えばレシェフは少し考えた。古書店『おべりすく』で作品読み込みの勉強をした時、あえて作品の問題点、欠点を探すという事をしてきた。それはこの事かと・・・・・・



「最近の読者は目と知識が越えてるんなも?」

「はい、そういう事です。シープさんは不死身で賢い女の子。これだけでいいんです。情報がこれだけで透過性がある分ツッコミようがないんです」



 シープの不死性についていくらか考察ができなくはないが、それは冒頭では何の意味もなさない。そして今後の展開においても今現在そこまで一連のストーリーにとって重要なファクターでもない。



「そして、それは同時にウルフにも適用されるという事です?」

「そうです。実に巧みでしょう。当初の時点では方向性も決まっていなかったでしょうし、ウルフ君とシープさんはどんな子で、何が好きで何が嫌いなのか、そして作品を展開するにあたって効率よく進められる設定。不死性と人食性、この二人が旅に出る。そして行く先々で色々な出来事と遭遇する」



 無限という物は存在しえない。不死性についても同じ事が言える。人間しか食べられないウルフの設定も同じく、味がせず頭が痛くなるという。



「シアさんあたりなら、ウルフ君は摂食障害である事を疑うでしょうね。同時に何らかのトラウマを与えられている等でしょうか? そして、シアさんはそんな考えを持ちながら、こう結論付けるんです。まぁどうでもいいやと。気になるところはそこじゃない。そんな普通の人間ではない彼らがいかにして幸せを探すのか・・・・・・ですね」



 幸せ。何をもってしての幸せなのか、それは今現在(2020/04/30)公開されている章まで語られてはいない。そんな二人はお互いを認め合う事ができる唯一のつがいである。同時に語りべとなる。

 トトとレシェフは作品の話をしながら明らかに雰囲気が変わっている場所を歩んでいる事に気づく。そしてこれはトトは覚えがあった。

 少し前、汐緒のマヨヒガに迷い込んだ時。あれと同じような人ならざる者の住処の気配。それにレシェフも気づいたのか・・・・・・

 あるいは・・・・・・打ち水になったのか。レシェフの雰囲気が変わる。



「キミは神の使徒、その末弟だったかな?」

「お初にお目にかかります。ブックカフェ『ふしぎのくに』オーナーのトトです。厄災の読者レシェフさん、普段の女子高生のレシェフさんも素敵ですが、今のレシェフさんもツンツンしていて可愛いですよ」

「まぁ世辞として受け取っておこう。しかしだ。この場所も気になるところだけど、シープという娘、何故に銃器を使えるのか? そして銃のタイプから世界感設定は1900年代くらいの科学力はあるようだ。ボクはね。君やあの西に住む女狐とは違うんだよ。気になるんだ! あらゆる事がね。ウルフ、オオカミではなく怪物としての狼だけど、決して学がないわけじゃない」



 一人で作品に関して悦に入っているレシェフ。そして一言。



「ボクは必要以上にキャラクターの掛け合いは好きじゃない。透過性が損なわれる」

「いいじゃないですか、まだまだ子供であるという表現だと僕は思いますよ? 彼らは少し人間離れした力を持っていますけど、心はしっかりと人間です」



 それに大笑いしたのはレシェフだった。



「あっはっは! そうだそうだ違いない! 神や、その使徒であるキミ達とは大違いだ! 人間は少し自分と違うという理由で差別をする。その小さな差別は、喧嘩になり、暴動になり、いずれ戦争にまで発展するんだよ。ボクは沢山見てきたぞ、同じ過ちを繰り返す人間という者の本質。”幸せ”まさにユートピアを探そうと思えばそれは人間が滅んだ世界じゃないのかい?」

「噂に違わぬ過激さですねぇレシェフさん」

「だろ? 惚れたか? 神の使徒」

「えぇ、以前より表のレシェフさんも今のレシェフさんも、同じ人外として是非一緒に”幸せ”を探したいものです」



 怪物少年と化物少女になぞられたんだろう。それにレシェフは少しだけ面白そうに笑う。



「ボクが化物少女であろう事は認めよう。でも君は怪物少年じゃあないな? ただの無能な人外だ。無能な神が生み出した無能な人間の姿をした人外なだけだ」

「かもしません。ですが、共に歩む事はできるんじゃないですか? 何せ、僕は目の前にあるこの建物に入るに、レシェフさんがいてくれるととても心強いのですが」



 お菓子の家。

 甘ったるい。海外製のお菓子を思わせるバターと砂糖の香り、ムカつきを覚えるこの建物。もはや、不気味を通り越してスルーしたくなる程のいかがわしさ。



「お菓子の家には魔女が住んでるものだろ? なんて言ったっけ? 君達の長女・馬鹿だったか?」

「いえ、ヘカさんですね」

「あれがいるんじゃないのか? 開けてみよう」

「そんな、いきなりですか?」



 トトが止めようとする間もなく、レシェフがその扉を開けた。実に楽しそうに醜悪で邪悪な顔をしたレシェフ。チョコレートでできたドアノブを回すと手についたチョコレートを舐めとり、中に入る。



「あら、本当に坊やが言うように来客(まらうどと)が来たんだな。歓迎しよう。物語に巣くう異端の神々」



 部屋の中にいたのは、黒のサマードレスにとんがり帽子。ザ・魔女。と呼べるに値する格好をした女性。推定20代は後半。あるいは三十代くらいだろうか? つり上がった耳に白目の割合が広い三白眼。赤毛のポニーテール、そして薬煙草を咥えた魔女らしき人物がいた。



「歓迎って言うなら、椅子に茶に茶菓子の一つでも出したらどうだい? お嬢ちゃん(・・・・)

「ふむ。これはこれは、我が魔法師の祖。ヘカ様とお見受けする」



 それに目を丸くするレシェフ。そして、トトは吹き出した。目の前の女性はレシェフをあのヘカと間違えたのだ。



「ぷっ! お茶なら僕が淹れましょう。レディ、お湯をいただけますか?」

「あぁ、湯ならそこのケトルを使うといい。茶菓子といえる物は残念ながらないのだが・・・・・・」

「いえ、お菓子も僕が簡単な物を作りましょう。その間、ヘカ(・・)さん。こちらのレディに『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』をお聞かせ頂けますか?」

「は? ボクは君達の長女じゃない! ボクはレシェフだ。忌まわしき君達の神によってこんな小娘の身体に・・・・・・」



 地団駄を踏むレシェフに魔女のような女性は少しだけ驚いた顔をしてからこう言った。



「我々の祖ではなく、軍神ヘラクレスであらせられたか、これは失敬した」

「その名前でボクを呼ぶな。人間が解釈した無能なヘラクレスと同じ者だと思うな。ボクはレシェフだ」

「ではレシェフ、話を聞こうか?」

「は? なんの?」

「『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』だったかな?」



 トトがなにやら焼き菓子でも用意しようとしているので、文句の一つでも言おうかとしたが、なんだかそれも癪に障るのでレシェフは語る。



「平和な村・・・・・・か、実に興味深いな。母を訪ねて三千里、銀河鉄道999みたいな形式の作品か?」



 レシェフは心底面倒そうに耳の穴をほじりながら答える。



「あぁ、それらに、特に”銀河鉄道999”に影響を受けたのが”キノの旅”で、その”キノの旅”に影響を受けたのがこの作品だろうね。所謂ロード-ムービー物と呼ばれる作品さ。ボクはこの類いの余韻を残して終わる物はあまり好んでは読みはしないのだけれどね。まぁそうだ”平和”誰もが平等に暮らしていけるんだとよ! そういえば、殺人を犯してもいい街とか戦争を興行にしている星とかって話も影響元にもあったな。話はまず、ベースの舞台からはじまるのさ」



 それに魔女のような女性は平和、平和、平等と何度か反芻してから少女のような乙女のような顔で笑った。



「いい街だなっ!」



 可愛い。そうレシェフもトトも思ったところで、作品の話を続けようかとしたところ、ふとレシェフは思い出す。



「ところでお嬢ちゃんの名前は? ここで何してるんだ? ボクと、神の使徒を生け捕りにしてさ。何したいの?」



 魔女のような女性は両手を見せる。何もない事を確認させると手をパンと合わせた。レシェフは凶器が出てくると構えるが、木炭を取り出して見せた。



「私は、ウィッチマスター。この世界最後の魔女にして、夜の女王ニュクスの依代の一つに選ばれた産廃品・バレッタ。諸君等、異端の神々と物語を読み楽しむ為に、老体にむち打ち新時代に出しゃばったわけだ。さぁ、二人とも夜明けも夜更けも読もうじゃないか?」



 きゃは! っとバレッタは笑う。楽しそうに、友達に話しかけるように、トトはそんなバレッタの元にアップルティーを運び。スコーンを配る。



「あほくさ、雌ガキ、交代だ交代! ボクは寝るぞ」



 それは長くて短い夜がはじまる合図だった。トトとレシェフ、二人はとある夜に魔女に出会った。

5月は子供の日が控えていますよね? 子供といえば、Web小説で可愛い子供達が登場する作品、『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』をこの自粛期間に楽しんでみるのはどうでしょう? 読書が好きな人には広く楽しめるタイプの作品ではないかと思います。どちらかといえば、大人も楽しめるタイプの児童文学に近いんでしょうか? 私達のグループふしぎのくにには、現在4チーム存在するんですが。『ふしぎのくに』は実はこういった、物語物語した作品が大好きです! 学校や図書館で何気なく掴んだ一冊。そんな出会いに近い体験を『怪物少年と化物少女が“幸せ”を探す物語 著・北澤ゆうり』を読んだ事がない方が出来れば嬉しいですねぇ!

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