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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第四章 特別編・書籍版『婦好戦記~最強の女将軍と最弱の巫女軍師~ 作・佳穂一二三 画・マキムラシュンスケ』宙出版
32/90

過去から見る歴史、未来から見る歴史 探偵の読み方

こんにちはっす。バストです。最近、作家の友人からクロスバイクを借りて改造してるんす。シア姐さんとサタさんとツーリング、いけるかどうか分らないんすけど、一応の準備っすね。身体作りも本気で初めてるんで、食事量も増やして体重を増やして、落とすというアヌさんに馬鹿にされてるトレーニングをしてるっす。シア姐さんとサタさんはロードバイクという、弱虫ペダルとかに出てくるような滅茶苦茶スピードが出る自転車なので、自分は自分自身というエンジンを鍛えてる事にしたんすよね。アヌさんにも来て欲しかったんすけど、アヌさんは書籍関係の仕事が5月はあるので、離れられないみたいっす。残念っすよ

 僕等は日本橋にやってきた。五平餅をアヌさんが買ってくれたので、それを食べながら日本橋見学・・・・・・というわけじゃない。

 でも僕は不思議だった。



「ねぇ、ここって一番犯罪者とかが入れなくないですか?」

「そうっすね。本来、日本橋は犯罪者立ち入り禁止区域っす。でも、そういうところだからこそ、ヤクザ者がいて、ある種の秩序があるんす。例えば、そこらへんに並んでいる佃煮屋に植木屋あれらは全部、そういうヤクザ者連中に守られて、そしてお店の人達もそういうヤクザ者連中を一般人と守ってるんすよ。犯罪者は悪というわけじゃねーんす。本当の悪に協力者なんていねーんすよ。これは畏れの話っすね」



 ここでつなげてくるのか・・・・・・



「生け贄の巫女を殺す事への畏れ、謂れですか?」

「はいっす。今と違って古代の人はもっと信心深かったのかもしれねーっすね。あまり大きな声ではいえねーっすけど、中華はある時代を境に、ある人種に支配されるっす。それらはある意味では畏れを全く知らないんすよね。一二三さんの話してくれる作品よりも数千年後の未来から逆に作品時代を読み取る楽しさもあるんすよね」



 バストさん、結構ヤバい話をしてるんじゃないかな? 未来から見る過去。



「まぁ、あれやな。サクの嬢ちゃんは恥ずべき事と思う事が恥ずべき事と知るべきやねん。人間の盾とはまたちゃうけど、同じような使い方をするこの巫女等、コスト面で言えば無駄や。それは婦好の姐さんも分ってるやろ、せやから、一二三少年はこう付け足したんやろ? 婦好もその無駄なしきたりには抗えないっやつやな。まぁ結局無駄やねん」



 無駄? 無駄なのかな? 僕は少しばかりムッとしてアヌさんに意見してみた。



「でも、巫女達が死ぬ事で敵軍の武器の斬れ味が鈍るんですよ? それは意味のある事なんじゃないですか?」



 よく言うじゃないか、チャンバラの殺陣は実は出来ないって、人間の血と油で斬れ味が鈍り使えなくなるんだ。



「まぁあれや。一二三少年の考えも分んねんけどな? はっきり言うと、この時代の武器は元々斬れん。刺さらん。だから、正直中々即死にならん、死ぬ程苦しんで死ぬ。というか、血と油で斬れなくなるのは、世界広しといえど日本刀だけや」



 そんな莫迦な・・・・・・いくらなんでもアヌさんの言ってる事が納得いかない。そんな僕にアヌさんは焼き味噌を買ってくれる。



「まぁ喰って落ち着け。そもそも、日本刀以外の刀剣の類いは叩き斬る為にあんねん。だから、刃毀れもあんまり関係ない。逆に日本刀はあまりにも斬れ味に振りすぎた為に斬る技術が進んだんやな? だから、油や刃毀れに死ぬ程弱いねん。さらに補足すると日本も海外も戦争のメインウェポンは槍や、突き殺す為にある。これも力業でなんとかなるんやな? だから、巫女は本来コスト的には随分無駄や。儀式的要素が強すぎる。サク的に言えば、命の無駄使いや、ワシ等は戦争なんて知らん時代の人間や。だからこそ、命の尊さ、大事さを知るねん。神なんてもんに軽々しくくれてやるもんやない。賢い一二三少年なら分るやろ?」



 嗚呼、また一本取られた。この人は将棋が強すぎる。



「サクが、また歴史を動かしたんだ・・・・・・」

「そういう事やな。ただ、ここの婦好の動かし方も悪くないわな。婦好は千人死ぬところを、百人の犠牲で済むならそれでええと言う。コストの考え方やな。同じ盤面で婦好とサクはコストの将棋を打っとんねん。話してる内についたで、ここやここ!」



 アヌさんが扉をぶしつけにどんどんと叩く。何度も叩く。そこから出てきたのは、明らかに何かキメてるダメそうな女の子だった。



「何、お兄さん? ウチになんか用か? 伽やったらアカンで、ウチ雌ガキ専用やさかい」

「さらに滅茶苦茶あかんくなっとるのぉ。明智!」

「おはんは? あぁ、古書店の犬の兄さんか」

「ドロテアの阿呆にお前紹介されたんや。日本橋に変な女が入ってきてへんか?」

「ウチも、変な女やよ?」



 上目遣いに明智さんは僕を見つめるので、バストさんとアヌさんが僕の前に立つ。



「阿片キメた探偵って、あれか? シャーロックホームズの真似事か?」



 そういえばコカイン常習者だったシャーロックホームズ、当時あまりにも人気がありすぎて、作者のコナンドイルが嫉妬して後付した設定だったような。そういえば、コナンドイルも歴史作家だったっけ?・・・・・・そんな事より、この阿片をキメてる女の子。この人が、僕が最初に助けを求めようとしていた明智さん・・・・・・そんな莫迦な。



「探偵さんなんですか?」

「そうや・・・・・・ウチが、探偵。むかぁ~し明智って名乗って少女探偵団作ってなぁ~、全員手込めにしたら駐在さんに追われてもうて、今は多々良って名乗っ取る。にしてもや、ドロテアの王サマがよこすやなんて、おもろい事もあるんやね? えぇで、ウチをイカす話してくれたら、なんら調べたるわ」



 僕は先ほどアヌさんとバストさんに語った話をしたところ、突然多々良さんが激昂した。



「はぁ! 少女を、生け贄に捧げるやて? アホちゃうかその話、少女はこう・・・・・・なんというか、犯っても、殺ったらアカンねん」

「まぁ、明智・・・・・・やなくて今は多々良やったな。ワシも無駄死にやと思うわ、ただよう聞け、婦好は最後の瞬間まで自分の隊の少女達を想うとる」

「ははーん、洗脳やな。あれは小鳥ちゃんがうまいやつや、えぇわ。一二三ちゃん、続き語り、少し楽しなってきたわ」



 阿片の独特な青臭い臭いをさせて多々良さんは僕をまじまじと見つめる。



「呂鯤ねぇ・・・・・・へぇ、これ少し学のある阿呆やったら、呂家の祖やとか思うんかもなぁ~・・・・・・まぁそんなおバカさんはおらへんと思うけどなぁ」



 何言ってるんだろう。そう僕が思った時、物静かなバストさんが怒ったみたいな顔で多々良さんを見つめる。



「違うんすか? 自分には少なくともそう感じたんすけど」

「その末裔が呂尚、姜子牙やぁ! ってか? アホすぎるやろ? 確かに、ここで殷の婦好軍に撃たれたとしたら、呂家の執念深さからして末代に渡り反旗を翻すと考えるかもしれへん、せやけど、それって未来に生きるウチ等やから考える事ちゃうん?」



 同じ上方鈍りだけど、アヌさんの優しい感じと違って、多々良さんはわざと喧嘩腰だ。でも、多分バストさんより数段物知りなんだ。探偵さんだから?



「名前からウチやったらこう考えるなぁ~、商の祖、湯王に滅ぼされた、禹に仕えた伝説上の聖獣。鯤」



 すかさずアヌさんが突っ込んだ。さすがに僕もこの阿片中毒の多々良さんは少し考えがおかしいとこの時は思っていたんだ。



「お前、阿片キメすぎて現実と妄想の区別もつかんくなったか? そんな空想上の・・・・・・、あっ。そういう事か、おったんか・・・・・・鯤っちゅその時代を動かした奴が、確かその神話は追放。島流しにあっとる。その後、湯王に禹が滅ぼされた事を嘆いて、いつか復讐をと・・・・・・その末裔か、確かにその考えはおもろいな」



 婦好もサクも神話の時代の存在。話が色々と付け足されて伝わったりもしたのだろう。多々良さんは意外と面白い読み取りをしているんだ。

 物語から、神話から歴史を読み取ろうとする。



「・・・・・・新しい歴史物の楽しみ方っすね。勉強になったっす」

「ええって、ええって、すこぉ~しお兄さん等は頭固すぎるから、これでも一服やる?」



 焦点があってない多々良さんはさっきから阿片の吸引をやめない。そしてゆっくりとした呼吸の後に語る。



「トロイヤ戦争も、アマゾネスも昔は神話やった。でも見つかったら事実やった。神話は昔のヒントや」



 多々良さんは枕を抱きながら寝転がる。そして僕の事をずっーと眺めてる。バストさんが僕の横に座り、多々良さんに訪ねる。



「多々良さんなら、どうやって呂鯤を討ちますか? サクさんみたいに背後から狙うっすか?」

「そこな。もしかしたら、ほんまに中国のどれかの戦で使われたんかもしれへんね? で、それを聞きかじった弁慶が義経がやってのけたって吹聴したんやろか?」

「義経の逆落としは嘘くそやったからの・・・・・・明智、話はぐらかすなや! どないして猛将討つんやって聞いてんねん?」



 それに多々良さんは目をつぶってから一言。



「時代背景を鑑みれば、答えは一つや、石なげるねん。それで殺れるやろ」



 え? えぇ? 馬鹿にして・・・・・・るわけじゃなさそうだ。アヌさんとバストさんも黙ってる。



「そらそうやな、槍より、弓より、剣より、奇襲より、女でも男を大量殺戮できる方法やわな。一二三少年。さっきの話と一緒や、古代の戦は点より面やねん。それに石はれっきとした凶器や、国によっては処刑に使われる程や・・・・・・でも明智」

「今は多々良や、巣鴨の借金取りに知られたらどないするんよ。あれやろ? 隊列制圧もできてまう、投石の考え方はそらぁ、未来に生きるウチやからできるだけや、婦好軍の隊列に意味があるかはウチは知らん、ただ新しい戦のあり方を垣間見れるんやろな」

「それってどういう事です?」

「一二三ちゃん、石投げるんわ。敵を一網打尽にできるんや。逆に言えば、隊列、編隊を組んでる婦好軍でももろともにできるんや、ある意味、戦略戦術殺しやな? せやけど、その考えに至る奴は三国時代くらいまで出てこーへん、婦好らの戦のあり方を攻略できるやつは、おらへん。婦好達の世が終わったら、面での制圧。それが戦の主流になるんや、で。その定石を次に崩したんは諸葛孔明。おもろいやろ? 歴史に名を残す奴は、大体戦のあり方を変えるんや」



 そっか、多々良さんは時代水準で作品を楽しんでる。それも未来を知っているからの楽しみ方、そしてその時代の情報からの楽しみ方、さらに過去からの詮索する楽しみ方、あのアヌさんよりも思慮は深い。



「ウチなら、サクを預かったらそらもう夜も寝かせへんけどなぁ~、レイと違って邪魔やなんておもわへん」

「寝かさないってどういう事ですか?」

「知りたいかぁ~一二三ちゃん」

「えぇ、是非」



 そこに割って入るのはやっぱりアヌさんだった。ピンと癖毛が立って威嚇してるみたいだった。便利な癖毛だなぁ~。



「あかんあかん! 明智、何意味分らん事ふかしよんねん」



 焦点のあっていない多々良さんの瞳に光が戻る。そして、今まで咥えていた阿片のキセルをぽいと捨ててからあぐらをかいた。



「あれやん。呂鯤って胸クソ悪い将軍。あれやな、ウチと同じ臭いがするなぁ~、正直者のろくでなしの臭いや。物語には絶対おらなあかんねんな。誰もが不快に思う。何者にも気にされない。退場する為だけに用意された物語の礎となる動く壁や。ウチはこういう存在が嫌いやないなぁ~、確実にこの戦場において唯一婦好と並び立っとる。一二三ちゃんが語るこの『婦好戦記』ちゅー作品において、一番色濃い婦好とや、これは希な事やとウチは思うよ」



 アヌさんが頭を抱える。王手間近なのかもしれない。アヌさん達も確かに言った。婦好はそのキャラクター性の魅力が強すぎると。それ故、彼女に並べる者を造形するのが難しい。呂鯤は汚らわしい、野蛮で知性を感じない戦闘狂であり、殺人狂でもあるのかもしれない。さらに欲求に対して貪欲。そう、全く違うのだけれど、飛び抜けた造形という意味では婦好と同じ舞台いる。



「古書店の兄さんらが、どんな話をしてたんか知らんけど、探偵であるウチには大抵お見通しやで、どうせ婦好を動かすのが難しいとかそんな事語ってたんやろ? そんな事あらへん、一二三ちゃんの語る物語を書いた作者は、書けるよ。婦好が自由に動ける舞台を登場人物を、なんなら婦好を越える登場人物も・・・・・・やな?」



 多々良さんは名探偵ではないのかもしれない。そもそも、阿片漬けの探偵なんていてたまるかって僕は思うのだけれど、この人は僕等に物語りを聞き楽しむといいながら、僕等に新しい楽しみ方を教えてくれた。

 謎は深まるばかりだ。



「あぁ、おもろかったぁ~、あとは一二三ちゃんと仲良しこよしと出来れば満足やなぁ~ そぉ~れぇ」

「わわっ!」



 多々良さんは僕に抱きつくと、ネコみたいにすりよってくる。というか凄い近い。

 近い。



「多々良さん、近いです」



 くんくんと僕の臭いをかぎながら多々良さんは一瞬邪悪な表情をした。



「この臭い、一二三ちゃん、えらいもんに本盗られたんやなぁ~、何時間か前、この臭いのするクソ女が日本橋に入ってきたわ」

「どっち行ったんや?」



 アヌさんの声かけに億劫そうにしながら多々良さんは今だ僕に抱きつき、身体を密着させながら阿片を吸引する。



「水道橋方面やな。長屋の賭場くらしかあらへんけど、あそこにおる占い師に用があるとかなんとか言っとったわ」



 そんな多々良さんと僕をぐいっと離すのはバストさん。それに多々良さんは名残惜しそうな顔をするけど、僕はバストさんに抱えられる。



「一二三さん、大丈夫っすか?」

「あっ、はい」

「いっくすよ!」



 走るバストさん、なんだか機嫌が悪そうだ。一緒にいて分ったんだけど、アヌさんは凄い幼そうに見えて大人だ。もしかするとバストさんは大人っぽく見えて・・・・・・僕の思い過ごしかな。

よーし、みんな寂しかったかぁ? アヌお兄さんやでぇ! ヘカちゃん、可愛いよなぁ。リアルヘカちゃんはもっとツンツンしとるんやで。あとジャンクフードよりはもっとええもん喰っとる。でもなぁ~、執筆のミーティングの時は真面目にワシやばっすんやシア姐さんの話聞いて、質問もしっかりする子やな。まぁでもワシ等西の人間をまとめるリーダー役してるんは絶対何かの役に立つでぇ!

毎日、書籍版『婦好戦記』の章ごとにテーマ決めて話し合ってるけど、今回はばっすんが、昔の自分を否定する事を語ってるんやな! ほんまにあの男は、おもろいやっちゃ!

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