33話 ルナはスタミナが足りない
翌日も早朝に起きた俺は、今日こそ開拓作業に励んでいた。
昨日はロックドラゴンの子供──ロックが生まれて、作業は一時中断していたからな。
現在、ロックは木陰で眠っている。
朝食を食べてお腹いっぱいになってからぐっすりだ。
食事は昨日、子供が近くの川で釣ってきた魚を擦り潰して与えてみた。
ロックはむしゃむしゃ、と勢いよく食べた。
ドラゴンは何でも食べると聞いていたが、それは本当だった。
そんなロックの近くで俺たちは開拓道具を持って、新たな領土を広げていく。
ルナも流石にこのような場面で有用な魔法は覚えておらず、一緒に汗水流して働いていた。
「……疲れる」
段々とルナの動きが遅くなっている。
スタミナが切れてきたのだろう。
ちなみに今はお昼前でそろそろ疲れも溜まってくる頃だな。
「だらしないぞ〜。ほら、頑張れ頑張れ」
ラウルはパンパン、と手を叩いてどこか調子が良さそうだ。
「お姉ちゃん! 頑張って!」
妹のサーニャは姉と比べて元気そうだ。
ステータスはあまり変わらないように思える。
実際のところどうなのか。
気になったので俺は【鑑定】をサーニャに使ってみた。
[ 名 前 ] サーニャ
[ レベル ] 3
[ 魔 力 ] 15
[ 攻撃力 ] 45
[ 防御力 ] 30
[ 持久力 ] 40
[ 俊敏力 ] 30
お、レベルのわりになかなか恵まれたステータスだ。
開拓作業の様子を見ていると、どうも慣れた様子だったので、日頃からこういった作業をしていることが伺える。
そのおかげでステータスがわずかに上昇しているのだろうな。
ステータスはレベルを上げる以外にも上昇させる方法はいくらでもあるので、まぁそこまで珍しくもない。
周りの子供達のステータスも同年代でも少し高めに出るんじゃないかな?
しかし、持久力だけで見ればルナはサーニャの倍以上ある。
だというのに、ルナはサーニャよりも早くバテてしまっている。
「アルマ……こういうとき何か良い魔法ない?」
ルナは弱音を吐いていた。
「あるにはあるが、それよりもルナは身体の使い方をもう少し見直した方がいいな」
「身体の使い方?」
「ああ。ステータス通りの実力を発揮できていれば、ルナはまだ疲れるはずがないんだ。その証拠にステータスの低いサーニャがまだまだ元気だろ?」
「へ? 私ってお姉ちゃんよりステータスが低いんですか?」
「レベルを考えたら高いほうだけどね」
「なるほど! 確かにお姉ちゃんは昔から部屋に引きこもっていたもんね〜」
グサッ、と何かが刺さったようにルナは静止した。
「……私は魔法の勉強をしていただけだから」
「そのせいで今、苦労しているんじゃな〜い?」
「でも魔法は沢山使えて」
「魔法以外何も出来なくなっちゃったね。方向音痴だし」
「お前は鬼か! そのへんにしといてやれ! ルナが泣いちまうぞ!」
ラウルが間に入って止めた。
ルナは目に涙を浮かべていた。
「あ〜、泣きそうなお姉ちゃんも可愛い〜!」
「……泣いてないから」
「ひ、ひでぇ」
「サーニャの本性が垣間見えたな……」
「えへへっ、そんなことないですよ〜」
笑顔のサーニャを見て、彼女が全然悪気ないことに気づいた。
ルナは恐ろしい妹を持ったもんだ。
「……それで、身体の使い方ってどうすればいい?」
ルナは目元を拭ってからそう言った。
触れないであげよう。
それが優しさだ。
「習うより慣れたほうが早いと思うよ。今日と明日、開拓作業を頑張っていればちょっとは改善されるさ」
「えぇ……」
ルナは嫌そうな表情を浮かべた。
「魔法を使ううえでも大事なことだから。頑張ろうな」
「……アルマがそう言うなら」
そう言って、ルナは渋々納得してくれたみたいだ。
◇
そして、3日間の開拓作業のお手伝いは終了した。
結果として、俺は領地にかなり馴染むことが出来たし、ルナも体力をつけたようだった。
「でもさぁ、なんで3日だったんだ?」
夕食の後に散歩をしていたとき、ラウルがそんなことを聞いてきた。
「あれ? 理由言ってなかった?」
「聞いてないぜ。アルマの言うことだから間違いは無さそうなんだけど、正直半信半疑だな。だって3日だぜ? 早すぎないか?」
そうか、理由を教えていなかったか。
なんかいい説明あるかな……。
そう考えようとして、すぐにやめた。
「ま、ここまできたら何が起こるのか、明日を楽しみに待っていてよ」
きっと、その方が驚いてくれるだろうから。
「ははっ、アルマがそう言うってことは何か起こるんだろうな。分かった! 楽しみに待ってるぜ!」
「度肝を抜くことになるよ」
「ほぉ〜、それは期待できるな。まさか明日には植えられた野菜が全部収穫出来るようになっていたりしてな」
「ははは」
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