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セシャトのWeb小説文庫2020  作者: 古書店ふしぎのくに
第二章 『短編作品ピックアップ第一期 箸・各種チーム』
12/90

『三区間の恋列車 箸・宮窓柚歌』

突然寒くなってきましたね? コロナウィルスも流行っていますから! お風呂に入ったらすぐにベットに入るようにしましょうね! 私ですか? 私はお風呂に入ったあとはホットココアを飲んでベットに入りますよぅ! この前、ダンタリアンさんのお家にお泊りしに行った時は、ダンタリアンさんココアにお酒を入れて飲んでいましたね^^ 美味しいんでしょうか?

「いや、おかしいだろ」



 一欄台学園文芸部・部長、満月さじ。目つきの悪い少年の第一声はそんな感じだった。彼は学校で文芸部員以外でまともに話をする少し変わった生徒。女子よりも可愛いから女子の服を着ていると豪語する大友にアルバイトのヘルプを頼まれたのである。



「結構似合ってるよさじ坊」



 ブックカフェ『ふしぎのくに』オーナーのトトが店を構え、殆ど店長代理の汐緒が店を切り盛りする、基本的に女子しかお客さんが来ないそんなお店。従業員は極めて目見麗しい男子しか起用されないところにも問題があるのだが……



「汐緒たんが、なんか寝込んでるとか聞いたけど、これはないだろ?」



 大友はいつも通り、メイド服で男子として女性客に接客をする。それに倣い満月さじはウィッグにエクステまでつけて金髪ツインテールの目つきの悪いメイドとして降臨する。



「うわっ、めっちゃあの子足細い!」



 ぱしゃぱしゃと写真を撮られることに閉口。そんな中、さらに被害者がもう一人。



「大友君、満月君。こらぁ堪忍やでぇ」



 一欄台学園オカルト研究部部長。鳴宮宗麟。彼は満月と違い交友関係が広い。そんな宗麟に大友はヘルプのお願いをして、それを快く承諾して今に至る。

 当然。メイド服で!

 宗麟は、ダウナー系男子。学校では一ミリもモテないが、化粧をして女装して可愛くなった宗麟にも一部のコアなファンがつく。



「はい、という事で俺が見繕った絶対可愛い男の娘になると思ってた二人と今日は何か作品をお客さんに話したいと思うんだ。丁度、文芸部の部長のさじもいるし、何か面白そうな短編とかないの?」



 大友と違い、女子に免疫がない満月と宗麟。触られたり写真を撮られたりするたんびに心臓が飛び出そうになる。そんな中でもさじは、オススメの短編について語る。



「そうだなぁ、短編でもショートショートに近いくらいの作品になるんだが、こういうところにくる女の子には」

「女の子じゃなくてお嬢様ね! さじ」

「えぇ……お嬢様には甘酸っぱい恋の歌。みたいな物語がいいかもな。『三区間の恋列車 箸・宮窓柚歌』。まぁなんの事はない。女の子の淡い想いについて通学路の列車内で語られる作品なわけだ。すぐ読めるから、大友と鳴宮君も読んでみて……あと、お、お嬢様も」



 照れる満月に喜ぶ女性客。



「この作品は多くを語られていない。だけど、皆も一度くらいは経験があるんじゃない? カッコいい人を見た。あるいは可愛い女の子をみた」



 大友はくるりと回って女性客にウィンク。



「まぁ、俺より可愛い女の子なんて中々いないけどな。でも分かるぜさじ。なんだか気になる人ってやつだよな。それも、相手からすればなんてことのない、胸キュンイベントなんか発生させられたら、もう無理だろうね?」



 美少女、いや腹が立つ程の美少年大友はそう言って女性客達に生マシュマロをサービスで配る。



「まぁ、俺はしょっちゅう電車の可愛い子みて妄想……いやうん。忘れてくれや。でもこの女の子が三年間も思い寄せてて自分の事なんかまったく興味ないわーとか思ってる心情って実際どうなんやろーな。結構こんなんあるん?」



 お客の女性にナチュラルに質問する宗麟。宗麟の使う関西弁のような言葉に東京女子はわりと弱い。



「宗麟君、女の子はみんなそういう経験あるんだよ!」



 客の一人が言う。そういうもんかと宗麟は頷きながらついでに言った。作中のイベントについて触れてはならない事。



「それにしても電車の中に虫入ってきたらかなり大惨事やろ? 一体なんの虫はいってきてん!」



 今のムード台無しな事を言う宗麟だが、そこは文芸部部長のさじがフォローする。



「まず、蜂じゃないだろうな。蜂ならある意味テロだ。まとわりついてくる虫といえばハエだけど、さすがにこんな可憐な女の子にたかる描写もおかしいだろうな。初夏の時分や、カナブン。あるいはモンシロチョウ。蝶々は電車の風圧に引っ張られてよく迷いこんでくるから、見た目も悪くないだろ? 女の子の香水とか香りに寄ってくるみたいなね。蝶々にまとわりつかれて困ってる女の子もまた可愛いし、それを捕まえて逃がす男子もまたポイント高い。こんなところか大友」



 大友は女性客の空いたカップに紅茶をいれていきながら、思い出したように語る。



「よくハエがたかる奴いるだろ? あれって香水の匂に惹かれるっていうのもわりと間違ってないんだぜ。香水って化学反応で人間にいい匂いに変えてるだけで、実際はありえない悪臭だから、ハエが好む場合があるんだ」



 凄く聞きたくない話を余裕でしてしまう大友。満月はこいつ馬鹿なのかと、なんとか話しをそらす事ができたのに……と思っていたら、大友君物知り! と彼を絶賛する声が聞こえる。

 目の前で但しイケメンに限るを見せられ心底帰りたくなる。



「卒業か、俺達もあと一年とちょっとで卒業なわけだけど、こんな青春送れるかねぇ」



 大友はそう言って女性客達を見渡す。彼女等への視線を外さずに大友は語る。



「先に電車を卒業したって何か、この女の子結構期待しているところが結構リアルだと思わない? 誰だって期待と結果はイコールに考えがちだもんな。俺だってそうだもん」



 大友にまさか誰か想い人がとお客に動揺が広がる。



「今来てくれるお客さんと明日も会えるかな~ってさ」



 大友は生粋のあざとさを持つ。その力やセシャトに並ぶのではないかと思っていたが、どうにも普段の大友よりテンションが高い


「大友、そういえばなんで汐緒たん。店に出てないんだ?」



 人外の店長汐緒。彼女もとい彼が店にでていない理由。普通に考えればありえないわけだが、大友はうんと告白した。



「いやぁねぇ。昨日。お店に虫けらが迷い込んできたんだよ。お客さんもいなかったし、殺虫剤で追いかけまわしてたら汐緒たんにそれが……な?」

「殺す気か! 汐緒たん。蜘蛛やろ」



 汐緒の正体を知っている宗麟が叫び、汐緒が人外である事を知らない満月ははてな? という顔をする。その話を逸らす為に大友は話を続けた。



「まぁ、この三区間で男の子視点も読んでみたくない? あと虫視点も」



 虫視点は別にいいと思うも男の子視点は実のところ興味深いと読者は思うだろう。



「このタイトル、三区間の片思いなんだよな」

「あぁ、俺もそれ考えてたわ。片思いじゃなくて両想いやんな?」



 案外宗麟は小説を読むのが好きなのだ。ただし、Web小説はあまり読まない。ここでは文芸部部長である満月さじこそがもっともweb小説のなんたるかを知る存在でもある。



「三区間って、駅から三区間って言う意味と、三年間もかけてるんだろうな。長いと思ってたけど、たった駅三区間くらいに高校生活の三年間は終わる。だから告白するのもタイミングを逃したらこんな風にね」



 成程、中々可愛らしい考察を満月はしてくるのだ。女性客は可愛い男子三人がいちゃいちゃしているのを見るだけでも眼福ではあるが、それを忘れ去れる程度には満月の話は面白かった。



「でな。勘違いしてるかもしれないけど。しっかりと作品のタイトルの回収はしているんだ。これって三区間。毎日のように女の子は片思いしてたんだろうな。そりゃあもう、穴が開くくらいに眺めて、観察して、趣味や好きな事を探ったんだろう。でもそれって、男子の俺達だって一緒だろ」



 そういう事なのである。電車は片道で走って行くように、恋というものは基本的に片道なのだ。それが両想いになった時、恋は恋愛に変わる。

 大友は手をポンと叩いた。そして理解する。



「嗚呼、そういう事か、これって片思いなんだな」



 ようやくわかったかと満月がどやるのを宗麟だけは分からないという顔で見ているので、満月はコホンと咳払いをしてから話し出した。



「この描写って、確かに二人は両想いなんだろうなって思えるかもしれないけど、それ以上に注視して欲しいのは、男の子は好きだと言っているわけじゃない。まぁそんな事言える奴はある意味勇者だけどな。確実にこの女の子に好意を持ってるけど、とりあえず繋がりを断ちたくないから名前と連絡先を勇気をもって聞いてるんだ。これはまだ片思いでしかない」



 以降を語られてはいないので、きっと二人は付き合ってハッピーエンドかもしれないが、そこまで描写されていない、



「絶妙な距離感で片思いを両者表現されているという事なんだけど、分かる?」



 女性客達はうんうんと何度も相槌を打つ中、宗麟だけが神妙な顔をして理解に苦しんでいた。



「鳴宮君。分かりにくかった?」

「いや、言いたい事は分かるで、うん終わりもいい感じやし、全然俺は好きやねんけどさ。この作品読んで思うのが、付き合うなら早く付き合った方がいいという気持ちにならへん?」



 そう、やや教訓じみた気持ちにもなるのだ。人の気持ちという物は数値化できるものではないが、学生結婚して続いている夫婦に聞くと大抵こう返ってくる。もっと早くから付き合っていれば良かった。

 一人で片思いをする青春も極めて美しく、いじらしく儚いものなのだが、宗麟のように考えてしまう者もいるだろう。だからこそ、勇気を出して告白したくなるそんな気持ちにこの作品を読んだらなったという鳴宮宗麟。



「宗麟は誰か好きな人とかいるの?」



 ここで聞くにはやや地雷度の高い質問に宗麟はお手上げ。



「いんや別におらへんけど、まぁいつかはこういうおセンチな展開に遭遇したいもんやな」



 そう言って宗麟が厨房に戻ろうとした時、どこからともなく入ってきたオオスズメバチ。店内は騒然とする中、涙目の宗麟。誰一人として怖くて宗麟を助けようとしない。

 そんな時、さっそうと現れた長身のイケメン。少しばかりぼーっとした顔をしているが、その青年は目にもとまらぬ速さでオオスズメバチを捕まえると店の外に出す。

 彼はバスト。トトの親友。

 そして気絶しかかっている宗麟を抱えてこう聞いた。



「大丈夫っすか?」



 その日、女性客のボルテージは最高潮に達する。そんな中で大友は仕事を全うするためにこう言った。



「バストさん丁度良かった。この『三区間の恋列車 箸・宮窓柚歌』朗読してよ!」


さて、短編第二回は『三区間の恋列車 箸・宮窓柚歌』。こちら非常に綺麗にまとまっている物語になります! 卒業式のシーズンがそろそろやってきますが、ご入学される方、ご卒業される方、そしてそれらを懐かしむ方も是非読んでくださいね!

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