博打と未来 トトさんが気に入るキャラクター
こんにちわっす! 最近作家の友人に借りた自転車に乗る事が日課になりつつあるっす。傾斜10度の坂を5キロ程ヒルクライムできるようになったっす。自分の自転車が欲しくなるっすね。コロナウィルスでみなさん家に籠もる事が多いと思うんすけど、自転車で少し遠くに行ってみてはいかがっすか?
「おい! ばっすん、一二三少年。カルメ焼きやぁ! くおうや!」
四枚カルメ焼きを買うと僕とバストさんにアヌさんは配る。カルメ焼き、なんだか懐かしいお菓子だなぁ。
「甘い菓子も食った事やし、ちょっと賽子でも振りにいこか?」
「アヌさん、博打は御法度っすよ」
「何言うてんねんばっすん! 古書店の売り上げヤバいんやで、ここで一発当ててやな! ほれ、百円札や、これを何倍にもして今日は豪遊や、なんや二人とも。ワシは、ただ遊びに行くだけちゃうで、ヤクザもんはよそ者の悪を良しとせーへん、その話聞きに行くのに、手土産くらいはいるやろ? まぁ、ワシとばっすんがおれば、損するんは胴元やけどな。かっかっか!」
博打は勝てないように出来ているという。あの富くじでも五割還元だとか、僕はあまり鉄火場や盛り場が得意じゃないんだけど・・・・・・
「ほな行くでぇ!」
アヌさんはノリノリだ。動物園に行く子供みたいに、うん。アヌさんみたいな人がきっと軍師向きなんだ。
「アヌさん、アヌさんから見るサクはどうなんですか?」
「ん? せやなぁ~、滅茶苦茶可愛いんちゃうか? あと、めちゃめちゃ真面目さんやな! ワシなら、もう少し楽観的になりーや! みたいな事言いそうやな。多分、性格的な気が合うんわ。ワシと婦好かもしれへんの」
嗚呼、うん。
窮地を二人は笑って行軍しそうだ。アヌさんは誰にでもこの感じで絡みそうだし、それはそれで面白そうかもしれないな。
そうこう話していると、お上にバレないように、一般の住居を改造した賭場に僕等はやってきた。水道橋にこんなところがあるなんて・・・・・・地下があるらしい。階段を降りていくと・・・・・・
「いらっしゃいませ、カジノバー『ふしぎのくに』にようこそ。古書店探偵のお二人様。お待ちしていました」
片眼鏡をした上品で綺麗な男の子が僕達を迎えてくれる。それにアヌさんはカルメ焼きを渡した。
「トトさん、久しぶりやのぉ! 遊びにきたでぇ、あとこれワイロなぁ!」
「困りますねぇ、アヌさん。こういうのは、プライベートで、二人っきりの時にしてください。今日はお嬢様達がきてるんですから」
ん? んん? なんだここ、よく見ると女性のお客さんが多いぞ。それも、博打を打つというより、かっこいい男の人とカードゲームをしたり、お喋りをしたり・・・・・・
「おや? そちらの可愛らしいお客様は?」
「トトさん、かくかくしかじかっす」
バストさんがトトさんの耳元でそう説明すると、トトさんは嬉しそうに頷く。トトさんがアヌさんやバストさんを絡む姿を女性のお客さん達は嬉しそうに見ている。
なんだろうここ・・・・・・
「そうでしたか、興味深いですね。『婦好戦記 著・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ ヒストリアノベルズ』。聞いた事がありません。僕も沢山の書籍を読んできましたが、是非お話を聞かせてくれませんか? どうせなら、このお店にご来店頂いてるお嬢様方にも聞いていただける形で」
女性のお客さんは、高価な着物や、今モダンのわんぴーすを着ている。ダンスパーティーにでも来ているような感覚なのかな? 僕の話を聞きながらトトさんは僕に紅茶を入れてくれる。これ一杯いくらだろう? 紅茶なんて初めて見たよ。
「想像だけでも、楽しくなりますね。サクさんに婦好さん、是非ともご来店頂ければ僕のお店でおもてなしをさせていただくところですが」
「トトさん、そんな事より、この街に変な女入ってきてへんか? ワシ等そいつから本を・・・・・・」
トトさんは鼻に手を当てて黙るように合図をする。
「ふむ、戦争で一番人を殺すのは毒です。水を殺す。食物を殺す。そしてこの時代は毒を戦に使っても問題ない時代でした・・・・・・いいですねぇ。キビさん、是非二人っきりでお茶でもしたいところです」
キビはサクに意地悪をした女の子なのに・・・・・・トトさんはそういうキツメの女の子が好きなのかな?
「おや、一二三さん。僕のタイプがキビさんと思われましたか? それは半分正解で半分不正解ですよ! 僕は全ての女性が大好きです。ただ、キビさんのような少し素直じゃない女性に素直な素顔をさせるのも大好きなんです」
アヌさんが僕の耳元で囁く。
(トトさん、可愛い顔して、びっくりするくらいの女好きやねん。節操がないくらいにな。あと少しサディストや)
そうは全く見えない。ニコニコと優しそうなトトさん。そして開眼する。
「何処にでもある毒、イヌサフランとかですかね?」
「リアルな話すなや! トトさん、まぁあれやな。将軍の婦好が介錯するっちゅーのは、これは女だけの軍やからというだけやのーて、嬉しいよな。戦で、もう死なれへん、愛する者に天使を呼んでもらえるんや」
このシーンは僕はどうちらとも言えない。きっとサクはこんな気持ち。現代人の感覚なんだろう。それはバストさん達からすれば現代人が書いた作品だからある種、作者や読者の代弁者がサクなのかもしれないと語るんだろう。
「僕は、僕の手で女性を殺める事はできませんが、愛の為に、しるべを与えて、共に歩む道を選ぶ婦好さんは実に美しい、いえ。格好いいと言うべきかもしれません。人間である以上、婦好さんもさだめには逆らえません。ですが、願いも愛も、痛みも悲しみも捨てずに彼女は連れて進むのでしょう。サクさんはそんな婦好さんの横にいる自分を思い描けるのか、と。それにしても泥を毒とする・・・・・・やはりきびさん、一度お茶にお呼びしたいですね。可愛いじゃないですかキツネさん。コンコン」
そう言ってキツネの真似をするトトさんが僕は可愛らしい人だなと思った。そして、この人も物語の話をするのが好きなんだな。
「ここのサクさん、いいっすよね」
今までだんまりを決めていた。というか、女性客の相手をする人と勘違いされて引っ張りだこだったバストさんが、顔中に紅をつけて戻ってきた。
「ぎゃははははは! ばっすんなんやその情けない顔わぁ! ほんまにワレは毎度毎度笑わせくれるなぁ!」
「酷いっすよ・・・・・・それよりサクさんっす。こういう人、いるんすよね。根っからのいい人。人の事を悪く言わない」
キビとのかけあいで、命を重んじない当時としては普通だったかもしれない。されど、当事者からすればくそったれな環境をサクは怒りを現わした。
「罪を憎んで人を憎まずを体現したような女性っすね。自分はサクさんを尊敬するっすよ」
「まぁ、それならワシは婦好の姐さんが見事やと思うの、婦好は殺してええんわ、殺される覚悟を出来る奴だけや! の精神で生きとる。せやから、日々を楽しめる権利があるんやろな? 視野が広い、誰の事も考えとる。ワシも少しだけ、こういう将の元で働いてみたいと思うくらいにはええキャラしとると思うで、やっぱ」
それは、サクに恋心を抱く嬰良との一件に関して、婦好はどんな考えを持って判断したのかは分らないけど、未来を見ての行動なんだ。
「読めば読む程に、婦好さんの明日は何処を向いてるんでしょうね? サクさんの事を特別に想うが故に、サクさんの未来を多く思い描いているわけっすね。将として、支配欲と、将として見守る愛とどちらも持ち合わせてるんすね」
アヌさん、バストさん、そしてトトさんは長いため息をつく。なんだなんだ!
「いやぁ、実に楽しい物語でした」
パンパンとトトさんは手を叩く。すると、これまた綺麗な顔をした少年が一枚の写真を持ってきた。白黒のそれだけど・・・・・・僕はその姿を見てフラッシュバックする。
「この人です! 僕から本を奪った人です」
後ろ姿しか分らないけど・・・・・・長い髪をした女性。何処かの制服を着た女性。それをひょういと取るアヌさん。バストさんと一緒に見つめる。
そしてトトさんを見て、写真を見つめる。アヌさんの言葉。
「トトさんに少し似てへんか?」
「僕にですか? ありえないですよ。僕はずっとこのお店にいたわけですから、ここに通っていただいているお嬢様方が証人ですよ」
かちゃりと一杯いくらするのか分らない紅茶を口に含んでからトトさんは微笑む。
「トトさん、何かこの女性の事知らないすか?」
トトさんは、砂糖菓子をさくりとかじりながら、目を細める。そして懐中時計を取り出すとその時間を見て微笑んだ。
「おや、そろそろ閉店時間のようですね。バストさん、これ以上は友人である僕達の関係といえでもご遠慮いただきたいのですが」
そう言って情報提供を断ろうとする、トトさんにバストさんはぐっと服を掴んで顔がくっつきそうなくらい近づいた。
「トトさん、この通りっすよ! 何かヒントだけでも教えてくださいっす!」
鼻先がちょんと当たるそれに女性客達は黄色い声を上げて喜ぶ。うん、確かにこれはなんだかいい感じだ。
「全く、バストさんだから言うんですよ。しかたありませんね。明治神宮に呪い師がいます。その方にお話を聞いてみてはいかがですか?」
そうだ! 僕等はその占い師を探してやってきたんだ。バストさんは深々と頭を下げてトトさんにお礼を言う。
そんなトトさんは小さく手を振って微笑む。
「ほんま、お前等、出来とるんちゃうやろな? 二人で弁当持って花見行ったり、きしょくわるいやっちゃのぉー! ほな行くでぇばっすん! 一二三少年!」
あれ? アヌさん、少し機嫌悪そうな? なんでだろう。そんな事を考えている僕の肩をとんとんとトトさんは叩いた。
「なんですか?」
「・・・・・・一二三さん、夢を見てますね?」
「夢?」
「いえ、僕の勘違いかもしれません。それより、アヌさーん! お勘定、食い逃げは御法度ですよ!」
トトさんが面白そうにそう言うので、アヌさんは少し怒りながら戻ってくる。
「いくらやトトさん!」
「しめて100円になります」
「・・・・・・ちょ、まけてんか?」
トトさんはふふと笑ってから指で×を作るとこう言った。
「ご利用ありがとうございました! 皆さん、お客様のお帰りですよ」
僕達は屈強な男達にぽいぽいとつまみ出された。次に目指すところは明治神宮。もう本当に神頼みでもしようかな・・・・・・
『婦好戦記 著・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ ヒストリアノベルズ』もうボロボロになるくらい読んだでぇ! なんでもう1冊こうたわ。ふしぎのくにからの支給以外にみんな絶対自分用の1冊持ってるやろな。セシャトさんがミーティングに参加してへんねんけど、ヘカちゃん、もうそらぁ文句たれる娘やでぇ! 1日4回ミーティングとか普通やろ? そろそろワシ等のこの時間も終わりやけど、セシャトのWeb小説文庫はまだまだ続くでぇ!




