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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第四章 特別編・書籍版『婦好戦記~最強の女将軍と最弱の巫女軍師~ 作・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ』宙出版
36/90

一二三の世界 一二三の物語

みんなのアヌ兄さんやでぇ!まぁアレやな。今回は一ヶ月かけて、みんなの手元に『婦好戦記 著・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ ヒストリアノベルズ』までの物語を書くっちゅーコンセプトがあったんやな。一応、あれやでぇ、ヘカちゃんの得意とする聖地巡礼できるようになってるから、東京遊びに来たら、このルートでうろうろしてみるんもええかもな! 最後はここに一二三姐さんの作品のポスターあったんやー! ちゅうところで終わるようになってるでぇ! コロナウィルスでほんまに退屈しとるかもしれへんけど、一度自分の作品をゆっくり読み返してみるんもええかもしれへんで! 自分の作品、こんなおもろいんや! これ書いた奴だれや! ワシや! みたいなな! 

ほんまに、一二三姐さん、今月いっぱいありがとーな!

「その本を持って、君は行かなければならない」


 

 ダンタリアンさんはもう僕に興味がなさそうに、スキットルに入ったお酒を舐めるように飲むとそう言った。

 僕は本を抱きしめ、そしてアヌさんとバストさんを見る。そんな僕の頭をわしゃわしゃと撫でるとアヌさんはニッコリ微笑む。



「一二三少年。目的違えたらアカンで! ワシ等は、一二三少年が話してくれた『婦好戦記 著・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ ヒストリアノベルズ』に興味を持ったらか、探すの手伝ったわけや、その本は見つかった。で、その本を届けなアカン人がおる。それにはワシ等と離れる必要がある。難儀な話やな」



 僕は下唇を噛み、黙ってアヌさんの話を聞く。



「でもな一二三少年。ワシ等と別れても、ワシ等とここまでやってきた事が無くなるわけやあらへんやろ? なぁばっすん! あれやあれ、婦好戦記っちゅー話がワシ等を繋いだ」



 バストさんはじっと僕を見つめ、目線を合わせてくれる。そして無言で僕を抱きしめた。



「バストさん・・・・・・」

「自分は、一二三さんと離れるのは正直辛いですね。でも・・・・・・一二三さんはその誰かにその作品を渡さないとダメなんすよ。そして、自分やアヌさんはきっとその手伝いをする為に一二三さんと出会う運命だったんじゃねーかと思うんす」



 バストさんは優しくそう言う。僕は誰にこの本を渡そうと思っていたんだろう。それは、遙か遠い記憶のようにも思える。うっすらと思い出せるその顔。



「いってこい、うたかね少年!」

「きっと、その方が待ってるすよ!」



 僕をここまで連れてきてくれた二人。アヌさんとバストさん。僕は一筋の涙を流し、頷いた。二人のきっと普通の人よりも高い体温を感じながら・・・・・・



「アヌさん。バストさん。ありがとうございました。僕、行ってきます!」



 それはあの人のあの日を取り戻す為の物語なんだ。僕がそう決心すると、僕はアヌさんとバストさんの気配を感じない。



「ほんま、えらい時間かかりはったんやね?」



 はっと、目の前でわざとらしい欠伸をする女の子。青い髪に綺麗な着物を着て、少しつり上がった綺麗な目が特徴的だった。



「君は?」

「ウチか? あのアホ二人の雇用主のシアや。アンタが、夢から醒める事を選んだから、ウチが力貸したるんや。喜びや? 本来、こんな事せーへんねんから。アンタから本を盗ったんわ、忘れたくない、そんなあの子の想いやったんかもしれへんな」

「あの娘って誰ですか?」

「神出鬼没の甘味専門の怪盗や、ウチ等も手焼いとんねん。まぁ、覚悟はできてるんやろ? ならばしっと渡してきぃ」

「甘味専門?」

「せやな、アンタがもってるその作品、ハチミツみたいに甘い香りがする。なんや、知らんのか? おもろい作品は甘いんやで、そして酔う。それ渡してあの娘の思い出更新したり、その為に神様からもろた宝物見せたるわ」



 シアさんはそう言うと、お手玉を投げはじめた。



”おてせ おてのせ さきわいあそび ひとつ ひとのよ うらやみもうす ふたつ とこよの わすれのおうた みっつ うつしよ わかれのはやし・・・・・・”



 うねる。何が? 尻尾? それは一つ、二つと増えていた。

 お手玉遊び、歌もお手玉も上手だなと思っていたら、シアさんはお手玉を全て地面に落とすと僕を見つめて呟いた。

 シアさんの背後でうねる尾の数は七、八、九、そして十本はある。シアさんは僕を見つめ、否。僕ではない何かを見つめ、なんとも言えない表情で、聞き取れない言葉を言った。一言だけ、婦好戦記とそう言ったのが聞こえた。



「фоймп еахф сесято еетнед бокмемо ебнов фукоусеннки」



 パン!


 シアさんが手を叩くと、シアさんの姿はなく・・・・・・僕は焼いた小麦の香りを感じた。何処かの通りを歩いていた。ロングマフラーをした少し背の高い女性と並んで歩く小柄な少女。高校生と中学生? いや、同じ制服を着ているから、同じ学校なんだろうか?

 僕はその二人に恐る恐る声をかける。



「すみません、ここは何処ですか?」

「ここは神保町だが、サク知り合いか?」

「・・・・・・いえ、でも何処かで・・・・・・生徒会長。私の勘違いかもしれません。何処かをお探しですか?」



 僕は、何処を探しているんだ? 分らない・・・・・・無言の僕を見て二人は困ったように顔を見合わせる。そりゃそうだろ、いきなりこんな声かけをして・・・・・・


「もしよければ、メロンパン食べませんか? 東京メロンパン、美味しいですよ」

「あっ、どうも」


 

 サクさんは僕にメロンパンをくれる。暖かくて柔らかい。

 僕はなんだか、誰かから食べ物をもらってばかりだなぁ・・・・・・



「サク、たまには他の物も食べよ。この前交流した一蘭台学園の生徒会から、サクのメロンパンチャレンジとネタにされておったぞ」

「お茶目な人達ですね。では、私達はこれで」



 二人は手を振って僕と別れる。ふと上を見上げると、そこには看板があった。



「桜門商店街?」



 僕はこの知らないハズの場所を知っている。日付は大きな看板のような物に今の気温と共に書かれている。



「2020年、2月15日・・・・・・2020年! えっ? えっ?」



 僕は何故か、知らないハズのこの町をゆっくりと歩く。僕は記憶があるんだ。この町に、突如現れた本来存在しえないあの中国の大軍師が現れた事。そして、そんな彼をもてなし、物語を楽しく話していたあの女の子の事。

 中華料理店があり、そこを通り過ぎたとき、地下鉄の入り口らしいそこで僕は衝撃の物を見た。



「なんだよこれ・・・・・・」



 『婦好戦記 著・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ ヒストリアノベルズ』のポスターが掲示されていた。僕の手の中にはこの本がある。なら、この掲示があっても全くおかしくはないんだ。

 だけど、僕は何故か走った。会わなきゃ行けない人がいるんだ。伝えないと行けない事があるんだ。

 そして・・・・・・僕は・・・・・・

 僕は・・・・・・

 アヌさんとバストさんのいるところに戻りたいんだ!

 パン屋さんの近くにある小さな古書店、そこはクローズと看板が掛けられている。でも中からは楽しそうな声が聞こえるのだ。



「ふふふのふ! それでは、シープさんにウルフ君。次のお話をしましょうか? そうですねぇ・・・・・・可愛らしいお二人には、是非。あの冒険譚を読んで頂きたいですねぇ! これは、私も凄く嵌まってしまって、何度も読み返した作品になります・・・・・・おっと、お茶のおかわりいかがですか?」



 僕はこの声の主を知っている。誰なんだ? 貴女は・・・・・・僕のこの心の奥底の大事なところを刺激する貴女は誰?

 僕は過呼吸に陥りそうな状態で、ドアをドンドンとノックした。心臓が高鳴る。息がしずらい、そんな中で・・・・・・



「あら、誰かがやってきたようです。神様か、ヘカさんでしょうか?」



 いる・・・・・・扉の目の前に、この10センチかそこらの薄い壁の先に・・・・・・僕がこの本を渡さなければならない人がいるんだ。

 ガチャリ、開かれた扉。僕はその人に本を差し出した。



「これ・・・・・・その!」



 僕の手から本がなくなる。僕はまぶしくて見えない女性を見つめ、彼女の反応を待つ。



「あら、アマゾンから何かが届いてますねぇ・・・・・・購入した覚えがないんですが・・・・・・中は、本ですね。『婦好戦記 著・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ ヒストリアノベルズ』・・・・・・ ふむ。何故でしょうか? 心が温かくなりますねぇ。きっと、この本の作者さんの気持ちが伝わってきているからなんでしょうか?」



 僕の事をあの女性は見えていなかった。僕は・・・・・・思い出したのだ。あの人は・・・・・・Web小説が大好きで、甘いお菓子に目がない・・・・・・



「セシャトさんだ」



 僕は自分の姿がうっすらと消えていく事に気がついた。どうやら、僕の役目は終わったらしい・・・・・・ひふみ。僕はどうやら、オリジナルのドッペルゲンガーみたいな存在だったのだろう。だから、うたかね・・・・・・昼寝という名前だったのだ。一二三。オリジナルを含めて、三人同じ人物が世界にはいるらしい。僕はその一人、そしてその一人は今仕事を全うしたのだ。

 これでいい、あの人があの作品の事を少しでも思い出してくれれば・・・・・・でも、セシャトさんを知っているのはオリジナルであり、僕じゃない。

 オリジナルにとってのセシャトさんは僕にとっての・・・・・・アヌさんとバストさんだった。出来る事なら、僕はもう一度あの二人に・・・・・・会いたい。


 はっ!


「ようやく目が覚めたか、よもや目覚めないのかと思ったわ」



 太公望のフリをしている老人はそう言いながら、最初に会った時よりも少しばかり、人懐っこい表情を見せる。



「私は、どのくらい寝ていたのでしょうか?」



 女性がそう聞くのと同時に・・・・・・



「おーい! 一二三姐さーん! どこやぁ」

「一二三さーん、大丈夫っすかぁ! この辺で見かけたって聞いたんすよー!」



 空港で偶然一緒になったとある知り合いの男性二人組。その二人が心底心配そうに叫びながら自分を探している。



「あっ、おじいさん。私いかないと・・・・・・あれ?」



 そこには老人の姿はなく、かわりに自分の事を見つけて笑顔でかけよる二人の男性の姿。



「ほんまにぃ! 心配かけくさりよってからにぃ!」

「ごめんなさい!」

「羊料理食べてから、婦好墓見に行きましょうっす!」

「はい!」

「次は一二三姐さんが、サクのメロンパンチャレンジの番やからなぁ~」



 女性は、一瞬。不思議な感覚に見舞われた。それは誰かの意識。いや・・・・・・先ほどまで夢を見ていた夢の登場人物である少年の視点のようだった。

 彼は・・・・・・古ぼけて、全然売れていない古書店の扉を開ける。そこにいる着物を着た優しそうな二人を見て、飛びついた。

 女性は、代わりに彼が言ったであろう言葉を述べる。



「ただいま・・・・・・戻りました」



 それは誰も知らない物語、貴女の・・・・・・また、貴方の手元に『婦好戦記 著・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ ヒストリアノベルズ』が届くまでにそんな物語が本当にあったかどうかは・・・・・・分らない。


 それは一二三の世界、一二三の物語なのだから。

 そして一二三に伝えよう、おめでとう。そしてありがとうと・・・・・・


 また、他の本が誰かの手元に届くときに、着物を着た犬と鼬と昼寝がひょっこりと現れるのかもしれない。

 

 なれがいて、われがいる。

 いずれまた、今宵今晩この時はと、また会いましょう。

 特別編、これにて閉店。

『婦好戦記 著・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ ヒストリアノベルズ』

本日をもって、書籍作品の紹介を一端終了とするっす。作者の、佳穂一二三さん、読者の方々。おつきあい頂ありがとうございますっす。

今までは来月にならないと来月作品が分らないようになってたんすけど、今回はちょっとした仕掛けを入れさせていただいたっすよ。それいしても、セシャトさんにはじめて絡んだ方が当方紹介で初書籍化というのはなんとも運命を感じるっすね。

 皆さん、夜21時に手を掲げてみてくださいっす。それをした人達は、実は点と点、そしてそれは線になり、無限につながっていくんすね。年末に年が切り替わる瞬間のジャンプみたいな感じっすかね? むかし、そんな感じの自分のお話が劇場で・・・・・・おっと誰か来たみたいっすね。

 セシャトのWeb小説文庫、はじめて話を聞いた時、正直あまり実感がわかなかったんすけど、本当に楽しいっす。紹介する作品も選考の作品も全部いいっすね。そしてもちろん、紹介小説そのものも、物語として面白いと思うっす。そして今回、チームおべりすくに一二三少年が公式参戦したことも驚きでした。

 少し長いお休みを頂くっすけど、セシャトさんにバトンタッチっすね。またどこかでお会いしましょう。

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