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48.悪神と信仰神

その生贄召喚ってのは、実際のところはどういった召喚方法なんだ?というか、そもそも何に対する生贄で、何の為に生贄を召喚しているんだ?

『順を追って説明いたします』

頼む。

『そもそもの原因は、二千年前の戦いの後にあります』

二千年前の戦いというと、管理神達と人類種達との戦いのことか?

『そうです。あの戦いの後、私は彼ら人類種達にある称号達を与えました』

戦いの後となると、管理神達を封印したことに関係する称号か?

『そうです。【混沌をもたらした者】【秩序を乱した者】【世界に仇成した者】【創造主に叛旗を翻した者】【神々を裏切った者】【咎人】【罪人】【赦されざる者】【理の破壊者】【平穏を拒む者】【摂理に牙剥きし者】【堕ちし者】【善良なる者の敵】【生命を蝕む者】【欲望に狂いし愚者】【穢を蒔く者】【歪みを増長させる者】【悪神の創造者】。だいたいはこんな名称のものですね』

多っ!それになんか、悪役に付きそうな称号名ばかりだな。いや、善神を封印しているんだから、どこからどうみても立派な悪役か。

『はい』

ちなみに、最後にある【悪神の創造者】って、いう称号はいったい何なんだ?名称からすると、人類種達が悪神とやらを創造しているように聞こえるんだが?

『そのとおりです。この世界の人類種達には、創造主から生物として願う権利が与えられていました』

願う権利?

『祈りと言い換えてもかまいません。この世界の人類種達は、自身の願いを祈りとして私(この世界)に捧げます。そしてそれがあるラインを越えた時、私はその願いが叶うようにほんの少し助成する法則を編み込まれています。ですが、それが全ての間違いの元だったのです』

と、いうと?

『以前、かつての人類種達の目的は話しましたよね』

ああ。世界征服系の話しを聞いたな。

『そうです。人類種達はそれを願い、私に祈りを捧げました。私は自身の法則に従って、その願いを聞き届けることになってしまいした。この時の場合は、彼らの欲望を肯定し、彼らに助力する存在を生み出したのです。それが彼らが信仰を捧げる相手。悪神の誕生でした』

なるほど。悪神が人類種達の願いを引き金に発生したのなら、たしかに人類種達は悪神の創造者だな。それと、これで納得がいったな。

『納得?何についてですか?』

管理神達が人類種達に敗れたこと。管理神達が人類種達に封印出来たこと。あと、生体兵器の容姿がもろに悪魔系だった理由とかだな。


人類種達にも悪神とはいえ神の助力があったのなら、人類種達だけで管理神達を倒したと考えるよりも納得がいく。

それに、なんで生体兵器達の容姿が元祖悪魔や羽根付き目玉の使い魔系なのか少し疑問に思っていたが、裏に悪神がいたのならそちらも納得だ。なんと言うか、悪神の眷属だと考えると、ビジュアル的にしっくりくる感じだ。


『そうですね。私が悪神を生み出していなければ、管理神達が負けることはなかったでしょう。当時、私は端末たるエレメンタルターミナルを有しておらず、管理神達と会話する術もとても限られていました。当時、せめて連絡手段をもう少し確立させていれば、悪神が生まれた時点で信徒達諸とも抹消を管理神達に頼んでいたでしょうにね』

だけどそうはならなかった。まあ、今は当時の後悔はおいておいてくれ。それで、その悪神とやらは管理神達が封印された後はどうなったんだ?

『管理神達の封印によって発生した天変地異で人類種達が間引かれ、大きく弱体化することになりました。悪神達は管理神達と違って信仰されなければ存在を維持出来ない信仰神。自身を信仰する信徒達の数が、悪神達の力であり命そのものなのです』

なるほど、そういうシステムなのか。つまり弱体化に留まったということは、悪神の信徒達は少数ながら天変地異から生きながらえたということか。

『はい。口惜しいことに、当時存在していた悪神達が誰も滅びない程度には、人類種達は生き残りました』

テレサ達みたいな管理神側の人類種達はどうだったんだ?

『あの戦いは管理神達側の敗北でした。当然、戦いの終了の時点で、管理神側の人類種達は極僅か生き残れていた程度です。もっとも、この管理神達側の生き残りについては、向こうと違って天変地異での死者はありません』

何かしたのか?

『はい。私の許されている範囲で、いろいろ手助けしました』

そうか。当時は両方とも生き残ったのか。

『はい。まったく、向こう側のなんと生き汚いことでしょう。あの天変地異で絶滅してくれていれば、何の問題もなかったというのに』

まあ、そうだろうな。それで、悪神達や人類種達の社会は、今はどんな感じになっているんだ?管理神達が封印されっぱなしなんだから、悪神達側の優位な世界になっているんだろう。

『管理神側と比べると、わりと悪神達が優位ではありますが、実際にはそこまで差が有るわけではありません』

どういうことだ?

『あの天変地異で、悪神側の勢力は大きく削られました。そして、天変地異後の世界で求められたのは、悪神達ではなく管理神達に代わる存在でした』

と、いうと?

『敵である人類種達が悪神達に望んだのは、支配する力や邪魔物を排除する為の権能。それらは、天変地異後の世界に必要な食料の確保や、天変地異であれた環境を以前の状態に戻すことにはかすりもしていません。はっきり言ってしまえば、当時の悪神達は当時の人類種達にとって役立たずのいらない子状態でした』

ああ、まあ、悪神だしな。生産的な能力なんて持ち合わせてはいないだろう。

『はい。ですから当時の人類種達は、悪神達がカバーしていない部分。管理神達が管理していた生産的な力を求め、私に祈りを捧げたのです。私としては、ふざけるな!という思いでしたが、悪神達の時同様に法則通りに仕事するはめになりました』

ご愁傷様と言うべきか、ご苦労様と言うべきかな?

『どっちでも良いですが、大変不愉快でした』

それはそうだろうな。敵に便利に使われている感じだし。

『まったくです』

それで、今度はどんなのを生み出したんだ?

『封印された管理神達をベースに、とことん当時の人類種達に都合の良い信仰神を生み出しましたよ!』


彼女は吐き捨てるようにそう言った。

二千年前のことなのに、今でもかなりの怒り保ってるようだ。はっきり言って、かなり恐い。


そ、そうか。それでさっきの言葉に繋がるわけか。

『はい。現在の人類種達の間では、その時に生み出した信仰神達が主に信仰されています。残る一部の信仰を、それぞれ悪神達と管理神達が保持している感じです』

そうなのか。管理神達側はテレサ達みたいな信徒達だな。じゃあ、今も悪神達を信仰している人類種達は、かつての戦いや天変地異を生き残った奴らの子孫なのか?

『メインはそうです。ですが、悪神達は支配階級の屑共に受けが良いんです。ですから、その時代その時代で支配欲の強い支配階級の人類種達を取り込んでいっています。その結果、今では支配欲の強い人類種達が悪神達側の大半を占めています』

うわー、悪は決して滅びないとはよく言ったものの状況だな。

『ですね。もっとも、随時権力争いをしていますから、互いに潰しあって組織が肥大化出来ないという利点もあります。そのおかげで、信徒達の数は一定数を越えられず、悪神達も弱体化したままです』

業の深い話しだな。

『そうですね。とまあ、そういうわけで先程の話しとなるわけです』

なるほどな。

管理神達が封印されたままだからテレサ達のような信徒達が一番少なく、弱体化されているとはいえ、悪神達が健在だからその信徒達の方が優勢。そんなことが関係ない連中がまとめて生産的な信仰神の信徒をやっていて、勢力図的に一番規模が大きくなっていると。


良し!その辺のことは理解出来た。そろそろ話しを戻してくれ。

『わかりました』


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