37.魔素糸
ふむ。ダンジョンゴーレム、宝玉の回収を頼む。
俺は早速、ラケシスの宝玉の回収をダンジョンゴーレムに命じた。
すると、ダンジョンのあちこちの内壁が移動を開始しだした。
これで少し待っていれば、二個目の宝玉が手に入る。
この施設をスルーしなくてよかった。ついでに、この施設をゴーレム化しておいてよかった。
少々意外な展開だが、棚ぼたで美味しいことになっているな。
『私としては複雑ですが、結果はそうですね』
さて、宝玉が来る前にユニットを作成してしまうか。
『そうですね』
それから俺は、エレメンタルミサイルの製造に取り掛かった。
まずは形を選択。
もっとも、これはミサイル型で決まっているので、その形にするだけで終わり。
次に材料。これはエレメンタルの若木から葉っぱを一枚。
後はステータス画面で通常スキルを選択。
ステータスも敏捷特化にしておしまい。
あとはリアライズさせて、エレメンタルミサイルの駒をGET!
あっという間に新しいユニットの完成だ。
後はこれを繰り返し、エレメンタルミサイルの数を揃える。
俺は一つの思考をテレサ達に向けている。だから残った八つの思考能力内、七つをエレメンタルミサイル達の製造にあてた。
ちなみに残った一つはというと、今回入手した能力の確認作業を行っている。
やはり能力の内容は、ちゃんと確認しておかないと、いざという時に役に立たないからな。
今回入手した能力の内容は、以下のようになっていた。
【通常スキル】
[危険察知]
自分が危険だと判断する出来事を、その出来事の少し前に察知出来る。
[死に戻り]
帰還地点を設定しておくことで、死んだ際にその設定地点で復活出来る。
[デスペナルティー]
死んで復活した際に起こる、魂の劣化を無効にする。その代わり、一定時間の間レベルが1となり、ステータスも大幅に低下する。(最長一ヶ月で回復する。また、能力Levelの上昇にともない、ステータスの低下が緩和される)
[身体強化]
肉体能力を一時的に強化する。強化率は、使用者の肉体強度に依存する。(限界以上の強化を行うと、神経断裂・細胞崩壊の危険性あり)
[言語翻訳]
異世界の言語が、自動で翻訳されるようになる。
[成長期]
自身の成長率が一定期間向上する。成長期(進化の可能性がある間)が終了すると、この通常スキルは自動的に削除される。
[魔力順応]
魔力との相性が向上し、魔力が使えなかった者でも魔力を身体に宿せるようになる。また、高密度の魔力に晒されても、魔力酔い等をしなくなる。
[相打ち]
自分と相手が互いにダメージを受けている時、自分が相手に与えるダメージが増加する。(増加するダメージは、自分のHP残量が少ない程大きくなる)
[自爆]
現在ある自分のHP・MPを全て破壊エネルギーに変換し、周囲を巻き込み自爆する。(威力は、その時点で変換されたHP・MP量に依存する)
[緊急離脱]
HPが規定値を下回った時に、自動的に発動。その場所から自動的に離脱する。核型の場合、核だけを離脱させることも可能。(ボディーは放置)
[高速機動]
慣性の法則や空気抵抗を緩和し、高速機動を可能にする。(能力Levelの上昇にともない、緩和率の向上が可能)
【特殊能力】
[魔素糸]
世界中に充ちている魔素に干渉する能力。運命の管理神ラケシスの眷属専用特殊能力であり、その力は他の特殊能力とは一段階上のランクにある。
スキルの内容はだいたい予想通り。
能力Levelがあるものは、後で経験値を入れてLevelをMAXにしておこう。
ここまでは問題無い。しかし、特殊能力の説明文が薄いな。眷属専用とかあるし、ランクが通常の特殊能力よりも上とあるから、おそらく強力であることはわかる。だが、説明が薄くて実際に何が出来るのかがわからない
この特殊能力、いったい何が出来るんだ?
『いろいろと出来ますよ。というか、万能過ぎる為、そんなふわっとした説明文になっているんです』
そうなのか?
『そうです』
なら、具体例を頼めるか?
『わかりました。まず出来ることを分類でいうなら、攻撃・防御・補助・回復。全てをこの特殊能力一つで行えます』
はっ?
なんかありえないことを聞いたような気が?
いくらなんでも、それは万能過ぎないか?
『それはしかたがありません。なぜならこの能力は、魔力ではなく魔素に干渉する能力ですから』
魔素?そういえばそんなことが書かれていたな。だが、そもそも魔素っていうのは何なんだ?
『魔素というのは、魔力の一つ前の段階の状態です。この世界の一般的な存在は、世界中に遍在する魔素を吸収し、それを自らの内で魔力に変換します。そして、その変換出来る最大値がつまりはMPの上限になります』
なるほど。
『そして、この世界の能力は一般的に、魔力で発動するものが大半です。魔法、通常スキル、特殊能力どれでもです。もちろん魔力が不要な能力も多数ありますが、そちらは別にコストがかかります。さて、それで魔素。そして魔素に干渉する能力が管理神の眷属専用な理由ですが、その万能性。いわゆる融通とか汎用性とか、利便性に応用性などが理由です』
どういうことだ?
『この世界の能力が、魔力をコストにしているのは良いですね?』
ああ。
『その為この世界の人類種達は、魔力が全ての力の源だと考えています。魔力が自分達の望みに応えて変化し、様々な事象を起こしているのだと』
違うのか?
『違います。魔力はあくまでも呼び水です。様々な事象を起こしているのは、世界中に遍在している魔素の方なのです』
というと?
『魔力は元々魔素を変換したものです。その変換した自身の魔力に、魂に刻まれたスキルや知的存在からの意思。魔法を発動させたいという望みを込めると、魔力はその意図を汲み上げて、スキルや魔法を設計図として、周囲の魔素を一時的に変換し、設計図に従った事象を起こすのです』
ほうほう。
『逆に言うと、この世界の住人達は設計図(対応したスキルや魔法)を持っていないと、その事象を起こせないのです。というわけで、大元である魔素に直接干渉し、設計図が不要で自分の好きに事象を起こせる[魔素糸]は、管理神達の管轄になる高ランクの特殊能力となるわけです。ちなみに、管理神達は全員が魔素に干渉出来る特殊能力を持っています。でないと、私(この世界)の管理に手間隙がかかりますから』
なるほど。話しが逸れた気もするが、魔素に干渉出来ることの凄さは理解した。たしかにそれなら、攻撃も防御も補助も回復も全てこれ一つで出来るだろうな。
『さて、魔素の説明は今はここまでにして、具体例に戻ります』
ああ、頼む。『といっても、本当に出来ることの範囲が広いですから、かつて使われた例を出すくらいですが』
それで構わない。
『わかりました。まずは攻撃ですが、名称通り魔素を糸の形にして、対象を切断することが出来ます』
硬糸鉄線?
『まあ、暗器のような使い方ですね。あとは魔素に介入して、魔法のような事象を起こしたりですね。もっとも、後者は設計図が無い分、自分で過程と結果を演算しないと駄目ですが』
演算?
『イメージと言い換えても言いですが、中途半端にやると、暴走しますよ』
それは嫌だな。
『ですね。次に防御ですが、こちらも攻撃の内容と大差ないです』
まあ、そうだろうな。
『補助については、使用者でまちまちですが、比較的に多いのは[マリオネット]というスキルを模した使い方です』
名称でだいたい想像がつくな。
『でしょうね。ご想像のとおり、相手を操り人形にするスキルです』
やっぱりか。
『他の補助的な使い方ですと、自身の筋繊維を強化するようなのもありましたね』
筋繊維を強化?
『はい。魔素糸を筋繊維と合わせることで、対象が公使出来る筋力を擬似的に増やせるんです』
なるほど。
『回復の方も、魔素糸で傷を埋めたりになります』
なるほどなるほど。




