今月はヘカのお母さんの作品なんよ!
さて、二月は逃げる。もう終わってしまいました。そして三月は去ると言います。私達が何をできるのか? 再度考える月だなと私は思っています。私に、私達に関わってくださった全ての方に、お礼を申し上げたいです。コロナウィルスで世間は騒いでいますが、人間はそんなに弱くはありません。いずれ終息し、また次の脅威に人間は恐れ、それでも立ち向かい必ず勝利します。
適度な運動と鼻呼吸とバランス良くビタミン(とくにCとD)の摂取を忘れずにしていれば大抵の病気にかかってもすぐよくなります^^
「は、腹が減ったん……」
自称人気web作家のヘカは四日ほど執筆を繰り返し、眠たくなったら眠り、食べたくなったら居候の欄が口の中に食べ物を入れてくれていた。その栄養補給が滞った事でヘカは、部屋に欄がいない事にようやく気付いた。
ヘカは散らかった机の上にある未開封のエナジードリンクを見つけるとそれを飲む。温くなっているとかそういう事はあまり気にせずに身体が求めるカロリーと、とりあえず糖分で摂取した。自分の作業部屋を出るとヘカは欄の置手紙を目にする。
”ヘカ先生、お仕事で中東と南アフリカあたりをぶらぶらしてくるっす。とりあえずいくらか置いておくので適当にそれで食べててくださいっす!”
達筆な字で書かれたそれと茶封筒に入った一万円札の束を見てヘカは目を瞑って少し考えると一人、呟いた。
「完全にヘカは欄ちゃんの紐なんな・・・・・・牛丼でも食べるんな」
ヘカはマンションの部屋を出ると、先ほどから化物の咆哮のように響く自分の腹の虫を宥めて近所の吉野家へと速足に向かう。
「なん!」
そんな道中。秋葉原あたりでは見かけそうな、ヘンテコな恰好をした少女が行き倒れていた。長い黒髪に毛先付近を金髪に染め、ご丁寧に黒い眼帯までつけてくれた何処に出しても恥ずかしくない即戦力級の厨病少女。
「そ、そこなこの未開惑星の原住民、吾輩を助ける事を許可する!」
恐ろしく失礼な事を言うこの少女を助けるか、自分の空腹を満たすかを考えてヘカは、その少女を無視する事に決めた。
「牛丼はヘカを裏切らないん。ヘカもまた牛丼を裏切らないんな!」
すたすたとその少女の隣を通り過ぎようとした時、ヘカの足をその少女が掴む。
「ぬぁあん! 何するんな!」
「原住民」
「ヘカなんな」
「……ヘカ殿。カロリーを……この惑星に来た時に持ち物を全てロストしてしまったんだ……吾輩、一生の不覚」
ヘカはその失礼極まりない少女を吉野家へと連れて行く。その店内で少女はきょろきょろとあたりを見渡してからこう言った。
「ここがこの惑星の原住民の食事場か? まるで家畜の餌場だな」
「吉野屋はサラリーマンの餌場なん。まぁ、サラリーマンはこの国の家畜みたいなものなん。あながち間違ってないんな!」
午後からの仕事の為に流し込むように牛丼を食べるサラリーマン達に睨まれる事をよそに、ヘカは牛丼の特盛、おしんこ、生卵、みそ汁を二人前注文する。ヘカはテーブル席で対面に座る少女をようやくまともに見た。そして少女もまたヘカをまじまじと見る。
お互いの感想。
「変な恰好に、髪型だな。原住民のヘカ殿」
「変な恰好に、髪型なんな。そういうのは秋葉原でやるん!」
ヘカは黒髪のおかっぱにゴスロリといういつものヘカのスタンダードなスタイル。かたや少女は長い黒髪、毛先から少し金髪。眼帯を標準装備。他の客はこの二人を同じ物として異端の目を向ける。
「とりあえず喰うんな」
ヘカは自分の頭で生卵を割ると真ん中に卵を入れる穴を掘った牛丼の丼の中にそれを沈める。それを見た少女は同じように真似をしてヘカが食べ始めるので同じように食べた。
「ウマっ! なんだこれ!」
「牛丼なん。ところで、何処の誰なん?」
ご飯粒を口のまわりにつけ、少女は思い出したかのように語る。
「嗚呼、これは失敬。吾輩は、未開惑星保護捜査官のハチドリであり。この未開惑星にはある捜査で犯人を追ってやってきた」
ヘカはおしんことみそ汁まで食べ終わると、ハチドリと名乗る少女を再度見直す。髪の色を蜂みたいにしているから、自分の名前をそう名乗っている厨病患者なんだろうなと理解してからこう言った。
「で、それはなんのコスプレなん?」
「こす……なんだそれは? この未開惑星の方言を言われても吾輩は分からないのだが」
ヘカはこの痛い少女のこの態度にスマホを取り出すとある作品を開いてからその画面を見せてみた。
「例えば、こういうキャラクターの恰好を真似する事なんな?」
ヘカが選んだ作品の表紙。その中でややこのハチドリに似ている風貌の少女を指さすヘカにハチドリは目を細くしてからヘカに尋ねた。
「原住民……じゃなくてヘカ殿。この凛々しき者達は?」
「これはWeb小説なんな。そしてこの作品は『モノクロームアトラクト~白黒世界で彼らは踊る〜 箸・汐 穹臣』なんな? 今、この世界で一番ホットな作品なん! まぁ、ヘカが書く作品よりは劣るんけど」
そう、ヘカが適当な事を言うのだが、ハチドリはそれを聞いて興味津々、つまようじを咥えながらヘカに言う。
「なんのことだか分からないが、話たまえ、聞いてやろうじゃないか、こうして原住民とのコミュニケーションもまた捜査の大事なひとときだからな」
この態度のデカさにヘカはㇺッとなるどころか、ここまで自分を作ってくるのであれば、話がいもあるかと、欄のいないひと時を彼女と話しをする事で時間潰しになるかと本作の物語を語った。
「この作品は大きなジャンルとしては妖怪物、あるいは和風ジャンルに入るんな? この手のジャンルは基本的に時代を選ばずにウケがいいん! それにSFというよりサイバーパンク系の要素を付加価値として付け足してあるん」
ハチドリはヘカの話を聞きながら紅ショウガを少し食べ、熱いお茶で喉を潤してからこう言った。
「うん。全然何を言っているのかわからん。というか鬼ってなんなんだ? あと魚の魍魎って」
一から説明をするのは非常に面倒だなとヘカは思ったが、簡単に話す。
「どっちも人外の悪いものなんな? 簡単に言えば鬼の方が上位互換で魚妖の方が下位互換と考えればいいん。鬼は場合によっては神としても描かれる事があるん。その正体は別の人種が外の国から侵略してくる事からともいわれてるん」
自分達と見た目の違う人種。それも彫りが深く、毛深く大きければ同じ人だとは思わないかもしれない。略奪し、人を奴隷としてつれていく。まさに鬼の所業だろう。
「要するに犯罪者か!」
「違うん! ハチドリちゃんは馬鹿なんな!」
「ばっ! 人に馬鹿って言う方が馬鹿になるんだからな! 吾輩の先進惑星の格言だから覚えておくといい!」
ヘカはこのハチドリは本当に別の惑星からきたんじゃないかと心配してしまうくらいオツムがアレな感じなので、作品の説明を続けた。
「成程、オカルトな存在なのだ。そして、通常であれば退治するのに、同じくオカルトな力や道具を行使する必要があると……ふむふむ、理解した……それって、吾輩みたいに別のテクノロジー持った者ではないのか?」
ヘカは目を丸くする。
こと、この世界において妖怪や悪魔、その他人外化生がリアルにはまだ見つかっていないし、一般的には架空の世界の存在であると考えられるのだが、それらの事を誰に聞いてもいくらかは共通点のある話が聞けるだろう。
それをこのハチドリは持っていない。妖怪だとかそういう存在に対する知識が全くないのだ
。「おいヘカ殿。それはおかしい! そんな幼子が、捜査官でも退治できないような者を倒せるものかね普通? グルではないのか? 昨今、子供を使った犯罪が吾輩の住む先進惑星でも社会問題になっていてね」
ヘカは段々とイラついてきている自分がいた。このハチドリにWeb小説の話をするのは無理があったのではないかと……
「ちーがーうーん! ここは古き良き伝統なん! 物語の開始時、捜査課でもてこずる”鬼”を屠ったのが、幼く見える少女。あとりなん。というか、ハチドリちゃんは、あとりに似せに行ってるのかと思って、ヘカはこの作品を見せたんな」
それを聞いてハチドリは大口を開けて笑う。
「吾輩が? 馬鹿な、こんな未開惑星の……いや、しかし。この少女。鬼とやらと戦える類まれなセンスを持っているのか? うん、そういう意味ではエリートの吾輩に近いやもしれんな」
ヘカはあとりとハチドリを見比べる。やや気だるそうな、ミステリアスなあとりに対して、このハチドリは悪い意味でやる気と自信に満ち溢れている。
誰かに間違ったやる気スイッチを押されてしまった後なんだろうなとヘカはため息をついた。
「冒頭1ページが、この作品の宣伝に近いん。大まかにどんな世界か、主人公は何処で、何をどうやって、行うか、をインプットさせてくれるんな? で、それだけじゃなくて、とある任務中に、不思議で、そして強い力を持った女の子と出会うん! こんなんそそらない方がおかしいんよ!」
ヘカの熱弁に、ハチドリは否定的な事を言うか、あるいは分からないと言うのかと思ったが……
お冷を飲み、ガリゴリと氷をかみ砕いてから飲み干す。
「確かに、言われてみれば、大変そそる。というか、幼い少女が強いという設定が既に斬新で新しくないかい? こんな設定我が輩知らぬよ!」
いや、むしろ使い古されてきた設定だよ。とは、ヘカは目の前で目をきらきら輝かせているハチドリには言えなかった。
「ま、まぁ。分かってくれればいいんな! じゃあ牛丼のお代は奢ってやるん。ヘカは部屋に帰って執筆の続きをするんな」
そう言って手を振ったヘカのスカートの端をハチドリはひっぱりヘカは大きくすてーんと転ぶ。
「痛いん!……何するんな!」
「ヘカ殿。貴殿の優秀さを評価し、捜査の同行を許可しよう。もう少し、その話を教えてはくれないかい?」
嗚呼、ハマったなとヘカは理解する。Web小説は実は一人で読むより、何人かであーだこーだ言いながら読む方が見えてくる世界観は立体的にも色彩的にも分かりやすい。
地面のほこりをはらいながらヘカは、最強の一手をハチドリに話す。まさにこれ以上のオカルトはありえないだろうという一言。
「ヘカのこの姿……この作品の作者が作ったんな!」
さすがにこのヘカの発言には、一般的な常識を持つ者なら、何を言っているんだ? 顔洗ってこい! 馬鹿! と言われかねないレベルだが……
「ヘカ殿、すっげぇえええ!」
そう、何度か取り上げさせていただいているが、このヘカ。本来レギュラーではなく、一回キリで使い捨てされるハズだった名前のあるモブなのだ。それが汐 穹臣さんのイラストを頂いてから、人気がじわじわと上がり、今やレギュラーという地位を確立し、セシャトかヘカさんかと言われるまでに育った。
『モノクロームアトラクト~白黒世界で彼らは踊る〜 箸・汐 穹臣』本作ですが、二話くらいまで公開された時点で当方のライターさんより強い推薦がありました。元々、汐 穹臣さんの作品は何処かアングラな部分が垣間見れる作風の作家(絵師)さんになります。今回イラストは汐 穹臣さんご本人ではなくイラストをご担当されているのが知っている方の方が多いでしょうか? これまた同じくCDジャケットにありそうなややアングラな作風が特徴的な續さんのタッグとなっています。
あえて、文章作家と挿絵作家を変えている理由、読めば分かるのですが、言うなればフルマッチ、あえて言えばミスマッチ。当方の読み合いでも、クセになる配合であると語られます。
今月、去りゆく三月は本作で独特な世界に浸ってみませんか?
なんと言っても、ヘカさんが今ここにいるのは、姿作ってくれた生みの親である汐 穹臣さんというところが非常に面白い運命ですよねぇ^^




