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ダンジョン下層:晴天の雷



<バキンッ>


 サンドスコーピオン2匹に前後を挟まれ、エッジスワローが上空から降下する中、サンドスコーピオンの振るったハサミが盾を打ち付け吹き飛ばされた。


<ズズズズ>

「うおっと!?」


 転がって着地した場所は流砂の中だ。沈んで行く、マズイ、しかもこうしてる間にもミジットは前後に挟まれてしまう。剣を鞘にしまい、鞄から出したフックのついたロープをサンドスコーピオンに投げつける。


 くるくるっとハサミに巻き付くと攻撃されたと思ったのか、ハサミを振り上げた。上手く一本釣りしてくれた!ナイスフィッシュ!


<ズササササ>


 通路に復帰すると、サンドスコーピオンの後ろに着地した。剣を抜いたのとサンドスコーピオンが振り向いたのはほぼ同時――

 間一髪、振り下ろされるハサミの下に剣が入り、ハサミが跳ね上がった。切り返す剣を関節目指し振り下ろすと、サンドスコーピオンの腕が切り落とされた。


<カインッ>


 しかし、お構い無しとばかりにしっぽの毒針が迫り、のけぞりつつ辛うじて盾で受ける。

体勢が崩れたところへ反対のハサミが開き、挟もうとするそこへ盾をねじ込んだ。

ハサミに挟まれた盾から腕を抜き取り、腕を落とした側へ飛び込む。


<カサカサカサ>


回り込ませまいとサンドスコーピオンも回転してくるが、そうはさせない。


「おりゃ!」

<ドサッ>


 さらに一歩飛び込んで尻尾を切り落とした。残るはハサミ一本、足を止め正面から向かい合う。

 腕の無い方に回り込めば、追いかける様に回転してくる。残るハサミを振りつけるが、片腕では腕の内側が隙だらけだ。


「はッ」


 腕を関節から切り落とし、返す剣で口へ剣を突き刺すと、黒い靄へ変わっていった。

盾を拾い周囲を確認すれば、ミジットの方はサンドスコーピオンを片付け、エッジスワローを叩いていた。


 危ないところもあったが、ようやくここまできた。少し前から見えていた屋敷程の大きさの扉のついた岩塊、25階層のボス部屋だ。



 部屋の前まで到着し、へたり込んだ。水筒に水を出してゴクゴク飲むが、砂漠エリアで生み出す水は少ない。周囲空気中の水分を集めるイメージを強くしてもう一度生活魔法を使い、水筒をミジットへ手渡す。


「レディファーストって知ってる?」


「古代言語は詳しくないんだ」

 

「次の稽古で教えてあげよう」


「それは肉体言語だ」


古代肉体言語(エイシェント)ね」



ひとしきり休憩と食事をしながら作戦会議をする


「25階層の階層主はCランクの”キマイラ”だな。ここからは私も実際に見た事がない。空を飛び、雷の魔法を使い、口からは火を吐き出すと言う。遠距離の攻撃手段をもたない私たちには手強い相手になる」


 今回の迷宮に弓は持ってきていない。持ってきていたとしてもこのレベルの相手には気休めにもならないだろう 。


「どうするんだ?」


「もともと今回の挑戦で攻略するつもりじゃなかったんだ、作戦なんて考えてない」


「空中で魔法を使われたら手も足も出ないな」


「雷の魔法は速度が速いと聞く。回避は難しいぞ」


「離れればいい的でしかないか。少なくとも今まで見て来た魔物は魔術師と同じく魔法発動中は動かなかった。その間に距離を詰めるしかないだろう」


「足の勝負か…。部屋の中が砂地だと厳しいな」


「ちょっと見て来るか」


 ボス部屋の中に入らなければ大丈夫だ。扉を開けて中を覗くと、岩壁に囲まれた砂地になっていた。天井はいままでのボス部屋より高いように見える。


「足元は厳しいな」


「ああ」


砂…砂か


「ミジット、試してみたいことがある。雷の初撃は前で受けさせてくれ」


「大丈夫なのか?」


「最悪は盾で受ける。後ろから見ててくれ」


「わかったけど、無理はするなよ」


「よし、作戦はこうだ。俺が前、ミジットも前、魔法も永遠には放てないだろう。飛ばれたら降りて来るまでひたすら避ける」


「いつも通りだな、まかせておけ!」


 ”双連の剣”は前衛しか存在しない二人組なのだ。ミジットが突撃するなら横に並ぶまで前に出て連携すればいい。そうすれば誰も孤立しない。


 扉を開けて中に入る。背負い袋を地面に置いて顔を見合わせうなずきあった。


「いくぞ」


「いつでもいい」


<バタン>

<ガチン>


扉が閉まり、中心へ走る。50mはあろうかという空間の空中で黒い靄が形を取る。

空中スタートかよ!ずるい!


「止まれ!」

ミジットへ声をかけた。


「ガガアァァァーーー!」


 形を成したそれは、伝承に聞く獅子の上半身、何かの体…山羊だっけ?、尻尾は二股の蛇に背中には蝙蝠の翼を広げ、空中にとどまり咆哮をあげた。


 足を止め、睨み合う。と、キマイラの獅子の口が開き、1… 口の前に炎が集まって球になって、2… 発射した。3!

 時速にして100km以上は出てるだろうそれは、ピッチャーの投げるボールのよりも初速から減速しないで迫る。

 だが、充分な距離があり、砂の足元でも避けるのは容易だ。


「カウント3だ!」


「わかった!」


 さあ、どうする?お互いに動かないままにらみ合いの時間が過ぎる。

今度はキマイラの周囲に<パシッ>と光が走った! 1… 剣を砂に突き刺し

キマイラの身体に纏う雷が増えていき、 2… 後ろに飛び退いて盾を構えしゃがんで


<<ズガンッ!>>


 まとまった、と思った時には閃光が走って剣を打った。雷には避雷針、砂地で助かった!


「カウント2.5!」


「おおー!」

ミジットが後ろで感心してる。ドヤ顔の使いドコロだ。


 倒れた剣を掴むとレザーグローブ越しでも熱い。連発は厳しいな。だが、簡単に手札を切ってくれたので目算が立った。MPが無くなるまで続けてくれてもいいんだがどうする?


 じりっと距離が詰まった、そうだよな、遠距離から仕留めれないなら距離を…

<パシ><パシッ>とキマイラが雷を纏う。


「逃げろ!全力!!」 


振り返って全力で走り剣を砂に刺す、ミジットも反応してる、さすがだ。


「伏せろー!」


 地面に飛び込むと、周囲に雷がふり注いだ。やっぱりあったか、範囲攻撃。こうも簡単に出してくるとは予想外だけど。


 起き上がり、剣を掴むと<ジュッ>グローブから煙が上がる。


「水よ、ウオーター」

<ジュゥゥゥ>


 剣に水をかけると水蒸気が上がった。


「今の攻撃は?」


「纏う雷が多かった」


 だが、全範囲無差別MAP兵器って訳ではなさそうだ。射程は見えた。広いけど。

 さあ?手札は全部切ったかな?


 再び離れた距離をジリジリ詰める。睨みあいながら距離が縮まる。と、キマイラが口を開いた。


「行くぞ!」「ああ!」


 全力で距離を詰める、キマイラは動かず口の前に炎が集まっていく。魔力動かす時って動けないんだよねーすごくわかるわ。


 発射のタイミングでキマイラの下に入る。ゴブリンの火球(ファイアーボール)よりはるかに大きい塊がキマイラの斜め下に落下した。


「グアァァァー!」


 キマイラの咆哮が上がり血が流れる。見ると、脇腹にミジットのスティレットが刺さっていた。7~8mはあるぞ!?あの高さまでよく届くな!


「ガウアァ!」


 空中できびすを返したキマイラは口を開けミジットに向かった。


「させるか!」


 ミジットが振り下ろした剣に怯んだ、その瞬間にキマイラの横腹に切りつけるが、尻尾の2匹の蛇に襲われ体勢が崩れ、浅く傷つけるに終わる。


<ガキン>


 その間にもミジットの剣を前脚が受け止める。切れないのかよ。何とか横から翼を落としたいが、まずは蛇が邪魔だ。牙を盾で受け、間合いを詰めると上空へ逃げられてしまった。


「おい、アジフ」


「なんだ」


戦闘中に


「ロープが欲しい」


取って来いと


「耐えれるか?」


「魔法は見た。大丈夫」


「まかせた、待ってろ」



ひとっ走りしてみせるよ



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