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炎の魔獣召喚士  作者: 平岡春太
 第三章 氷の国

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 第九話 シャルルの正体

 サルセッテに戻った足で、そのまま仲介所で依頼の完了を済ますと共に報酬を受け取り、時間も遅くなった事もあって食事を済ませて町に泊まる事になった。

 翌朝になって宿屋の食卓でパルはテーブルの上で、フラムとシャルルは向かい合って朝食を取っていたのだが、相変わらずの旺盛な食欲に、シャルルは面食らっていた。ただ、最初の時と違って、ゆっくりとだが食事の手は進んでいた。


「あの調子だとシャルルには依頼の仕事は向いてなさそうね。労力と報酬が全然見合わないもの」

「私は少しでも報酬が貰えるのは嬉しいですけど」

「気持ちだけじゃあ、お金は直ぐに底を尽きるわよ。ただ、それだと何処かに身を寄せる場所がないといけなくなるわね。そう言えば、確か当てがあるって言ってなかったっけ?」

「はい、お母様の所に行こうかと。私に魔獣召喚士のいろはを教えてくれている先生でもあるんです」

「シャルルに? へえ~、少し会ってみたい気がするけど」

「ぜひぜひ。凄い魔獣召喚士なんですよ。教え方も上手いですし」


 フラムとパルの猜疑心の塊の目がシャルルに突き刺さる。


「ああ、私が魔獣召喚士としてダメなのはお母様が悪い訳ではなく、私に才能がないだけなんですよ」

「才能がね。それは言わなくてもわかるけど。でも、一緒に住んでないの?」

「それが少し前までは一緒に暮らしていたのですが、お父様と喧嘩されてしまって」

「喧嘩?」

「はい、今回の結婚の件で。お父様は早く結婚させたがっているのですが、お母様は私が一人前の魔獣召喚士になるまでは結婚は早いと常々言っておられて」

「一人前のね。それじゃあ一生結婚出来ないんじゃあ……」

「でヤンス」


 フラムとパルは苦笑いする。


「その事でお母様はお━━いえ、家を出てしまわれて、今は別荘に身を寄せておられているはずなんです」

「別荘まであるの? また少しお金の臭いがして来たわね」

「昨日はその勘も鈍ってたでヤンス」

「そんな事はないわよ。強力なヴァルボラガが手に入ったんだもの。十分よ。まあ、とりあえず行き先は決まったわね」


 フラムとパルに少し遅れることシャルルも食事を済ませてから宿屋を出て、そのままサルセッテを後にした。

 町を出て直ぐに、フラムはシャルルにオロドーアを召喚するように促した。シャルルのトラブルメーカーとしての性分を考えての事だったが、それが的中する事となった。

 何匹もの野生の魔獣が襲って来たのを追い払い、突然の道の陥没も体を張って自ら橋となり、オロドーアの働きは目を見張った。


「大丈夫ですか?」


 シャルルが気を遣って声を掛けるが、オロドーラの息は見て分かるほどに上がっている。ただ、当のオロドーアは心配されまいと元気を装って見せる。

 

「よっぽどシャルルが好きなのね」

健気(けなげ)でヤンス」

「何か仰いました?」

「いえ、何も」

「別荘はもう見えて来る頃だと思います」


 と、その時、急にオロドーアが険しい顔で唸り声を洩らし始めた。

 フラムとパルも同様に緊迫した顔で辺りを見廻す。


「囲まれてるわね」

「囲まれて? また魔獣でしょうか?」

「いえ、この感じは人ね」

「じゃあ、盗賊でしょうか?」


 周りにある木々の間から、ぞろぞろと人が姿を現した。その全員が見覚えのある鎧を身に纏っている。


「アルファンドの兵士?」


 最後に姿を見せた美形の男は、他とは違う豪奢な鎧を纏い、マントを(なび)かせている。


「やはりここに来たか。張っておいて正解だったな。シャルロア、ようやく見つけたぞ」

「エドアールお兄様!?」


 驚きの声を上げたのはシャルルだ。


「お兄様って? それにシャルロアって?」


 フラムとパルの訝しむ目がシャルルに向く。


「あの、これはですね。その、どう言えばいいか」

「どうもこうもない。一人で城を出た事もない王女のお前が城壁を超えたと聞いて、今、城中が大騒ぎとなっているのだぞ!」

「王女!? じゃあシャルルあなた!」


 シャルルは勢い良くフラムに頭を下げる。


「すみません! (だま)すつもりはなかったんですが、王女と分かるとお城に連れ戻されると思って」

「何故王女のお前が頭を下げる。そもそも何なんだ、そのみすぼらしい恰好は? さあ、城に戻るぞ」


 エドアールがシャルルに歩み寄ろうとすると、オロドーアが間に入って立ちはだかる。


「何だ、お前は? 邪魔をするつもりか?」

「お兄様、お待ちを!」


 シャルルが呼び止める声よりも、エドアールが剣を抜く方が早かった。


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― 新着の感想 ―
シャルロア?  シャルロッテ? どっちーーーーっ!? 予想してましたが、城出姫でしたね(笑) 続きも楽しみにしています
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