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79.乱入者ライト

「その三者の内、二者が我らが回収したいものを持っている。そしてあの街を覆っている闇は、そのあるものによって展開されている。それゆえ、先程の質問はあのような答えとなった」

「なるほど、そういうことですか?…あら?それでは今までの戦闘はもしかして…」

「たんなる時間稼ぎだな」

「やっぱりそうですか」

「「「………」」」


ルーチェはダンタリオンの言葉に納得したようだが、アーク達や守護騎士達は微妙な顔になった。


「もっとも、時間稼ぎは結果論でしかないがな。我としては、そちらの勇者達をさっくりと倒してすぐに終わらせるつもりだったのだ。しかし、度重なるそちらの援軍のせいで、結果的には時間稼ぎになってしまった」

「…ええ、まあ、そうですね」

ルーチェはダンタリオンから僅かに目を逸らした。

どうやら少し、思うところがあるらしい。


「まあ、ようは我らが回収したいものが汝らの手に渡らなければ良いのだ。ゆえに、時間稼ぎになっても問題自体はとくにない。さて、それではそろそろ始めようか。せっかく汝らにチャンスを与えたのに、それを活かされずに汝に燃え尽きられたら、さすがに申し訳ないからな」

「ご配慮、いたみいります。それではどうか、しばし私にお付き合いください」

「ああ。時の短針よ、行け」

ルーチェの言葉を合図に、ダンタリオンは今度は先が鏃形になっている、黒い矢を周囲に無数に出現させた。そして、その中から二つをルーチェに向かって発射した。


「はぁっ!!」

ルーチェはその矢自体は見ずに、光の剣を二閃。矢を叩き落とすことに成功した。


「ほお!最初の時と同じ音速レベルではあるが、対処したか」

「ええ。あなたと話している間に、知覚能力と運動能力、反射能力を高めておきましたから。もっとも、最後の方に出たあの速度相手では、対処は無理でしょうが」

ルーチェは矢を弾くことには成功していたが、弾いた時の反動で腕を痺れさせていた。ゆえに、攻撃速度を上げられれば対処が出来ないことを理解していた。

「それでも我の攻撃に対処出来たのだ、称賛に値する。誇って良いと思うぞ?」

「その称賛は、ありがたく受け取っておきます」

「それでは連射に切り替えるとしよう。汝の奮闘に期待する」

「ご期待に応えてみせましょう」


それからダンタリオンとルーチェの、一方的な攻防がしばしの間続いた。



「かはっ!」

しかし、その均衡も長くは続かなかった。とうとうルーチェの《御使い降臨》の影響が、ルーチェの身体の限界を向かえてしまったからだ。


「限界、か。転移魔法の発動準備は……間に合わなかったか」

ダンタリオンは吐血しうずくまるルーチェから、視線をアーク達の方に向けた。そちらでは転移魔法の準備が進められていたが、完成度は八割といったところだった。

アーク達は、ルーチェが稼いだ時間で転移魔法の準備を間に合わせることが出来なかったのだ。ルーチェの奮闘は、無駄に終わった。


「ここは間に合ってほしかったものだが、致し方ない。ここは最初の宣言どおり、終わらせるとしよう。せめてルーチェ殿の健闘に敬意を表し、安らかな終わりを汝らに」


ダンタリオンはそう言うと、長らく放置していた最初の重力球をアーク達に向けた。

それなりの時間が経過したことにより、重力球のサイズは現在はガスタンク並になっていた。


「「「げっ!」」」

その超大型重力球を見たアーク達一同の腰が、一斉に退けた。小型でも御使い達を押し潰していたのだ。その何十倍ものサイズの重力球による一撃の威力は、彼らの想像の埒外だった。


「さあ、ルーチェ殿と共に逝くが良い」

ダンタリオンはうずくまるルーチェとアーク達を射線上に捉え、そのまま重力球を発射した。


重力球は時の秒針等に比べるとゆっくりだが、確実にルーチェ達の方に飛んでいった。


「させません!」

そして重力球がうずくまるルーチェに命中しようとした瞬間、新たな乱入者がこの戦場に現れた。

その乱入者は重力球とルーチェの間に割り込むと、重力球を持っていた剣で一刀両断した。


「いかん!」

両断された重力球が重力崩壊を起こし、ブラックホール化しようとしたのを見たダンタリオンは、慌てて重力球の時間を逆行。消滅させた。


「今度はいったい誰だ!」

「……あなたは」

ダンタリオンやルーチェ、アーク達は一斉にその乱入者を確認した。


全員の視線の先にいたのは、黒髪黒目。中肉中背の、彫りの浅い顔立ちをした十代半ばの少年だった。


「!」

「「「ライト!?」」」


ダンタリオンは少年の配色と容姿に驚き、ルーチェ達は乱入者がここには来ていないはずの見知った人物であることに驚いた。


「ライト、なぜあなたがここに?」

「なんとなくですね。なんとなくではありますが、皆さんがピンチになっている予感がしたんです。だから、教会の人達に頼んでここへ転移させてもらいました」

「そう、ですか、なんとなく。…ですが、おかげで助かりました」

「それで、彼が敵ですか?」


ライトはダンタリオンを見遣り、ルーチェに敵の確認。現状の確認を行った。


「そうです。ただ、私は把握しきれていませんが、相手にはいろいろと込み入った事情があるようです。聖女様を確実に仕留めようとしている反面、私を相手にしている時はそれなりの誠意や心遣いを見せていました」

「誠意や心遣いですか?」

「ええ。私が決闘を申し込んだ時、ダンタリオン殿は受ける必要がないのにそれに応じてくれました。また、決闘中は後ろにいた勇者様や聖女様達にも手出しをしようとはしていませんでした。まあ、私が防げなかった攻撃が飛び火したり、決闘に割り込もうとした部下達が自滅させられたりはしましたが。これらについては、こちらの問題ですし」

「えっ!それじゃあ俺、決闘の邪魔をしちゃいましたか?」

「いえ。私の体力が限界で、決闘の方は終わっていました。私は敗者ですので、あのまま攻撃を受けてもかまいませんでしたが、後ろにいる勇者様達を守ってもらえましたので、感謝しています」

「そうですか、よかった」

ライトは安心したように胸を撫で下ろした。


「ええっとじゃあ、今はどんな状況になるのでしょう?」

「ライトが乱入者して戦闘が停止している状況です。場合によっては、すぐにでも戦闘が再開されてもおかしくはありません」

「なるほど、了解です」

ルーチェから事情を聞いたライトは、ダンタリオンに向かって剣を構えた。


その他の者達も、警戒の視線をダンタリオンに向ける。


「……転生プレイヤー」

「「「えっ?」」」

しかし、ライト達から視線を集めているダンタリオンは、戦闘を再開させる様子を見せなかった。そして、一つの単語をライトを見ながら口にした。

ライトは、ダンタリオンが口にしたその単語の意味をはかりかね、困惑した。


「全ては汝と、汝の上役の差配であったか」

「えっ!えっ?俺、ですか?」

ダンタリオンが自分に言っているのだと理解し、ライトは自分を指差しながら他の者達よりもさらに困惑することになった。

ルーチェ達も、今までにないダンタリオンの様子と、ライトの関係に困惑を深めた。


「そもそも、少しおかしいとは思っていたのだ。彼女がジャミングをしているにもかかわらず、そこにいる勇者達がここに来たこと。ご都合主義の如く、何度も御使いやルーチェ達のような援軍がタイミングよく、場所を違わずにここに現れたこと。それら全てが転生プレイヤーである汝と、その上役の干渉の結果であるのなら、今までの異変に得心がいく」

「えっ?えっ?転生プレイヤー?上役?干渉?いったいなんのことです?」


ライトには、ダンタリオンの言っていることがまったく理解出来なかった。



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