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ダンジョン低階層:ゴブリン戦隊

 


7階層に表れたのはゴブリンに加えてコボルトだった。迷宮の外では仲の悪い種族なのでちょっと意外だ。


 迷宮のコボルトは、武器は棍棒だが革鎧をきている。名前はアーマー・コボルトだ。蹴飛ばしてみると、ちゃんと防御力あるようですぐ立ち上がってきた。仕方ないので切り捨てたが。


「宝箱とかないもんかね」


「今進んでいるのは迷宮でもっとも通行量の多い最短ルートだ。宝箱なんてあるはずもないさ。階層主に期待するんだな」


「へーい」


 時折、壁にもある罠に気をつけつつ、なぜか左の壁ばかりにあるんだが、8階層に入るとゴブリンの種類にマジシャンが増えた。驚いた事にコボルトの前衛にゴブリンマジシャンの後衛なんて組み合わせもあった。


「迷宮の外ならフレンドリーファイアまっしぐらなのに」


「そういうモノだから仕方ないよ」


 なお、ミジットさんは相変わらず後方で道案内のみ。鉄砲玉ではあっても戦闘狂ではないので安心だ。



 8階層になると、盾を持ったゴブリン・ガードと弓を持ったコボルト・アーチャーが追加され、一度に表れる数も増えてきた。

 暗い中から飛んで来る弓はとても厄介だし、盾で防御されると一撃と言う訳にはいかない。


「そろそろ手伝うかー?」


「まだまだ!」


 アーチャーが弓を放つタイミングで身を屈め、盾を蹴飛ばして他のゴブリンやコボルトにぶつける。

陣形が乱れたところを切りつけ、アーチャーとの間合いを潰す。顔さえ守っておけばコボルトの矢で傷つく鎧ではないし、通路が狭いので飛んで来る矢の方向が一定だ。


 ペースが落ちながらも、9階層まで来ると、ゴブリン・ヒーラーとコボルト・シーフが加わった。

ゴブリン・ヒーラーは無視だ。1撃でトドメを刺せば回復など問題ない。コボルト・シーフは短剣を持ち、素早い。コイツらが厄介で、壁を蹴って立体攻撃してくる。


「ミジット、頼む」


「任せろ!」


 ソロ攻略はここまでだ。倒せないわけではないが、ペースが落ちてしまう。


2人が横に並ぶと殲滅速度は加速度的に増えた。何しろ相方はあの”フレアボム”だ。気を抜いては置いていかれてしまう。


 見敵必殺で殲滅戦に移行し、10階層のボス部屋の扉に辿り着いた。

10階層の敵はコボルト・モンクとゴブリン・レンジャーが増えてたみたいだったぞ。よくわからなかったが。



10階層のボス部屋はあいにく先行者がいなくて、中の様子は覗けなかった。


「10階層の階層主はゴブリンリーダーとゴブリンのソード・マジシャン・ガード・ヒーラー・アーチャー・レンジャーだ」


「ゴブリンリーダー?聞いたような聞かないようなヤツだな」


「迷宮種だ。まだまだこんなところで手こずってもらっては困るぞ。今度は順番待ちもないし、時間かけるなよ」


「わかったよ」



 ミジットは迂回ルートへと進んで行き、鞄からフック付きのロープを取り出しボス部屋の扉を開けた。やはり階層主はまだ出現していないな。ボス部屋の広さは5Fと変わらずか、よしよし


 扉の取っ手にフックを引っ掛け、ロープを伸ばし、いっぱいのところでロープを引くと扉が<ガチン>と閉まった瞬間にはダッシュした。

 黒い靄が現れ、大柄なゴブリンの形を取るが、今回は最初から剣を抜いて構えていた。対策(アプデ)済みか!しかし――


 スタート地点にゲタを履かせたので、すでに階層主の後ろを取っていた。

後頭部から剣を突き刺し、構えてはいるが、まだ敵位置を把握していないゴブリンチームのマジシャンとアーチャーを切り裂き、


「ギャ」


 さすがに一番に気付いたレンジャーを横薙ぎにし、ガードを蹴飛ばしてソードにぶつけ、まとめて串刺しに。

 ゆっくりと剣を抜いて呆然としているゴブリンヒーラーを切り捨てると、落ちている魔石を拾い、ロープを回収して出現した宝箱に引っ掛け後ろから開けて、無事開いたので中身を回収――品物の確認?後回し!


 奥の扉へと走り、扉を抜けて通路を走り抜ける。迂回路の階段の近くに行って息を整えると、ちょうど階段からミジットが降りて来た、そこに軽く手を上げ歩み寄りながら話かける。


「よう、待たせたか?」


「い、いや、今来たところだ」


 よしっ!満足だッ!



…いや、ね。5階層でボス部屋から出る時に階段がなかったから、あれ?って思ったんだよ。

 宝箱から出たのはいくばくかの金貨と、見た事の無いポーションだった。


「なあ、このポーションわかる?」


「いや、その前にどうゆう事か説明してくれ」


「ミジットが待たせるなっていうから急いできたんだ」


「だからって早すぎるだろ!」


「ちょっと確認したくてな、まぁそのうち説明するよ。で、このポーションなんだが?」


 あからさまな話題の切り替えにミジットは不満そうだが、説明してくれた。


「迷宮ポーションだ。効能は普通のポーションと変わらない。ハズレとも言えるが、そうでもないとも言える」


「どういう事だ?」


「さあな」


拗ねてやがる



 11階層も相変わらずの洞窟エリアだ。ここに出現するリープラビットが肉をドロップするらしい。リープ?逃げるのか?

 最初にあらわれたのはコボルト・モンクとでっかいヘビだった。


「蛇!毒!」


 ミジットから指示が飛び、コボルトを抑えてくれた間に盾を装着する。

コボルトが袈裟懸けに切られる隙に、ミジットに襲いかかろうとしたヘビに割り込んで牙を盾で受け、喉元へ剣を突き刺した。剣が刺さったままヘビは暴れうねり、収拾がつかない。


 なんとか頭を盾で殴りつけると、その隙にミジットが頭を切り落とした。

ヘビがドロップした牙をミジットが拾い袋へ入れる。


「ポイズンヴァイパーだ。そろそろめぼしいドロップアイテムを回収しながら行くぞ」


 暗いので時間の感覚が狂うが、外はもう夜になっている頃じゃないだろうか。休み休みとはいえ、まる一日歩き戦い続けだ。いい加減休憩したい。


「水場は遠いか?」


「階層の半ばだ。気を緩めるなよ」


「了解だ」


「グギャ」


「ん?」


背後からゴブリンレンジャー!近い!

取られた先手を盾で受け止めると、正面からの魔物にミジットが対応する気配が。挟み撃ちか!


 レンジャーの2撃目をパリィで弾き、逆袈裟に切り上げた。振り向こうとしたときに視界に茶色の影が走った。

 とっさに掲げた盾に<ドン>と、やや重い手応え。飛び退いて着地したのは茶色く、ダークハウンドほどもあるウサギだった。


「肉!」


 背後からミジットの指示が飛ぶ。いや、もう指示ですらない。リープラビットは地面を蹴り、壁を蹴り、天井を蹴った。ほとんど地面についてないぞ。


 追い掛ければ隙を突かれそうだ。盾を構え、攻撃に転じる瞬間を待つ。



…来た!脚を狙ってきた軌道に剣を差し込む。


「キュ!」


 剣に当たった手応えを感じてから振り上げると、ナナメに切断され、黒い靄になって肉がドロップした。肉の塊1kgってところか。骨はない。


「上出来だ」


 その後も水場まで2度戦闘があり、肉をもう一つ追加した。

11階層の水場は貸し切りで、まずは魔道具で小さく切った肉を炒める。火の通った肉を口に入れ、ミジットが料理する間に仮眠を取った。


「できたぞ」


仮眠から起こされると、とてもいい匂いだ。肉入り干し野菜塩ポトフと、黒パンと、小麦粉をまぶして表面を焼いた…ウサギ肉のムニエル?か


「豪勢すぎやしないか?うまいが」


もぐもぐ


「私の私による私の為の料理だ。文句はあるまい」


「ない。うまい」


野菜と肉の旨味たっぷりなポトフと、肉の表面のこんがりした食感と香ばしさで黒パンまでうまい。



荷物限られるのに油とか小麦粉とかよく運ぶよなぁ

もぐもぐ



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