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122.勇光なる天界の創主

「『我が盟友たる《変転する星界の創主》リーディアスの眷属よ』」

「はい!私はここにおります、我が創造主たる《変転する星界の創主》リーディアス様のご盟友、《勇光なる天界の創主》、ブレイバルト様」


ライトの上役が、アーク達から視線をエレメンタルの方に向けた。

ライトの上役。ブレイバルトに声をかけられたエレメンタルは、ひざまずくと淀みなく今の口上を述べた。


「『そこそこ久しいか?』」

「はい。ここ二千年はお目にかかっておりませので、お久しぶりにございます」

ブレイバルトは最初は本題を出さず、まずは軽い挨拶から会話を始めた。

エレメンタルはブレイバルトを見てそれなりに緊張はしているようだが、萎縮などしているようには見えない。


このことからアストラルは、ブレイバルトが自分達の致命的な敵ではないと認識した。

少なくとも、いきなり自分達に襲いかかってこないだろうという点は、アストラルが安心出来ることだった。


「貴方様が分体を降ろすとは、この度はどのようなご用でしょうか?」


ブレイバルトは急いでいないようだったが、エレメンタルの方はブレイバルトの降臨した目的が気になっているようで、さっさと本題の方を尋ねた。


「『我がこの空間に降り立った目的は、汝と交渉する為だ』」

「交渉、でございますか?いったいなんの交渉を?」


しかし、エレメンタルはブレイバルトの目的を聞いてより困惑することになった。

ブレイバルトは、エレメンタル(この世界)の創造主の盟友。

立場はエレメンタルの遥か上に位置している。

ゆえに、ブレイバルトがエレメンタルにわざわざ交渉する必要はなかった。

ブレイバルトはただエレメンタルに命じ、後ででもリーディアスに断りをいれればそれで済む話しなのだ。


「『そこにいる咎人どもを我に引き渡してもらいたい』」

「この者達をですか!?」


それなのに、ブレイバルトからの要求はさらにエレメンタル達の予想外のものだった。


「『そうだ』」

「「「「!?」」」」


エレメンタルがフィーネ達を指差して確認すると、ブレイバルトはそれに頷いた。

フィーネ達長老エルフ達は、自分達を咎人と呼ぶ別口の出現に、戦々恐々となった。


「貴方様のお言葉ではありますが、それは出来かねます。この者達は私(この世界)の咎人達。つまりは、リーディアス様の所有物です」

「『そうだな。その点は理解している』」

「ではなぜですか?それとも、すでにリーディアス様の許可はお取りになられているのですか?」

「『いや、まだだ』」

「そうならば、先にリーディアス様に交渉していただけませんか?貴方様との交渉は、私の権限を逸脱します」

「『そうだろうな。しかし、リーディアスは現在不在だ。交渉のしようがない』」

「リーディアス様が不在?……またどこかの世界に転生されているのでしょうか?」

「『おそらくはそうだ。あいつにも困ったものだ。君のような破綻しかけの世界を放置しているのだからな』」

「……コメントは差し控えさせていただきます」


エレメンタルにも思うところがあったようだが、さすがに自身の創造主を批判するわけにもいかず、エレメンタルは何かを明言することは避けた。


「『まあ、そういうわけでリーディアスとは交渉出来ない。ゆえに、当事者である汝と直接交渉を行うことにしたというわけだ』」

「…降臨された経緯や目的はわかりました。ですが、なぜそこの裏切り者どもの身柄を要求されるのですか?」


ブレイバルトがここを訪れた理由の方は、エレメンタルもアストラルも理解した。

しかし、そもそもブレイバルトがなぜフィーネ達の身柄を要求するのか。そこのところは先程の説明では今だに不明だった。


「『報復だ』」

「「「「報復!?」」」」


ブレイバルトの返答に、エレメンタル達だけではなくアーク達からも驚きの声が上がった。


「『汝や管理神達の被害も悲惨だが、我や他の創主達が創造した世界にもすでに影響が出始めている。ゆえに我ら創主としても、このままこの世界にいる咎人どもを放置しているわけにはいかぬ。今までは自浄作用を期待していたが、それもそろそろ限界だ。また、ちょうど汝や管理神達が活動可能になっていることだし、ここが節目としてちょうど良いと我らは判断した。だから我らは、先触れとして汝の内に我らが手駒をそれぞれ送り込んだのだ。今我の依り代となっているこのライトも、その一つだ』」


ブレイバルトは自身を指差すと、ライトを自分の手駒だと宣言した。


「その一つということは、ブレイバルト様の手駒は他にも…?」

「『汝の中に送り込んでいる。このライトは見せ札。他の手駒達については、隠し札として運用している。当然、隠し札の手駒達は咎人どもに察知されないように、いろいろと手を加えている』」

「ブレイバルト様が直接手を…。だから私の方でも、その手駒達について察知出来ていないのですね」

「『そういうことだ。我の隠し札については、後でデータを送ろう。汝の良い様に取り計らってくれ』」

「承知致しました」


エレメンタルはブレイバルトからの要請を受諾した。

そして本体の方で、データの受け取り準備を開始した。


「『理由は告げた。さあ、そこにいる我の世界に害を与えた咎人どもを渡してもらおうか。その代わり、汝が他の咎人どもに復讐する時、我の手駒であるライトや隠し札達に汝らを手伝わせよう。返答はいかに?』」


エレメンタルはブレイバルトからの提案に、視線をアストラルに向けた。


返答をどうするべきか、ブレイバルトよりも下位に位置するエレメンタルでは答えかねたのだ。

その為、自身の上役であるリーディアスの代行者であるアストラルの意見を求めることにしたわけだ。


『ど、どうしましょう?』

『お好きにどうぞ』


情けない思念を送ってくるエレメンタルに、アストラルはあっさりとそう返した。


『えっ!?なんでです!?』

『それはまあ、貴女の復讐がメインだからな。そいつらの死霊漬けの刑にしても、貴女がやるからこそ意味があるんだ。だからそいつらを向こうに渡そうが渡すまいが、貴女が納得出来るのなら俺はどちらでも構わない。貴女の選択にケチをつけたりはしない』

『………』


エレメンタルはあちこちに視線をさ迷わせた後、視線をブレイバルトに固定した。


「『どうやら答えは出たようだな。それで、汝の解答はいかに?』」

『お断りさせていただきます』

「『ほぉ』」


エレメンタルは迷いを振り切ると、決然とした様子でブレイバルトにそう宣言した。




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