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39.進化の時

あれはなんだ?


デーモンジェネラルが新たに召喚したのは、目玉がぶどうのようにくっついた怪生物だった。


『デーモンアイ。イービルアイの上位種で、広範囲攻撃用の生体兵器です』

イービルアイの上位種。

『攻撃方法はイービルアイと同じですが、攻撃速度はある程度向上しています。また、目玉が増えたことで一度に攻撃出来る回数と方向が増加しています。その代わり、増えた目玉のせいで機動性は低下していて、かつてはもっぱら広範囲への攻撃か、拠点破壊の時にしか投入されていませんでした』

ふむ。上位種とはいえその程度なら、別段対策は必要ないか?

『戦いはそうですね。ただ…』

ただ?

『戦いの回転は上げることになります』

どういうことだ?

『見ていればすぐにわかります』

見ていればって、………げっ!


彼女に言われたとおりデーモンアイ達の姿を窺って見ると、すぐに彼女の言葉の意味が理解出来た。


なんとデーモンアイ達から目玉がそれぞれ飛び出し、無数のイービルアイの姿になったのだ。


眷属召喚?いや、増殖か!?

『そうです。あれがデーモンアイの能力の一つ、[細胞増殖]です』

つまり、戦いの回転を上げる必要があるっていうのは……。

『はい。デーモンアイが一体いれば、イービルアイの出現率がプラス20はいきます。回転率を上げていかないと、物量で押し切られます』

・・・理解した。

なら、デーモンアイ達を潰しながら、今まで抑制していた分も戦力を投入しよう。


俺は対応を決めると、エレメンタルミサイル達をデーモンアイ達に突っ込ませた。


今までの戦いで、経験値もかなり稼げた。そろそろエレメンタルミサイル達も、進化出来るだけの経験値が貯まった頃合いだ。


『はい。進化先に性能をあまり詰め込まないのなら、進化先を設計すればいつでも進化可能な段階です』

なら、早速いってみよう。

ユニットの設計に、コストはかからないよな?

『はい。設計するだけなら、SPの消費などはありません』

良し。ならあとは、エレメンタルミサイル達をどうするかだな。

単純に、今の戦法をより効率化させるようにするべきか?

それとも、新たな戦法を開拓するべきか?

どちらが良いだろうか?


俺はコンセプトをどうするべきか、頭を悩ませた。


『別に悩まずに、複数設計すれば良いと思います』

そうか?

『進化元の数は揃っているんです。多少失敗作が混じったとしても、リカバーは利くと思いますよ』

なるほど。なら、想像が出来る範囲で好き勝手にやってみよう。


俺は決心がつくと、思いつくかぎりのエレメンタルミサイルの未来の姿を設計していった。



うん?

『どうしました?』

いや、ふと俺以外の進化も時間がかかるものなのかと思ってな。もしもエレメンタル達の進化が、俺くらい時間がかかるものなら、今進化させると戦力ダウンにしかならないと、今気がついた。

『ああ、そこに気がつきましたか』

というとやっぱり?

『はい。進化した後は、安定するまでに少し時間が必要です』

なら、進化はとりやめにした方が良いか。

『いえ、気にせず進化させてください』

あー?だが、安定までに時間が必要なんだろう?

『そうです。ですが貴方の場合、その問題は簡単にクリア出来ます』

と、いうと?

『[代行者権限]です』

うん?

『[代行者権限]でノルニルの管理神権限を使えば、エレメンタル達の進化後の安定時間を圧縮することが可能です』

なるほど。たしかにその方法なら、今ある問題をすぐに解決出来るな。

『はい。ですので、気にせず進化させてください』

了解だ。


問題が無いのなら即実行。

俺は手元にいるエレメンタルミサイル達を、順番に進化させていった。

もちろん戦線維持の為、ある程度の数は戦闘を継続させてだ。


俺の周囲で無数の光が踊る。極彩色の輝きが周囲を満たし、エレメンタル達が新しい姿に生まれ変わってゆく。


ある意味幻想的な光景が、悪魔と戦う戦場で場違いに展開されていた。


『数はだいたい揃いましたね。ではそろそろ、[代行者権限]を発動させてください。使用は、ノルニルがサポートしてくれます』

わかった。

[代行者権限]タイプ:ノルニル、発動!


【要請受諾。時間管理システムの使用を許可。全システムの制御権を一時的に移行】


俺の特殊能力発動に合わせ、そんなメッセージが表示された。

そして、俺の頭の中に無数の歯車と、様々な時計の像が浮かび上がってきた。


普通の文字盤時計にデジタル時計。振込時計に砂時計。日時計や水時計。他にも様々な時計の姿があった。


俺がその時計群を見ていると、一つの時計がアップされた。

そしてその時計を見ていると、その時計で何が出来るのか、頭の中に浮かび上がってきた。


なるほど、こうすれば良いのか。


俺は頭の中に浮かんできた内容に従って、その時計を操作した。すると、デーモンゴーレムの背後に光の文字盤が出現した。

そして俺が操作を進めていくと、文字盤に針が出現。俺の操作に合わせ、長針と短針、秒針が高速で回転しだし、やがて文字盤から金色の波動が周囲に放たれ拡散していった。


最初は他に変化は無く、ただ波動が広がっていくだけだった。しかし波動が進化したエレメンタル達に触れると、今まで動かなかったエレメンタル達が一斉に動きだした。


『成功ですね』

ああ。だが、これはかなりきついな。


俺は成功を理解して安堵した。しかしそれとは別に、俺は酷く疲れたという感想を持っていた。

この特殊能力を発動させた直後から、すごい早さでHP・MPが消費されていき、全身を襲う虚脱感が半端なことではなかった。

現在では身体が異様に重く、エレメンタル達のリサイクル作業にも若干の遅れが出始めている。


『それはしかたがありません。私(この世界)の管理システムを一部とはいえ使用したんですから、それくらいの負荷はあって当然です』

こういうことになるのなら、前もって言ってほしいんだが。

『わかりました。今度からはそうします。ですが、現状は本来の負荷よりも大分マシなんですよ』

と、いうと?

『今回は私とノルニルの方で能力発動に必要な演算処理の大部分を引き受けましたから、貴方にかかった負担は、本来貴方が単独で使用した場合にかかる負荷の、一分にも達していません』

これで一分なのか?

『はい。もしも貴方が私達のサポートの無い状態で能力を使用していたら、演算処理能力の不足で能力が発動しなかったか、無理して普段使わない演算領域を使用した結果、貴方の全ての頭がオーバーフローかオーバーヒートしていたはずです』

オーバーフローにオーバーヒート。

機械的に言って、壊れるってことか…。

『はい』

それは嫌すぎるな。それに、それだと能力としては使いづらい。負担を減らす方法はないのか?

『いくらでもありますよ』

いくつかじゃなくて、いくらでもなのか?

『はい。私や管理神達が貴方のバックについているんです。対策なんて、人の観点、世界の観点、管理神達の観点。何処からでも引っ張ってこれますから』

なるほど。たしかにそれなら、いくらでも対策が出てくるはずだな。

『そのとおりです』

ふむ。それならあとでその方法を斡旋してくれ。

自分の能力は十全に使えるようになっておきたいからな。

『わかりました』



俺は彼女にそう頼んだ後、遅れだしているエレメンタル達のリサイクル作業と、エレメンタル達の進化補助に意識を戻した。


文字盤に映る時計の針は、俺の意思に合わせてどんどん加速し、さらにエレメンタル達を目覚めさせていく。



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