36.新たな眷属の為に
『自爆特攻って、いったい何をするつもりなんですか!?』
言ったままだ。
ゴーレムやエレメンタルポーン達単独では、イービルアイの攻撃は防げない。
『そうです。イービルアイの攻撃を受けた場合、クレイゴーレム達だと高確率で致命傷となります』
なら、防御力はかなり高く必要か、いらない。作成する今回の場合なら、防御力を他に宛てる方が効率的だ。
『まあ、現在の能力で致命傷を受けるのですから、防御力はなくても良いでしょうね』
次に攻撃方法だ。
ゴーレムなら打撃。エレメンタルポーンなら[火弾]で戦うことになる。
『そうですね』
だが、相手は空中を高速で移動するんだろう?
『はい』
なら、別の攻撃手段を用意しないとただの的だ。
『たしかにそうなりますね』
つまり、確実に必要なステータスは、敏捷だけということになる。
『そうですね。イービルアイの早さについていけないと、そもそも戦いにすらなりませんから』
なら、眷属単独でイービルアイを相手にするなら、敏捷特化の一撃必殺が好ましいだろう。
『敏捷特化はそうでしょうが、一撃必殺もテーマに含むのですか?』
敏捷特化にすると、紙装甲の一撃でアウトな仕様になるんだ。なら、一撃必殺もテーマに含んだ方が良いだろう?
『そう言われると、そうですね』
俺はエレメンタルポーンとクレイゴーレムを戦わせた後から、ずっと次の眷属をどうするべきか考えていたんだ。
エレメンタルポーンの弱点は、明らかにあの敏捷のなさだ。あれだと、エレメンタルポーンは固定砲台にしか使えない。
それに、レベルが1だったとはいえ、[火弾]の方の威力もクレイゴーレム相手には微妙だった。
『そうでしたね』
そうなると、次回作は敏捷や攻撃が欲しくなる。
それをテーマにいろいろ考えてみたんだが、しっくりくるものはなかった。
いや、使い捨てにすることを考慮するなら、かなり良いのがあった。
『どんなのですか?』
ミサイル型のエレメンタルだ。
『ミサイル型!?』
ああ。敏捷特化にするなら、ステータス以外にも空気抵抗等も考慮した方が良いだろう?
そうなると、空気抵抗の少ないフォルムが望ましい。
なら、空中を高速で飛翔するミサイルはうってつけだ。
さらには、ミサイル型なら攻撃力もある。
構想をまとめると、敵をロックオンしたら、目標目掛けて空中を高速で飛翔。ターゲットからの攻撃は、エレメンタル自身の意思で回避。敵が逃げ出しても、エレメンタルの意思で力の限り追跡が可能。あとは、敵に当たった場合の攻撃スキルを状況に合わせて好きに選べるのなら、威嚇・牽制・鎮圧・殲滅。好きな打撃を敵に与えてやれる。
使い捨てを前提にするなら、かなり使い勝手が良いと言えるだろう?
『まあ、兵器というのはそういうものですからね。それが消耗品なら、一回で確かな効果がないと、意味がありませんし』
だな。まあ、さすがにせっかく生み出した眷属を使い捨てになんて出来ないから、この案は没にしていたんだ。が、こないだの進化で、その使い捨てという問題は改善された。
『ああ!だから自爆特攻とリサイクル戦術ですか!』
そうだ。エレメンタルをミサイル型にし、敵に特攻させて自爆させる。
この時に核を回収出来れば、その核を[冥の沼]に入れ、何度でも再度発射出来るようになる。
『なるほど!その方法なら、悪くない手ですね。ちなみに、エレメンタルに与えるスキルの目星はつけてあるんですか?』
もちろんだ。SP交換にあるものを参考に、候補は絞ってある。
『どれをチョイスしたんですか?』
聞かれた俺は、自分が選んだ通常スキルを彼女に伝えた。
『なるほど。必要最低限のものですが、バランスは悪くないですね』
だろう♪
『ですが、これだと必要なSPが結構しますよ』
まあ、たしかにな。だが、必要最低限でこれだからな。
これ以上スキルを削れない以上、このポイントでいくしかない。
『いっそスキルパックを取ったらいかがです?』
スキルパック?そんなのSP交換にあったか?
『ありますよ。特定のカテゴリー・コンセプトの通常スキルをまとめた、お得なやつが。今回の場合ですと、『転生プレイヤー限定パック Volume1』がオススメです』
転生プレイヤー限定パックVolume1。
なんかカードゲームの商品名みたいだな。
『まあ、中身が通常スキルか、カードかの違いしかありませんからね』
いいえて妙な気もするが?
『気にしたら負けですよ』
そういうものなのか?
『そういうものです』
なんか納得がいかないが、今はそういうことにしておこう。
それで、その限定パックの中身とやらは、どんな感じなんだ。
『こういうラインナップになっています』
彼女がそう言うと、限定パックの情報が俺の中に流れ込んできた。
【転生プレイヤー限定パックVolume1】
【通常スキル】
[解析][マップ][危険察知][死に戻り][デスペナルティー][身体強化][アイテムボックス][言語翻訳][成長期][魔力順応]
【特殊能力】
選択プレイヤーの資質から算出し、その内からランダムに一つが選択。
なんか俺の[ゲームプレイヤー]の能力と、大分被ってないか?
限定パックの中身を見た俺の感想としては、まず第一にそれだった。
『それはまあ、[ゲームプレイヤー]は転生プレイヤー専用の特殊能力ですから、いろいろと被りますよ』
なるほどな。それじゃあ、これをユニット作成時に選べば良いんだな?
『いえ』
いえ?違うのか?
『はい。ユニット作成時に与えられる通常スキルは、材料からの算出だけではなく、貴方の所持スキル群からもチョイス出来ます。ですから、まずは貴方がこのスキルを交換してください。それで、複数のユニットに同じ能力を付けられるようになります』
なるほど!了解した。
それを聞いた俺は、早速SP交換を実行した。
【合計150SP交換します。よろしいですか?YES/NO】
もちろんYESで。
【SP交換が完了しました。通常スキル、特殊能力を獲得しました。近似の能力が確認されました。近似の能力を統合します。獲得した能力は、以下のものとなります】
【通常スキル】
[危険察知][死に戻り][デスペナルティー][身体強化][言語翻訳][成長期][魔力順応][相打ち][自爆][緊急離脱][高速機動]
【特殊能力】
[魔素糸]
限定パックにしたおかげで、余ったポイントで[相打ち]や[高速機動]まで取れた。これでさらに眷属を強化出来る。
ついでに自分の能力も大幅に上がる。
だが、[魔素糸]というのはどういう能力なんだ?
ランダム決定のせいで、これがどういった能力なのか不明なんだよなぁ?
[魔素糸]ってどういう能力なんだ?
『・・・』
どうかしたのか?
『・・・いえ、出ないはずの特殊能力を獲得されて、少し原因を探っていました』
出ないはずの特殊能力?この[魔素糸]って特殊能力、ランダムでは出ないはずだったのか?
『ええ。少なくとも、今の貴方の資質からの候補にはありませんでした』
じゃあこの特殊能力、何処から出てきたんだ?
『出所は、運命の管理神ラケシスです』
運命の管理神ラケシス?なんか、随分と唐突じゃないか?なんでこのタイミングで介入してくるんだ?
『どうやらラケシスの封印されている宝玉が、この施設に持ち込まれているからのようです。それで、貴方が連れているノルニルの神気を感知して、支援をしてくれたようです』
なるほど。次はヘルの宝玉を入手するかと思ったが、そのラケシスの宝玉が先になるってことか。
『そうなります』




