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アルマVSセドリック

 屋敷の庭には俺たちだけでなく、ラウル、ルナ、サーニャ、メイベルさんの姿も見られた。

 少し心配そうに見守っていた。

 模擬戦ということなので、木剣がエリックさんから渡された。

 試しに振ってみると、結構軽くて扱いやすそうだった。

 これながら万が一攻撃が当たっても致命傷にはならないだろう。

 剣術はあまり得意ではないのだが、使えないこともない。

 たぶんなんとかなるはずだ。

 それに……これは物凄く失礼な言い方になるのだが、セドリック相手に本気で魔法を使う必要はあまり感じられない。

「アルマ君は腕に少し自信があるようだが、もしかして私に勝てるとでも思っているのかな?」

 庭の屋敷で向かい合わせになると、セドリックは言った。

「胸を借りるつもりで挑むつもりです」

「その表情からは全くそんな気を感じさせないな。余裕が垣間見える」

「そんなことないですよ」

「……ふっ、まぁいい。実力はすぐにでも分かる」

 セドリックは木剣を構えた。

 いつでも戦いを始められそうだ。

 ……なんとか乗り切ったようだ。

「くっくっく、まさかこんな催し物が見れるとはな。セドリック、実力を出すのは程々にしておいてあげなさい。魔物を何匹も用意したところでお前に勝てる訳ないのだからな」

エドワード卿は薄気味悪い笑みを浮かべて言った。

「……はい、分かりました」

 セドリックはエドワード卿に向けて頭を下げた。

「アルマ! 頑張れよ!」

 エドワード卿の発言を聞いて、少しイライラした様子のラウルが大声で叫んだ。

 俺は手を振って、それに応えた。

「二人とも準備はいいかい?」

 エリックさんが問うと、俺とセドリックは同時に首を縦に振った。

「よし、それでは模擬戦開始だ!」

 開始の合図が告げられると、セドリックは真っ先に動き出した。

 そして、セドリックは勢いよく木剣を振るった。

 俺はセドリックの攻撃を自分の木剣で防ぐように動く。

 カンッ!

 木剣のぶつかる音がなる。

 セドリックの攻撃は結構重い。

 魔力以外のステータスに差があるのだから当たり前だが、予想以上だった。

 少しステータスを補うべく俺は【身体強化】を無詠唱で発動した。

 そして、セドリックに反撃する。

「ほう……」

 俺の木剣を受け止めたセドリックは感心したような声を漏らした。

「やはりなかなかやるようだ。これだけの一撃を平然と打ってくるのは驚異的だ。悪いが、本気で行かせてもらおう」

 セドリックは身体の力を抜いて、脱力状態となった。

 長い手足をぶらーん、とさせているが、視線は俺をしっかりと捉えていた。

「【脱力旋風】」

 次の瞬間、勢いよくセドリックは動いた。

 俺の周囲を動き回りながら、怒涛の攻撃の連打が襲いかかってくる。

「な、なんだありゃ……あれじゃあ手も足も出ないだろ……」

 ラウルの呟きが聞こえた。

「カッカッカ、楽しいねぇ。セドリック、すぐに倒すんじゃなくて痛めつけてからにするんだぞ」

 ふむふむ、エドワード卿は判断こそ俺たちに融通をきかせてくれたみたいだが、こういった一面を目の当たりにすると、性格が悪いのではないか? と思ってしまうな。

 まぁ実際、良くはないんだろうけど。

「ぐぬぬ……」

「アルマは大丈夫。その証拠にほら、アルマは一撃も攻撃を受けてないから」

「え? ……ほ、ほんとだ。アイツ、全ての攻撃を防いでるじゃねーか! 魔法だけじゃなくて剣術もとんてもなく強いんだな……」

「むっ、ええいっ! ならばセドリック! トドメをさしてしまえいっ!」

 見学者達は結構盛り上がっているみたいだった。

 俺の方はというと、その様子を伺えるぐらいには余裕だった。

 さて、そろそろセドリックを倒してしまうか。

 勝って状況が悪くなるってことはないだろうし。

 セドリックの【脱力旋風】はもう見切った。

 大抵のスキルはコンセプトさえ分かってしまえば対策出来るのだ。

 【脱力旋風】のコンセプトは、フットワークを活かして、相手の周囲を回りながら死角を攻撃し続けることだ。

 だから攻撃を狙う場所は自然に俺の死角になる。

 そして、次攻撃が来る場所が分かれば、難なくカウンターを決めることが出来る。

 俺は背後に向けて木剣を振るい、セドリックの木剣を弾き飛ばした。

 カランカランッ、と木剣が地面に転がった。

「後の先……だと!?」

 木剣を弾き飛ばされたセドリックは驚愕していた。

 後の先とは、剣術スキルの一つで言ってしまえば返し技、つまりカウンターだ。

「うおおおおおっ!! アルマが勝ったぞ!」

「さすがアルマ。カッコいい」

「本当ですよね! あの連撃を受けている中、一撃で勝ってしまうなんて凄すぎますよ!」

 ふぅ、やれやれ。

 ちょっとだけ魔法を使うことにはなったが、なんとか剣術の範囲内で勝つことが出来たな。

「バカな……! 元Aランク冒険者のセドリックが負けるだと……!?」

 エドワード卿もセドリックと同様にかなり驚いている様子だった。

 それにしてもセドリックは元Aランクの冒険者だったのか。

 なるほど、冒険者の仕事を辞めて貴族の護衛役を務めるというのもあるわけか。

 貴族側も冒険者としての実績をかなり信頼している証拠だな。

 俺も冒険者になってみるのもありかもしれないな。

 ちょっと面白そうだし。

「……アルマ君、完敗だよ。まさかここまで完璧な後の先を決められるとはね。末恐ろしいな」

「いえ、たまたま決まっただけでしたね。あれは正直賭けでした」

「ふっ、気を遣わなくても大丈夫だ。本気を出していないんだろう? まったく、とんだ怪物を相手にしてしまった」

 そう言って、一人納得したセドリックはエドワード卿のもとへ歩いて行った。

「アルマ君、とんでもない実力者ですよ」

「……うむ。色々と殿下には伝えねばならんな」

 これから国王様と謁見があるのは確定事項だな。

「む、そういえばこのフランドル家には《賢者》のギフトを授かった者もいるようだな」

 エドワード卿は思い出したかのように言った。

「ええ。長女のルナが《賢者》のギフトを授かっております」

 エリックさんは答えた。

「私です」

 ルナも自分だと分かるように手をあげた。

「そうか。ではルナも王都に来てもらおう。《賢者》ほど将来に期待が出来るギフトはなかなか無いからな。まったく、忙しくなる」

 エドワード卿はそう愚痴をこぼした。


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