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75.両者に来た援軍

「「「「「……」」」」」

迫り来る脅威に、アーク達一行からは妙な沈黙が起きている。

それぞれが目配せしあって、アイコンタクトをしているが、誰一人一言も声を発することはなかった。


「む?」

「「「「「?」」」」」

ダンタリオンが重力球を放つ直前、何かを見つけたように視線をアーク達から反らした。これにアーク達は怪訝な目を向けたが、まだもう一人のダンタリオンが自分達を見ていた為、迂闊な行動は採らなかった。


カッ!


ダンタリオンの視線の先で、いくつもの光が瞬いた。


「あれは!」

「御使い様!」


次の瞬間、瞬いた光が人の姿に変わった。

今現在アークが生やしているのと同じ光の羽根を生やした、人間味に欠けた美男子の姿がそこにはあった。しかも、まったく同じ外見、同じ表情、同じ気配でずらりと空の上で並んでいる。


「…御使い。エードラムの御使いか?」

「そうです!あの方達は、我らが神エードラム様の御使いの方々です」

強力な味方の出現に、リュミエールの顔色が青から赤の方に変わった。


「…手抜きっぽいな」

御使いを見たダンタリオンの最初の感想は、それだった。

人間味の無い同一規格の存在。ダンタリオンには、現れた御使い達が大量生産された人形のようにしか見えなかった。


「手抜きってなんです、手抜きって!御使い様方のあのお姿こそが、至高のお姿なのですよ!!」

「至高?まあ、良い。始末する対象が増えただけのこと」


ダンタリオンは深く考えるのを止め、重力球をアーク達から御使い達に向けた。


「「「神子達の敵を排除する」」」

それに反応するように、御使い達は一斉にダンタリオンへの攻撃を開始した。

御使い達の手が輝き、無数の光条がダンタリオン目掛けて放たれる。


「愚か」

ダンタリオンはそう言うと、重力球を自身の正面に翳した。

直後、ダンタリオンに向かっていた光条が、一斉に進路を重力球の方に変えた。そしてそのまま重力球に命中。御使い達から放たれた全ての光条は、重力球の向こう側に消えていった。


「「えっ!なんで!どうして!?」」


御使い達の攻撃がダンタリオンに効かなかったことで、希望が生まれていたアーク達一行は、また絶望することになった。


「重力は密度を増すと、物質だけではなく光なども捩曲げ、自身に吸い寄せるようになる。つまり、我には光を用いた攻撃は一切通用しない」

「「「「「「………」」」」」」

ダンタリオンのこの説明に、アーク達一行+御使い達は、ただ絶句するほかなかった。


「理解したならば、とく消えうせると良い」

ダンタリオンは重力球を自身の周囲に無数に出現させ、最初の一つ以外を御使い達目掛けて発射した。無数の球体が空を駆け、御使い達に殺到する。


「「「!!」」」

御使い達はそれに表情を変えず、それぞれが回避行動に移った。


「無駄だ。光でさえ逃げられぬのに、お前達が逃げ切れるわけもない」

ダンタリオンのその言葉どおり、御使い達は次々と重力球に捕まっていった。

そして、重力球の高重力によって、御使い達の身体はゆっくりと圧縮されていった。

御使い達が一気に潰れなかったのは、御使い達のステータスがわりと高かったことと、出現させたばかりの重力球では威力が低かったせいだろう。

それでも御使い達は重力球から脱出出来ず、じわじわと身体を押し潰されていっているのだから、ダンタリオンにとってはなんの問題もないことではあった。

しかし、心のよりどころを目の前で圧壊されているアーク達一行にしてみれば、それは悪夢にほかならなかった。


「御使い様!」

「止めろぉぉぉ!!」

目の前の光景に耐え切れなくなったアークは、決死の覚悟で再びダンタリオン相手に剣を向けた。


「止めろと言われて止めるわけがあるまい。お前達は、我らの敵なのだから。次はお前の番だ」

ダンタリオンはしごく当たり前のことを言うと、今度は重力球をアーク達に差し向けようとした。


カッ!パアァァァ!!


しかし、再び邪魔が入った。

ダンタリオンとアーク達の間の地面に、突如魔法陣が出現したのだ。そしてその魔法陣は、アーク達がこの地に出現した時に現れたものと、まったく同じものだった。


「新手か?」

ダンタリオン達が見守る中、魔法陣が弾けて消えた。そして魔法陣が消えた後、魔法陣があった場所には、白銀の鎧で武装した五百人程の人間達の姿があった。


「光神聖教会、守護騎士団!」

リュミエール達の前に出現した人間達は、光神聖教会の守護を担当する面々だった。


「なぜあなた達がここに!?」

「聖女様達がこちらに向かわれた後、追加の神託があったのです。勇者様達に危機が訪れている。救援に向かえ、と」

驚いているリュミエール達に、守護騎士団から一人が一歩前に踏み出すと、そう自分達がここにいる理由をリュミエール達に説明した。

事情をリュミエール達にそう説明したのは、守護騎士団の第四大隊隊長のルーチェ。今回勇者達の救援に来たのは、彼女の部隊である為、彼女が代表者であり指揮官である。


「次から次へと使徒達への救援か。我一人で片付けられぬこともないが、我も援軍を召喚することにしよう」

「援軍だと!」

アーク達勇者パーティーは、そのダンタリオンの言葉に危機感を覚えた。


「しかり。最初の方で言っておいたはずだ。我は異世界の魔神たるダンタリオンの名と、その権能を扱う資格を有する者だと。異世界の公爵位にあるダンタリオンは、三十六の魔神軍団を支配している。当然、我にもそれに類似した配下が存在している。来たれ、我が忠実なる眷属達よ!」

ダンタリオンがそう言って腕を広げると、ダンタリオンの足元の影が急速に拡大を始めた。影はどんどん広がっていき、最終的にはトワラルの街が入る程の範囲にまで広がりを見せた。そして影の拡大が止まると、今度は足元の影のいたる所で波紋が発生しだした。最初は本当に小さな波紋だったが、それはだんだんと大きくなっていき、その大きくなった波紋から、無数の何かがこの地にその姿を顕した。

もっとも多く出現したのは、青白い氷の身体を持った、単眼に蝙蝠の羽根が生えた悪魔、【アイスイービルアイ】。

その次に多かったのは、青黒い氷の身体を持った、山羊の頭に筋肉質な人の上半身。蝙蝠の羽根に獣の下半身を持った悪魔、【アイスデーモン】。

その次は、濃い群青色の氷の身体を持った、山羊の頭に鍛え貫かれた鋼の筋肉の上半身。蝙蝠の羽根に山羊のような四脚、蹄を持つ獣の下半身をした悪魔、【アイスイービル】。

そして最後に、ダンタリオンの両脇にそれぞれ出現した二体。

片方は青紫色の氷の身体を持った、山羊と羊の双頭に蝙蝠の羽根。ダンタリオンと同じようなローブを纏った悪魔、【アイスデーモンビショップ】。

もう片方は青紫色の氷の身体を持った、山羊の頭に四本の腕。全ての腕にまがまがしい剣を持ち、濃い紫色の鎧を纏った、蝙蝠の羽根を有する悪魔、【アイスデーモンジェネラル】。


それらの悪魔達が、ダンタリオンを中心に展開し、アーク達光の勇者パーティーと光神聖教会の守護騎士団と対峙している。


「ドゥアールカ帝国の悪魔!」

現れた悪魔達を見て、リュミエールはそう叫んだ。今現在リュミエール達の目の前にいる悪魔達の容姿が、自分達の敵である帝国の先兵達と、よく似ていたからだ。


「ハズレだ。我が眷属達は、お前が今言ったドゥアールカ帝国の復刻版のまがい物の生体兵器ではない。また、その生体兵器のオリジナルである、邪神や悪神達の神殺兵器でもない。ここにいる我が眷属達は、古き神々と世界に認められし者達。汝らに仇なす者である半面、この世界に生きる人類種達以外の生きとし活ける全ての生命を守る者達だ」

だがリュミエールの判断は、すぐにダンタリオンに否定されることになった。


しかし、ダンタリオンの言葉にはリュミエール達全員が聞き捨てならないワードがいくつもあった。


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